カンボジアだより シーライツ

国際子ども権利センターのカンボジアプロジェクト・スタッフによるカンボジアの子どもとプロジェクトについてのお便り

児童買春に取り組む大学生からの質問

2005年12月28日 15時45分40秒 | その他
みなさんこんにちは、カンボジアとの温度差に風邪気味の平野です。
今回から3回に分けて、児童労働・児童買春に取り組む大学生のグループ「サンピッコロ・プロジェクト」のみなさんからの質問と、それに対する平野の回答をご紹介させていただきます。サンピッコロ・プロジェクトは、立命館アジア太平洋大学のサークルで、愛地球博にも出展しています。
HP   http://www.apu.ac.jp/circle/sunpro/ 
ブログ http://spp2005.exblog.jp/

【質問1 買春宿に戻ってしまう要因と社会の受け入れ態勢】

①保護施設やその他の様々な施設などに入る(保護される)ことができても、色々な要因でまた売春宿に戻るケースが多いということを知ったのですが、それは主にどのような要因があるのですか?社会の受け入れ態勢は?

(平野)
要因について

☆ドラッグ中毒(買春宿でドラックを使わされることがよくあります)
☆セックスへの依存
☆職業訓練の難しさ(縫製や洋裁などの技術でも、学校に行ったことがない子どもには計算などの壁があります)
☆居場所が無いこと
結婚まで処女を守る事を重要視するカンボジアでは、処女を失ったことで「自分はもう結婚できない。人生がダメになった」と考える傾向があります。そこに上記のような様々な社会復帰への傷害が重なると、「自分はどうせもう普通の社会には戻れない」などと思い、買春宿に帰ってしまうケースがあります。また長く買春宿にいると、他の子たちとの友情も生まれるでしょうし、ママさん(買春宿のオカミさんですね)を、母親のように慕うケースもあります。他に頼る人がいないと、自分を搾取する人、場所すら、安らぎの場所になりうるのです。

社会の受け入れ態勢

自分の村に戻ることが理想ですが、なかなか難しいのが実情です。差別されることが多いですし、積極的な差別がなかったとしても、結婚などが困難になりがちです。NGO側も、職業訓練センターのほかに自分達で店を経営してそこで働かせたり、あるいはプノンペンの寮のある縫製工場に就職口を斡旋したりといった努力をしていますが、理想は出身の村に帰ることであることは言うまでもありません。ただ、こちらでは例えばレイプの被害者なども「壊れてしまった娘」として同情されるのですね。「可哀想じゃないか。彼女の(まともな)人生が終わってしまったじゃないか」という調子です。これを変えていくのは大変なことです。そしてこれは果たしてカンボジアだけのことなのか。そんなことはないですよね?

それと、その施設などに入って実際に社会復帰できている子供たちはどのくらいいるのですか?統計的な資料があればうれしいです。

(平野)
個々のNGOがそれぞれに活動しており、それぞれの団体は統計を持っているのでしょうが、全体としての統計は私は分かりません。職業訓練センターを出てからもしばらくフォローを続けないと「社会復帰できた」と言い切れませんよね?そしてそれはいったい何年フォローすればいいのか。そのあたりも考え合わせると、統計を取ること自体なかなか大変な作業だと思います。

【質問2 施設でのケア】 

②一度売買春にあしを踏み入れたら社会復帰は難しいという話を聞いたのですが、その施設などでは社会復帰させるためにどのようなケアがなされているのですか?詳しく知りたいです。

(平野)
一般には、職業訓練や識字教室がメインです。職業訓練では、美容や理容、そして洋裁に手工芸品などがメインです。カンボジアは総輸出額の半分以上を縫製産業に頼っており、28万人程度の縫製工場勤務の女性がいます。ですので、どこの職業訓練センターにいってもミシンが見られると思います。

以前の「カンボジアだより」で、HCCとういう団体の施設について詳しく述べています。
http://blog.goo.ne.jp/jicrc/e/6dcf83a3bd44484fdb3675499e6342ad
http://blog.goo.ne.jp/jicrc/e/4fe1f7089c2efd9263bd247409ebf1e0


また、心理的ケアとしてカウンセリングも広く行われていますが、カンボジアには
カウンセラーとして働くのに十分な知識や経験を持った人材が非常に不足しています。ただ、そんな中でも、絵を書く、造花を作るなど、被害者が癒されるための工夫をしているNGOもあります。権利センターの支援するアフェシップもそんな団体の一つです。 http://jicrc.org/pc/cambodia/activities/index.html

以上第1回でした。まだ“さわり”ですね。これからディープに、そしてアツく、なっていきます。続けてご愛読ください。

※写真はHCCのシェルターの職業訓練所でメイクを学ぶ少女たちです。

歳末です。歳末といえば、助け合い!海を越えて助け合いしてみませんか?
http://jicrc.org/pc/member/index.html