カンボジアだより シーライツ

国際子ども権利センターのカンボジアプロジェクト・スタッフによるカンボジアの子どもとプロジェクトについてのお便り

ムー・ソクアさんを囲む会直前企画<カンボジアの人権状況の今その2>

2005年11月02日 20時24分06秒 | カンボジアの人権状況
みなさんこんにちは、平野です。
昨日に引き続き、元女性省大臣ムー・ソクアさん囲む会を11月7日に控え、直前企画として、まさしく今のカンボジアの人権の状況についてお伝えしたいと思います。昨日と同じく、Human Rights Watch(ヒューマン・ライツ・ウォッチ、アメリカの大手人権NGO)の10月18日付のプレスりリースをもとに、10月17日に国営放送TVKで2時間に渡って放送されたフン・セン首相の演説の抜粋要約をお伝えします。

【元国王を侮辱し、軍を動かす、と示唆 】

10月17日のTVKの放送では、苛立ちながらのフン・セン首相の演説が2時間に渡った。彼は過去に遡り、ポルポト以前、シハヌークが国を率いていたときに様々な問題があった、歴史は変えられない、そして過去の事実に対する報いは、自分ではなく、シハヌークが受けるべきと元国王を皮肉り、クメールルージュと共闘した過去などもあげつらい、シハヌークを攻撃した。そして国境協定合意に対する反対者は許されぬと断じ、2人は既に逮捕したと述べ、他の4人についても名指しを避けつつ、それぞれの居所を示し、逮捕状は出ており、タイとは犯罪人引渡し協定がある、と述べた。また首相に批判的なトミコ殿下の名を挙げ、王族も起訴されうるとし、これは口だけではないと強く言った。

そして、NGOなど5人いれば設立できる、とNGOを軽んじた上で、他国に土地を譲渡した過去の王族の名を挙げ、シハヌークがそれでも王族を擁護するならば、自分にも自分を擁護する権利がある、とし、過去の経緯に基づく国境線に合意することで非難されるのが妥当だというのなら、国会議員を辞して裁判を受けてもいいと強調した。

さらに、これまで寛容すぎた、限界だ、法が許す限りの措置をとるし、法の枠を超えるのであれば軍を動かしてもいい、たとえ将軍であっても、従わなければ更迭する、と複数の将軍の実名を挙げて言い放った。

【自己正当化と国際社会へのけん制】

そして、NGOやラジオや新聞を閉鎖や廃刊や閉鎖に追い込んだわけではない、個人を逮捕しただけである、そしてそれも、間違った事を言ったからだ、と自分を正当化しつつ、自分は国を率いる者であり、自分や政府を擁護する権利があるし、議案を下院の審議に送ることもできる、そして下院を通ればそれが答えだ、上院にも、自分にも、王にも棄却はできない、なぜなら力は民にあるからだ、と延べ、国境協定には国家元首のサインが必要だが、下院を通ればそれが最後の行程であるべきであり、国王がサインできないというのであれば、共和制にすべきか考えるべきだ、と王政廃止に言及した

そして、人はフン・センが烈火の勢いで喋ったと言うだろうが、自分は長いこと我慢してきたのだ、NGOはどうぞ自分の業務を続けてください、外国人の方々はどうぞ干渉しないでください、と国際社会の介入を拒否し、(逮捕された人物は)国境を越えようとしていたが、UNHCR(国連高等難民弁務官)ではなく監獄が待っていた、タイのUNHCRは他の4人のうち2人を保護しているようだが、タイ政府に連絡して送還してもらおう、犯罪人引渡し協定があるのだから、と最後は国連機関にも言及しつつ述べた。

以上要約終了です。いかがでしょうか、この王をも恐れぬ物言いには、さすがにフンセン首相支持の市民などからも困惑の声が挙がっています。そして「議会制民主主義」を盾にし、NGOや国連機関に対する皮肉まで交え、自らを擁護すフン・セン首相。これまでも国連やアメリカに噛み付くことはありましたが、ここまでの怒りっぷりは記憶にありません。そしてこの首相の怒りに満ちた姿勢が、カンボジアを恐怖で覆っています。


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