カンボジアだより シーライツ

国際子ども権利センターのカンボジアプロジェクト・スタッフによるカンボジアの子どもとプロジェクトについてのお便り

スタディーツアー報告① 国境お出迎えとSBPN学校訪問

2008年09月22日 13時27分55秒 | Weblog
スタディーツアー2008年夏

こんにちは。宇野です。2008年8月26日より9月2日までスタディーツアーが実施されました。参加者12名+現地参加者2名+スタッフ3名+通訳1名+現地ガイド+運転手の20名でスタディーツアーが始まりました。

国境お出迎え

8月26日カンボジア―ベトナム国境にて参加者さんをお迎えしました。初めてのスタディーツアーと、参加者さんとの出会いと、ベトナムに初上陸(約30分)ということで、私にとっては、緊張・興奮の瞬間でした。カンボジア―ベトナム国境には特に線が引いてあるわけでもなく、ひとつ、石の塔がたっていて、どちらが表でどちらが裏なのかは分かりませんが、片面にはカンボジア、片面にはベトナムと書かれているものでした。予想していた以上に、車やバイクの量、人の量が多かったです。参加者さんをお出迎えした時、飛行機でホーチミン入りして、ホーチミンからバスで国境までという長旅だったとは思えない位に、みなさんがエネルギーに溢れていて驚きました。国境からホテルまでのバス内での自己紹介を聞いていて、参加者さんのスタディーツアーへの意気込みを感じ、和やかな雰囲気の中スタディーツアーが始まりました。
 
スタディーツアー初日8月27日、まず初めに訪問したのはスバイリエンのSBPN(学校を拠点とした人身売買防止ネットワーク)が実施されている小学校です。

以下はツアー参加者の藤江理紗さんからの報告です。

スバイリエンのSBPNの活動を学んで
藤江 理紗(大学生)

 カンボジアに入国した翌日、私たちはスバイリエンにある学校を訪ねました。その地域で行われているSBPN(School based Prevention Network)の活動を知るためでした。SBPNとは学校ベースの人身売買防止ネットワークのことで、子どもたちが自分の身を自分で守れるように「子どもの権利」について学ぶプロジェクトです。子どもの権利は、生きる権利・成長する権利・保護される権利・参加する権利と大きく4つに分けることができ、これらを自分の持つことのできる権利であると認識することによって、カンボジアでは「しつけなんだから仕方ない」とされてきた親から子供への暴力などの家庭内暴力、や、同地域で深刻な問題になっている人身売買に立ち向かう力をつけることを目指します。

 教室に入ると、SBPNメンバーの小中学生がやや緊張した面持ちで私たちを迎えてくれました。まず、はじめに自己紹介。一人ずつその場に立って「チョムリアップスオ(こんにちは)」と手を合わせてあいさつした後、名前と年齢と学年を紹介してくれました。ここで驚いたのが、学年に見合わない年齢でした。同じ小学6年生でも13歳だったり14歳だったり、15歳になる子もいたのです!日本のように義務教育ではあっても、このように年齢がまちまちになってしまうのには理由があるそうです。家の手伝いや出稼ぎに行かなければならないために、学校へ入学するのが遅くなってしまったり、学校へ行けたとしても途中でやめざるを得なくなったりするからだそうです。

 みんなの自己紹介が終わったあと、私たちもカタコトのクメール語で自己紹介をしました。それから、子どもたちの緊張をほぐすために日本の歌をプレゼント!「幸せなら手をたたこう」を振りつきで歌うと、みんな恥ずかしそうに照れ笑いを浮かべながらも、楽しそうに一緒に手をたたいたりしてくれました。さらに外へ出て伝言ゲームをして交流を深めました。

 教室へ戻って、4つのグループに分かれてもらい、SBPNに関するいくつかの質問に答えてもらいました。

Q1.子どもの権利を学んでよかったことは?
・ 自分自身の権利を知ることができた
・ 性的搾取について知ることができた
・ 他人にだまされない自信がついた
・ 性的搾取などから自分の身を守ることができる自信がついた。身を守る手段を学ぶことができた

Q2.SBPNのメンバーになってどんな活動をした?
・ 学校内外で広報活動→子どもの権利や児童虐待について
・ 友達やすべての子どもに広報活動→「自分自身を守ろう!」「学校に来るのをやめないで!」「狡猾な手口にだまされない!」

Q3.SBPNの活動をしてよかったことは?
・ 知識を得て、それを友達や家族、村の人と共有できた
・ 集まって話し合うことができた
・ 広報活動を成功させることができた
・ 子どもに興味をもってもらえた

Q4.SBPNの活動をして大変だったことは?
・ 活動する時間・場所が足りない
・ 活動するための予算が足りない→ミーティング時のペンやノートなどの筆記用具代、活動するときの教材など
・ 参加する子どものメンバーが足りない
・ 興味を持たない子どももいた

Q5.SBPNのメンバーとして、これからどんなことをしていきたい?
・ 子どもや女性の人身売買、性的搾取、家庭内暴力をなくしたい
・ それらについての広報活動をしたい
・ 村を発展させる活動をしたい
・ 村を平和にする活動をしたい

*子どもたちからの質問*

Q.日本の子どもたちはどんな活動をしているの?
→生徒会という組織があって、生徒たちが先生や保護者と同じ位置にたって、意見を言える仕組みになっている。

Q. 日本には女性・子どもの人身売買はあるの?
→≪女性≫沖縄には売春宿があり、県外へ出稼ぎに行く人もいる。
≪子ども≫インターネットでポルノが出回っている。また「タレントにしてあげる」と言って騙し、子どもポルノにされてしまうことも。

Q.日本の女性や子どもに対する支援体制は?
   →女性や子どもの虐待に対して24時間対応の電話相談などがある。また、親から虐待を受けた子どもの保護施設がある。

Q.どうして日本はそんなに発展しているの?
   →義務教育を9年間しっかり受けられる人がほぼ100%だから。

 グループの代表がひとり前に出て、それぞれのグループの発表をしました。自信を持って堂々と発表する姿を見て、「エンパワーメントってこういうことだ!」と気付きました。今までエンパワーメントなんて本当に実現するのか?と思っていましたが、彼らがそれを目の前で見せてくれたように思います。少しずつ、でも確実に自分たちの手で自分たちの問題に立ち向かっている姿を、日本の子どもたちにもぜひ、知ってもらいたいです。日本から遠く離れた場所だけど、同じ子どもの仲間が苦しんでいること、そしてその問題を自分自身で解決しようとしていることを。

 このSBPNのプロジェクト活動を通して、彼らから知識を得ることの大切さや周りの人に伝えていくことの重要性を教えてもらいました。日本に帰ってきた今、私にできることは・・・自分の目で見て、聞いて、感じてきたことを伝えること!私が家族や友達など身近な人に伝えて、それが水の波紋のように広がり、いつか日本中、世界中の人たちが弱い立場の人々のことを考えられるようになることを祈っています。

写真は、SBPNの学校訪問時、子どもたちが「子どもの権利を学んで良かった事は?」という質問について話し合いをしている時のものです。

子どもたちが人身売買の手口に騙されないようにするために、ぜひ会員なってください!
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