カンボジアだより シーライツ

国際子ども権利センターのカンボジアプロジェクト・スタッフによるカンボジアの子どもとプロジェクトについてのお便り

勇気をくれた子どもたち スタディツアー報告その2

2008年05月21日 17時39分49秒 | 人身売買防止プロジェクト(意識啓発)
 こんにちは。甲斐田です。中国四川大地震では、たくさんの子どもたちが被害にあって、痛ましいですね。唯一の子どもを亡くした親御さんたちの報道を見ると胸がつまる思いです。ミャンマーでは、援助が届かず、タイの国境の町まで被災した方々が避難してきています。バンコクの英字新聞では連日、援助を受け入れず被災した人々より自分たちのことしか考えないビルマ政府を批判する意見が掲載されています。
 04年12月の津波のときに親を亡くした子どもたちが人身売買ブローカーから狙われたので、今回も心配になっていたのですが、ビルマの被災センターにも人身売買のブローカーがやってきて、子どもたちを連れていこうとする事件が起きました。幸い、警察が介入し、加害者は逮捕されましたが、このようなことが人知れず起きているかもしれません。親や住むところを亡くして、ショックの中にいる子どもたちは一日も早くおとなの優しさに触れて癒されなければならないのに、そうした子どもが、逆に、自分を守ってくれると信じてついていったおとなから自分は騙されていたと知ったらどんな気持ちになるでしょう。そんなことが起きていないことを祈ります。
前置きが長くなりましたが、スタディツアーの報告その2を掲載します。
写真はメンバーの子どもたちとゲームをする高橋さんです。
(強調は編集部でつけさせていただきました)


学校ベースの人身売買防止ネットワーク(SBPN School Based Prevention Network)
                      高橋友紀子(会社員)
スバイリエンでの小学校訪問

教室に入ると、私たちも教室の生徒の皆さんも緊張した様子でした。そしてひとりひとりの自己紹介。当然私も緊張しました。するとクラス以外の子どもたちが興味津々といった感じで教室の窓からたくさん覗きにきていました。キラキラした瞳と笑顔がとても印象的でした。カメラを向けると嬉しそうにはしゃぎとてもかわいらしかったです。
私たちはコミュニケーションとして日本から持っていった写真を見せたり、歌を歌いました。ギターや振り付けありで『幸せなら手を叩こう』を歌い、ゲームをして楽しみました。以下、子どもたちへの質問と答えです。

Q1.トレーニングで何について知りましたか?

A:子どもの4つの権利について(これらは国連の子どもの権利条約で定められている)
  
  「生存する権利」・・・生きることの保証。そして簡単に直すことのできる病気で命を無くさないようにする権利

  「発達する権利」・・・心や体の発育に伴なった成長をする権利
  
  「守られる権利」・・・有害な労働・経済的性的搾取から保護される権利

  「参加する権利」・・・自分達に関係することが決められる時には意見を表し、それが充分尊重される権利。

 :家庭内暴力、性的搾取、ジェンダーについて学びました。
 
 :麻薬の危険性について学びました。

 :学校の先生や村長は自分たちを守る人たちだと知りました。
  
《感想》
日本で暮らす子どもには日常では学び得無い内容をこんな小さな頃から学び、身に付けていかなければならない環境にショックを受けました。子どもたちの「学校の先生や村長が自分たちを守ってくれる存在だということが理解できた」という答えに安心しました。
親以外に頼ったり助けを求めることは、日本と文化や発展の違いがあるにしろ、『人』にとってとても大変なことであり、とても密接な信頼関係が無い限り難しいことだと感じます。 しかしながら、親や大人の言いなりでなく深い意味で自分の権利を守るためにも村長や先生の存在があることを学べることはとても良いことだと感じました。

Q2 どのような活動をしていますか?

A:学校で学んだことについて広報活動をしています。
  児童労働、ドメスティックバイオレンス、人身売買、ジェンダー、出稼ぎ労働の危険性について同学年の友人、近所の子どもに話しています。

Q2① すぐに信じてもらえましたか?
  
 a・友人、子どもたちは信じました。しかし、年上の人たち、大人の人は聞いてくれなかったり信じてくれませんでした。
  ・自分たちが学んだことを、親や大人の人たちに伝えることの難しさを知りました。

Q2② 何を信じてくれなかったのですか?
  ・人身売買についてです。

《感想》
学んだことを周りの人に伝える。受け入れてもらう。という行為は大人の私達でもとても多くのエネルギーと根気、そしていちばんに勇気が必要です。そのような地道で勇気の要る活動を子ども達がしているのを聞いて わたしの方が勇気をもらいました。

Q3 なぜこのネットワークに参加したのですか?
  
  ・自分の村での人身売買、ドメスティックバイオレンス、家庭内暴力が起こらないようにするためです。そして村の安全を守るためです。

Q4 村にドメスティックバイオレンスの問題がありますか。

  ・家庭内暴力の原因として子どもが親を軽視したような態度をとるために  親が暴力を振るうという傾向があります。
  ・私の村の話ではありませんが、親からの暴力により家を出て自分の村に住んでいる子どもがいます。

Q5 出稼ぎに出て騙されたという話を聞いたことがありますか?

  ・付き合っている男と出稼ぎに出て、その男に騙されたという人がいる。という話を聞いたことがあります。  

   
(小学生からの質問):日本ではどのような問題がありますか?
(日本人参加者からの答え)
  ・児童虐待、少子化、いじめ、各家族の問題があります。
  ・日本にもフィリピンなどから人身売買でつれてこられたり、ポルノ被害にまきこまれたりする被害者がいて、本国へ送り返しています。

(編集者注:最近は、フィリピンよりインドネシアからの被害者が多くなっています。やっと近年、加害者処罰が法律で決められ、被害者は帰国援助が受けられるようになりました。)

Q6これからの活動としてどうしていきたいですか?

  ・活動するメンバーを増やしたい
  ・広報を広める側になりたい

《感想》
子ども達が自分たちを守る権利や、安全に暮らしていくために、とても真剣に取り組んでいる様子がうかがえました。これからより多くを学校で学ぶことにより、より多くの知識や知恵が個人個人に身につくことで、今は困難な広報活動も確実に力を増していくだろうと思います。 そして、それは確実にメンバーが増えることに繋がるはずです。
 なかなか信じてもらえない!と言う周りのお友だちそして大人たちに、学んだことや見たり聞いたりしたことを伝えることは本当に大変な勇気が必要だと思います。そして 子ども達がこのような「地道でありながらも確実」な活動を続けていくためには、大人たちの万全なサポートが必要だと思います。
彼らはいくつもの勇気を持って活動しているのだな・・・と思うとかえって私の方が勇気をもらいました。
日本は離れていますが、私は日本で「身近にできること」をひとつでも多く行動することを精一杯、一生懸命頑張ります。 
私の小さな一粒の行動がカンボジアの子どもたちを手伝うエネルギーに通じることを信じています。