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カンボジアだより シーライツ

国際子ども権利センターのカンボジアプロジェクト・スタッフによるカンボジアの子どもとプロジェクトについてのお便り

子どもや女性の人身売買の実態<加害/被害の実態>

2006年08月05日 07時00分38秒 | 人身売買防止プロジェクト(意識啓発)

みなさんこんにちは、平野です。今回から何回かに分けて、私が国際子ども権利センターカンボジア事務所に勤務してからの1年で学んだことをもとに、どのような経緯で子どもや女性の人身売買という犯罪が起こされていくのか、そしてどのような取り組みが必要とされているのかについて、簡潔にですが具体的に書かせていただこうと思います。

【就職斡旋を装ったケース】

人身売買業者が子どもや女性を騙すやり方は複雑で多岐に渡りますが、もっとも頻繁に挙げられるのは就職斡旋を装ったものです。プノンペンの縫製工場で働ける、タイのレストランのウェートレスの口を紹介する、マレーシアのお金持ちの家でメイドさんの仕事がある…誘い文句は様々ですが、いずれにしても「簡単な仕事で収入はいい」といった文句で村人をその気にさせるが、実際は買春宿などに売ってしまうのです。

縫製産業は、同国の輸出高の大半を占め、29万人(そのほとんどが女性)の労働者を雇用する人気の就職先で、人身売買業者の嘘の誘い文句にもよく使われます。特に学歴や特殊技能を事前に備えている必要はないため、村の少女や女性たちも「この仕事なら自分にもできるし、家族を助けることができる」と考え、縫製工場で働くことにあこがれるのです。しかし、就職斡旋業者は通常良いことしか言いませんし、役所に届けずに出稼ぎに出る人も多く、結果的に出稼ぎに伴う危険や労働者の権利についての知識がないままに出稼ぎに行く場合が多々あります。

【偽装結婚】

さらに最近は、結婚詐欺というかたちも増えています。行き先としては台湾が最もよく挙げられます。貧しい家庭の親は、娘を豊かな国の男性と結婚させることで、本人もより良い生活ができるだろうし、送金も期待できると考えて娘を海外に送り出します。そうして海外に渡った女性の一部は、性的虐待を受け、中には買春宿に連れて行かれるケースもあります。国際子ども権利センターが支援するHCCのプロジェクト地でも2004年に台湾人との結婚、移住が相次いだことは、7月10日付けの記事にもあるとおりです。

【その他のケース】

その他、拉致や薬物によって意識を失わせての拉致といったより暴力的なものや、養子縁組を装ったケースなども散見されます。また、レイプという犯罪が人身売買という別の犯罪につながるケースもあります。カンボジアには女性(だけ)に婚前交渉を厳しく禁じる風潮が根強くあり、レイプという犯罪の被害による場合でさえ、結婚に支障をきたすのが現状です。そのため被害にあった未婚の女性やその親が、加害者を訴えることもできずに、不本意ながらもその男性に“責任を取ることを求める”ことがあります。そしてその挙句その男性に性産業に送り込まれてしまう、というケースがあるのです。

今回は人身売買という犯罪がどのように起こされるのかについてご説明しました。さまざまな形態が取られてはいますが、その根底には、女性が低い地位に置かれ、自分の意志に基づいた自由な選択が許されていないことがあると言えると思います。次回は女性の地位にも触れつつ、「嘘の就職斡旋」に焦点をあてて「なぜ子どもや女性が出稼ぎに出てしまうのか」についてお話したいと思います。

※ 写真はHCCの職業訓練所でミシンを習う少女たちです。

人身売買の撲滅にあなたの力を貸してください↓

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