「台湾の声」【他山の石】台湾政府の武漢ウイルスに対する取り組み
台湾独立建国聯盟日本本部委員長
王 明理
中国発武漢コロナウイルス(COVID-19)の2月17日現在の世界の罹患者数は71312名、死亡者数は1775名と伝えられている。しかし、中国国内の実数はその何倍、何十倍もあるだろうと目されている。このウイルスの伝染力や潜伏期間の多様性が分かって来て、対処が難しいやっかいなウイルスであることが明らかになった。収束の見通しがたたないどころか、まだまだこれから感染が拡大していく様相を呈している。
各国それぞれに対策を講じていると思うが、優れた手腕を発揮している台湾政府の取り組みについて紹介したいと思う。
1. 防疫対策の初動の早さ
〇蔡英文政権は昨年12月の時点で、選挙戦の最中にもかかわらず、中国で発生した武漢コロナウイルスの推移を注意深くモニターしていた。その準備のお蔭で、1月11日の選挙後、速やかに武漢コロナウイルス対策本部を作ることができた。
〇WHOへの加盟が許されていない為、自分の身は自分で守る意識が高く、WHOの今回の遅きに失した発表に惑わされずに行動を開始した。WHOが緊急事態宣言をしたのは1月31日。
2. 対策本部にはSARS対策に尽力した経験ある閣僚が多い
〇2003年のSARS流行の時、台湾では死者が77名に上り、市民をパニックに陥れた。
その時に対策にあたった人材が、今回の政府の対策委員の主要メンバーに揃っているため、専門知識と経験から武漢コロナウイルスの重大性に気づくことができた。
蔡英文(総統):SARS当時、大陸委員会主任委員として中国対策担当
陳建仁(副総統):もともと医師であり、SARS当時、衛生福利部部長(日本の厚労省大臣)として、対策全般を担当し、WHOからの情報を得られないにも関わらず、対策を考案し、封じ込めに成功した当時の立役者
蘇貞昌行(政院長):SARS当時、台北県長として、普通の病院をわずか10日で感染症対策病院に作り替えて機能させたことでWHOを驚かせた。
陳其萬(行政副院長):SARS当時、立法委員かつ公衆衛生の専門家として活躍。
3. 入国制限を躊躇なく実施
〇対象者
1/26:湖北省住人
2/2 :広東省住人
2/3 :浙江省?州市の住人
2/5 :浙江省住人
2/6 :全ての中国人
(cf:日本では2/17現在、湖北省と浙江省の住人のみ制限)
2/7 :香港・マカオの住人
2/7 :外国人で過去14日間に中国を旅行した人は入国禁止。
台湾人は14日間、隔離観察
4. 武漢からの台湾人引き揚げも慎重に
〇
台湾人を武漢から連れ戻すのに使用しようとした台湾機は政治的理由で中国に拒否されたが、人命優先で中国案を呑み、中国機で送り届けられた。
その際、中国は台湾の要望を無視して人選し(弱者優先でなく、コネのある人を優先)、感染予防措置もずさんだったため、帰国してから感染者が一人発見された。
?その後の帰国便は見合わせ。
5. マスクや消毒液の配給など
〇マスクの払底に対応
・コロナウイルスの脅威が分かるとすぐに、医療用マスクの輸出を禁止。
・市民がマスクを購入に走り、1/24からの旧正月で工場が稼働停止していた為、マスクが不足。
・パニックを抑えるために、政府の在庫を放出すると告知。一人一回3枚までの制限開始。
・マスクを海外に送る事を禁止。旅行者の持ち出しは2箱まで。
・1/31 国内マスク生産を政府が収用。約日本円7億円を投入して新たに6つの生産ライン増設。軍に労働力の提供を指示。
・身分証提示によるマスク購入システムを導入。週に2枚まで。
・マスクはどこで買えるかというアプリを唐鳳(行政院政務委員)と若いプログラマーが開発提供。
・4月末まで続行予定。一日1千万枚生産。昨年までマスク輸入国だったが、一転、世界第二のマスク生産国になる予定。当面の間、 生産したマスクは全て政府が買い上げる。
6. タイムリーでオープンな情報提供
〇衛生福利部疾病管制署(Taiwan Centers for Disease
Control)は毎日2回、記者会見を開き、質疑応答に答える。
〇「疾管家」というLINEアプリを開発して情報を提供
〇健康保険カードには医療を受けた履歴がインプットされているが、今回はそこに旅行履歴も追加。医療関係者が患者のバックグラウンドを把握しやすくなった。
7.市民に予防を徹底:疑わしきを見過ごさない
〇効果的な隔離、経過観察システムをチャートにし、公表して公平に使用。
例:・罹患者との接触者 - 14日間自宅で隔離。一日2回衛生機関関係者が家にいるかチェック。スマホを使ってモニタリング。
・中国、マカオ、香港から戻ってきた人、香港人、マカオ人 - 14日間自宅待機。一日1回、 里長(町長のような人)が電話をしたり、直接訪問して家にいるか確認。スマホでモニタリン
グ。
・検査結果が陰性だった人。 - 自分で14日間管理。外出を控える。出かけるときはマスクをする。体温を測る。症状が出たら、すぐに防疫専門電話1922番に電話。
8.2/14 中国・香港・マカオから帰国する台湾人をスムーズに入国管理できるシステムを
開発導入。
〇空港での待ち時間に感染するのを防ぐ
〇嘘をついたり逃亡したりするのを防ぐ。
1. 外国の飛行機チェックインカウンターで、QRコードをスマホに読み込む。
2. スマホに表示される申請書に記入
3. 台湾到着後、バーコードがスマホに表示される。
4. このバーコードをスキャンするだけで入国審査は完了
台湾における感染者は2月17日時点で22名。16日一人の死亡が確認された。死亡したのは無許可タクシーの運転手で、1月27日に浙江省から帰国した台湾籍ビジネスマンを乗せた。17日には、死亡した運転手の母親と姪の感染が確認された。しかし、地理的に中国に近く、人の往来も多いにも関わらず、よく抑えていると評価されており、国民の間に不満やパニックは見受けられない。
今、台湾の人達は、日本の状況を非常に心配している。日本はなぜ、いまだに中国からの旅行者を受け入れているのかと、東日本大震災の時と同じような感じで、日本に感染が広がっていくのを我がことのように案じている。
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台湾の声
台湾独立建国聯盟日本本部委員長
王 明理
中国発武漢コロナウイルス(COVID-19)の2月17日現在の世界の罹患者数は71312名、死亡者数は1775名と伝えられている。しかし、中国国内の実数はその何倍、何十倍もあるだろうと目されている。このウイルスの伝染力や潜伏期間の多様性が分かって来て、対処が難しいやっかいなウイルスであることが明らかになった。収束の見通しがたたないどころか、まだまだこれから感染が拡大していく様相を呈している。
各国それぞれに対策を講じていると思うが、優れた手腕を発揮している台湾政府の取り組みについて紹介したいと思う。
1. 防疫対策の初動の早さ
〇蔡英文政権は昨年12月の時点で、選挙戦の最中にもかかわらず、中国で発生した武漢コロナウイルスの推移を注意深くモニターしていた。その準備のお蔭で、1月11日の選挙後、速やかに武漢コロナウイルス対策本部を作ることができた。
〇WHOへの加盟が許されていない為、自分の身は自分で守る意識が高く、WHOの今回の遅きに失した発表に惑わされずに行動を開始した。WHOが緊急事態宣言をしたのは1月31日。
2. 対策本部にはSARS対策に尽力した経験ある閣僚が多い
〇2003年のSARS流行の時、台湾では死者が77名に上り、市民をパニックに陥れた。
その時に対策にあたった人材が、今回の政府の対策委員の主要メンバーに揃っているため、専門知識と経験から武漢コロナウイルスの重大性に気づくことができた。
蔡英文(総統):SARS当時、大陸委員会主任委員として中国対策担当
陳建仁(副総統):もともと医師であり、SARS当時、衛生福利部部長(日本の厚労省大臣)として、対策全般を担当し、WHOからの情報を得られないにも関わらず、対策を考案し、封じ込めに成功した当時の立役者
蘇貞昌行(政院長):SARS当時、台北県長として、普通の病院をわずか10日で感染症対策病院に作り替えて機能させたことでWHOを驚かせた。
陳其萬(行政副院長):SARS当時、立法委員かつ公衆衛生の専門家として活躍。
3. 入国制限を躊躇なく実施
〇対象者
1/26:湖北省住人
2/2 :広東省住人
2/3 :浙江省?州市の住人
2/5 :浙江省住人
2/6 :全ての中国人
(cf:日本では2/17現在、湖北省と浙江省の住人のみ制限)
2/7 :香港・マカオの住人
2/7 :外国人で過去14日間に中国を旅行した人は入国禁止。
台湾人は14日間、隔離観察
4. 武漢からの台湾人引き揚げも慎重に
〇
台湾人を武漢から連れ戻すのに使用しようとした台湾機は政治的理由で中国に拒否されたが、人命優先で中国案を呑み、中国機で送り届けられた。
その際、中国は台湾の要望を無視して人選し(弱者優先でなく、コネのある人を優先)、感染予防措置もずさんだったため、帰国してから感染者が一人発見された。
?その後の帰国便は見合わせ。
5. マスクや消毒液の配給など
〇マスクの払底に対応
・コロナウイルスの脅威が分かるとすぐに、医療用マスクの輸出を禁止。
・市民がマスクを購入に走り、1/24からの旧正月で工場が稼働停止していた為、マスクが不足。
・パニックを抑えるために、政府の在庫を放出すると告知。一人一回3枚までの制限開始。
・マスクを海外に送る事を禁止。旅行者の持ち出しは2箱まで。
・1/31 国内マスク生産を政府が収用。約日本円7億円を投入して新たに6つの生産ライン増設。軍に労働力の提供を指示。
・身分証提示によるマスク購入システムを導入。週に2枚まで。
・マスクはどこで買えるかというアプリを唐鳳(行政院政務委員)と若いプログラマーが開発提供。
・4月末まで続行予定。一日1千万枚生産。昨年までマスク輸入国だったが、一転、世界第二のマスク生産国になる予定。当面の間、 生産したマスクは全て政府が買い上げる。
6. タイムリーでオープンな情報提供
〇衛生福利部疾病管制署(Taiwan Centers for Disease
Control)は毎日2回、記者会見を開き、質疑応答に答える。
〇「疾管家」というLINEアプリを開発して情報を提供
〇健康保険カードには医療を受けた履歴がインプットされているが、今回はそこに旅行履歴も追加。医療関係者が患者のバックグラウンドを把握しやすくなった。
7.市民に予防を徹底:疑わしきを見過ごさない
〇効果的な隔離、経過観察システムをチャートにし、公表して公平に使用。
例:・罹患者との接触者 - 14日間自宅で隔離。一日2回衛生機関関係者が家にいるかチェック。スマホを使ってモニタリング。
・中国、マカオ、香港から戻ってきた人、香港人、マカオ人 - 14日間自宅待機。一日1回、 里長(町長のような人)が電話をしたり、直接訪問して家にいるか確認。スマホでモニタリン
グ。
・検査結果が陰性だった人。 - 自分で14日間管理。外出を控える。出かけるときはマスクをする。体温を測る。症状が出たら、すぐに防疫専門電話1922番に電話。
8.2/14 中国・香港・マカオから帰国する台湾人をスムーズに入国管理できるシステムを
開発導入。
〇空港での待ち時間に感染するのを防ぐ
〇嘘をついたり逃亡したりするのを防ぐ。
1. 外国の飛行機チェックインカウンターで、QRコードをスマホに読み込む。
2. スマホに表示される申請書に記入
3. 台湾到着後、バーコードがスマホに表示される。
4. このバーコードをスキャンするだけで入国審査は完了
台湾における感染者は2月17日時点で22名。16日一人の死亡が確認された。死亡したのは無許可タクシーの運転手で、1月27日に浙江省から帰国した台湾籍ビジネスマンを乗せた。17日には、死亡した運転手の母親と姪の感染が確認された。しかし、地理的に中国に近く、人の往来も多いにも関わらず、よく抑えていると評価されており、国民の間に不満やパニックは見受けられない。
今、台湾の人達は、日本の状況を非常に心配している。日本はなぜ、いまだに中国からの旅行者を受け入れているのかと、東日本大震災の時と同じような感じで、日本に感染が広がっていくのを我がことのように案じている。
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台湾の声