「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和弐年(2020)2月8日(土曜日)
通巻6361号
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米国、訪米した頼清徳(次期台湾副総統)を異例中の異例な厚遇
ホワイトハウスが受け入れ、トランプ大統領、面談か?
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2月5日、ワシントン入りした台湾の頼清徳(元首相、次期副総統)は、ホワイトハウスにいきなり招待されるという厚遇ぶりだった。
ホワイトハウスにはxu美琴前立法委員が通訳として同行した。xuは蔡英文の右腕として、また民進党の外交の顔として知られる。
その後、頼清徳は上院で有力議員を懇談し、ハドソン研究所でスピーチ、7日にもトランプ大統領との会談があるのではないかとワシントンで情報が飛び交っている。
中国側は反駁も発表できず沈黙を保っている。
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中国の体質「情報の隠蔽、操作」が悲劇を倍加させた
次は中国版グラスノスチに進むのか? もっと後退するのか(その1)
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皮肉なことに中国の「ひとりあたりのGDPが10000ドルを超えた」とか。
とても「一万ドル倶楽部」入りしたとは思えないが、中国は広い。農村や奥地の貧困とは比較できないほど沿岸部の経済繁栄は凄まじく、中産階級はマンションを買って、マイカーに乗っている。
一群の繁栄享受群だけでも一億人は超えているだろう。
中国人の訪日客の派手な購買力、そのコスモポリタン的な洒落た服装、なにしろ大半が一眼レフをぶら下げていた。中国人のインバウンドに依拠していた日本各地の観光地、温泉は現在休館、閉店に追い込まれており、いかに中国だけに頼ってきたビジネスにリスクが潜在したかを物語る。
コロナウィルス災禍は世界に同時に伝播し、航空会社の乗りいれ禁止措置は欧米から、ベトナム、ミクロネシアに拡大した。JALとANAは中国便を六割減。
小生自身、月末からソロモン諸島ガダルカナル取材を予定していたが、ミクロネシア全域で、感染者のでた国からも(日本を含む)乗り入りを禁止したため、中止せざるを得なくなったほど。ツアーキャンセルが相次いでいる。
まず隠蔽体質に関して言えば、かの新幹線事故のとき、事故車両を土中にうめて「なかったこと」にしようという大胆な情報隠蔽が、テレビ中継で暴露されたように、2003年のSARS騒ぎも、情報隠蔽が悲劇を倍加させた。
今回も、すでに2019年10月頃から異常が報告されていたのに、当局は情報を隠した。告発した医者は当初犯罪者扱いされた。当該の李文亮・医師の死去報道は、中国全土に衝撃を与え、突如「英雄」として祀られる。
経済的な被害はこれからじわり出てくる。
すでにサプライチェーンが半ば破壊されており、トヨタ、日産、ホンダは操業再開を2月10日からさらに遅延させる。
部品の調達が出来ないからである。典型は鴻海精密工業である。スマホの組み立てが出来ないためアップルの出荷が大幅に遅れている。
こうした状況の改善展望がまったく見えず、中国の製造業の停滞は、以後少なくとも半年、生産計画に狂いを生じさせる。中国政府は通貨供給を増発、ついには利下げに踏み切った。もし経済成長という情報が真実なら、利下げではなく利上げすべきだろうから、実態が逆にあることをいみじくも物語っている。
物流にも支障がでた。なにしろ武漢は孤立している。交通アクセスが厳しく制限されると食糧の調達が出来なくなり、医薬品の不足ばかりか市民生活が成立しない状況に陥った。病院を急遽建てたが、映像で見る限り、あの病棟と施設では「院内感染」が懸念されるうえ全国からボランティアの医師、看護婦を募るといっても応募は少なく、結局、軍医が動員されている。外国からの、たとえば「国境なき医師団」の支援を中国は拒否している。だから状況はますます悪化することになる。
(この項、続く)