izumishのBody & Soul

~アータマばっかりでも、カーラダばっかりでも、ダ・メ・ヨ ね!~

2019年の私的ベスト「展」!と、2020年の標語!

2019-12-30 13:20:33 | 日記・エッセイ・コラム

2019年の始まりは、本態性血小板血症の投薬入院と乳ガン手術を控えて、(今から思えば)何となく気持ちが下がっていたようだった。

1月末に、これで最後の「神奈川県武術太極拳選手権大会」の出場(65歳から70歳まで出よう、と決めていたの)を控えそれが終わるまではと先延ばししていた二つの入院は、1月末と3月初旬。病院の適切な処置と長年の太極拳と経絡エクササイズで整えたお陰か(多分ね)、どちらもな〜んの問題もなく、副作用もなく、無事に終了。70歳の誕生日を病院のデイルームで妹夫婦と姪夫婦も一緒にケーキを食べてお祝い(!)、というのは忘れがちな出来事を記憶に残すことができる記念日にはなった。

退院二日後にいつもの教室で太極拳の指導に出かけ(驚かれました!)、その翌日の「神奈川県武術太極拳フェスティバル」にはさすがに「無謀だよ!」といわれて見学に止めたのだが、それもこれも”普通の日常はいつでも非日常になる”ことを感じさせる出来事ではあった。

 

そんな中でも、今年も観たい舞台や美術展、読みたい本等々、太極拳以外の美しいものとの出会いがあった。

今年のトップにあげられるのは、まずはステージ作品二つ。

一つは、★ヤン・リーピンの「覇王別妃」(2月/文化村オーチャードホールにて)。

舞台上に無数につり下げられて揺れる銀色のハサミと、舞台の袖で紙で言葉を切り抜いて見せるその精密な切り紙の美しさと斬新な進行方法に感服し、中国武術の基盤を窺わせる伝統的な動きと研ぎ澄まされた感覚と身体性が見せる叙情性豊かな表現は忘れられない。

もう一つは、★マシュー・ボーンの「白鳥の湖」(7月/文化村オーチャードホールにて)。

これまで何度か観てきた中で今回が一番といえる完成度の高さ!バレエとしての技術や表現の高さに、今回は、まるで一流の役者のような豊かな感情表現が加わり、バレエ公演を超えた素晴らさ。もはや"崇高な"とでも呼びたい舞台であった。

 

美術展では、なんと言ってもピカイチは、★「塩田千春展ー魂がふるえる」(8月/六本木美術館にて)。

会場に張り巡らされた夥しい赤い糸。焼け残ったピアノを包み込む黒い糸。生命を繋ぐ糸をダイレクトに感じるインスタレーションと、彼女が手がけたオペラ「松風」のダイナミックで幻想的な舞台。。。夏休み中の六本木ヒルズは、片方で「衝撃の巨人展」開催中で、そちらは大行列の人混みだったが、「塩田千春展」はじっくりゆっくり鑑賞できるいい具合。

コミックから始まりあらゆるメディアミックスに発展して若者の心を摑む「衝撃の巨人展」と、一方、徹底的に(時には自分自身の肉体をそのまま使って)人の手が直に創り出す一つ一つの作品が持つエネルギーとそれが発する”気”(のようなもの)が満ちる「塩田千春展」の、違いと同質性。。。。秋に起きた名古屋トリエンナーレでの展示拒否などの騒動を思えば、”不自由展”という名の現代アートの表現とメディアミックスを借りた表現手段はありだな、と思う。

この他、いくつか観た中で、思いもかけず良かったのが「ルート・ブリュック〜蝶の軌跡展」(5月/東京駅ステーションギャラリーにて)。陶器という素材を使ってあらゆる色や形を出し、描き、陶器がこんなにも自由で豊かな表現をできるものだと、その斬新さに制作された年代への畏敬を感じた。

 

最近は本を読むことが少なくなっているが(目が疲れるの)、それでも時々猛烈に活字に飢えることがあって、一気にまとめ買いの波がやってくる。

入院中に病院の図書室で借りて読んだ★「若冲」(澤田瞳子著/文春文庫)は、退院した後に再読しようと購入。その時に一緒に買った★「渦〜妹背山婦女庭訓 魂結び」(大島真寿美著/文藝春秋)は、その後直木賞受賞した。文楽や歌舞伎を、ちゃんと観てみよう!と思った。

★「椿宿の辺りに」(梨木香歩著/朝日新聞出版)は、初めて読んだ作家だったが、これがまた滅法面白く、テンポのいい文章と古事記に紐付いた設定、奇想天外なストーリーで一気読み!つい最近では、★ジュンパ・ラヒリ「わたしのいるところ」(中嶋浩郎訳/新潮クレスト・ブックス)も、上記の作品とは趣きの違う本で、静かで変化の少ない日常を淡々と書きながら、どこか別の世界にトリップするような、パッチワークのような内容。

 

映画では、なんと言っても4Kデジタルリマスターによって上映された★「去年マリエンバートで」。その美しさ、スタイリッシュさ、繊細で贅沢な雰囲気は映画による芸術作品だ!

これ以外では、★「COLD WAR あの歌、2つの心」。モノクロ画面を通してポーランド映画の伝統を感じる逞しさ、人間とその愛が織りなす人生の不屈、希望、歩み、といったものを感じる。

「去年マリエンバートで」も「COLD WAR あの歌、2つの心」も、モノクロである。色がない分、テーマがくっきりと浮かびあがり、陰影と奥行きが深まるような気がする。

 

来年は、どんなステージと出会えるのだろう。。。「♪ い〜のち短し 恋せよ乙女〜♪」※にちなんで「♪ い〜のち短〜かし 学べよ〜オババ〜♪」を来年の標語に、感性のアンテナを高く張り巡らせて、美しいもの、ダイナミックなもの、魂や情熱を揺さぶるものを観て、それらを通してさらに学んでいきたいと思う年の暮れであります。

※「命短し 恋せよ乙女〜」は大正時代の流行歌で、2018年に樹木希林の世界デビュー作で遺作となった同名のドイツ映画があることを今回知った!同名のコミックもあるようだが、このフレーズ、知らない人が多いのだった!

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