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紅夜叉は利用された

2007-01-05 05:49:05 | Weblog
今日から「紅夜叉は利用された」のスタートです。

さて、この物語は週刊プロレスの表紙にLLPWの人気レスラーである「紅夜叉」選手がセミヌードで登場した事が発端でした。
2ちゃんねるで、その当時の事が知りたいというスレッドが立ち、当時の4様がそのLLPWの内情を暴露し始めた事からこの話しは始まります。

では本編の開始です。・・・

あの時紅は脱ぐ事になっていた。金もLLPWは受け取っていた。
でも神取に話が通ってなかった。当然週プロにクレーム。
それならせめてセクシーポーズだけでも、という事で落ち着いた。
しかし納得いかない週プロ側はその後あまり紅を取り上げなくなった。
神取は面倒な実務は風間にまかせきり。気の向いた時だけ文句を言う。
週プロ宍倉はそんな風間LLPWを本当に応援していた。
だから自然と話は神取を素通りしていってしまう。
一介の若手レスラー安田をあのキャラで売り出したのは宍倉・風間コンビ。
紅夜叉売り出しについても神取は何ひとつ相談されてない。
しかし、うすうす宍倉・風間が何か計画している事も気付いてはいた。

試合日当日午前、風間は神取のマンションを訪ねた。
ドアにはまるで風間の来訪を予感していたように「おこさないでください」と張り紙がされていた。
その張り紙に威圧感をおぼえた風間は動揺した。
ためらいながらも風間は何度か呼鈴を押した。
しばらくすると神取が不機嫌そうな声でドアを閉めたまま風間に投げかけた。
「なんだよぅ・・・張り紙が見えネェのかよぅ・・・起こすなよなぁ」
 「神取・・・神ちゃん、相談しておきたいことがあるのよ。」
「話って何だよ。言っておくけどアタシも馬鹿じゃないからさ、用件なんて想像はついてるんだよ、ああ」
 「何言ってるの?とにかく開けてよ」
「別にイイんだよ。前の会社でも2回か・・やってるし・・ね。今眠いんだ。後でちゃんと聞くからさ、今は寝かせてくれよ」
それ以上神取は風間の呼びかけに答えはしなかったという。

安田留美はこの試合であるワザを試そうと思っていた。
紅夜叉時代も見せていたサミング。
もちろん紅のキャラに合ったトボけたつなぎ技である。
指を2本突き出したポーズは、気の立った神取には笑えない。
しかし安田留美はそんな状況など理解してはいなかった。
控え室で風間は神取と戦う5人を前にして忠告していた。
「勝とうなんて思っちゃダメ。極められたらすぐにマイッタするのよ」
「怒らせるような事も禁止よ」とも言ったという。
怪訝そうな顔をする5人に何故か風間は深く礼をして控え室を出た。

もう一方の控え室。神取の隣にはイーグル沢井の姿があった。
時折押し殺した笑い声を発し、2人は何事かを話し込んでいた。
そこへ各雑誌関係者が取材で訪れた。そこには宍倉の姿もあった。
「めずらしいねぇ、宍倉さんがコッチくるなんて」
神取は皮肉たっぷりに宍倉に向けて言い放った。
  「今日は若手に胸を貸すわけだね。怪我させないようにね!」
宍倉ンとっては軽いジョークのつもりだったのだが、神取は内心カチンと来ていた。
  「ああ、神取さん、そういえばねぇ・・・」
宍倉が神取に対し何か言おうとしたが、神取はもうたくさん、という表情で席を立った。
その行動に宍倉はあっけにとられ、ふと沢井を見ると、沢井は「宍倉さん、やばいよぉ」という表情で苦笑いをしていた。

その日の神取の入場の時、ほんの小さいハプニングがあった。
入場テーマが数秒間途切れたのである。原因は単純な操作ミスだった。
しかし今朝からの一連の出来事で神取の機嫌はよくなかった。
試合への気持ちを高揚させるための入場シーンで水をさされた事は神取の気分を
さらに悪化させるのには十分すぎるものであった。
気持ちを落ち着かせてリングインした神取はまず観客を見渡した。

通路の奥の風間と目が合った。これには風間も驚いたらしい。
そこで何故か風間は神取に微笑みかけてしまったらしい。
しばらく無表情のまま風間を見つめ、神取は向きを変えた。
目の前にはいつも稽古をつけている後輩たちがいる。
「こいつらの中に・・・誰だ・・・」
無表情を装いつつ、しかし鬼の形相で一人一人目をあわせる。
尋常ではない目つきに彼女らは動揺を隠せない。
「怒らせるような事も禁止よ」その言葉が鮮烈に蘇る。
しかし一人だけ強い眼差しで対抗してくる娘がいた。
半田美希。後に風間の秘書と呼ばれる女である。

一人目は蹴り足を捕らえられ、簡単に極められてしまった。
極める直前、ほんの少し神取は風間のいる方向を見た。
「このまま壊してみるか・・・」
そして足元で怯えた表情の後輩に目をやった。
「大人気ないか」神取は極めていた足を離してやった。。
続いて二人目。今度は風間は気にならなかった。
この時は案外神取は若手に付き合う素振りを見せた。
後輩の怯えた表情にいくらか白けてきていたのだ。
ツームストンでフォールを奪うと、いきなり背中を蹴られた。
「なんだぁ このヤロウ!」
予期していない攻撃にプロレスモードで振り返ると、三人目・安田留美が奇襲してきた。
その安田の右手は二本指を突き立てていた。
「あぁ! こいつがぁ!?」
一瞬だが、神取は明らかに戸惑っていた。
ジャパン女子に入団以来、自分の付き人を勤めてきたのが安田である。
自分に対してサミングを仕掛けてくる理由がわからなかった。
一発目のサミングは簡単にかわす事が出来た。
「やっぱり、あいつらの差し金か・・・」
通路の奥の風間、そして記者席の宍倉に軽く目をやる。
二発目のサミングが襲う頃には神取は吹っ切れていた。
「ジョーダンじゃねぇぞぉ、このやろう!」
安田の腕を掴むとワキにはさみ、一気に捻り上げた。
ブチブチブチ・・・安田の発する悲鳴よりも明確に筋が軋むのを感じた。
ワキ固めのようにグラウンドにはせず、立ったまま極めているのだ。
「危ない危ない!安田!寝ろ!寝ろ!」リング下でハーレーが叫んでいる。
数名だが観客席でも異常な事態に気付き始めた。


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