いせ九条の会

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植木等さんのこと/山崎孝

2007-03-29 | ご投稿
植木等さんが3月27日に亡くなられました。哀悼を申し述べます。

私は植木等さんが出演されていた「名古屋嫁入り物語」のテレビ劇を見ていました。劇は嫁に出す娘の嫁入り支度に尾張三河地方の伝統的風習を守り、とても豪華な支度を調えていました。それが両親の娘に対する大きな愛情の表現でもありました。実際の社会でもトラックに何台にも積まれ、乗用車まで入っている豪華な嫁入り道具を目にしていました。私の長女が一宮の男性と結婚することになり、この嫁入り支度のことが私たちの家では問題になりました。私たちはとても結納金の何倍にも相当する嫁入り道具を用意はできないと相手の家に話して、結納金を用意しないでほしい。自分たちのお金で経済力に見合った嫁入り道具を調えたいと申し入れました。幸い了解していただきましたので、多大な支出を避けることができました。

私は植木等さんの父親が権力に反抗して治安維持法違反で投獄されたこと。そのために植木等さんが子どもときに父親の代理で檀家回りをしていたことを知り憶えていました。これらのことを再度確認しようと昨日図書館に行き植木さんの著書の「夢を食いつづけた男」を予約してきました。この想いに符牒があったのか、29日付朝日新聞「天声人語」は植木等さんのことが書いてありました。以下はその文章です。

一休さんのような少年僧が、暗い道に張られた縄に足をとられた。地面にしたたか顔を打ち付け、血が噴出す。しかし、少年は泣くこともなく寺に帰ってゆく▼「衣を着たときは、たとえ子どもでも、お坊さんなのだから、喧嘩をしてはいけません」。少年は、縄を仕掛けた連中が近くに潜んでいるのを感じたが、この母の教えを守った▼母は、血だらけで帰ってきた彼の手当てをし、抱きしめて言った。「よく辛抱したね」▼80歳で亡くなった植木等さんが『夢を食いつづけた男』(朝日文庫)に書いた、幼い頃に受けた「いじめ」と母の記憶だ。住職だった父は解放の闘士でもあった。治安維持法違反で入獄したり、各地の社会運動に出かけたりして寺に居ないため、植木さんが檀家回りをせざるを得なかった▼父・徹誠さんは後年、「スーダラ節」の「わかちゃいるけどやめられない」のくだりについて、「親鸞の教えに通じるものがある」と言ったという「人間の弱さを言い当てている」▼おだてられてその気になり、お呼びでないところに出てしまったり、あげくには、ハイそれまでよ、になってしまったり。人の弱さと浮世の切なさを、底抜けの明るさで歌い、演じた▼「無責任男」として有名になったが、根は思慮深い人だったという。いわば、世の中の「無責任」を一身に背負う責任感が、あの笑顔を支えていたのではないか。耳に残る数々の「植木節」は、戦後の昭和という時代を共にする多くの人の道連れであり、応援歌でもあった。(以上)

植木等さんは「不殺生」むやみに生き物を殺さないに通じる戒めを守りました。植木等さんは諧謔的に無責任男を演じましたが、本物の無責任さを発揮していると思えるのは現在の与党の政治家たちです。

昨年紹介した仏教の10の教え「十善戒」というのは、人間が悪いことに染まらず、善良な行いをするようにと導くのだといいます。この言葉で政治家の言動を照合してみます。

「不両舌」筋の通らないことを言わない戒めで照らしてみると、政治資金収支報告書で問題を起こした松岡勝利農相は、社会から「ハイそれまでよ」と辞任を突けつけられていますが、安倍首相もかばい本人も「無責任男」としての名を上げています。

「不悪口」乱暴な言葉を使わない戒めを、都知事再選を目指す人物(選挙期間中なので名前は伏せます)は傾聴すべきです。「不慳貪」欲深いことをしない戒めも必要かと思います。

昨年の北朝鮮のミサイル発射実験と核実験に対応して日本の政治家たちは「喧嘩をしてはいけません」とは反対の態度をとりました。ミサイル発射実験では国連加盟国で一番の強硬姿勢を取り、安保理事会で国連憲章第7章の適用を最後まで主張して、中国に拒否権を使わせることまで考えた。先制攻撃論を唱えます。核実験のときは臨検を行う米国の艦船が攻撃されたら、自衛隊は武力で支援することを主張するなどしました。国連は紛争を拡大させる態度は取らないよう国連加盟国に求めていました。政治家はたとえ民衆が論理的な思考をせず激昂しても、大局的立場に立ち国民を宥め説得すべき役割を担うものです。政治家はいわば民衆を戒める僧侶の衣を着ているのです。

「不妄語」嘘はつかない、二枚舌を使ってはならない。「不両舌」筋の通らないことを言わない戒めで照らしてみると、ワシントン・ポストからもダブルトーク(ごまかし)と指摘された安倍首相です。事前に「河野談話」見直しを了解しながら、「河野談話」を再度引き継ぐと言明をしたり、謝罪したりする。それでいて官房副長官の「河野談話」否定をたしなめる様子がありません。

公明党はつい最近の「サンデープロジェクト」の番組で、大田昭宏代表は「憲法9条は変えない。特に2項を変えることに反対」と表明しながら、3月27日には改憲に限定した国民投票法案の修正案を国会に自民党と共同提出して法案の成立を図ろうとする。自民党の改憲の狙いは憲法9条の理念をなくし、集団的自衛権行使が出来るようにして日米同盟を「血の同盟」にすることにあります。自民党の憲法の武力で国際問題を解決するなと「不殺生」の戒めに通じる理念を破棄することと公明党の国民投票法案の態度を重ね合わせて、公明党指導者の「不両舌」を公明党支持者たちは見抜いて欲しいです。「憲法9条は変えない。特に2項を変えることに反対」は私たちと同じです。言行を一致させて欲しいのです。