いせ九条の会

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戦傷精神障害元軍人・軍属の問題について/山崎孝

2006-09-07 | ご投稿
9月6・7日放送のNHK朝の連続ドラマ「純情きらり」は、主人公桜子の許婚達彦が戦死したと思われていたが、生還してくる場面がありました。7日には桜子と話し合いますが、いままでの関係のことを忘れてくれと告げ、家業の当主としての挨拶の席にも出ようとしませんでした。戦場の戦いで達彦が精神に打撃を受けたことを暗示する映像がありました。この物語は以前にも看護婦で有森家の二番目の姉杏子が看病する戦傷兵士が、戦場で精神に打撃を受けてすっかり勇ましい兵隊らしくなくなった息子を、兵士の父親が嘆く場面がありました。

このドラマの脚本を書いた浅野妙子さんは、「戦争の時代をじっくり描きました。それは、戦争というものが一瞬の悲劇では終わらず、その人の人生に何をもたらすかを、ちゃんと描きたかったからです。今の世の中の空気が。戦争になるかもというだけでなく、なってもやむをえないという方向に流されている気がします。あれは侵略じゃなかったとか、当時は、それが当然だったんだとか、感覚的に戦争する側に身を置いているような姿を描くことで、もし自分の家族や恋人が、こんな目にあったら、と考えて欲しい。戦争はあってはならない、命は大切なんだということを伝わったらと思います」と述べています。

NHK編集部には「平和こそ宝です」と感想を記した手紙が多数寄せられていて、視聴率も最新のドラマではトップとのことです。

先頭を切って、戦争になってもやむをえないという方向に日本を変えようとする政治家がいます。自民党総裁選では、安倍官房長官、麻生太郎外相も解釈変更による集団的自衛権行使の容認を、谷垣禎一財務相は改憲による容認を主張しています。9月5日、額賀防衛庁長官は都内での講演で、集団的自衛権の行使について「(自衛隊による)国際平和協力活動を推進していく上で必ず重なり合う部分が出てくる」と指摘。その上で、「最終的には憲法(を改定する中)で明確にするのが望ましいが、現実的に何か起きたときに憲法を守って国がつぶれるようなことがあってはならない」と述べ、自衛隊の海外派兵推進のために解釈変更による早期容認を目指すべきだとの考えを示しました。こんな政治家たちの口車に乗せられたら大変です。反論をしなければならないと思います。

戦傷精神障害元軍人・軍属の問題について、詳しく述べた清水寛氏の文章が、岩波の総合雑誌「世界」9月号に掲載されています。その中で、陸軍の場合は敗戦直後までの合計29,200人余りの戦傷病患者が入・退院し、その内の約10,450人余りが様々な精神障碍者である。海軍は「皇軍には頭のおかしい者などいないという信念の時代だったが、「戦争末期になると事情は違ってきた」という海軍の精神医療に従事した黒丸正四郎先生の話を紹介しています。

イラク帰還の自衛隊員、イラク帰還の米兵に起こった心的外傷後ストレス障害(PTSD)にもふれて、憲法改定で日本を戦争にする国にして“新たな戦傷障碍兵士”を作り出していく道へつながっていくのではないかと清水寛さんは懸念しています。

戦争に人生を奪われ、過酷な運命に遭遇して戦死してしまった人を哀悼ではなく尊祟する態度は人間らしいといえるでしょうか。政治に利用する意図が見えています。そして戦場から生還しても精神に打撃を受けて病気になってしまうこと、イラク帰還自衛隊員に自殺者が出ていることなど考慮をせず、再び日本人を戦場に駆り立てようとする政治家の考えを許してはならないと思います。