いせ九条の会

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恐怖の中では合理的選択はできない/山崎孝

2006-03-01 | ご投稿
前回、朝鮮半島と中台地域は、何れも基本的には平和的な手段で問題解決の方向を追求しています、と述べましたがこのことについて述べます。

韓国の指導者の考えを紹介します。

2月27日朝日新聞「風考計」で若宮啓文論説主幹は、韓国を訪問、与野党の政治家と会談して、次のような文章を書いています。

(前略)だが、「民族」は大事だとしても、自由や民主主義の価値観を共有する「同盟国」との関係をそれで揺るがしていいのか。朴槿恵氏(註 野党ハンナラ党党首)の批判は、実は日本人からの問いかけでもある。

植民地支配した日本には歴史問題で厳しいのに、朝鮮戦争の相手だった北朝鮮には甘すぎないか。同じ感覚を共有して韓流ドラマに沸く日本も、血の濃さにはかなわないのか。北は本当に核を放棄するだろうか……。

 そんな疑問に「日本や米国こそよく理解できない」と反論したのは、同じウリ党で議長を争っていた前保健福祉相の金槿泰氏だ。投獄暦では鄭氏をしのぐ筋金入りである。

 「米国や日本の助けを得て、韓国主導で北朝鮮を市場経済に巻き込んでいけば、やがて日米に友好的な政権も向こうにつくれるでしょう」

 「恐怖の中では合理的選択ができないもの。平和体制の保障と経済支援の見返りがあれば、核も解決できる」

 これは鄭氏にも共通する考え方だ。やや楽観的にも思えるが、北朝鮮といえども人間の社会であり、やり方次第で変えていけるという強い思い入れが見て取れる。(以下略)

2月22日、朝日新聞によりますと、韓国統一省は北朝鮮から要請のあった15万トンの肥料支援に応じる方針を決め、22日、北側に伝達した。(中略)

北朝鮮は1日、春の耕作期に必要だとして支援を打診。韓国政府は「農業生産を高めて北側住民の食糧難を緩和させるための人道的側面考慮した」として支援を決めた。韓国は昨年も春と秋に計35万トンを送った。(以上)

2月28日の朝日新聞は、開城工業団地のニュースを伝えています。(抜粋)

韓国が南北経済協力事業の一つとして北朝鮮・開城で進めている「開城工業団地」が27日、公開された。韓国人記者以外の外国人記者団に公開されたのは初めて。ソウルから車で1時間余り。軍事境界線のすぐ北側には、北朝鮮の安い労働力を利用した韓国企業の生産拠点が動き出していた。

 同工菜団地は、最南端の軍事要衝の一部を「開放」した北朝鮮の経済特区。韓国土地公社と現代峨山が造成し、一昨年末の操業開始以来、11企業で4300人の地元従業員が働く。売りは1人当たり毎月57・5ドル(約6700円)の低賃金。「中国に負けない兢争力」で進出企業を募る。

将来は66平キロの敷地に2千社、約70万人が働く大規模団地をつくる構想だ。(以上)

韓国の「恐怖の中では合理的選択ができないもの。平和体制の保障と経済支援の見返りがあれば、核も解決できる」という考えを系統的に実践しています。



中国は他国と協力を無くしては、国家の最大目的である経済を発展させることはできません。台湾政策で手荒なことを行なえば、中国に投資している華僑資本や外国資本は不安を感じて中国から逃げ出すでしょう。中国の台湾政策は融和的な政策を基本にしています。台湾人の中には、将来の仕事や商売に有利になるとの考えで、子どもを中国の学校に通わせる人が増えているとNHKの海外ニュースは伝えています。

2005年3月、中国は台湾独立の姿勢を強く示す陳水扁政権に対抗して「反国家分裂法」をという、台湾独立阻止には武力攻撃も辞さない法律を制定して、国際社会の評判を落としました。しかし、その後は宥和政策を際立たせ、台湾の野党の国民党主席や親民党主席を本土に招待し会談する。中台双方が春節に限定していた直行便を増便しました。

中国本土が「反国家分裂法」を制定したにもかかわらず、昨年12月の台湾の地方首長選挙では、民進党が政権党になって以降、汚職も影響して大型選挙での最大の敗北となった。中国との融和路線を強める国民党を意識して、最終盤では陳水扁総統らも対中政策を大きな争点として打ち出したが、不発に終わった。民進党と最大野党・国民党とも、大型選挙のこの地方選を2008年総統選の前哨戦とみなしていました。

2006年2月27日、陳水扁政権が「国家統一綱領」を終了させると表明しました。(2月28日の朝日新聞二つの記事より)

1991年に制定された統一綱領は、「民主や自由」について中台間で合意が得られれば統一に動くと定めている。現実には中国での民主化の達成には長期間が必要なため、統一を先送りする狙いも込められていた。だが綱領などの基本精神に「一つの中国」があり、中国側にとっては「台湾当局と中台統一を協議できる」と見なす根拠の一つとなっていた。

与党・民進党は昨年暮れの地方首長選挙で大敗するなど陳政権の求心力は衰えている。今回の表明には、2008年の次期総統選で民進党政権継続をめざすためにも政権の威信を回復する狙いがある。

この表明について台湾の野党国民党などは、27日、相次いで記者会見を開き「両岸(中台)関係を緊張させる政策」として強く抗議した。

台湾の最大野党国民党は、昨春、中国共産党との「歴史的な国共和解」を果たし、対中関係改善では陳政権はお株を奪われていました。(以上)

ブッシュ政権は陳政権の動きに対して、「一方的な現状変更には反対する」という声明を出しています。麻生外相が2月に福岡の講演の中で台湾を「国」と繰返したことが、ブッシュ政権の「一方的な現状変更には反対する」という立場と比べて、如何に日本の現職外相として軽率な発言であったかがわかります。また、朝日新聞の報道は、安倍官房長官は2月28日の記者会見で、「台湾は現状を変更する意思はないことを明確にしている。」方的に変更されることのないよう行動するとも述べており、その点で我が国と基本的な考え方は同じだ」と述べ、理解を示しだ。

 安倍氏はまた、「この間題は平和的に解決されるべきで、合意なしに(台湾の現状を)変更することはあってはならない。現状を平和裏に維持をしていくことが大切だ」と語った、とあります。日本は中国と国交回復を行なった時に、中国は一つという立場を表明しています。陳水扁政権の動きはこの一つの中国という現状に対する挑戦する動きです。論理をすり替えてこれに理解を示すことは、“我が国の基本的な考え方”ではありません。中国と新たな摩擦を生みかねない見解です。悪化している中国との関係を改善する気持ちがあるのか疑いたくなります。

米国は中台が軍事衝突をした場合は介入する可能性がありますが、現在は一つの中国の立場で、台湾政権が中国政府と対立するのを懸念しています。深刻なイラク問題を抱えていて、新たな火種まで抱えたくないというのが心境だと思います。

中国政府は、陳政権の動きに対しては非難を行ないましたが、対抗措置に出る動きは見せておりません。

中国政府は巧みな宥和政策として、台湾に住む人たちの歓心をかうために台湾にパンダを贈りたいと申し出て、子どもたちを喜ばしていますが、陳水扁政権は贈呈を受け入れるかどうかはわかりません。

国連は一つの中国という立場です。台湾と中国が将来どのような形になるにしても、平和的な共存関係を保つよう日本は努力すべきだと思います。中華圏との貿易が伸びている日本の利益に繋がります。

日中関係のニュースを毎日新聞電子版は次のように伝えています。

中国訪問中の二階俊博経済産業相は2月22日、北京で温家宝首相と会談した。温首相は小泉純一郎首相の靖国神社参拝について「日本の一部の指導者が日中の歴史を正しく理解することなく今日に至っていることを残念に思う」と改めて批判し、歴史問題では日本に譲歩しない姿勢を示した。

 中国首脳が日本の政府与党要人と会談に応じたのは昨年10月の小泉首相の靖国参拝後初めて。

 二階氏は同日、唐家セン国務委員(前外相)とも会談。唐国務委員から、東シナ海のガス田問題の次回政府間協議を3月上旬に北京で開催したいとの提案があり、日本側も受け入れた。

 二階氏は温首相との会談で「日本は日中友好・未来志向の精神にのっとって、日中の経済関係などの成功に全力で協力する」と答えた。これに対し、温首相は2008年の北京五輪や2010年の上海万博などへの日本企業の参加を歓迎する意向を表明し、歴史問題による日中関係の冷却化を経済分野に波及させるべきでないとの考えを示した。またガス田問題について「東シナ海を『平和の海』とし、係争を棚上げして協力することが重要だ」と強調した。

訪日を要請また、二階氏は温首相の訪日を要請した。

 温首相が日本の閣僚と中国国内で会談したのは1年10カ月ぶり。中国側には、小泉首相の9月退任を視野に、中国側と太いパイプを持つ二階氏との会談を通じ、小泉首相以外の日本の要人との対話を重視する姿勢を示す狙いがある。(以上)

このように中国は日本に対して原則的なことは譲らないが、突っ張ってばかりいるのではないようです。将来を展望して、2010年の上海万博も視野に入れた外交を行なっています。

しかし、日本の一部政治家は短絡的に中国の脅威を煽っています。日本が海外で武力行使・集団的自衛権行使できる憲法にするためには、軍事的緊張を高めた方が改憲の潮流にとっては有利からだと思います。

改憲派は集団的自衛権行使の問題を、武力の伴う国際貢献という擬態を使う可能性があります。これを日米軍事同盟の具体的な事例を参照して暴露しなければと思います。