いせ九条の会

「いせ九条の会」の投稿用ブログです(原稿募集中)。
会の趣旨に賛同される方、メールでご投稿ください。

安倍政権の二刀流 表看板=建前、裏看板=本音の二枚看板/山崎孝

2006-10-31 | ご投稿
【「核論議」発言 河野談話見直し、首相は「問題ない」で済むか】2006年10月30日付け「しんぶん赤旗」電子版

安倍政権の閣僚、与党幹部らから、「核保有」論議を容認したり、「従軍慰安婦」問題で旧日本軍の関与を認めた河野官房長官談話の見直しなど、従来の政府見解をくつがえす重大発言がとまりません。これらをただそうとしない安倍晋三首相の姿勢が問われています。

「核保有」問題では、麻生太郎外相が十九日以来、「言論封殺に加担するつもりはない」との発言を繰り返し、二十七日には非核三原則の堅持について「二十年後のことはだれも分からない」とまでのべました。発端をつくった中川昭一・自民党政調会長も「(核保有の)議論は大いにしないと(いけない)」「憲法でも核保有は禁じていない」との発言について、二十六日発売の週刊誌のインタビューで「撤回しません」と断言しています。

これに対し、安倍首相は「非核三原則は堅持する。政府内で(核保有を)議論することはない」とのべる一方、麻生発言について「議員個人が話すことは言論の自由だ」(十九日)と容認しています。

もう一つは、下村博文官房副長官の発言。二十五日の講演で、河野談話について「客観的に科学的な知識をもっと収集して考えるべきだ」と再検討を示唆しました。安倍首相は「河野談話を受け継いでいるのが政府の基本的な立場だ」とのべつつ、「議員個人の責任で言っているのだから、問題ない」(二十六日)と不問にしました。

しかし、政府の基本方針を否定する発言が出たならば、首相として放置できないはず。それを「議員個人の責任」だから「問題ない」などとするのは、政府の要職にある立場と議員個人の立場の使い分けを首相が許していることになります。

「核保有」論議や、河野談話見直しは、安倍首相自身がかつて主張していたことです。マスメディアから「(麻生発言は)安倍晋三首相と役割分担して『北朝鮮への脅し』に狙いがあったと見るのも可能だ」(「毎日」二十三日付)、「下村氏の発言は…『首相が言えないことを代わりに言っている』との見方もある」(「読売」二十七日付)との指摘も出ています。

ほんとうに、非核三原則を堅持し、河野談話も受け継ぐのなら、閣内不統一は許さない明快な対応をすることが必要です。(藤田 健)

★朝日新聞10月30日「窓」欄―論説委員部屋から【安倍政権の憲法感覚】中川自民党政調会長や麻生外相が、日本も核兵器の保有を「議論しておくのは大事だ」と繰り返し述べている。

政府や与党の要職にある人がこうした発言をすれば、国際社会に誤ったメッセージを送りかねない。きわめて不適切だ。

もうひとつ気になるのは、無法21条の言論の自由を引き合いに「議論することを止めるのは言論封殺だ」と、批判を封じ込めようとする麻生氏や安倍首相の言い分だ。

だが、その論理は逆立ちしている。

憲法が保障しているのは、国民の自由と権利が国家権力に侵されないということにほかならない。国家権力を行使する立場にある人が、どんな言動をしようと批判されない、ということではないのだ。

最近の政界では、こうした憲法をめぐる勘違い、あるいは曲解がまかり通る。

思い出されるのは小泉前首相が靖国参拝について、19条の思想・良心の自由を引用し、「どんな形で哀悼の誠を捧げるかは個人の自由だ」と正当化したことだ。

小泉路線を踏襲してもいいが、誤った憲法解釈まで引き継がれては困る。

そういえば、菅総務相がNHKの矩波ラジオ国際放送に対し「拉致問題を重点的に扱うよう命令したい」と明らかにした。

閣僚や党首脳らは言論の自由を盾にしながら、NHKの報道の自由には頓着しない。そう見られても仕方がない。

この程度の憲法感覚の安倍政権が、最重要課題として憲法改正を掲げる。その危うさを思わざるを得ない。(恵村順一郎)(以上)

二つの新聞が指摘した《「核保有」論議や、河野談話見直しは、安倍首相自身がかつて主張していたこと。マスメディアから「(麻生発言は)安倍晋三首相と役割分担して『北朝鮮への脅し』に狙いがあったと見るのも可能だ」(「毎日」二十三日付)、「下村氏の発言は…『首相が言えないことを代わりに言っている』との見方もある」(「読売」二十七日付)》は、的を射た指摘だと思います。

下村博文官房副長官が、河野談話について「客観的に科学的な知識をもっと収集して考えるべきだ」と述べるのは、日本の負の史実を述べることを自虐史観と批判の人たちは、従軍慰安婦は強制されたケースばかりではないという考えと同じです。仮に強制されたケースばかりでないとしても、日本軍が関与していた重要な側面は否定できず、従軍慰安婦問題の性格は変わりません。以前に軍隊で従軍慰安婦に関する事務をとった人の証言が新聞に載っていました。

「窓」欄の恵村順一郎さんの《憲法が保障しているのは、国民の自由と権利が国家権力に侵されないということにほかならない。国家権力を行使する立場にある人が、どんな言動をしようと批判されない、ということではないのだ》の主張は、言論の封殺をするなと主張する政治家への的を射た主張だと思います。政権党の要職にある政治家は特別に「国家権力を行使する立場にある」、「政府の公式見解に拘束される立場」という法律上の自分の置かれた立場を認識できないでいます。