伊佐子のPetit Diary

何についても何の素養もない伊佐子の手前勝手な言いたい放題

竹内栖鳳展

2023年11月16日 | 展覧会・絵


京都市京セラ美術館で開かれている
「竹内栖鳳 破壊と創生のエネルギー」展へ行って来た。

竹内栖鳳は京都ではおなじみの日本画家である。
祇園祭の「孟宗山」の見送り、
「孟宗竹藪林図」を肉筆で描いたことでも知られている。
祇園祭で毎年お披露目されるので、
あの絹地に墨で描かれた孟宗竹の迫力を直接見ることが出来た。
(近年では原画をもとに綴れ織りの見送りに変更されている)


また東本願寺前の噴水も栖鳳のデザインである。

東本願寺の御影堂門の天井画を依頼され、
膨大な天女図などの下絵やスケッチを描いたが、
天井画は様々な理由で完成されなかった。
今回の京都市京セラ美術館での展覧会でも、
東本願寺・御影堂門のための天女図のスケッチは公開されていた。


そんなわけで京都にゆかりのあるというか、京都画壇の代表であり、
巨匠である竹内栖鳳の大規模回顧展が開かれるというので、
このチャンスに是非見たいと思い、足を運んだ。




京都市京セラ美術館
https://kyotocity-kyocera.museum/

https://kyotocity-kyocera.museum/exhibition/20231007-20231203
京都市美術館開館90周年記念展
竹内栖鳳 破壊と創生のエネルギー
2023年10月7日-2023年12月3日






竹内栖鳳(1864―1942)は京都で生まれ、
日本画家・幸野楳嶺に師事して日本画を学び、
のちヨーロッパを訪れパリ万博や欧州を視察した。
(当時の京都市や京都府、政府の意向があったという)

その時のヨーロッパ旅行において西洋絵画に影響を受け、
日本画に西洋画の技法を取り入れ、
硬直していた日本絵画に革新的な画風を確立していったという。


写生を重要視し、これまでの日本画における狩野派のような、
手本をまねび、それを踏襲するだけが画業なのではなく、
自分の目で見た対象そのものを忠実に写し取ることを旨とした。

動物を多く描いていて、虎やライオン、雀、猫、そして烏など、
大量の動物画が展示されていた。

栖鳳の画法はとても迫力があり、
屏風絵もかなり大型のものばかりで、
大画面に描かれた虎やライオンがものすごい迫力で迫って来る。






ライオン(獅子)も鋭い目や毛並みなどが緻密に丁寧に描かれ、
まるでその対象の内面や性格まで手に取るように分かるかのようだった。
獅子の孤高の姿に気品さえ感じられたり、
虎は若々しい獰猛さや、野生の鋭さなどか写し取られている。




欧州に視察に行った時に見たと思われるローマ遺跡を描いた、
「羅馬遺跡図」は新発見のものだということだ。
ターナー的な静謐さがあって、西洋的でありつつ、
日本画としても成り立っていて不思議な感覚になった。


栖鳳は西洋の写実的な技法も学びつつ、
日本絵画を従来の枠にとらわれない自由な表現で革新していったのだ。


殆どの作品は写真撮影禁止だったが、4点のみ撮影可能だった。
そのひとつが「絵になる最初」(1913年)で、
重要文化財に指定されている作品だった。


モデルの女性が着物を脱ぎ、ヌードになる寸前に恥じらう様子を描いている。
頬が少し桜色に染まっているのがいじらしく感じられ、
顔を隠そうとしている手の表情が指先一本一本まで繊細に描かれ、
モデルの恥じらいを上品に表現していた。

画面の大半を占める着物の柄はモダンで印象的で、表情さえ感じられる。
下に伸びた帯の柄も効果的に描かれている。
背景に描かれている障子の模様には、
まるで浮き出ているようなレリーフ柄が描かれていて、
画面を華やかにしていた。



下絵も撮影可能だった。
太い線で描かれていて、本作の繊細さとは違う力強い描線だ。




もうひとつ撮影可能だったのは虎図で、
対になった屏風絵だった。
大型の屏風絵でこれも迫力があった。
日本画独自の繊細な線描で、忠実な写生で虎の生態を正確に描いていた。
獰猛というより、どこか品格の感じられる虎だった。




下絵も公開されていた。
同じ大きさの屏風に単色で描かれていて、
単色だけにこれも迫力満点だった。



栖鳳以前は虎や獅子(ライオン)は日本画では
想像で描かれることも多かったというが、
栖鳳においてはじめて、
生きているかのように実物に忠実に描かれるようになったという。
日本画という決まりごとや制約の多い画法で、
それはやはり革新的な技法だった。

しかし栖鳳は初期には狩野派や四条派などの伝統的な技法も学んでいた。
日本画の基礎があるからこそ、革新も可能だった。
基礎が大事なことを改めて感じた。


また栖鳳は川魚料理屋の生まれだったそうで、
そのせいで鯖や鰹などの鮮魚も多く描いていた。
とても律儀でリアルすぎるくらいだった。
動物も鶏や兎などは自分の家の庭で飼い、それを写生したそうだ。
徹底して写実に拘った栖鳳らしいエピソードだ。

他にも雀や烏の絵も沢山あった。
猿、兎、やはり動物の絵が圧倒的に多い。
兎は可愛らしくというよりひたすらリアルに捉えていた。




全体を見て、とてもダイナミックな画風だった。
そして描かれた動物に品格がある。
写実を通して動物の内面にまで迫ろうとしたかのような、
その作風のせいなのかなと思った。



最後に可愛らしい犬の絵があった。
「清閑」と名付けられた絵で、これも対象に忠実に写生したと分かるが、
これだけはまどろむ仔犬の絵にこちらも少し安らかな気持ちになった。



美術館の中庭は東山を背景に、少し木の葉が色づいていた。
よい環境の中で写生に力を尽くした栖鳳の作品を見ることが出来て、
些かせわしない気持ちでいた心が少し潤うような気がした。


(絵は撮影可能だったもの以外は公式Xより引用)



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