伊佐子のPetit Diary

何についても何の素養もない伊佐子の手前勝手な言いたい放題

シネマ歌舞伎・桜姫東文章下の巻

2022年05月07日 | 演劇・ミュージカル
シネマ歌舞伎、「桜姫東文章」の下の巻を見に行った。

京都・新京極三条下ルのMOVIX京都で上映していた。


片岡仁左衛門と坂東玉三郎の共演で話題を呼んだ舞台なので、
映画館でいいからぜひとも見たかったのだ。
前半(上の巻)を見たので、今回の後半の下の巻も見に行った。
(5月12日まで)



MOVIX京都
https://www.smt-cinema.com/site/kyoto/movie/detail/?cinemaid=T0026980&mo=35892&type=0




連休中に行ったからか、前半(上の巻)の時より空いていた。

上の巻が4月に公開されていたので、
今回の下の巻では上の巻のあらすじも最初に紹介していた。
(そうだろうと思っていた)

そして映画館でのみ、2回とも片岡仁左衛門と坂東玉三郎の解説がつく。
解説というか、インタビュー。
冒頭に二人のインタビューが流されるのだ。
映画館のみの贅沢な試み。


仁左衛門がこの戯曲は玉三郎のために書かれたもののように思う、
と嬉しい言葉を言っていた。

玉三郎は自分は(舞台の間)休む時間があるが、
仁左衛門さんは清玄と権助の二役なので出ずっぱりで
大変だと思うと言っていた。


僧・清玄は稚児の白菊丸と道ならぬ恋に落ち、心中を図る。
しかし清玄は死にきれず、生き残ってしまった。

17年ののち、高僧となった清玄の前に現れた吉田屋の桜姫。
桜姫は色々な理由から出家しようとしていた。
清玄は彼女が白菊丸の生まれ変わりと知る。

清玄は美しい桜姫に執着し、落ちぶれてしまう。
さらに心無い者に殺されてしまう。


一方、桜姫はかつて自分を犯し、子供まで作らせた相手、
ならず者の権助が忘れられない。
偶然、再会して権助に身を任す姫…。


権助は桜姫を女郎に売り飛ばすが、桜姫は図太かった。
権助との底辺の生活にもいつの間にか馴染んでいるのだ。


この桜姫の特異なキャラクター…、
よく考えると性悪なキャラかもしれないのだが、
玉三郎が演じると、嫌味より可憐さや美しさが際立っていて、
女郎に身を落としてからも何となく背伸び感があるというか、
憎めないというか、どこかに上品さが残っている。
玉三郎の類い稀な美しさがそう感じさせるのだ。

そうでなくば原作者の意図通りにならないだろう。


布団を敷いて権助とじゃれあう場面は名場面である。

二人の名優がぴったりの息で演じていて、見ていて快感すら感じる。







女郎に身を落とした桜姫だが、
彼女の周りに不気味な火の玉のようなものが現れると噂になり、
権助のもとに返される。


不慮の死を遂げた清玄が、幽霊となってまでも桜姫に憑りついていたのだ。

清玄から権助の正体を聞かされた桜姫は、
権助に酒を勧めて酔い潰し、真相を探ろうとする。



仁左衛門の、だんだんに酔い潰れてゆくだらしのない演技が
あまりにもリアルで、本当に酔っているのでは?とすら思ったくらいだ。

歌舞伎という様式的な芝居であるのに、
セリフも歌舞伎独特の言い回しであるのに、
二人の演技にはリアリティがあり、思わず引き込まれてしまう。

今まさにここでドラマが繰り広げられているかのような生々しさがある。


仁左衛門と玉三郎という、
二人の人間国宝同士の至芸というに相応しい見事な演技だった。



権助は実は桜姫の家の吉田屋の家宝を奪い、
当主を殺した桜姫の家の仇であることが発覚する。

桜姫が酔い潰れた権助から証拠を見つけたのである。


あれほど権助を恋い慕っていた桜姫ではあったが、
やはり桜姫は一筋縄ではいかない姫だった。

お家の仇、と権助をその手にかけるのである。


桜姫の強かさが際立ち、鶴屋南北らしい退廃的な戯曲でもあった。



それにしても話があらぬ方向へとどんどん転がってゆく脚本もさることながら、
それを二人芝居で見せてゆく仁左衛門・玉三郎のコンビの演技に、
あらためて見とれるばかりのシネマ歌舞伎だった。


この仁左・玉コンビをリアルタイムで見られることはこれこそ眼福で、
現代の贅沢であり、幸せなのだとつくづく感じ入ったことである。




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