一風斎の趣味的生活/もっと活字を!

新刊、旧刊とりまぜて
読んだ本の書評をお送りいたします。
活字中毒者のアナタのためのブログです。

「彰義隊」史料の少なさについて

2007-10-15 02:53:32 | History
敗者の側の歴史史料は、どうしても少なくなるようです。
原因にはいくつかあって、一つは勝者の側が史料を抹殺すること。近代では抹殺とまでいかないまでも、刊行しにくい状況を作り出すこともあります。
もう一つは、敗者の側が史料を隠匿/隠蔽すること。公にはできないような状況/雰囲気が勝者によって醸成されてしまう。

ですから、一時は新選組に関する史料などは、めったにお目にかかることもなかったんですが、近年の人気の上昇によって、多少は増えてきている。ただし、それでも一級史料は少なく、研究書が多いといったことはあります。
それに、子孫(例えば子母沢寛など)の努力によって、生き残りの証言も残されています。

一方、これが彰義隊に関する史料となると、まことに少ない。
もっとも、小生、歴史研究者ではなく、彰義隊関係の小説を書こうとしているだけなので、もっと多くのものがあるかもしれません。
ですから、挙げられていない史料をご存知の方がいらっしゃったら、ぜひご教示いただきたいものです。

基本となるものには、次のものがあります。

山崎有信『彰義隊戦史』(明治43年刊)は、基本中の基本。
この著には、天野八郎の『斃休録』や丸毛靭負の『彰義隊戦争実歴鈔』などの戦争参加者の書いた文章が、資料編として収められているので大変役に立ちます。

また、幕臣の側からの証言としては、
戸川残花(安宅)編、雑誌「旧幕府」(明治30年4月第1巻第1号)~明治34年8月第5巻第7号)
に収録されているものも有益です。
その他、篠田鉱造『幕末百話』にも二、三の幕臣の証言がありますが、何分にも分量が少な過ぎる(ただし、当事者ではないと分らない細部が証言されていて、これはこれでリアリティがあります)。

東京日日新聞社会部編『戊辰物語』(万里閣書房、昭和3年)などもありますが、昭和に入っての刊行物は、やや確度が落ちると思われます。

戦後刊行されたものでは、加来耕三『真説 上野彰義隊』や森まゆみ『彰義隊遺文』などがありますが、小説を書く場合の史料としては、今一つ役に立たない憾みがあります(戦前の刊行物を元にしている傾向があるため)。

さて、ここで彰義隊ブームのようなもの(新選組における司馬遼太郎『燃えよ剣』をきっかけとした)が起ると、幾分は埋もれていた史料が出てくる可能性もあるのですが、如何なものでしょうか。

*彰義隊に参加した関宿藩士(万字隊といって、60人が参戦している。『関宿藩士人名録』による)や結城藩士(水心隊)などの史料は、どうなのでしょう。刊行されているのでしょうか。

最新の画像もっと見る