この手の批判本というのは、えてすると、「噛み付き」や「個人攻撃」「揚げ足取り」「八つ当たり」に陥り勝ちなのであるが、本書はまともに正面から向かい合って、しかも「四つ相撲」を組んでいるのがご立派。
というのも、それだけ近年の立花隆が、誰から見てもトンデモが入ってきているからか。
科学技術に関する「無知」(正しくは「誤った科学観」)は、『立花隆の無知蒙昧を衝く』(社会評論社刊)の著者佐藤進の談に詳しい。
この指摘は、本書「第3章 科学憑き、宇宙憑き」を通じて、遺伝子組み換え技術、環境ホルモン、脳・精神医学、宇宙開発などの分野に分けて、詳述されている。
特に、小生が興味深く読んだのは、科学技術社会論(STS: Science, Technology and Society) の立場からの見解(塚原東吾分担執筆部分)。
同様なことが、政治や社会に関する発言にも見られる、とするのが、本書「第2章 ジャーナリスト失格!」である。
特にオカルティズムとの接近については、立花氏を「近代主義者」と規定する宮崎哲弥の次のような指摘がある。
さて、このような真摯な態度で検証を行なっている本書ではあるが、「九仞の功を一気に欠く」大月隆寛の文章をシメにしているのは、いかなる理由によるものか。
この人、何を書くにしても、腰が引けているのが特徴。しかも、それを文章で誤魔化そうとするから、手に負えない。
本書でも、今まで述べられてきたことの本質が分っているのかどうか、うだうだと「物書き論」らしきものを書き連ね、最後に
という欠点があるものの、大部分の若手執筆者の部分は、反証データを入れるなどして、説得性がある(「思い込み」だけでは書いていない、ということ。ここでも立花は反面教師として生かされているのか)。
別冊宝島編集部 編
『立花隆「嘘八百」の研究』
宝島社文庫
定価:本体720円(税込)
ISBN4796627812
というのも、それだけ近年の立花隆が、誰から見てもトンデモが入ってきているからか。
「オウム事件にからみ、TVや週刊誌で吹聴した『公安スパイ潜入説』、酒鬼薔薇聖斗事件の『犯人二人説』。キレる子どもはすべて『環境ホルモン』の仕業発言。そして、時折顔を覗かせるオカルト趣味。九〇年代の後半ともなれば、かつて金権政治の実態をえぐった猜疑心は完全に消滅し、IT も含む科学技術の礼賛一辺倒になった。しかし、立花さんも興奮した『IT革命』はたんなるバブル現象で、世界は目下、その過剰な設備投資のダメージに蝕まれている。また、『遺伝子組み換え技術』にもエールを送ってきた立花さんだが、たとえば、遺伝子組み換え作物による生態系攪乱の危険性については、なぜか無視する――疑問は尽きないのだ。」(本書「文庫版のためのまえがき」より)
科学技術に関する「無知」(正しくは「誤った科学観」)は、『立花隆の無知蒙昧を衝く』(社会評論社刊)の著者佐藤進の談に詳しい。
「佐藤先生は、立花氏の一番の問題点を『科学万能主義』的な価値観だと指摘する。量子力学に対する『無知』など、個別の知識に関する『無知蒙昧』ももちろん大問題なのだが、その根っこにある立花氏の科学観にこそ、現代の病が映し出されていると言う。」
この指摘は、本書「第3章 科学憑き、宇宙憑き」を通じて、遺伝子組み換え技術、環境ホルモン、脳・精神医学、宇宙開発などの分野に分けて、詳述されている。
特に、小生が興味深く読んだのは、科学技術社会論(STS: Science, Technology and Society) の立場からの見解(塚原東吾分担執筆部分)。
「そこには、科学の社会的あり方を検討し、技術文明の暴走を批判的に考えるための素材を提供するという発想がまったくない。先端的な科学技術のあり方に懐疑を抱くよりも、彼はまずその成果に『感心』し、国家と権力の立場からこれを見てしまうのである。」
同様なことが、政治や社会に関する発言にも見られる、とするのが、本書「第2章 ジャーナリスト失格!」である。
特にオカルティズムとの接近については、立花氏を「近代主義者」と規定する宮崎哲弥の次のような指摘がある。
「彼は、この近代社会(制度のみならず、個的な自我をも含む)を究極的に基礎づけるものとして、『神』や『神秘』にとりわけ興味と関心を抱くわけです。
立花氏の『オカルティズム』や『ニューエイジ』への傾性は、このようなコンテクストの中で捉えなければなりません。」
さて、このような真摯な態度で検証を行なっている本書ではあるが、「九仞の功を一気に欠く」大月隆寛の文章をシメにしているのは、いかなる理由によるものか。
この人、何を書くにしても、腰が引けているのが特徴。しかも、それを文章で誤魔化そうとするから、手に負えない。
本書でも、今まで述べられてきたことの本質が分っているのかどうか、うだうだと「物書き論」らしきものを書き連ね、最後に
「ヘンかヘンじゃないか、ということで言えば、立花隆は初手からヘンなのです。で、ここも慌ててつけ加えなければならないのですが(引用者註・実に腰の引けて一節!)、それは活字の読み書きによって作り上げられた『個』というものが、世の大方にとって本質的にヘンである、というのと、おそらく同じことです。」と、一般論に逃げていく。
という欠点があるものの、大部分の若手執筆者の部分は、反証データを入れるなどして、説得性がある(「思い込み」だけでは書いていない、ということ。ここでも立花は反面教師として生かされているのか)。
別冊宝島編集部 編
『立花隆「嘘八百」の研究』
宝島社文庫
定価:本体720円(税込)
ISBN4796627812