一風斎の趣味的生活/もっと活字を!

新刊、旧刊とりまぜて
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人間のストーリー/プロット変換機能について(4)

2005-07-09 00:12:27 | Essay
前回は、如蔵尼(つまり「地蔵のような尼さん」というネーミングですな)という人物が、父親の名前が似ているということで、「将門の三女」となった、というところまでお話ししました。

当然、出家得度したのは、かなりの年齢になってからでしょうから、それでは尼になる前はどうだったのか、という方向に人びとの想像力が働きます。
「子どもの頃、父親の将門が死んで、その後、苦労したに違いない」
「いや、あんな恰好をしているが、実は父親の謀反の意志を、今でも引き継いでいるじゃあないか」
というような話があったかどうかは知りませんが、ともかく、そこでいろいろな説が出てくる。

これが将門の娘ということになったから、伝説が生まれるわけで、他の人だったらそうはならなかったでしょう。
というのも、将門自身についてさえ、
「身長は2メートル以上もあって、五体は鉄のように固く、左の眼には瞳が2つあった」
っていうんですから、これじゃあまるでロボットだ。まあ「鉄人(鉄身)伝説」という名前で分類されているんですから、まんざらロボットと関係がないわけじゃあない(もっとも、夜の町をガオッー、と叫んで歩き回ったりはしませんが(笑))。

また、面白いことに、将門には、古代ギリシアのアキレスと似た話もある。
アキレスは不死の体を持っていましたが、踵に弱点があった。
一方、将門は、鉄の体を持っていたが、こめかみが弱点だった。だから、将門は、矢にこめかみを射られて死んだ、とされている。
父親が、こんな人物(将門のお話を映画化するときには、ブラピでも呼んできましょうか)ですから、その娘も神秘性を帯びてくる。

いつごろの墓かは分りませんが、如蔵尼のものには、
「父の事業の再興をはかって失敗して出家した」
と彫られているそうです。
もう、この墓が出来た時点では、如蔵尼の俗世にいた頃のお話があった、ということになりますね。しかも、それが将門の謀反の陰謀と関連づけられていたんですなあ。

お話が次なるお話を生み、というところで、この続きは次回また。

*歌川国芳『相馬の古内裏』(部分)。左端が将門の娘。