一風斎の趣味的生活/もっと活字を!

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『福沢諭吉の真実』を読む。(1)

2005-07-27 00:03:01 | Book Review
「福沢諭吉の再評価をしてみようか……。」という一文を、さるブログに物したのが、まずは発端。

この文章で、小生は、比較文化学者の井田進也氏の「こころの風景」欄(「朝日新聞」3月16日夕刊)に書かれた記事を読んで、次のように記した。
韓国での福沢諭吉の評価は、すこぶる低い。伊藤博文ほどではないにしろ、『脱亜入欧』を唱え、隣国の悪友(当時の清国や朝鮮を指す)とは手を切るべきだ、と主張したといわれているからだ。
しかし、思想家としての福沢は、ほんとうに『脱亜論』一辺倒だったのだろうか。
井田氏は1996年に「文体と語彙による真偽判定法(井田メソッド)」(平山洋『福沢諭吉の真実』)を開発。その方法により「福沢が全編を執筆した」とされている論説の真偽が高い確度で行われるようになった。
その研究によれば、「侵略主義的傾向の強い論説ほど石河(一風斎註・幹明。福沢の弟子で『時事新報』の記者。後、大正版・昭和版『福沢諭吉全集』を編纂、『福沢諭吉伝』を執筆刊行した)たちの起稿によるものが多い」とのこと。こうなってくると、福沢のアジア観そのものが、通説とは異なってくる可能性も少なしとはいえない。


井田氏は続けて、
十九年間の後期著作は、ほとんどが『時事新報』(一風斎註・福沢創刊)紙上に発表されているから、その後単行本として刊行されたものを除けば、無慮六千篇といわれる無署名の論説(『脱亜論』もその一つ)中に(一風斎註・真の福沢原稿が)埋もれているといっていい
と言う。
つまり、『福沢諭吉全集』に載せられた、「時事新報」掲載記事の大部分が、福沢の真筆ではないことが明らかになってきたということだ。

そして、小生は、一文を、
やはり、明治の思想家や政治家は、現代の価値観で考えるほど、単純ではないようだ(中江兆民しかり、勝海舟しかり、西郷隆盛しかり)。
福沢諭吉の再評価のために、井田氏の『歴史とテクスト 西鶴から諭吉まで』でも読んでみようか。
と結んだ。

そのブログ記事に、本日紹介する『福沢諭吉の真実』の著者、平山洋氏よりコメントが寄せられた。
ぜひ、この本を読むようにというお勧めの文章である。

ここまでが、いわば「マクラ」。

本書の紹介は、次回で行おう。