ただの偶然なのですか

私のお気に入りと日々の感想  

映画「クラッシュ」の感想 (DVD)

2007年01月26日 | 映画
この世界には、善人も悪人もいない。
人は置かれた状況で、そのどちらにも成り得る。
そして、人々は、誰かと心から触れ合いたいと願っている。

でも現実は、誰かと触れ合うことができるなんて幻想かも…。
触れ合うどころか、激突してます…この映画の中では…。
車を運転中に軽く追突しても、話し合うどころか、
相手が悪いとワーワー怒鳴るだけ。
他人に対する不信と恐怖感のため、不安と苦悩の中で生きている。
そして、それを増長させているのが拳銃の存在だと感じました。
たとえ拳銃を使用するのが警官でも、それは同じこと。
恐怖や怒りが、即座に短絡的に、引き金を引くという行為に走らせる。
こんな不信と恐怖感が渦巻く世界では、とても暮らせません。
そして、人種差別…。
この映画には日本人は出てきませんでしたが、
もし日本人が差別的に描かれていたら、どのように感じたか…。
アメリカという、多種多様な人種が暮らす国のことは、そこで暮らしたことのない私には、その背景にあるものを理解し難い部分があるので、安易に語ることのできない複雑な心情がありそうです。
もちろん日本にも、無知無理解からくる偏見や不信感や他人に対する恐怖はあると思います。
そして、そんな不信と恐怖に満ちた世界は、決して他人事ではないということ…。
人々の暮らしは、どこかで繋がっていて、疎外感や不公平感が怒りの感情となって、ある日突然、自分に向けられることもあるのです。

この映画の中の人々は、お互いに触れ合いたいと願っていても触れ合えず、
それでも誰かと触れ合うことを渇望している…。
そして、それは私も同じです。

この映画を観て、私は感動はしませんでした。
ラストの方では、希望的な描かれ方をしている部分もありましたが、
なんだろう…この感じは…無力感?虚無感?…釈然としないです。

監督は、ポール・ハギス監督。
『ミリオンダラー・ベイビー』の脚本を書いた方です。
『ミリオンダラー・ベイビー』は、私の中では、
「感動したけど後味の悪い映画」ベスト3に入っています。
(ちなみに他の2作品は『ダンサー・イン・ザ・ダーク』と
『グラディエーター』です。)
そして、またもう一つ、『クラッシュ』も、後々まで考えさせられる作品になってしまいました。