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長寿遺伝子「サーチュイン」を活性化させるには?疾患予防でも注目 202206

2022-06-02 19:19:26 | なるほど  ふぅ〜ん

長寿遺伝子「サーチュイン」を活性化させるには?疾患予防でも注目【医師が解説】
 幻冬社ゴールドオンライン より 220602  小西 康弘,藤井 祐介


 近年、「老化」とは、遺伝子を取り巻く環境要因(エピゲノム)が劣化して起こる現象であることが分かってきました。
 つまり、エピゲノムがどのような影響を受けているのかを明らかにし、劣化しないようにコントロールできれば、老化はある程度コントロールできるということです。
 老化のコントロールは慢性疾患の発症リスクを低減するカギでもあります。
 今回は、エピゲノムがどのように調節・維持されているのか、劣化を防ぐためにはどうすればいいのかを見ていきましょう。
※本稿は、小西統合医療内科院長・小西康弘医師並びに株式会社イームス代表取締役社長・藤井祐介氏との共同執筆によるものです。

⚫︎老化の原因、「エピゲノムの劣化」を防ぐには?
 最近、老化を決めているのは遺伝子の障害ではなく、遺伝子の周囲を取り囲んでいる環境要因(エピゲノム)の劣化であることが分かってきました。

 遺伝子はデジタル情報ですので容易には変わりませんが、エピゲノムはアナログ情報なので環境に応じて変わることができます。
 融通が利くとも言えますが、逆に環境の乱れによりエピゲノムが劣化するとも言えます。これが老化の原因であると最近になって分かってきたのです。

 今回は、このエピゲノムがどのように調節・維持されているのか、劣化を防ぐためにはどうすればいいのかということについてお話ししていきましょう。

■NHKの特集でも取り上げられた「サーチュイン遺伝子」
 サーチュイン遺伝子というのがあります。別名「長寿遺伝子」とも言われ、こちらのほうが聞かれたことがあるかもしれません。
 正確に言えば、サーチュイン遺伝子は長寿遺伝子の中の一つです。では、サーチュイン遺伝子とは一体どういう働きをするのでしょうか?

 遺伝子(ゲノム)というのは、タンパク質の構造を記録した設計図のようなものです。サーチュイン遺伝子には、「サーチュイン酵素」というタンパク質の設計図が記録されています。
 このサーチュイン酵素も他の酵素と同じように身体の中の化学反応を助ける働きがあります。そして、エピゲノムが劣化するのを防ぐ働きがあるのです。

 エピゲノムというのは、遺伝子を取り巻く環境のことを言います。どのタイミングで遺伝子のスイッチがオンになったり、オフになったりをするかを決めているのがエピゲノムです。エピゲノムが劣化すると、正しいタイミングでスイッチがオン、オフされなくなってくるわけです。

 分かりやすく例を挙げましょう。一個の受精卵が分化してカエルになる場合を考えてください。どのタイミングで尻尾が生えるか、手足が生えるか、尻尾が退化するか、はすべてエピゲノムによって決められています。尻尾や手足になるのに必要なタンパク質の設計図は遺伝子に書かれていますが、設計図が読み取られるタイミングを決めているのはその周りの環境のエピゲノムということです。

 そして、この設計図が読み取られるタイミングが、何らかの原因でずれた場合、尻尾が生える前に手足が生えてくるということが起こるかもしれません。これは極端な場合ですが、もっと小さな読み取りエラーが積み重なることで、老化は進みやすくなるのです。

■単なる「寿命を延ばすための遺伝子」ではない
 サーチュイン遺伝子からできるサーチュイン酵素というタンパク質は、エピゲノムが劣化しないように見回っています。サーチュイン酵素にはエピゲノムの劣化を防ぐ以外にも、障害を受けた遺伝子を修復したり、身体の慢性炎症を抑えたりする働きもあります。まるで、総合防災センターのような役割を果たしています。

 もしここで、外的な影響で遺伝子の障害が多く起こったり、身体に慢性炎症が起こったりするとどうなるでしょうか?

 サーチュイン酵素は障害を受けた遺伝子の現場や炎症が起こっている現場に駆けつけます。このこと自体は、身体のバランス(ホメオスターシス)を維持する上で非常に重要なことです。
 しかしそうすると、これまでエピゲノムが劣化しないように見張りをしていたサーチュイン酵素が「人手不足」に陥ることになります。

 サーチュイン酵素が、DNA損傷の修復や慢性炎症を抑えるために持ち場である遺伝子の周囲から離れると、その位置にあった遺伝子のスイッチが、オンになるべきなのにオフになったり、オフになるべきなのにオンになったりするように、遺伝子が読み取られるタイミングがずれ始めるのです。

 これを学校の教室に例えると、周囲のクラスがうるさくて、それを注意しに行って先生が不在になってしまうと、そのクラスまでうるさくなるということです。

⚫︎長寿遺伝子の活性化には「適度なストレス」が必要
 サーチュイン遺伝子は、単に寿命を延ばすための遺伝子ではなく、身体の中のバランスを整えるために非常に重要な、そして多彩な役割を果たしているということが分かっていただけたと思います。

 サーチュイン遺伝子からできたサーチュイン酵素が、エビゲノムを維持するという本来の役割を果たすためには、身体に慢性炎症を起こさないようにし、遺伝子の傷害の原因になる環境毒素や放射線などを避けることが重要であることは言うまでもありません。

 それ以外に、サーチュイン遺伝子のスイッチをオンにするために有効な方法があるのかについて見ていくことにしましょう。

 そのためには、身体に適度なストレスをかけることが必要です。なぜなら、長寿遺伝子はストレスのかかった環境を生き残るために保持されてきた遺伝子だからです。

 身体の健康な機能を高めるために適度なストレスを与えることを「ホルミシス」と言います。

 具体的には適度な運動や時々絶食をすること、高温や低温に身をさらす(サウナ)ことなどがあります。このような適度な刺激を与えることで、身体はそのストレスに打ち勝とうとし、悪化した環境を生き抜こうとしてサーチュイン遺伝子をオンにするのです。 
 ちょうど、高地マラソンでマラソンランナーが低酸素状態で走り込むのに似ていますね。

■ワクチンやポリフェノールの作用も「ホルミシス」の一種
 大量に摂れば身体に有害な毒も、少量であれば身体にとって益になることがあるというのがホルミシスの基本的な考え方です。
 適度なストレスを与えることによって、ストレスに対しての対抗力、抵抗力が備わるのです。

 ワクチンは、毒性を弱めた抗原物質を注射することで、免疫系を刺激して抗体を作ろうという方法なので、ホルミシスの一種であるということができます。適度な抗原刺激は免疫力を高めることが分かっています。

 また、抗酸化物質と言われるフィトケミカルは、身体の中の活性酸素を消去するということで知られていますが、実際に摂れるフィトケミカルの量は抗酸化作用を発揮するには少ないということが分かってきました。

 たとえばフィトケミカルの代表としては、ワインに含まれるポリフェノールが有名です。ポリフェノールは抗酸化物質の代表的な物質であると思っておられる方も多いのではないでしょうか。
 しかし、通常飲む程度の量のワインに含まれているポリフェノールだけでは、身体の酸化した状態を改善するのに十分な抗酸化力はないのです。ポリフェノールの作用も、実はホルミシスの一つであるというと驚かれる方も多いのではないでしょうか?

 フィトケミカルは、本来は私たちの身体にとっては「毒」の作用を有している化学物質です。それを少量摂ることで、ホルミシスの作用が働き、身体の抵抗力を上げるということなのです。

 腸内の悪玉菌も、実は少量だけ腸内にあることで免疫力を刺激し、次に大量の悪玉菌が侵入してきたときに備えて腸管免疫を調節しています。これも広い意味でのホルミシスであると言えるでしょう。

 このようにホルミシスは私たちの健康を維持する上で色々な面で作用しています。そして、ホルミシス的な刺激を適度に加えることが、長寿遺伝子のスイッチを入れることになるのです。

⚫︎サーチュイン遺伝子のスイッチをオンにする方法
 では、具体的に長寿遺伝子のスイッチをオンにするのに有用であると言われている方法を見ていくことにしましょう。

【1. カロリー制限をする】
 現代は飽食の時代と言われ、肥満人口が年々増加の一途をたどっています。動物実験のレベルですが、ある程度の飢餓状態を作ってやることによって、サーチュイン遺伝子がオンになると言われています。

 アカゲザルでの実験ですが、自由に食事を摂らせた場合と25〜30%のカロリー制限をした場合とでは、カロリー制限をしたグループで長寿遺伝子がスイッチオンになり、平均寿命が伸びたという実験報告があります。

 ヒトでの実験でこのような比較試験はありませんが、1日1~2食にしたり、1日に食べる量を減らしたりなど、ある程度のカロリー制限をすることによって、体重、血圧、コレステロールの値が下がるということは分かっています。
 糖尿病、高血圧などの動脈硬化性疾患のリスク因子がある人は20〜25%程度のカロリー制限をしたほうがいいことには科学的な根拠があります。

 ただし、非肥満者で動脈硬化のリスクがない人がカロリー制限をしたら寿命が伸びるのかどうかについての結果は出ていません。ヒトではまだきっちりとしたデータは出ていないのです。

 ちなみに、ここでお話ししているのはカロリー制限をすることで、長寿遺伝子のスイッチがオンになり、寿命が伸びるかどうかということについてです。
 ダイエットの話ではありません。欧米での大規模研究では、カロリー制限するだけでは体重は減らないことが分かっています。普通に摂取カロリーを減らしただけでは、基礎代謝が下がるだけで、体重減少にまで繋がらないのです。
 肥満率は食物繊維の摂取量に反比例することが分かっています。ダイエットをするためには、食物繊維の摂取量を増やすことが大きなポイントになります。

 実は、長寿遺伝子のスイッチをオンにするためには、カロリー制限をするよりもずっと効果的な方法があることが分かってきました。それは、間欠的に断食(ファスティング)をすることです。

 たとえば、最近の流行りのファスティング法として16時間絶食法というのを聞かれた方もおられると思います。
 夕食を20時までに食べて、それ以後は翌日の昼まで何も食べないという方法です。
 昼食から夕食まで(12時から20時まで)の間は何を食べてもいいということになっています。
 このようにプチ飢餓状態を作ってやることで、長寿遺伝子のスイッチがオンになるという報告があります。

 さらに16時間ファスティングでは、その間タンパク質を摂らないので、自分自身の身体の老朽化したタンパク質を分解して、新しく作るための材料にしようという機序が働きます。
 これはオートファジーと言われ、身体の中のタンパク質代謝を促進し、細胞の老化を防ぐ作用があると言われています。

 確かに論理的には非常に魅力的なのですが、ヒトにおけるこれらのエビデンスはまだありません。
 ヒトにおいても同様であるとは言い切れないので、試す際には自己責任で行ってください。

【2. 運動して汗をかく】
 適度な運動は、ホルミシスの代表と言ってもいいかもしれません。

 適度の運動が健康に良いということは誰も異論はないと思いますが、どうして健康に良いのかと尋ねられると、答えに窮するのではないでしょうか。
 実は、運動は身体に活性酸素を発生させます。そして、その活性酸素を身体から除去しようとして、身体の防御システムが働くことが分かっています。この適度なストレスが、長寿遺伝子の働きを正しい方向に働かせるようになるのです。

 毎日15分足らずのランニングで週に6~8キロ走るだけでも、心臓発作で命を落とすリスクが45%減り、全死因死亡率が30%下がることが示されています。

 このことからも、いくら運動が身体に良いからといって、過度にやると、発生した活性酸素が処理しきれずに、身体を酸化させてしまいます。
 どんなにいいことでもやり過ぎは禁物ということです。

【3. 快適ではない温度に身体をさらす(低温環境やサウナなど)】
 長寿遺伝子を働かせるには、快適とはいえない温度に身をさらすのも一つの有効な手段であることが分かっています。
 特に低温に身体をさらすことで、ミトコンドリアのエネルギー産性能が活性化されます。
 だからといって、寒い地方に住む人の寿命が、暖かいところに住む人よりも長いということを示すデータはありません。
 重要なのは、限られた時間、低温環境に身をさらすということです。

 フィンランド東部に住む中年男性2300人余りを約20年にわたって追跡調査した研究があります。
 ご存じの通り、フィンランドの人はサウナに入った後に、冷たい外気に身体をさらします。身体を温めた後に急激に寒冷刺激を与えることが、身体にとって適度な刺激になると考えられます。被験者のうち、極めて頻繁にサウナを利用する人(最高で週に7回)は週1回の人より、心疾患の発症率や、心臓発作で命を落とす件数、さらには全死因死亡率がおよそ2分の1になるという結果でした。
 どうやらサウナは、慢性疾患の発症には予防的効果があるようです。

 ただ、この研究は病気の発症リスクは抑えられたということを示すもので、「老化を予防する」ということにはならないことに注意する必要はあります。

 一方では、高温での刺激がサーチュイン遺伝子にプラスの影響を与えるかどうかについては、低温刺激ほどはっきりはしていません。
 サウナファンには少し残念な結果かもしれませんが、現在のところ、高温がサーチュイン遺伝子を活性化するかもしれないというレベルで、まだエビデンスが不足しています。

■「適度な刺激」と「適切なタイミングでのオン・オフ」が重要
 以上見てきたように、適度な刺激を適切に与えることは、身体の回復力(ホメオスタシス)を刺激し、長寿遺伝子のスイッチをオンにする可能性があると言われています。
 このときに重要なポイントは、①適度な刺激を与えるということと、②適切なタイミングでオン、オフにするということです。

①については「過ぎたるは及ばざるがごとし」ということです。
②については、たとえカロリー制限がいいからと、ずっと飢餓状態にしていてもスイッチは入りません。制限するタイミングと、制限を解除するタイミングをうまく組み合わせることが重要です。
 運動や低温刺激も、身体にいいからといってやり過ぎはかえって身体を痛めるという結果になります。

 ただし「ヒトに有効かどうか」は研究中のものも多い
 以上、サーチュイン遺伝子の働きと、その働きを高めるために有用であると考えられることについて説明してきました。
 そのためには、ホルミシスの作用が重要であることも分かっていただけたと思います。

 ただこれらの研究結果は動物実験レベルでのことも多く、本当にヒトが長生きするためにはどういう条件を満たすことが一番重要なのかについては、まだ分かっていないことも多いということは知っておく必要があります。
 実験動物などと比べるとヒトの寿命自体が長いので、その寿命が伸びたかどうかを確かめることが非常に困難なためです。

 では、視点を変えて、長寿な人はどのような条件を満たしているのかを知ることは、有力な参考になるかもしれません。
 次回は、センテナリアンと呼ばれる100歳長寿者の研究について見ていくことにしましょう。


⚫︎小西 康弘
医療法人全人会 小西統合医療内科 院長
総合内科専門医、医学博士
⚫︎藤井 祐介
株式会社イームス 代表取締役社長
メタジェニックス株式会社 取締役
株式会社MSS 製品開発最高責任者
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テレビ業界「視聴率低下」よりも深刻な問題…じつは「CMの劣化」が危機を加速している 202206

2022-06-02 19:07:19 | 気になる モノ・コト

テレビ業界「視聴率低下」よりも深刻な問題…じつは「CMの劣化」が危機を加速している
 現代ビジネス より 220602   結城 豊弘


・Tverの「生配信」でテレビの終わりが始まるのか?…業界が迎える「厳しい現実」

⚫︎CMはテレビ局にとって「死活問題」
「民放のテレビ番組が、テレビコマーシャルで成り立っていることを知らない人はいないはず」。そう思っているのは、業界人だけかもしれない。

 CMも番組の一部と思っている人もなかにはいるし、そんなことすらも考えずに、テレビを見ている人が大半の様に思う。テレビにとってCMは無くてはならない存在である。
 その形の変化が、実はテレビ番組そのものに大きな影を落としていることを、是非とも理解して欲しい。

 日テレが失速したのは、「あの番組の打ち切り」が原因かもしれない

 テレビを見ていると、地上波放送であれ、衛星放送であれ、あるいはスマホで見るYouTube動画であれ、見逃し配信のTVerであれ、全ての番組において、商品や企業を宣伝するなんらかのテレビコマーシャル、いわゆるCMが流れる。

「なんで番組の途中のこんな良いところで、CMを流すんだ。気持ちが切れる」「やたらと同じCMが流れすぎだ」と不快に思う方や、一方で「なかなか良く出来たCMだね」と心を奪われる方、「番組のトイレタイムと割り切っている」という方もいる。

 受信料を徴収しているNHKや動画配信サービスVOD(ビデオ・オン・デマンド)を除き、ほとんどのテレビ番組が、CMをベースに制作されている。
 なぜならテレビ番組は、CMを提供するスポンサーからの広告費を収入源として成立しているからだ。

 日本のテレビCMの元祖は、1953年(昭和28年)8月28日の日本テレビの放送開始とともに流れた。
 精工舎(現在のセイコーホールディングス株式会社)のもので、ニワトリが時計のゼンマイを巻き、同時に時報が告げられた。
 参考にしたアメリカのテレビの放送が始まったのは、1941年(昭和 16年)日本に先駆けること12年も前の話だ。アメリカのテレビでも盛んにCMが流されていたのだった。

 その後、日本では、テレビの普及と高度経済成長とともに、CMは大きく膨れていき、そこから多くの流行語も生まれていった。

⚫︎業界に激震が走った報告
 社会現象や流行までをもテレビCMが牽引したのだった。「スカッとさわやかコカコーラ」「おーモーレツ」「あたり前田のクラッカー」など、当時のCMのキャッチコピーは、今でも”オヤジギャグ”のベースとして記憶に残るセリフだ。

 当時はテレビCMは単なる商品の宣伝では無く、社会に対して大きなメッセージを発信する媒体として認知され、様々な企業が広告を発信していくようになり、巨大成長していった。それはテレビ番組の隆盛と一致していた。

 テレビCMの歴史を少し解説したが、現在に目を転じてみるとどうだろう。

 2020年、電通の発表した「2019年 日本の広告費」は業界に衝撃的ニュースとして伝わった。インターネット広告費が初の2兆円超えをマークし(2兆1千億円)、遂にテレビメディアへの広告出稿費(1兆8千600億円)を上回ったというものだった。

 テレビ局にいて僕の周囲では「遅かれ早かれ、こんな時が来るとは思っていたが、とうとうネットに抜かれたか」「もう少し、テレビが踏ん張るとおもっていたのに」「ネットとテレビでは、広告の訴求力が違う。
 まだまだテレビの方が優位だ」など、このニュースをテレビ関係者は、諦めを持ってとらえる者や強がる者、なんとかしないといけないと危機感を持つ者など様々な捉え方をした。

 そろそろ抜かれるかもしれないという既定路線の報告ではあったが、しかし、業界に激震が走ったのは間違いない。

 一部のメディアはテレビ業界の凋落を指摘したが、ネット広告とテレビ広告の逆転は、テレビの持つマスに訴求する力と、ネットの個人に訴求する力のすみ分けが進んだのではないかと僕は分析した。
 合わせて、番組制作の現場で「まだまだテレビには、広くあまねく訴求する力と影響力があるのに、自虐的に反省する時期ではないのでは」とテレビ自体の対応にもどかしく感じていた。

 そんな時期に追い打ちをかけたのが、新型コロナウイルスの感染拡大だった。テレビの現場も感染を止めるべく厳しい対応を迫られた。

⚫︎コロナ禍での「必死の策」
 2020年4月7日に東京、神奈川、大阪、兵庫など7都道府県に緊急事態宣言が出され、4月16日には対象が全国に拡大していった。

 この事態を受けて、コロナ感染の拡大を恐れ、テレビ制作の現場やスタジオからも人が消えた。テレビ局に出社する人が限られ、企画会議もリモート会議になり番組の収録スタジオは、数人で運用された。

 カメラマンも音声も最小人数に絞られ、スタジオでは、数分おきに換気のために重いドアが開閉され、その度に番組収録が止まった。スタッフも全員マスクをして消毒や手洗いが徹底され、収録や生放送などテレビ制作の現場は、大きな変化と対応を強いられた。

 報道番組の現場でも同様に、街でのインタビュー取材を出来るだけ行わない様に自粛。
 もしインタビュー取材を行うなら、棒の様な長いブームにマイクをつけ、2メートルくらい取材者と距離を取り、マスクをしてインタビューした。

 テレビ番組の出演者は、東京と大阪の移動が断たれ、自宅からリモート通話で出演してもらうという形に変更された。
 各スタジオには、透明なアクリル板の遮蔽をつくり、出演者どおしの間隔は、2メートル以上の距離を保たねばならなかった。

 当初は「これでは番組は作れない」「番組の総集編でしか対応は無理ではないか」との声も上がったが、知恵を出し合って各社とも番組制作を行った。テレビ局の制作現場も必死だった。

 一番苦労したのがドラマ制作。そもそも役者通しが密着して演技をしなければ、どうにもならない。テレビ画面に役者同士を隔てるためにたてられた、アクリル板を映さない様に撮影のアングルを工夫したり、ストーリの中にスマホの画面を投入して、メッセージでドラマの展開を補完した。

 それでも撮影しなければならない役者同士の密着シーンは、たった一度の演技収録で撮影した。涙ぐましい努力でドラマ撮影は続けられた。

 テレビ制作の現場は、制約だらけで苦しかったが、この時「番組を作り続けるんだ」というテレビマンの熱気が感じられたのも事実だ。令和のテレビ屋も捨てたものではないと昭和入社でオールドテレビ屋の僕は、そんな姿を見て嬉しくなった。

 同時にテレビ業界各社の中で、CMの制作や出稿も火の車状態だった。

⚫︎テレビ各社が自分の首を絞め始めた
 ドラマ同様に、タレントの感染対策で新しいCMが制作されず、流すものがどんどん減っていく。緊急事態宣言の出る前から、旅行関係のCMは、完全にテレビから消えた。
 活況を呈していたインバウンドも街から消失、ホテルや航空会社、鉄道の広告も無くなった。そのほかにも、飲食店関係や遊園地、映画、コンサートなどのイベントのコマーシャルが全てなくなっていった。

 一番大きかったのは消費そのものが冷え込んだことで、テレビのCM出稿の枠の大きなゾーンを占める自動車や電化製品などのCMも極端に減少したことだ。
 その代わりに政府や自治体の外出自粛と感染対策へのアピールを促すCMや医療関係のコマーシャルは増えたが、それはテレビ局の営業全体の売り上げにとっては、焼け石に水の状況だった。

 1年延期された東京オリンピックが2021年の7月23日から行われたが、予定していたコマーシャルも、自粛ムードとスポンサーの売り上げ減速の影響が大きく響き、いつもの活況を呈するという状況には程遠かった。

 スティホームの中、番組やテレビコマーシャルをウオッチしていた僕はその異常さに気がついた。
 東京キー局の深夜枠に見たことも無いスポンサーのコマーシャルが流れ始めた。その中には、聞いたことも無いレンタカーショップやカラオケ店、建築会社のCMも含まれた。
 15秒や30秒が一般的なCMの中に2分枠のテレビ通販や60秒のコマーシャルが流れる。リモート系のコンピューター会社、地方の物産、ゲーム、ネット漫画、中には怪しい金融系や暗号資産のコマーシャルも流れている。

 テレビ局のCMはなんでも放送できる訳では無い。実は厳密な考査基準が存在する。テレビ局が放送しても良いと判断したCMしか放送できない。

 テレビのCMの考査でまずやるのが、業態考査だ。広告を出す企業、広告主の企業や団体の考査である。企業が健全であるか、公序良俗に反する企業では無いか、警察や消費者庁に注意や逮捕などのトラブルが過去に無いか…。その他にも各局で信用を担保するための考査がある。

 そして次に実際に放送する素材考査が行われる。

 CMの内容や映像が放送倫理に違反していないか。虚偽、誇大表現が無いか。
 根拠がしっかりしていて効果や商品に危険が無いか。
 薬事法や健康増進法に抵触しないか。
 差別表無限や不快にする映像表現が無いか。
 サブリミナル、光感受性発作を起こす可能性を含む強い光の点滅の使用は無いかなど、法令遵守と放送基準や放送法などの法律とも照らし合わす。

 視聴者にはこの厳しい基準を通ったCMだけが放送出来るということになっている。

 ただこの基準は、あくまでも各社の個別の基準であり「あるテレビ局では、拒絶されたが、少しナレーションとか映像を改定して別の社では放送可となった」という事例も出てくる。また、昔は放送できたが今は難しいというケースもよくある。

 分かりやすい例を挙げてみよう。射幸心を煽る恐れがあるという理由から、実は、パチンコのCMは各社で判断が異なる。

 パチンコ台やパチンコの玉や店名を出さず、あくまで企業名だけが放送出来る局。パチンコの新機種まではOKの局。パチンコ企業だと全く分からない、レジャー産業として放送する局などだ。

 また放送時間帯も、午後10時以降で放送が解禁される局や深夜0時をまわり放送が可能な局などその対応が分かれている。

 新型コロナウイルス感染拡大でスポンサーが減り、なりふり構わず営業が獲得したスポンサーのCMを甘い考査で放送したのではと疑うコマーシャルが深夜帯に目についた局もあったし、苦しい中、歯を食いしばってしっかりしたコマーシャルしか流していない局もあった。

 番組のプロの目から見れば、なんとしてでも埋めようというテレビ局側の苦しみも理解できたが、甘い考査体制は自分の首を絞めかねないと僕は危うさと矜持が気になった。

⚫︎すでに手遅れなのか
 もう一つ、テレビCMで大変気になっている状況がある。

 それはテレビ局にとって一番のライバルである映像コンテンツのCMをあろうことか、自らの画面で宣伝していることである。

 いまやスマホに奪われ、テレビ離れを叫ばれ窮地に追い込まれつつある状況だ。
 それなのにNetflixのサブスクやAmazonプライムの新作・話題作のCMが、これでもかと放送される。ディズニーチャンネル、U-NEXTとその数は多い。

 しかし、それだけでは無い。ネット漫画やゲームなど新しい娯楽やエンタティンメントのコマーシャルがゴールデンタイムの主流コマーシャルになっていく。

「テレビを見てくれなくても、他の楽しみが沢山あるよ」とテレビが宣伝している様なものだ。この自虐的なCMの放送状況に僕は我慢が出来ない。

 なぜコンテンツ的にライバルになる彼らのCMをテレビで放送するのか。テレビで放送するから、彼らはあまねく世代の認知度と市民権を得てメジャーになり、それが将来的にテレビ番組を侵食してしまう。
 そのことに危機感は無いのか。

 これまでは自動車、家電、エネルギー、建築、飲食、レジャー、トイレタリー、医薬がテレビコマーシャルの主流だった。

 冒頭に書いた様に沢山の流行語やタレントも生み出した。それがゲーム、スマホ、ネットセキュリティー、人材派遣、サブスク、スタートアップ企業に主流を取って代わられようとしている。

 テレビ局がこれらのサービスのCMを流すことは大きく捉えれば「テレビ以外」のコンテンツへの誘導を視聴者に促し、テレビ離れを加速させている。

 日本のテレビ局の隆盛は、スポットと呼ばれる15秒のCMを月に何本番組の中に入れられるかという事やCMの高価な値段で築かれてきた。
 その物差しには視聴率があった。視聴率至上主義とも呼ばれた。しかし、視聴率も変化し、広告や宣伝効果の物差しとしては、もう古いとされている。

 個人視聴率や広告効果、そしてネットの様に個人にしっかりと訴求する媒体が今求められている。もう巨額の広告費を投下してマスを獲得する時代では無いという。

 一人一人個別の、個人にそのパーソナリティが興味を持つ広告を届けるという方向転換はもはや難しい。それは先に述べた出稿費が物語っている。

 しかし、昭和のテレビ屋としては、テレビCMがその輝きと力を全て失ったとは思っていない。テレビ局が努力し、その力にしっかりと気づき、考査をしっかりと行い良質のコマーシャルを流す努力をすれば自ずと信頼を取り戻せる。

 また、15秒CMやスポットコマーシャルの成功を捨て、早く1分や2分のストリー性あるコマーシャルに切り替える事ができたなら、まだまだ生き残る道があると思う。

 ドラマ性を持たせ、連呼型ではない、上質のコマーシャルを作る。
 今や企業のCMもBtoCからBtoBの企業を知ってもらうという形のものも増えている。
 社会と共生できる企業だから売る商品も信頼できる。あるいは企業の理念に共感できる。そんな出稿も増えている。

 テレビ局の営業も目先の目標到達を日々の糧とせず、スポンサーを育てる目線を養ってほしい。

 日本のコマーシャルを作る製作者達は世界一のクリエィターだし、発想もユニーク。それは、世界のCM映画祭の結果や評価を見れば明らかだ。テレビ局の蓄積や考査に対する考えも諸外国に比較すれば、とても健全だ。

 ネットに負けていいなんて、心から思っているテレビ局員はいないと信じている。
 テレビCMを見ると時代が見えると言われたのは今は昔なのか。CMを変えなければテレビそのものが、変われない。新型コロナウイルスが収まりを見せている今こそ、テレビのCMも試されている。
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🚶‍♀️…右岸…伏見区桃山町沿…大手筋通…観月橋〜> 220602

2022-06-02 18:14:00 | 🚶 歩く
🚶‍♀️…右岸河川敷…隠元橋東詰…右岸堤防道…同:46km碑+…伏見区桃山与五郎町…中野橋…外環伊賀…橘中高沿…乃木神社沿…桃山小学校沿…桃山町(松平武蔵…鍋島)…御香宮参道…大手筋商店街:🏧オーエス💊↩️…御香宮参道…御香宮参道…あいロード桃山…観月橋🚉〜🚉…右岸堤防道…>
🚶‍♀️12460歩2kg13F

☀️:隠元橋30℃観月橋32℃
 気温高いが風心地よく。

🏡ベランダこの所,トビケラが増え…,殺虫剤散布


右岸堤防道46.2km付近の高圧線鉄塔
 この鉄塔だけがやたら鳥避けトゲが

御香宮南門(作りが細かく

大手筋通商店街のおやかまし時報時計

京阪電車 新ヘッドマーク



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