中国語学習者のブログ

これって中国語でどう言うの?様々な中国語表現を紹介します。読者の皆さんと一緒に勉強しましょう。

于丹 《論語心得》3.処世之道(2)

2011年06月05日 | 中国文学

(“子張学干禄”(子張、禄を干(=求)むを学ぶ) 本文参照)

 中国師範大学の人気教授、于丹の《論語心得》第3回、処世之道の2回目です。前回は人と人の関係で、“過憂不及”、過ぎたるは及ばざるが如く、適当な距離を保つことが大切であると学びました。それでは、こうした関係は、仕事の面ではどのように応用するべきなのでしょうか。

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 (クリックすると、中国語原文と語句解説が見られます。)
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□ 《論語》は私たちにこう言って戒めている。友人に対してであれ、上司に対してであれ、一定の距離を保ち、親しみと疎遠の頃合いを見極めなければならないと。それでは、自分が最も親しい家族とは、距離を置かなくてもよいのか。父母と子供の間、夫婦の間、恋人との間にも、適当な距離を保つ必要はあるのか。心理学に一つの定義があり、それによると、現代人の人との交際の中に、「非愛情的行為」と呼ばれる行為がある。それはどういうことかというと、愛情という名で最も親しい人に対して非愛情的な掠奪を行うことである。こうした行為はしばしば夫婦の間、恋人との間、母と子の間、父と娘の間、つまり世の中で最も親しい人との間で発生する。
 夫婦や恋人の間でよく次のような場面が起こる。一人がもう一人に対してこう言う。見て、私はあなたを愛しているから、これこれをあきらめたのよ。私はこの家のためを思って、このようにしたのだから、あなたは私に対してこうしてくれなくっちゃ。母親達は少なからず子供にこう言う。ご覧、おまえを産んでから、仕事もだめになったし、体も老けて醜くなった。私が全てを犠牲にしたのは、皆おまえの為なのに、おまえはどうして一生懸命勉強しないの。これらは全て、非愛情的行為である。というのも、それらは愛という名目で行われる強制的な束縛で、相手に自分の願望に基づき行動をさせようとしているからである。

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□ 私は嘗て、如何に人の親になるべきかを書いた本を読んだことがある。作者はイギリスの心理学の女性博士である。彼女は本の冒頭でたいへん良い事を言っている。彼女は言う。この世の中の全ての愛は一つに寄り集まることを最終の目的としているが、一つの愛だけが別れを目的としている。それは父母の子供への愛である。父母の本当に成功した愛とは、子供をできるだけ早く独立した個体としてあなたの生命から分離させることである。こうした別れが早ければ早いほど、あなたはより成功したと言えるのである。この意味から言うと、距離と独立とは人格に対する尊重であり、こうした尊重はたとえ最も親しい人との間にも、持たねばならないものである。父と子、母と娘との間であれ、長年連れ添った夫婦の間であれ、一旦この距離、この尊重が無くなり、この尺度を越えると、《論語》の中で言われる“数”shuo4(しばしば)の段階であり、お互いがもはや独立しておらず、隠れた危機が忍び寄り、お互いが疎遠になる、場合によっては二人の関係が破綻を迎えるのもそう遠くないであろう。《論語》が私たちに教えるのは、公平で理性的な態度で一人一人の人を尊重し、お互いの間に程良い距離を保ち、ゆとりを持ちなさいということである。
 これは禅宗が尊重する境地にたいへんよく似ており、「花未だ全て開かず、月未だ圓(まる)からず」と呼ばれる。これは人の世の最も良い境地である。花は一度満開になると、ほどなくしぼんで散ってしまう。月は一旦満月になると、すぐに欠け始める。まだ満開でなく、まだ満月でないと、心の中では依然、期待やあこがれの気持ちを持たせられる。友人との関係、肉親との関係も、また同様である。少し距離を保つことで、しばしば心が開けてわだかまりを無くすことができる。友人に対しても肉親に対しても、程良い距離をつかんでおくべきで、程合いが最も良いのである。

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□ それでは仕事については、熱心であればあるほど良いのだろうか。自分の役割内の仕事であれ役割外の仕事であれ、やらないといけない仕事は多ければ多いほど良いのか。仕事についても、程合いを知っておく必要はないか。子曰く:その位に在らざれば、その政(まつりごと)を謀らず。(《論語・憲問》)つまり、どんなポストであれ、本来やるべきことをきっちりやるべきで、出しゃばって、職位を飛び越えて、する必要のないことをしてはならない。これは現代社会でとりわけ提唱しなければならないプロフェッショナルな仕事の態度である。 
 多くの大学生の諸君は外資企業で実習をしたことがあるだろう。会社に一歩入ると、人事部の担当者がJob Description、つまりあなたの仕事のポジションについて書かれたものを渡してくれ、あなたにこの職場で何をすべきか教えてくれる。事務員、秘書、タイピストから高級管理職に至るまで、それぞれ自分のポストについての記述がある。中国の多くの会社に今欠けているのが、正にこのポストについての記述である。私たちはポストを通常その内容で見るが、その仕事の分量では見ない。私たちはいつもこう言っている。若いうちは一生懸命やらなければならない。一人で三人分の仕事ができたら良いと。これは結局、責任者の代わりに困難を助けてやっているだけだ。実際には、このような考えは現代企業の管理精神に適合しない。自分の仕事は自分がちゃんとできるよう配慮する。こうすれば、全部集めてはじめて、一枚の碁盤になるのである。
 孔子は「その位に在らざれば、その政(まつりごと)を謀らず」と提唱した。ここにはある前提が隠されている。すなわち、「その位に在れば、その政を謀らねばならない」、先ずあなた自身の職位の仕事をちゃんとやるべきで、他人のことを心配する必要はないのである。それでは、その位に在って、どのようにその政(まつりごと)を謀るのだろうか。

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□ 先ずは仕事を行う原則である。「子曰く:君子の天下に於けるをや、適無く、莫も無し。義にこれ与(とも)に比(した)しむ。」何を「義にこれ与に比しむ」と言うのか。つまり、「道義」をお手本とし、法則とするのである。孔子の言った意味は、君子は天下の事を行うのに、あれこれ言って無理強いしないし、理由もなく反対しない。依怙贔屓もしない。一切を道義に基づき行う。道義は、つまり政治を行う原則であり標準である。
 次に、仕事を行う方式である。「言葉」と「行動」の中で、孔子はとりわけ「行動」を重視した。彼は口先だけで大げさにまくし立てる人を好まなかった。彼は言う:「巧言令色、鮮(すく)なし仁。」(《論語・学而》)きれい事を言って、人に取り入ろうとする、このような人の中に、本当の仁者は見つからない。孔子が奨励したのは何か。言葉は少なく、より多く仕事を行うことである。仕事は積極的にし、言葉は慎み深くあるべきだ。孔子が言った「言を慎む」とは、話す内容に注意を払い、できもしない事は言わないことである。一般庶民の言葉で言うと、「災いは口から生じる」。そこまで厳しく言わないまでも、少なくとも「言葉数が多いと、失言を免れない」ということである。

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□ 孔子の弟子の子張は、「禄を干(=求、もと)む」ことを学ぼうと思った。「禄を干む」とは何か。仕官することである。子張は社会で何か仕事に就こうと思い、先生にどうしたらよいか尋ねた。孔子は彼にこう言った。「多く聞き疑わしきを闕(か)き、慎みてその余りを言わば、則(すなわ)ち尤(とがめ)寡(すくな)し。多く見て殆(うた)がわしきを闕(か)き、慎みてその余りを行えば、則ち悔い寡(すくな)し。言に尤(とがめ)寡(すくな)ければ、行に悔い寡(すくな)く、禄はその中に在り。」(《論語・為政》)「多く聞き疑わしきを闕(か)く」とは、先ず耳をそばだてて、多くのことを聞き、疑問に思ったことは、ひとまず置いておく。私たちはよくこう言う:ある人が自ら体験し、努力してきたこと、それは直接経験と呼ばれる。一方、他人の経験や教訓、その中にはその人が経験してきた紆余曲折を含むが、そういうものを聞くことは、間接経験と呼ばれる。間接経験を多く聞くことにも、メリットがある。「慎みてその余りを言う」とは、自分が理解できたことだけを言い、話す時も慎重にするということである。「則(すなわ)ち尤(とがめ)寡(すくな)し」とは、不満を減らすことができるということである。「多く見て殆(うた)がわしきを闕(か)く」とは、多く見て、疑問に思ったことはひとまず置いておく。戸惑いが多いのは、視野が狭いからで、井の中の蛙がどうして海や空が広々としていることを知ることができるだろうか。
 経験が豊かになった後も、行動は依然として慎重であるべきである。こうした慎重さを《論語》の中ではこう概括されている。「深淵に臨むが如し、薄氷を履(ふ)むが如し」(《論語・泰伯》。一人で仕事をする時は、深い淵の傍に立っているように慎重に行動し、薄い氷の上を歩く時のように注意深くしなければならない。

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□ 多く考え、多く聞き、多く見、言葉を慎み、慎重に行動する。このようにすることのメリットは、「悔いを寡(すくな)くする」ことで、自分自身にとっての後悔も減らせるのである。世の中に、好き好んで相手に後悔させるような人はいない。間違ったと分かった時には、全てがもう定まっており、挽回はできない。話の中に人から非難されたり怨まれたりすることが少なく、行為の中の、自分がこれまで後悔した様々な経験を減らすことができれば、その人は出仕し仕事をしても、成功することができるだろう。


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