中国語学習者のブログ

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中国語の語句の構造: 語素から語句の構造を見る

2010年08月20日 | 中国語

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 前回は、ことばの最小単位である“語素”についてお話した。今回は、その語素を起点に、文の基本単位である“詞”の構造について、見ていきたいと思う。

                     語素と詞

 “詞”は“語素”より1ランク上の言語単位である。“語素”は“詞”を構成する要素であり、成語等、固定した句(“詞組”)を構成する要素でもある。語素には単独で詞となることができ、また別の語素と組み合わさっても詞となることができるものがある。また語素によっては、単独では詞となることができず、別の語素と組み合わさってはじめて詞となるものもある。語素は、直接には文の構成(構文=“句法”)成分になることはできず、語素が詞を構成してはじめて、文の構成成分となることができる。語素が成語等の固定句を構成する時、その機能は詞に相当し、文の構成成分となることもできる。

 語素と詞の関係を理解するには、語素の分類を行うことが必要である。分類の基準は下記の通り:

(一)音節の多少

 一つの音節の語素を単音節の語素という。二つ、或いはそれ以上の音節から成る語素は、復音節の語素である。復音節の語素は、更に二音節の語素と多音節の語素に分かれる。以下に例を挙げて説明する:

1.単音節の語素
 これは中国語の語素の基本形式であり、読むと一つの音節で、文字に書くと一つの漢字になる。例えば:
     人   脚   学   去   我   你   大   冷
     民   足   習   往   其   彼   巨   寒
     很   却   雖   然   而   或
     自   于   以   把   対   被
     的   了   嗎   呢   着   所
     子   儿   頭   非   初   第

 単音節の語素は、中国語の中で幅広く使われ、詞を構成させる力がたいへん強い。

2.二音節の語素(“双音節語素”)
 読むと二つの音節で、書くと二つの漢字になるが、一つの意味だけを表す。中国語の二音節の語素は主に二種類ある。

 第一、連綿語 (“聯綿字”。“聯綿詞”ともいう)。声母、または韻母が同一、或いは類似した二つの音節を並べ、全体で一つの意味を表す単語である。これは古代漢語のなごり(遺留)といわれる。二つの音節の構造からみて、以下のように区分できる:
 双声聯綿字 (声母、つまり子音が二音節とも同じもの)。双声詞ともいう。
     秋千   蜘蛛   枇杷   蟾蜍
     斟酌   流連   吩咐   游弋
     猶豫   含胡   玲瓏   慷慨

・蟾蜍 chan2chu2 ヒキガエル
・流連 liu2lian2 遊びにふけっていつまでも帰らないこと
・游弋 you2yi4 (軍艦などが)パトロールする

◆ 畳韻聯綿字 (韻母、つまり母音が二音節とも同じもの)。畳韻詞ともいう。
     橄欖   葫芦   玫瑰   蜻蜓
     徜徉   慫恿   徘徊   彷徨
     腼腆   肮脏   荒唐   朦朧

・徜徉 chang2yang2 ぶらぶら歩く。逍遥する
・慫恿 song3yong3 (あることをするように)そそのかす、たきつける
・腼腆 mian3tian はにかむ。内気である
・肮脏 ang1zang4 汚い、不潔である。卑劣である

◆ 非双声畳韻聯綿字 (声母、韻母が二音節ともに異なるもの)
     鵪鶉   蝙蝠   珊瑚   妯娌
     嘀咕    囫囵       趔趄      逶迤

・鵪鶉 an1chun2 ウズラ
・妯娌 zhou2li 兄弟の妻の総称。相嫁
・嘀咕 di2gu ひそひそ話をする
・囫囵 hu2lun2 丸ごと。そっくりそのまま
・趔趄 lie4qie よろめく。よろける
・逶迤 wei1yi2 道、山、川などが、くねくねと続いている様  

第二、音訳された外来語。
     葡萄   苜蓿   箜篌   石榴
     菩薩   羅漢   刹那   佛陀
     安培   伏特   盧布   欧姆
     珈琲   沙發   撲克   拷貝
     馬達   休克   摩登   幽黙

・苜蓿 mu4xu4 [植物]うまごやし
・箜篌 kong1hou2[楽器]箜篌(くご)

3.多音節の語素
 基本的には、音訳された外来語である。例えば:
     巧克力   白蘭地   婆羅門   法西斯
     尼古丁   木乃伊   馬拉松   迪斯科
     伊斯蘭   穆斯林   康拝因   奥林匹克
     歇斯底里   可口可楽   阿弥陀佛   英特納雄奈尓

 二音節の語素と多音節の語素は、大部分が単独で詞になることができる。また、別の語素と組み合わさって詞を作るものもある。例えば:
     蜘蛛網   玫瑰紅   茉莉花   葡萄酒
     坦克車   朦朧詩   巧克力餅干
     奥林匹克村

(二)自由と不自由

 単独で詞になることができ、また他の語素と組み合わさって詞を作ることもできる語素を、“自由語素”という。単独では詞になることができず、別の語素と組み合わさってはじめて詞となる語素を、“不自由語素”という。

(三)定位と不定位

 一つの語素が別の語素と組み合わさって詞となる時、必ず決まった位置(詞の前部、或いは後部、或いは中間)に置かれるものを、“定位語素”という。置かれる位置の決まっていないものを、“不定位語素”という。

1.不定位語素
◆ : 胆礬   胆管   胆碱   胆力   胆量
      胆略   胆嚢   胆瓶   胆怯   胆識
      胆酸   胆小   胆汁   胆固醇   胆小鬼
      胆大妄為   胆小如鼠     胆戦心惊

・胆礬 dan3fan2胆礬(たんぱん)。硫酸銅から成る鉱物
・胆碱 dan3jian3 コリン(choline)ビタミンB複合体の一つで、脂肪代謝の調節に関与。胆汁に多く含まれる
・胆瓶 dan3ping2 くびの細長い徳利状の花瓶
・胆識 dan3shi2 胆力と見識
・胆小鬼 dan3xiao3gui3 臆病者。意気地なし
・胆大妄為 dan3da4wang4wei2 大胆で無謀なことをする
・胆戦心惊 dan3zhan4xin1jing1 あまりの恐ろしさに胆をつぶす

     大胆   斗胆   放胆   肝胆   孤胆
     苦胆   瓶胆   球胆   喪胆   壮胆

・斗胆 dou3dan3 大胆に。敢えて(謙譲語として用いることが多い)
・孤胆 gu1dan3 一人で多くの敵を相手に戦う
・瓶胆 ping2dan3 魔法瓶の内側のガラス瓶
・球胆 qiu2dan3 ボールのゴム芯。チューブ

     龍胆紫   赤胆忠心   大胆潑辣   肝胆相照
     心惊胆戦   披肝瀝胆   提心吊胆   卧薪嘗胆

・龍胆紫 long2dan3zi3 [薬]ゲンチアナ・バイオレット。一般に“紫薬水”、“甲紫”という。
・赤胆忠心 chi4dan3zhong1xin1 非常に忠実であること
・大胆潑辣 da4dan3po1la 大胆果敢
・披肝瀝胆 pi1gan1li4dan3 肝胆を披瀝(ひれき)する。腹を割って、あからさまに打ち明ける

◆ : 動人   動産   動詞   動蕩   動工
      動火   動机   動静   動力   動量
      動乱   動脉   動怒   動气   動情
      動物園   動員令   動人心弦   動輒得咎

・動蕩 dong4dang4 情勢が動揺する、不穏である。波が揺らめく
・動怒 dong4nu4 怒る。癇癪を起す
・動人心弦 dong4ren2xin1xian2 人の心を揺さぶる。心の琴線に触
・動輒得咎 dong4zhe2de2jiu4 なにかするとすぐにとがめられる

     暴動   被動   変動   波動   搏動
     策動   顫動   衝動   出動   伝動
     蠢動   地動   電動   調動   発動

・搏動 bo2dong4 心臓などが拍動する
・顫動 chan4dong4 小刻みに揺れ動く。震える
・蠢動 chun3dong4 うごめく

◆ : 習慣   習気   習俗   習題   習性
      習作   習慣法   習非成是   習以為常
      補習   伝習   悪習   復習   積習
      見習   教習   練習   陋習   実習
      温習   学習   演習   預習   自習

・習気 xi2qi4 (よくない)癖。風習
・習題 xi2ti2 練習問題
・習非成是 xi2fei1cheng2shi4 間違ったことが習慣となって、間違いとは認められなくなること
・習以為常 xi2yi3wei2chang2 不慣れなことでも、繰り返しているうちに当たり前になる
・積習 ji1xi2 長年の習慣
・教習 jiao4xi2 [旧]教員、教師・陋習 lou4xi2 悪い習わし
・温習 wen1xi2 復習する。おさらいをする

◆ : 袖標   袖管   袖箭   袖口    袖筒
      袖章   袖珍   袖子   袖手旁観
      拂袖   領袖   水袖   罩袖   長袖善舞
      両袖清風

・袖標 xiu4biao1 腕章
・袖管 xiu4guan3 そで
・袖箭 xiu4jian4 そでの中に隠しておき、ばね仕掛けで矢を発射する昔の武器
・袖手旁観 xiu4shou3pang2guan1 手をこまねいて見ている
・拂袖 fu2xiu4 袖を振り払って怒る様。
・水袖 shui3xiu4 京劇の衣装で、袖口についている長い白絹
・罩袖 zhao4xiu4 そでカバー
・長袖善舞 chang2xiu4shan4wu3 (長い袖は踊りがきれいに見えて有利なことから)何か頼りになるものがあると、成功しやすい。財力、権力のある人や、手練手管に長けた人は、うまく立ち回り、成功しやすいこと。
・両袖清風 liang3xiu4qing1feng1 袖の下を取らないことから、官吏が清廉潔白であるたとえ。

2.定位語素 [注]

[注]一般に不自由(単独では詞になることができず、別の語素と組み合わさってはじめて詞となる)な定位語素を“詞綴”と呼ぶ。自由(単独で詞になることができ、また他の語素と組み合わさって詞を作ることもできる)、もしくは不自由な不定位語素を“詞根”と呼ぶ。

● 詞の前部に置かれるもの 
  ◆ : 第一   第二 
  ◆ : 阿爸   阿哥   阿Q 
  ◆ : 老板   老虎   老師   老婆   老百姓

 接頭語の“阿”や“第”、また“老”も接頭語として用いる時は、不自由な定位語素である。

● 詞の後部に置かれるもの 
  ◆ : 鋤頭   風頭   骨頭   号頭   戸頭
        花頭   話頭   勁頭   口頭   指頭

・風頭 feng1tou ①風向き、形勢。②出しゃばる。自分をひけらかす
・号頭 hao4tou2 番号・戸頭 hu4tou2 口座
・花頭 hua1tou ①模様(花紋)。②手管、悪巧み(花招)。③新しい趣向、思いつき。④秘訣。奥義
・話頭 hua4tou2 話の糸口。話題
・勁頭 jin4tou2 ①力。②意気込み、意欲。③様子。ふり

  ◆ : 包子   杯子   痴子   墊子   面子 
  ◆ : 丑化   悪化   激化   浄化   緑化
        美化   氧化   大衆化   電気化   規範化
        現代化

● 詞の中間に置かれるもの
     和   跟   同   与

  ある不自由な定位語素と別の自由な不定位語素が同一の漢字である場合は、その区別に注意しなければならない。例えば、上で挙げた“老師”、“老虎”等の詞の中の“老”は不自由な定位語素であるが、“老人”、“老伴”、“老当益壮”等の詞の中の“老”は自由な不定位語素である。

・老当益壮 lao3dang1yi4zhuang4 [成語]老いて益々盛んである

 この二つの“老”は発音と漢字は同じであるが、意味が異なり、詞の構造も異なるので、二つの異なる語素と考えなければならない。

 また、次の二組の詞を見てみよう。
◆ 饅頭   苗頭   念頭   苦頭   甜頭
  → 位置が後ろの“頭”は不自由な定位語素である。

 不自由、かつ定位の語素である“頭”は、発音時、軽声になることが多い。

・苗頭 miao2tou 兆し、兆候
・苦頭 ku3tou 苦しみ
・甜頭 tian2tou ①甘み、うまみ。②うまい汁、利益

◆ 船頭   帯頭   灯頭   黒頭   頭版   頭巾
  頭領   頭脳   大頭針   回頭路   出人頭地
  → 位置が不定の“頭”は自由な不定位語素である。

・帯頭 dai4tou2 先頭に立つ。率先して手本を示す
・灯頭 deng1tou2 (電灯の)ソケット。(石油ランプの)口金
・黒頭 hei1tou2 京劇のくま取りの一つ。敵役や悪役で、黒でくま取りする
・頭版 tou2ban3 新聞の第一面
・大頭針 da4tou2zhen1 虫ピン。待ち針
・回頭路 hui2tou2lu4 通ってきた道。もと来た道
・出人頭地 chu1ren2tou2di4 [成語]一頭地を抜く。人にぬきんでる

 これらの語素の間の関係は、傾向としては次のようになる。 

    [自由語素]                     [不自由語素]
     胆        頭            習           阿
                袖            化
     動                                  子
    [不定位語素]                      [定位語素]


【原文】胡裕樹主編《現代漢語》重訂本 上海教育出版社1995年より翻訳
 尚、一部誤字や間違いと思われるところの修正、補足説明を加えた。
 ただ、筆者の誤解や誤りがある可能性があるので、お気づきの点、ご指摘いただければ幸甚です。




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