goo blog サービス終了のお知らせ 
不適切な表現に該当する恐れがある内容を一部非表示にしています

中国語学習者、聡子のブログ

これって中国語でどう言うの?様々な中国語表現を紹介します。読者の皆さんと一緒に勉強しましょう。

国慶節祝賀国宴を彩る巨大な桃、麗江“雪桃”

2011年10月04日 | 中国グルメ(美食)

 ※ 今年の国慶節祝宴。政府首脳の前に並べられた“雪桃”

 重そうに実った雪桃。

 9月30日夜、中華人民共和国建国62周年を祝う国宴が人民大会堂で開催され、政府首脳や各国大使、各界の代表が招待されました。これを伝えるニュースをTVで見ていて、各来賓の席の左前方の小皿の上に、大きな赤っぼい丸い玉のようなものが並べられていました。上の写真にも写っていますが、分かりますでしょうか?これは何だろう?桃のように見えるが、桃としたら、こんな大きな桃があるんだろうか?

  興味をおぼえたので、献策サイトの百度で、“国慶節,国宴,大桃”で検索してみると、出てきました!2009年10月3日の雲南日報の記事《3054個麗江雪桃献礼国宴》。2009年といえば、建国60周年の年で、この年、人民大会堂管理局が、建国60周年記念行事に彩りを添える料理や食品を捜す中で発見されたものだそうです。

 この桃は、雲南省の山間部、海抜2500メートルの麗江で栽培されたもので、麗江市玉龍ナシ族自治県農業局園芸局の高級園芸師、木祟鳳が7年の歳月をかけ、開発したものです。玉龍雪山の麓の標高2000メートル以上のところに生育する桃の母木に接ぎ木をすることで、1本の木に平均1.5キロの実を10個ほどつけるようになり、その木を更に麗江県農業局園林ステーションの10ムー(約6000平方メートル)の試験場で7年かけて改良し、ようやく市場に出せるものができたとのことです。ちなみに、ナシ族の言葉で、桃は“布祖”と言うそうです。

 左端が木崇鳳。

 この桃は、発育期が長く、200日くらいかかります。熟するのが遅く、中秋、国慶節の頃にようやく市場に出るそうです。実の大きさは、平均で500グラム前後、最大のもので、1.6キロにまでなるものもあります。瑞々しく、糖度も高く美味しいということで、北京では、なんと1個1000元で売られているそうです。

 さて、傷みやすい、デリケートな桃を、雲南省の山中からどうやってはるばる北京まで運ぶかも大きな課題でした。人民大会堂の国宴では、500のテーブルに、選りすぐりの桃を並べる必要があります。全部で3054個の桃の輸送作戦が始まりました。

 人民大会堂管理局は、国慶節の国宴で麗江の雪桃を出すことを決めましたが、輸送方法については、飛行機、鉄道、トラックなどの輸送手段で、29回にわたり、比較検討が行われ、最終的に、飛行機とトラックの二つの輸送手段それぞれで輸送し、リスク分散を図ることになりました。飛行機便は中国東方航空、トラック業者は昆明交通運輸集団泰来物流公司が選ばれました。実際の輸送は9月21日、麗江市の王君正市長臨席の出荷式が行われました。輸送には、最新式の保冷コンテナによる温度コントロールが行われた他、加湿器、紫外線ランプの装備が準備されました。トラック便については、特別の通行証が発行され、細心の注意で北京まで運ばれました。

 果たせるかな、この麗江雪桃は大きな話題となったようで、北京市場で1個1000元の値がついたのは上記の通り。以来、毎年国慶節の国宴のテーブルを彩っているそうです。


 人民大会堂の服務員達が一斉に桃を各テーブルに運ぶ

 にほんブログ村 グルメブログ 中国食べ歩き(チャイナ)へ
にほんブログ村

にほんブログ村 外国語ブログ 中国語へ
にほんブログ村


人気ブログランキングへ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

《雲郷話食》を読む: 豌豆黄(エンドウ豆の羊羹)

2011年04月14日 | 中国グルメ(美食)



 今回は、清朝宮廷料理で、西太后が好んだ点心を紹介します。北京の北海公園内にある「倣膳」の名物料理といえば、“小窩頭”、“豌豆黄”、それに“肉沫焼餅”ですが、今回取り上げられているのは前の二つ、“小窩頭”と“豌豆黄”です。

     -*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-

■ 旧時北海公園中各個茶座上,出售許多種好点心,其中以倣膳的小窩頭和豌豆黄最為使人懐念。

・倣膳 fang3shan4 北京・北海公園内にある、清朝宮廷料理を出すレストラン。“御膳房”(清朝宮廷で、皇帝、皇后に食事を供するため、紫禁城内に設けられた厨房)の料理を真似た(“倣”)ことから、“倣膳”と名付けられた。

□ 昔、北海公園内の茶店では、多くの種類の点心(お菓子)が売られていたが、その中で、“倣膳”の“小窩頭”と“豌豆黄”が最も人々に懐かしく思い出される。

■ 小窩頭是清宮御膳房在西太后那拉氏庚子蒙塵(即逃難),従西安回北京后,想出来的花招。本来玉米面窩窩頭在北京是窮苦人家的主食,那拉氏蒙塵帰来,也要吃窩窩頭,以示不忘民間“劇苦”。但又不能吃真窩頭,于是御膳房就想出花招,蒸出所謂栗子面的小酒杯大的窩頭来。倣膳等処売的名点,就是這種小窩頭。就名称上説,叫作“栗子面小窩頭”,実際并不是栗子磨的面,而主要是以少量的新玉米(玉蜀黍),多量的黄豆,糯米等几様的東西配在一起磨成面;面要磨的極細,要用很細的絹籮羅几次。蒸時再加足量的糖,捏成很小很薄的窩頭形,不過是個意思,取其形似耳。

・那拉氏 na4la1 shi4 満州族の氏族の一つで、吉林省・伊通河一帯に居住していた。叶赫那拉氏、哈達納拉氏、烏喇那拉氏などに分かれる。ここでは、叶赫那拉 杏貞、後の慈禧太后、すなわち西太后のこと。
・庚子 geng3zi3 ここでは、西暦1900年の“庚子事変”のこと。この年は干支で“庚子”に当たっていた。義和団運動による北京の外国大使館包囲に対し、八カ国連合軍による北京攻撃により、皇帝、皇族が戦火を避けるため、北京の紫禁城を離れた。
・蒙塵 meng2chen2 皇帝が戦火を避け、宮廷の外へ逃げ延びること。“逃難”tao2nan2も同じ意味。
・花招 hua1zhao1 広く宣伝効果をねらうやり方、趣向。手練手管、悪だくみの意味にも用いる。[用例]耍shua3 ~。玩弄wan2nong4 ~。(どちらも手練手管を使う、の意味)
・窩窩頭 wo1wo1tou2 一般には“窩頭”という。トウモロコシやコウリャンの粉を水で捏ねて円錐形に丸め、蒸したもの。中国北方の農民の主食であった。
・玉蜀黍 yu4shu3shu3 トウモロコシ。一般には“玉米”yu4mi3という。
・羅 luo2 ふるいにかける。

□ “小窩頭”は清朝宮廷の御膳房により、西太后・那拉氏が庚子事変で北京を逃れ、後に西安から北京に戻ってから、考え出された趣向である。本来、トウモロコシ粉で作った“窩窩頭”は。北京では貧しい人々の主食であった。西太后は宮廷の外への避難から戻ってからも、“窩窩頭”を食べることで、民間の「ひどい苦しみ」を忘れていないことを示そうとした。しかし本当の“窩頭”は(不味くて)食べられないので、御膳房が趣向を考え出し、いわゆる“栗子面”(栗を挽いた粉)で盃(さかずき)くらいの大きさの“窩頭”を蒸し上げた。“倣膳”などで売られている名物点心は、こうした“小窩頭”である。名称に関して言うと、「栗の粉で作った“小窩頭”」と呼ばれているが、実際には栗の実を挽いた粉ではなく、主に、少量の新鮮なトウモロコシ、多量の大豆、もち米など、数種類の材料を混ぜて粉に挽いたもので、粉はきめ細かくないといけないので、目の細かい絹を張った篩(ふるい)で何度か篩にかける。蒸す時には、更に分量の砂糖を加え、捏ねて小さく薄い“窩頭”の形に作るが、趣向だけで、形が似ているだけである。

■ 蒸這種小窩頭的面,過去有専門舗子来磨。北長街有家大糧店,字号叫泰来,東家是山東海陽人,姓趙,結交内務府、御膳房内監等人,専作宮里生意,蒸小窩頭的栗子面,就是他家磨的。据説磨時多少要放一些風干栗子。

・東家 dong1jia 主人。商店の店主。
・内監 nei4jian4 宦官。“Nei4jian1”と発音すると、重罪犯人を収容する監獄のこと。“監”をjian4と四声に発音すると、昔の役所の名前のことで、例えば“国子監”などという。宦官のことは、普通、“太監”というが、これもtai4jian4と四声である。一方、“jian1”と一声に発音するのは、監視するという動詞の時。“監督”、“監管”がそうで、名詞では監獄のことである。
・結交 jie1jiao1 付き合う。交際する。

□ こうした“小窩頭”を蒸すのに使う粉は、嘗ては専門の店が来て粉に挽いた。北長街に大きな穀物店があり、屋号を“泰来”といい、店の主人は山東・海陽の人で、姓は趙であった。内務府、御膳房の宦官などと交流があり、専ら宮廷で商いをし、小窩頭を蒸す“栗子面”はこの店で挽いたものであった。粉に挽く時に、乾燥させた栗の実を多少加えたと言われている。

■ 豌豆黄也是北京伝統食品,徐珂《清稗類鈔》云:

   京都点心之著名者,以面裹楡莢,蒸之為糕,和糖而食之。以豌豆研泥,間以棗肉,曰豌豆黄。

□ “豌豆黄”も北京の伝統食品である。徐珂《清稗類鈔》に言う:

   北京の点心の有名のものに、小麦粉の中に楡の実を混ぜ、蒸して蒸しパンにしたものに、砂糖をつけてこれを食べる。エンドウ豆をすりつぶし、中に棗(なつめ)の果肉を入れたものを、“豌豆黄”という。

■ 徐珂対做法説得太簡単,実際是像做澄沙一様,把豌豆煮得稀爛,用細籮濾過去其皮,豌豆湯澄淀成豌豆泥,加糖再煮,成糊状,加石膏作定型剤,放在容器中送到冰箱内冰鎮,凝固后便成。取出切成四方小塊,放在盤中,一色姜黄,方方正正,乍一望去很像一塊塊的高級“田黄”或“南瓜凍石”図章。近人雪印軒主《燕都小食品雑咏》云:

   従来食物属燕京,豌豆黄儿久著名,紅棗都嵌金屑里,十文一塊買黄瓊。

・澄沙 deng4sha1 こしあん。“澄”はdeng4と発音する時は、濁った液体を澄ませる、という意味。一方、cheng2は、水が清く澄んでいる、という状態を表す。或いは“澄清”cheng2qing1の形で比喩的に、混乱した状態をはっきりさせる、事実を明らかにする、という意味でも使う。“澄清”はdeng4qing1という発音でも使えるが、この場合は濁った液体を澄ませる、の意味しかない。
・稀爛 xi1lan4 どろどろ(な状態)。
・四方小塊 si4fang1 xiao3kuai4 通常は“四方塊儿”で四角、立方体の意味。
・姜黄 jiang1huang2 ウコン。
・方正 fang1zheng4 正方形である。形が整っている。[例]他的字写得方方正正(彼はきちんとした字を書く)。
・乍 zha4 [副詞]……したとたん。
・田黄 tian2huang2 福建寿山で採れる石で、印章用の高級石材。色は黄色である。
・凍石 dong4shi2 彫刻工芸品や印章に使われる石材で、きらきらして透明で、光沢がある。様々な色のものがあるが、黄色いものは、よくかぼちゃの形に彫刻を施し、“南瓜凍石”と呼ばれる。
・図章 tu2zhang1 印章。
・咏 yong3 詩や歌を節をつけて読む。物事を詩や歌に詠む。

□ 徐珂は作り方の説明が簡単過ぎる。実際は、こしあんを作る時のように、エンドウ豆をどろどろに煮て、細かい篩(ふるい)で皮を除き、エンドウ豆の煮汁を澄ませて沈殿したエンドウ豆のペーストに、砂糖を加えて再び煮、糊状になったら、石膏を加えて定型剤とし、容器に入れて冷蔵庫で冷やし、凝固したら出来上がりである。取り出して四角く切り、大皿に並べれば、ウコン色一色で、きちんと形が整っていて、見たところ、高級な“田黄”や“南瓜凍石”の印章のようである。近世の人、雪印軒主は《燕都小食品雑咏》でこう言っている:

   これまで、北京の食べ物では、“豌豆黄”がずっと有名であった。赤い棗(なつめ)が金の破片をちりばめたようになっている。一個10文で黄色い玉(のような“豌豆黄”)を買った。

■ 在詩后還有注釈説:“以去皮之豌豆,入砂鍋内,煮之成粥,后入以紅棗,俟水分漸干,即可成塊,満嵌紅棗,可観亦可食。”這説的也很好,不過這様做的,是推車小販在街上売的豌豆黄。這種街上売的豌豆黄,和棗煮在一起,不多放糖,不甚甜,是普通豌豆黄。北海倣膳売的豌豆黄,和好白糖煮,加点桂花,不放紅棗,做的十分細膩,是宮里的做法,是高級的豌豆黄。夏天喝茶時,買一盤豌豆黄,剛剛従冰箱中取出来,用牙簽扦qian1着吃,又甜、又軟、又涼、又香,入口即化。其甜和糯的滋味,正像日本作家五十嵐力所著《我的書翰》中説上野“空也”点心,“吃起来餡和糖及果実渾然融合,在舌頭上分不出各自的味来。”即日本式果子屋売的豆制“果子”(点心),而凉和香則是日本式“果子”所没有的,小窩頭和豌豆黄比較起来,那豌豆黄要好吃多了。老実説,大窩頭不好吃,小窩頭也同様不好吃。

・俟 si4 待つ。
・細膩 xi4ni4 きめが細かくなめらかである。
・扦 qian1 突き刺す
・糯 nuo4 粘り気がある。ねっとりした。

□ 詩の後には注釈があり、こう言っている:「皮を除いたエンドウは、土鍋の中にいれ、煮て粥(状)にする。その後、干し棗を加え、水分がなくなるのを待てば、塊りになり、あたり一面、赤い棗が散りばめられ、見た目も良いし美味しい。」この説明もたいへん良いのだが、こうして作ったものは、荷車を引いた行商人が街で売る“豌豆黄”である。こうした街売りの“豌豆黄”は、棗といっしょに煮るので、あまり砂糖を入れず、それほど甘くない。これが普通の“豌豆黄”である。北海公園の“倣膳”で売られる“豌豆黄”は、上等の白砂糖といっしょに煮られ、キンモクセイの花を加え、干し棗は入れない。たいへんきめ細かくなめらかで、宮廷式の作り方で、高級な“豌豆黄”である。夏に茶を飲む時、“豌豆黄”を一皿買うと、冷蔵庫から取り出してきたばかりで、これを楊枝で突き刺して食べると、甘く、軟らかく、冷たく、風味が良く、口に入れるや溶けてしまう。その甘くねっとりした味わいは、日本の作家、五十嵐力が《私の書簡》の中で言っている上野“空也”のお菓子のように、「口に入れると餡と砂糖と果実が混然一体と融合し、舌の上でそれぞれの味を見分けることができない。」これは日本式の菓子屋で売られている小豆で作った「菓子」(点心)であるが、冷たくて風味がよいものは日本式の「菓子」にも無い。“小窩頭”と“豌豆黄”を比べると、“豌豆黄”の方がずっと美味しい。正直に言うと、“大窩頭”は美味しくないが、“小窩頭”も同様に美味しくない。


【出典】雲郷《雲郷話食》河北教育出版社 2004年11月


にほんブログ村 外国語ブログ 中国語へ
にほんブログ村


にほんブログ村 グルメブログ 中国食べ歩き(チャイナ)へ
にほんブログ村


人気ブログランキングへ



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

沈宏非の食べ物エッセイ: 午夜的猪下水(真夜中の豚の臓物)

2011年03月27日 | 中国グルメ(美食)


  “下水”xia4shui3と言っても、「下水道」のことではありません。一般に“猪下水”と言い、豚の内臓、臓物のことです。中国では、豚をよく食べますが、豚の内臓料理も発達しています。“午夜”wu3ye4は真夜中の12時頃のこと。さて、真夜中に豚の内臓をどうするのでしょうか。ここに、広東の食文化の一つが見てとれます。

■ 許多年以后,我依然清晰記得第一天入学的情景。我想,這是因為小学一年級課室墻壁上的那幅彩色海報,主題詞:“猪的一身都是宝。”

・海報 hai3bao4 ポスター。本来は、芝居や映画の宣伝ポスターのことです。語源は、昔の上海で、商業演劇のことを“海”と言い、この商業演劇を職業にすることを“下海”と言ったそうです。こうした演劇や芝居の内容の宣伝の為、貼りだしたものを“海報”と呼ぶようになったそうです。

□ もう長い年月が経つのに、私は今でも学校に入学した初日の情景をはっきりと憶えている。思うに、これは小学一年生の教室の壁に貼られた色刷りのポスターのせいで、その表題には「豚の全身は皆宝物」と書かれていた。

■ 画面上有大白猪一口 ―― 確切地説,是大白猪之生理解剖図一幅。白猪随身携帯的所有物品,包括毎一肢体,毎一器官,毎一内臓,都被標簽了若干簡明扼要的文字,説明其民生及工農業用途。方框里的毎一段文字説明,皆有一条直線或斜線指向被説明的部位,看慣連環画的,会以為那是猪在做自我介紹。而時尚雑志経常刊出的街頭美女彩照之所以譲我倍感親切和懐旧,想必是因為美女的全身上下(不是剖面)也有一些由直線或斜線拉出的文字?分別説明着従染髪剤、眼影、口紅、項鏈、手机縄直到手鐲、靴子以及甲彩等物的品牌、価格和采購地。

・口 kou3 [量詞]家畜、主に豚を数える
・生理解剖図 sheng1li3 jie3pou1tu2 ここでの“生理”は、「生理学」の生理で、体内の各器官、機能のこと。“生理解剖図”は生物の体内解剖図のこと。
・肢体 zhi1ti3 手足
・扼要 e4yao4 要点をかいつまむ。要点を押さえる

□ 画面には大きな白豚が一頭描かれていた――正確に言うと、これは大きな白豚の体内解剖図であった。白豚が体内に持っている全ての物、それには一本一本の手足、一つ一つの器官、内臓が含まれ、全てに簡潔で要点を押さえた文字でラベルが付けられ、その私たちの生活や工業、農業での用途が説明されていた。四角の枠の中の文字による説明一つ一つには、直線や斜線で説明された部位が指し示され、見慣れた漫画のようで、これは豚が自己紹介しているかのように思えた。そして流行雑誌がよく載せている、街頭の美女のカラー写真が私にとって一層親しみ深く懐かしく思える由縁は、思うに美女の全身の上下(断面図ではない)に直線や斜線で引き出した文字があるからではないだろうか。それぞれ、ヘアカラー、アイシャドー、口紅、ネックレス、携帯ストラップからブレスレット、ブーツ、及びネイルアートなどのブランド、価格、購入場所が説明されている。

■ 丘吉尓説,猫藐視我們,狗景仰我們,只有猪与我們平等相処。按照紀暁嵐的看法,猪是最容易転世做人的一種畜生。這些説明固然不能証明,猪与人類是性情上最為相近的動物,不過,猪肯定是被人類做了最充分的開発利用的家畜。従猪鬃算起,猪皮、猪頭(又可分拆為猪耳、猪臉及猪脳)、猪脚、猪骨、猪血和以内臓為核心的一系列“下水産品”,可謂無一処不可用,無一処不可食。

・丘吉尓 qiu1ji2r正式名は、温斯頓・倫納・斯賓塞・丘吉尓爵士(Sir Winston Leonard Spencer Churchill)。イギリスの政治家、チャーチルである。ちなみに、称号の“Sir”は“爵士”jue2shi4。これは又、“Sir”を名乗ることを許される「ナイト」の爵位のことでもある。

・藐視 miao1shi4 見下げる。軽蔑する
・景仰 jing3yang3 敬慕する。敬い慕う
・相処 xiang1chu3 付き合う
・紀暁嵐 清・乾隆年間に活躍した政治家
・転世 zhuan3shi4 =転生 zhuan3sheng1 (仏教でいう輪廻にもとづき)生まれ変わる。
・畜生 chu4sheng1 “畜”は「家畜」という名詞で使う時はchu4と発音します。[例]家畜jia1chu4。一方、「家畜を飼う」という動詞で使う場合はxu4となります。[例]牧畜mu4xu4、畜産xu4chan3

・猪鬃 zhu1zong1 豚の首と背中の剛毛。ブラシを作るのに用いられる。

□ チャーチルは、こう言った。猫は我々を見下げる。犬は我々を敬い慕う。豚だけが我々と平等に付き合うと。紀暁嵐の見方によれば、豚は最も来世で人に生まれ変わり易い畜生である。これらの説はもとより証明することができないが、豚は人類と気持ちの上で最も近しい動物である。しかし、豚は間違いなく人類により充分に開発利用された家畜である。豚の剛毛から始まり、皮、頭(これは又、耳、顔、脳みそに分けられる)、豚足、豚骨、豚の血と、内臓を中心とする一連の“下水製品”、つまり臓物類は、一つとして使えないものは無く、一つとして食べられないものは無い。

■ 猪下水,又称猪雑,雖説猪心也是肉做的,但是包括猪心在内的“下水”,是不被認可作猪肉的。如果説猪肉是大部頭的小説或文集,猪雑就相当于雑文、小品文,或者専欄。“下水”的賤格,系生理功能上的“堕落”而令人産生強烈的不潔感和厭悪感,当然胆固醇也是一種更具科学性的顧慮。因此,它除了不能躋身猪肉的行列之外,進食“下水”者非但“堕落”,更是純属“自甘”。

・大部頭 da4bu4tou2 分厚い書物
・小品文 xiao3pin3wen2 小品。エッセイ
・専欄 zhuan1lan2 コラム
・胆固醇 dan3gu4chun2 コレステロール
・顧慮 gu4lv4 心配。懸念。気懸り。動詞として使うこともできる。
・躋身 ji1shen1 あるレベルや領域に身を置く。昇りつめる。[例文]~文壇(文壇に身を置く)/~于明星之列(スターの地位に昇りつめる)
・純属 chun2shu3 まさしく……である。まったく……である。[例文]~捏造(まったくのでっちあげだ)
・自甘 “自甘堕落” zi4gan1 duo4luo4 自堕落に甘んじる

□ 豚の“下水”、臓物は、また“猪雑”とも言う。豚の心臓も肉でできているけれども、豚の心臓を含む“下水”(臓物)は、豚肉とは見做されていない。もし豚肉を分厚い小説や文集とすれば、臓物、つまり“猪雑”は雑文、エッセイ、コラムに相当する。“下水”(臓物)の卑しさは、生理機能上の“堕落”であり、人に強烈な不潔感と嫌悪感をもたらす。もちろん、コレステロールもより科学性を備えた心配事である。だから、これらは豚肉の仲間の中に身を置くことができないばかりか、“下水”(臓物)を食べることは“堕落”であるばかりでなく、まさしく「自堕落に甘んじて」いるのである。

■ 小説《飄》中曾提到:“冷天和宰猪季節一到,白人就有新鮮猪肉,黒人也有猪下水好吃了。”除了善于猪腸這種堕落的外衣里填塞健康的内容,白人一向不近這類東西。不過,這并不表示白種人天性抗拒内臓。猪肝不僅是如假包換的内臓,而且完全是一副脂肪肝病変已到晩期的内臓。

・宰 zai3 家畜や家禽を殺すこと。する
・小説《飄》piao1 アメリカ マーガレット・ミッチェルの《風と共に去りぬ》
・善于 shan4yu2 ……に長けている。……が上手である。
・抗拒 kang4ju4 拒む。(体が)受け付けない
・如假包換 ru2jia3bao1huan4 =“如果假貨,保証交換”もし偽物だったら、必ず交換する。商店が客を信用させるための歌い文句。
・病変 bing4bian4 =病理変化 bing4li3 bian4hua4 病理の変化

□ 小説《風と共に去りぬ》の中で、こう書かれている。「冬になり豚を屠る季節が来ると、白人は新鮮な豚肉を得、黒人も美味しい臓物を得ることができた。」豚の腸のような、堕落の上着を纏いながら中に健康な内容を詰めるのに長けたものを除き、白人はずっとこうしたものには近づかなかった。しかし、このことは決して白色人種が生まれつき内臓を受け付けないということではない。豚のレバーは、「偽物だったら必ず交換する」という内臓であるだけでなく、脂肪肝が悪化して末期を迎えた内臓である。

■ 即使在我們中国人内部,対猪下水的態度也不是完全一致的。過去我一直認為,貧困是養成“連下水也不放過”之飲食習俗的主要原因。最近従一個走南闖北的朋友那里聴聞,即使在最貧瘠的北方偏遠地区,下水也従来都是扔掉喂狗的。進食下水之所以在改革開放以后漸成上述地区的新風尚,倒是因了富裕和小康,才被多出来的那份饞癆的閑心拉下了水。

・走南闖北 zou3nan2chuang3bei3 [成語]多くの地方を旅する。各地を遍歴する。
・貧瘠 pin2ji2 土地がやせている
・偏遠 pian1yuan3 辺鄙(へんぴ)で遠い
・喂 wei4 =喂養 wei4yang3 動物に餌を食べさせる
・進食 jin4shi2 食事する
・風尚 feng1shang4 風習。流行
・小康 xiao3kang1 家の経済状態がまずまずで、衣食住に困らない状態。社会が安定していること。これから更に進んで、皆が豊かになり、世の中から争いの無くなる理想的な世の中を“大同”と言う。
・饞癆 chan2lao2 病的なほどの食いしん坊。“饞”chan2は口がおごっていて、意地汚いこと。“癆”lao2は結核のこと。
・閑心 xian2xin1 心のゆとり
・閑心拉下了水 “閑心”が“拉下了水”(水を運んできた)と“下水”(臓物)を掛けて、洒落っぽい言い方にしている。

□ 私たち中国人の中でさえ、豚の臓物への態度は完全に一致はしていない。これまで私はずっと、貧困が「臓物さえ放っておかない」飲食習慣の主な原因であると思っていた。最近、各地を旅してきた友人から聞いた話では、最も土地のやせた北方の辺鄙な地方でさえ、臓物はこれまで捨てられ犬に食べさせるものであったそうである。臓物を食する所以(ゆえん)は改革開放後上記の地域で次第に培われた新たな風習で、豊さと安定により、逆に増えてきた病的な食い意地という心のゆとりがもたらしたものである。

■ 鵞肝及鵞肝醤出現在中国部分城市的部分餐卓之上,吃猪下水始升級為一種另類享受。広州人尤好此道,近郊番禺一帯的屠場,午夜十二点左右必有新鮮猪雑供応,故飛車前往当地的大排档赴猪雑之約,已成広州夜生活的最后一站。“午夜猪雑席”上最受歓迎的一道,是“水浸猪肝”,又称“猪潤水”:用猪骨、鶏脚及杞子、淮山、党参、桂元肉等薬材熬成湯底,再投入切片的鮮猪肝燙熟即食。于月黒風高之夜囲坐在郊外露天処大嚼三十分鐘前剛剛従生猪腹中取出之血淋淋、熱騰騰之物,這就是広州的城市浪漫経典,“午夜的收音机”,見你個大頭鬼去吧!

・鵞肝醤 e2gan1jiang4 フォアグラ
・月黒 yue4hei1=“月黒天”闇夜。月のない夜。陰暦の月末と月初めの月のない夜。“月黒夜”とも言う。
・淮山 huai2shan1 =“山薬”shan1yao4 山芋(ヤマイモ)のこと。淮河流域が産地であることから、“淮山”、“淮山薬”という呼び方がある。
・党参 dang3shen1 [漢方薬]党参(とうじん)。キキョウ科の植物で、根は強壮剤に用いられる。元々、山西省上党に産したのでこの名がついた。朝鮮人参より安価なので、その代用として用いられる。
・-淋淋 lin2lin2 [接尾語]形容詞、名詞の後について、「したたる」様を表す状態形容詞を作る。[例]血xue4~ 
・大頭鬼 da4tou2gui3 =“闊老”kuo4lao3 金持ち。(広東語)

□ がちょうのレバーやフォアグラが中国の一部の都市の一部の食卓に出現し、豚の臓物を食べることはある種の別の楽しみに昇格した。広州人はとりわけこの料理を好み、近郊の番禺一帯の場では、夜中の十二時頃に必ず新鮮な豚の臓物の供給があるので、車を飛ばして当地の屋台に行き、豚の臓物を予約することが、広州のナイトライフの最終コースとなっている。「真夜中の豚の臓物宴」で最も人気のある料理は、“水浸猪肝”、またの名を“猪潤水”と言う。豚骨、鶏の脚(もみじ)と枸杞(クコ)、山芋、党参、竜眼などの漢方薬の材料を煮詰めてスープのベースにし、そこへ薄く切った新鮮な豚のレバーを入れ、火が通れば食べられる。闇夜の風の強い夜、郊外の露天で席を囲み、三十分前に生きた豚の腹の中から取り出されたばかりの血のしたたる、熱々の物をむしゃぶり食う、これこそ広州の町のロマンの典型、「真夜中のラジオ」である。さあ、あなた方、金持ちの皆さんに会いに行こう。


【出典】沈宏非《写食主義》四川文藝出版社 2000年9月

にほんブログ村 外国語ブログ 中国語へ
にほんブログ村

にほんブログ村 グルメブログ 中国食べ歩き(チャイナ)へ
にほんブログ村

人気ブログランキングへ



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

《雲郷話食》を読む: 硬面孛孛(インミエンボォボ)

2011年03月04日 | 中国グルメ(美食)



 前回の孛孛(ボォボ)の話では、お供えにする“孛孛卓”のことを取り上げましたが、今回は、昔北京で夜、もの売りが売り歩いた“硬面孛孛”についてです。北京の街では、様々なもの売りの姿が見られたことが、書物に書かれ、中国漫才の相声のネタとして取り上げられていますが、“硬面孛孛”もその代表格の一つです。
 尚、前回同様、“孛”bo1の字は本当は食偏ですが、便宜上、食偏を省略し、“孛孛”bo1boと表記します。

     -*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-

■ 身無霊骨,不配作詩人,但小時候不知天高地厚,居然也写過詩,還写過白話詩。記得做中学生時写了一首詩,題名《老人的歌》。前面一節写道:“一首老人的歌,把氷涼的夜幕穿破,緩緩地来到我枕辺,像母親的手撫摸我進入夢郷。”我這里没把它分行写,権当作散文看吧。這詩中説的,正是北京旧時胡同中深夜売硬面孛孛(●食偏。以降、便宜上“孛孛”と表記する。bo1bo)的市声。

     “硬面 ―― 孛孛!?”

・霊骨 ling2gu3 生まれつき持った才能や素質
・不配 bu4pei4 ふさわしくない。~の資格がない。
・天高地厚 tian1gao1di4hou4 [成語]物事の難しさ、複雑さの形容。[用例]不知天高地厚:物事の難しさを知らない。身の程を知らない。
・権当 quan2dang4 ~と思えばよい。~とするがよい。
・夢郷 meng4xiang1 夢の世界

 生まれつき才能が無く、詩人になる素質が無いにもかかわらず、小さい頃は身の程を知らずに、詩を書いたことがあり、それも口語詩を書いた。確か中学生の時に詩を書き、その題を《老人の歌》としたのを憶えている。その前の方の一節にこう書いた。「老人の歌が、氷のように冷たい夜のとばりを突き破り、ゆっくりと私の枕もとにやって来た。母親の手でなでられるように、私は夢の世界に入って行った。」私はここで行を分けて書かなかったので、散文と思って読んでもらえばよい。この詩の中で言っているのは、正に北京の昔の胡同で、深夜に“硬面孛孛”を売りに来たもの売りの声である。

     “硬面 ―― 孛孛!?”

■ 其声音把“面”字拖的特別長,在韵尾部分有“儿”的余音,“孛孛”又声音急促。叫売硬面孛孛多在冬季深夜。在那極為寧静的深夜中,這種叫売声随着夜風,能穿過几進庭院,聴起来顕得特別凄涼,有一種孤苦無靠的感覚,凡聴到過這種叫売声的人,大概都很難忘記吧。我小時候聴慣了這種声音,而毎当聴到時,我已迷迷糊糊将進入夢郷。尽管我雖很少買硬面孛孛吃,却対它懐着深厚的感情。

・進 jin4 [量詞]北京の四合院の内部は、前後にいくつかの中庭があるが、その庭を数える。
・孤苦 gu1ku3 一人ぼっちで、寄る辺がないこと。[用例]孤苦無依的老人

 その声は“面”(ミェン)の字を特に長く引き伸ばし、語尾の部分に“儿”の音を残し、“孛孛”(ボォボ)のところでまた声は早口になる。“硬面孛孛”を売りに来るのは多くが冬の深夜であった。その極めて静かな深夜に、この呼び売りの声が夜風とともに、いくつかの中庭を越えて聞こえ、聞いてみるとたいへんもの寂しく、一人ぼっちで寄る辺のないような感じがし、このようなもの売りの声を聞いたことのある人は、おそらく忘れることができないだろう。私は小さい時からこの呼び声を聞き慣れていて、いつもこの声を聞く時は、もうまどろんで夢の世界に入っていた。私は“硬面孛孛”を買って食べたことはほとんど無いが、これには深い親しみを抱いている。

■ 硬面孛孛是什麼東西呢?《燕都小食品雑咏》有詩道:

     孛孛沿街運巧腔,余音嘹亮透灯窓,居然硬面伝清教,驚破鴛鴦夢一双。

・嘹亮 liao2liang4 声や音が高らかに響き渡る

 “硬面孛孛”とはどんなものなのか。《燕都小食品雑咏》にこんな詩がある。

     孛孛は街に沿って売り歩かれ、その呼び声の調子は巧みで、声の余韻が灯(ともしび)や家の窓を沁み通る。“硬面”(インミエン)ということばがはっきり伝わって教えてくれるので、そのため鴛鴦(おしどり)が、つがいで安らかにみている夢を破ってしまう。

■ 詩后有注云:“硬面孛孛,即火烙餅餌之類,惟多于夜間售売為可異耳。”這里“火烙餅餌之類”,説的還不够gou4清楚。据《一歳貨声》所載,這種孛孛有“子儿孛孛、双喜字加糖、硬面鐲子、咸螺螄転、油酥焼餅”等等。這些東西都是用発酵的面粉干烙的,午后烙,晩上背個食盒提着灯籠叫売,専門走很長的胡同。人們也許覚得奇怪,大家都睡覚了,這硬面孛孛還売給誰呢?実際這是専門為有不良嗜好、深更半夜不睡覚的人准備的。生意本是十分可怜的。那種孛孛只是発面和糖干烙的,大小如一個焼餅,堅硬難咬,一点也不好吃。但老北京人却喜愛它。記得有位満族親戚老太太,已是七十来歳的人了,已経咬不動硬面孛孛了,但却依旧愛吃它。把硬面孛孛擘bai1成小塊,放在口中慢慢咀嚼,似乎滋味無窮。不過在我的記憶中,総覚得硬面孛孛遠遠没有芝麻醤焼餅或馬蹄焼餅好吃。枝巣子《旧京秋詞》云:

     可怜三十六孛孛,露重風凄喚奈何?何処推窓呼買取,夜長料得女紅多。

・餅餌 bing3er3 小麦粉や米の粉などを捏ねて作った“餅”(ビン)と呼ばれる食べ物(主食にする)の総称。
・子儿 zi3r 小さくて硬い塊り
・双喜字 shuang1xi3zi4 “喜”という字を二つ横に並べて書いた模様。
・鐲子 zhuo2zi 腕輪
・螺螄 luo2si1 巻き貝
・油酥 you2su1 菓子やパイを作るのに、小麦粉に油脂やバターを練り込み捏ねたもの。“油酥焼餅”は小麦粉を平たく焼いた“餅”(ビン)の生地が、パイのように層になったもの。
・深更半夜 shengengban4ye4 [成語]深夜。真夜中。
・擘 bai1 両手で二つに割る。饅頭を両手で持って二つに割って食べるイメージ。
・咀嚼 ju3jue2 咀嚼する・女紅 nv3hong2 女性のやる仕事。
・三十六孛孛 この場合、“三十六”は具体的な数ではない。“三十六計”というように、極めて種類の多いことを言うのだろう。

 詩の後の注に言う。「“硬面孛孛”というのは、天火で焼いた、小麦粉を捏ねた餅(ビン)の類であるが、多くは夜間に売り歩かれるので、呼び売りの声を聞くとびっくりする。」ここで「天火で焼いた餅(ビン)の類」という説明では、まだはっきり理解できない。《一歳貨声》の記載によれば、こうした孛孛には、「小さくて硬い塊りの孛孛、“双喜字”の描かれた砂糖入りのもの、堅焼きの輪っかの形のもの、塩辛い巻き貝の形のもの、パイのように層になった焼餅(シャオビン)」などがあった。これらのものは発酵させた小麦粉を天火で焼いたもので、午後に焼いて、夜に背中に商品を入れた箱を背負って提灯を提げ、専ら長い胡同を売り歩いた。人々はひょっとすると不思議に思ったかもしれない、皆が寝静まっているのに、この硬面孛孛を誰に売るのだろうと。実際、これは専ら、良くない習慣で、真夜中にまだ寝ずに起きている人のために用意したものだ。商売自体大したことがなかった。そうした孛孛は発酵させた小麦粉に砂糖を入れて焼いたもので、大きさも同じ焼餅(シャオビン)は、硬くて噛めず、少しも美味しくなかった。しかし昔の北京の人はこれを愛した。確かある満州族の親戚のおばあさんは、もう七十過ぎの人だったが、もう硬面孛孛を噛むことができないのに、相変わらずこれを食べるのが好きだった。硬面孛孛を両手で持って小さな塊りに割り、口の中に入れてゆっくり咀嚼すると、その風味は無限に広がるようだ。けれども私の記憶の中では、いつも、硬面孛孛は、上に胡麻を振って味噌で照りのつけられた“芝麻焼餅”や馬蹄型をした“馬蹄焼餅”の美味しさには遠く及ばないと感じていた。枝巣子の《旧京秋詞》に言う:

     可哀そうな数多(あまた)の孛孛よ。冬のひどい風の中、もの悲しい呼び声をどうしようというのか。どこかで窓を開けて呼び止めて買われる。冬の長い夜、おそらく内職をする女が多いのだろう。

■ 枝巣老人是以忠厚的心吟唱的,詩后并注解説:“夜聞売硬面孛孛声,最凄惋。”老人并引《順天府志》,説是売給寒夜刀尺,深更做寒衣的婦女吃的。道光時余煌《京師新楽府》有《売孛孛》詩,写道:“売孛孛,携柳筐,老翁履敝衣無裳,風酸雪虐凍難耐,窮巷局立如蚕僵。売孛孛,深夜喚,二更人家灯火燦 ……” 把売硬面孛孛老人的形象写得十分感人。実在那深夜的叫売声太凄凉了。

      “硬面 ――孛孛……”

 這抑揚而有点凄凉的声音似乎又在我耳畔回響了。

・忠厚 zhong1hou4 正直で温厚である
・刀尺 dao1chi3 衣服を作ること。
・敝 bi4 破れた。ぼろぼろの。
・裳 chang2 衣服の下半身をおおう、はかまやスカート。
・二更 er4geng1 “更”は“初更”から“五更”まであり、日没から日の出までを5等分した時間で、1更は約2時間。“二更”は9時から11次までを指す。
・燦 can4 鮮やかに輝くさま。

 枝巣老人は正直で温厚な気持ちで詠っている。詩の後の注釈で、こう言っている。「夜、硬面孛孛を売る呼び声が最も寂しく悲しい。」老人は更に《順天府志》を引用し、寒い夜に服を作る人に売った。深夜、冬着を作る女達がこれを食べたと言う。道光帝の時、余煌の《京師新楽府》の中に《売孛孛》(“孛孛”売り)という詩が納められ、こう書かれた。「孛孛売りは、柳で編んだ籠を提げていた。年老いた翁は、靴は破れ衣服は下に履く袴も無く、寒風や雪に苦しみ、凍えて堪えがたく、貧しい家の並ぶ路地に立てば、蚕のように動きがにぶかった。孛孛売りは、深夜に呼び売りをする。二更(夜の9時から11時)頃は、人家の灯火は赤々と輝いている……」硬面孛孛売りの老人のイメージがうまく書かれ、たいへん人を感動させる。実際、あの深夜の呼び売りの声はたいへんもの寂しい。

      “硬面 ――孛孛……”

 この抑揚のある少しもの寂しい声が、また私の耳のそばでこだまするようである。


【出典】雲郷《雲郷話食》河北教育出版社 2004年11月


にほんブログ村 外国語ブログ 中国語へ
にほんブログ村

にほんブログ村 グルメブログ 中国食べ歩き(チャイナ)へ
にほんブログ村


人気ブログランキングへ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

《雲郷話食》を読む: [食孛] [食孛](ボォボ)

2011年02月27日 | 中国グルメ(美食)



 「ボォボ」とは、聞き慣れないことばです。そもそも、[食孛]という字自体、boという音に対して食偏を付けた造字で、これ以外には使われません。そこで、雲郷のこの文を読んで分かったのは、“孛孛卓”という満州族の風習で、これがこのことばの源流にあり、それが、清朝が300年余りの長きに続く中で、広く麺食を表すことばとなっていったようです。
 なお、この文の中では、便宜上、食偏を省略し、“孛孛”と表記しています。

     -*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-

■ “孛孛”(●食偏。以降、便宜上“孛孛”と表記する。bo1bo)這個詞語,是地地道道北京的土語,恐怕直到現在,北京的老年人還是這様叫吧?北京旧時点心舗,有的就叫孛孛舗,門前房檐下挂着四塊長木牌,紅漆金字作幌子,有一塊上一定写着“大小八件,満漢孛孛”八个字。這也好像飯館子写満漢全席一様。孛孛実際就是点心、糕点的同義詞。人們把好吃的糕点叫作香孛孛,方言中意思又有転折,如嘲笑“紅人”,大家都找的大忙人,就叫“香孛孛”,這在《紅楼夢》里用的極為伝神。這里且不多説,我只提個醒儿,留待読者自去翻閲吧。

・孛孛(実際は食偏)bo1bo 小麦粉など穀物の粉を焼いたり蒸したりして作った菓子。主に北京など北方の言い方
・地道 di4dao [形容詞]正真正銘の。生粋の。本場の。本文のように、重ねて“地地道道”di4didao4daoというように用いて、意味を強める。
・土語 tu3yu3 “土話”tu3hua4ともいう。方言。
・房檐 fang2yan2 軒。軒先。
・大小八件: 昔、北京や天津のお菓子屋で贈答用に売られているお菓子は、中に餡の入った、外側は型に入れて作った焼き菓子で、中の餡が八種類あって“八件”と呼び慣わした。大と小は大きさ、重さの違いで、大八件は、8個合わせて重さが1斤(500g)、小八件は8個合わせて重さが半斤(250g)であった。
・紅人 hong2ren2 売れっ子。人気者。
・伝神 chuan2shen2 真に迫る

 「ボォボ」ということばは、生粋の北京の方言で、おそらく現在でも、北京の年寄りはこう呼んでいるのではないだろうか。北京の昔のお菓子屋は、あるものは“孛孛舗”と呼ばれ、店の軒先には四枚の細長い木の看板が掛けられ、赤い漆の地に金文字で書かれた看板は、中の一枚には必ず「大小八件、満漢孛孛(満族風・漢族風の孛孛)」の八文字が書かれていた。これはちょうどレストランの看板に「満漢全席」と書かれているのと同じである。“孛孛”は、実際は“点心”、“糕点”と同義語である。人々は美味しいお菓子を“香孛孛”と呼んだが、そこから派生して、例えば「売れっ子」をからかうのに、皆が会いたがっている大忙しの人のことを、“香孛孛”と呼んだ。このことは《紅楼夢》の中でよく書けている。ここではこれ以上言わないが、敢えて指摘しておく。皆さん自身で実際に読んで確認してほしい。

■ 按:孛孛也可写作“波波”,或作“磨磨”、“莫莫(●食偏。mo2mo)”,実皆“畢羅(●共に食偏)bi4luo2”一詞的一音之転,意思都是一様的。楊升庵《升庵外集》中,就明確注明:“畢羅今北人呼為波波。”在北京方言中,它最少有三四種涵義。一是如満漢孛孛所説的,汎指一切糕点餅餌。二是売硬面孛孛的小販売的,的確是以孛孛命名的面餅等,如硬面孛孛、発面孛孛、杠子孛孛、笪da2子孛孛(即鐲zhuo2子孛孛,一個面做的圓圈)、片儿孛孛等等。三是“孛孛卓”的孛孛。四是把水餃也叫作煮孛孛。按《正字通》的解釈,“畢羅用面為之,中有餡”,因而就詞的内涵説,是有不少東西都可叫作孛孛的。

・畢羅(●共に食偏)bi4luo2 中に餡の入った点心のこと。
・涵義 han2yi4 “含義”とも書く。字句の中に含まれている意味。
・餅餌 bing3er3 小麦粉や米の粉で作った餅(ビン)類の総称。
・硬面 ying4mian4 後出の“発面”に対し、イーストで膨らませていないクッキー。“硬面孛孛”:堅焼きのクッキー
・小販 xiao3fan4 天秤棒を担いで街中を売り歩くもの売り。
・発面 fa1mian4“硬面”に対し、イーストで発酵させてふくらませ、柔らかく焼いたクッキー。
・杠子 gang4zi 棒。“杠子孛孛”で棒状のクッキー。
・笪子 da2zi 竹で編んだむしろ
・鐲子 zhuo2zi 腕輪
・片儿 pian1r 平たくて薄いもの。

 孛孛は“波波”とも書き、また“磨磨”、“莫莫(●実際は食偏)”とも書くことから、皆“畢羅(●共に食偏)”ということばの音が一つ転化したもので、意味は皆同じである。楊升庵《升庵外集》の中で次のように明記している。「畢羅は今の北方の人は“波波”と呼んでいる。」北京の方言では、これには少なくとも三、四種の意味を含んでいる。一つは“満漢孛孛”と言うように、およそ全ての菓子や餅(ビン)を指した。二つ目に、“硬面孛孛”(堅焼きのクッキー)を売るもの売りが売るのは、確かに“孛孛”の名の付いた菓子や餅(ビン)で、例えば、硬面孛孛(堅焼き)、発面孛孛(柔らかいクッキー)、杠子孛孛(棒状のクッキー)、笪子孛孛(すなわち鐲子孛孛。生地を丸い輪の形にして焼いたもの)、片儿孛孛(薄焼)などがあった。三つ目は“孛孛卓”の孛孛である。四つ目は、水餃子も“煮孛孛”と呼んだ。《正字通》の解釈によれば、「畢羅は小麦粉でこれを作り、中に餡がある」。したがって、ことばの内包する意味から言うと、多くのものを“孛孛”と呼ぶことができる。

■ 以上四種,第一種最容易理解,第二種将另文説明,這里先説説第三種。這是一種有関満族風俗的特殊東西,在几十年前旗人家庭中還常常遇到,因之要稍微細説一下。《京都竹枝詞》有詩道:

     満洲糕点様原繁,踵事増華不可言,惟有卓張遺旧制,几同告朔餼xi4羊存。

・旗人 qi2ren2 清朝の時代、満州族の貴族は八つの“旗”に属した(八旗)ことから、満州族の貴族のこと。
・竹枝詞 zhu2zhi1ci2 竹枝(ちくし)。七言絶句に似た漢詩の形式。土地の風俗や人情を詠んだものが多い。
・踵事増華 zhong3shi4zeng1hua2 “踵”は追随する、継続する、の意味。前人の事業を継続し、より完璧なものにすること。
・告朔餼羊 gu4shuo4xi4yang2 魯では文公から自ら祖廟で祭祀を行わなくなり、生贄の羊を一匹殺させてお茶を濁したという故事から、いつも通り対処してお茶を濁すことを言う。“告朔之礼”というのは、毎月一日に生きた羊を殺して祖廟に祭ることを言う。“餼”xi4は生きた家畜のこと。

 以上の四つのうち、一つ目は最も分かり易い。二つ目は別の文で説明する([訳者注]この後に《硬面孛孛》という題の一文が続く)。ここでは先ず三つ目について説明しよう。これは満州族の特殊な風習で、数十年前は旗人の家庭ではよく眼にすることができた。したがってやや詳しく説明しよう。《京都竹枝詞》に次のような詩がある。

     満州族の菓子の種類は元々たいへん多かったが、それがその後発展したとは言い難い。ただそれらをテーブルに並べてお供えするという古い制度は、“告朔之礼”で生きた羊を生贄にするのと同じように存続している。

■ 這種詩可能有的読者看不懂,這“卓張”就是孛孛卓。這是一種很古老的風俗,清代同、光時喬松年《蘿摩亭札記》云:

     満洲筵宴,以餅餌為尚。按楼攻愧《北征行紀》謂遼宴使臣,茶食以大盤陳四十碟,此似今之孛孛卓矣。

・使臣 shi3chen2 使節
・茶食 cha2shi2 茶菓子

 このような詩は読者の中には意味が分からない人がいるかもしれない。ここにある“卓張”(テーブル)というのが“孛孛卓”なのである。これはたいへん古い風習で、清代の同治、光緒時代の喬松年《蘿摩亭札記》に言う:

     満州族の宴席では、小麦粉などで作った餅(ビン)や菓子類が尊ばれた。楼攻愧《北征行紀》によれば、遼が使節を接待する時、茶菓子を大きな盆の上に小皿40枚分並べたそうで、このことは今日の“孛孛卓”に似ている。

■ 這也就是辧紅白喜事宴客以及過年擺的餅供。宴客不設菜肴,只擺点心果品,即孛孛卓。《紅楼夢》中“寿怡紅群芳開夜宴”所説擺四十碟果子,似即孛孛卓。至于過年時,一般家庭由孛孛舗買来敬神的餅供,那是很蹩bie2脚的。一大畳面餅,堆起来一只比一只小,像座小塔,或二盤,或四盤,或六盤,擺在高卓上敬神行礼,這就叫作孛孛卓,過寿叫寿意孛孛,喪事叫層台孛孛等等。孛孛的外形看着像“自来紅”月餅,却不能吃,都是半生半熟的。

・紅白喜事 hong2bai2xi3shi4 紅事は結婚式、白事は葬式のこと。冠婚葬祭。
・餅供 bing3gong1 餅(ビン)、つまり小麦粉で作ったお供え。
・蹩脚 bie2jiao3 品質が悪い
・自来紅月餅 北京の伝統的な月餅で、日持ちするよう固く焼かれていて、表面は砂糖で白く塗られ、てっぺんに赤い印が付けられている。餡も乾した果物や砂糖を煮詰めたもので、お供えに用いれるよう、日持ちはするが、美味しくなかった。

 これは、冠婚葬祭で客をもてなしたり、年越しの時に並べる菓子のお供えでもある。客をもてなすのに料理を用意せず、菓子や果物だけを並べる。すなわち“孛孛卓”である。《紅楼夢》の「怡紅の誕生日を祝い群芳が夜宴を開く」(第63回)で四十皿の菓子を並べると言っているのも、孛孛卓に似ている。年越しの時、一般家庭では孛孛舗から神様を祭る菓子のお供えを買ってくるが、それはたいへん品質が悪い。何段にも重ねられた小麦粉の菓子で、上へ行くほど小さくなるように並べられ、小さな塔のようで、二基、或いは四基、或いは六基から成り、背の高いテーブルの上に並べて神様を祭る礼拝をする。これが孛孛卓と呼ばれ、誕生日の時は“寿意孛孛”、葬式では“層台孛孛”と呼ばれる。孛孛の外観は“自来紅”の月餅のようだが、食べることはできず、十分には火が通っていない。

■ 第四是老北京把煮餃子叫作煮孛孛,這是非常親切的。外祖母対小外孫説:“好孩子,乖啊 ―― 姥姥給你煮孛孛吃!”結婚時,新郎和新婦要吃子孫孛孛、長寿面。取子孫万代、長生不老之意。

 四つ目は、北京っ子が餃子を茹でることを“煮孛孛”と呼ぶことで、これはたいへん親しみがある。おばあさんが孫に言う:「おりこうさん、おばあさんがおまえに孛孛を煮てやるからね。」結婚の時は、新郎、新婦は“子孫孛孛”と“長寿面”を食べないといけない。何代も絶えることなく子孫が続き、長生きできますように、という意味である。

■ 売満漢孛孛的孛孛舗,大部分都開在鼓楼前、后門大街和東四一帯,舗子里自己不做点心孛孛,門市所売均是作坊送来的。這種作坊叫“紅炉会子行”,恐怕也是北京老式孛孛舗中買不到好点心的一個原因吧。早在三十年代,豈明老人就写文章嘆息当時北京没有好茶食、好点心了。

  “満漢孛孛”を売る孛孛舗は、大部分が鼓楼前、后門大街、東四一帯に店を構えていたが、店では自分では菓子を作らず、店で売るものは全て工場で作って届けられたものだった。こうした工場を“紅炉会子行”と言ったが、おそらく北京の伝統的な孛孛舗では美味しい菓子が買えない原因の一つだろう。早くも1930年代に、豈明老人は文章の中で当時の北京には美味しいお茶受けや菓子が無いと嘆いていた。


【出典】雲郷《雲郷話食》河北教育出版社 2004年11月

にほんブログ村 外国語ブログ 中国語へ
にほんブログ村

にほんブログ村 グルメブログ 中国食べ歩き(チャイナ)へ
にほんブログ村


人気ブログランキングへ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする