中国語学習者のブログ

これって中国語でどう言うの?様々な中国語表現を紹介します。読者の皆さんと一緒に勉強しましょう。

《雲郷話食》を読む: [食孛] [食孛](ボォボ)

2011年02月27日 | 中国グルメ(美食)



 「ボォボ」とは、聞き慣れないことばです。そもそも、[食孛]という字自体、boという音に対して食偏を付けた造字で、これ以外には使われません。そこで、雲郷のこの文を読んで分かったのは、“孛孛卓”という満州族の風習で、これがこのことばの源流にあり、それが、清朝が300年余りの長きに続く中で、広く麺食を表すことばとなっていったようです。
 なお、この文の中では、便宜上、食偏を省略し、“孛孛”と表記しています。

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■ “孛孛”(●食偏。以降、便宜上“孛孛”と表記する。bo1bo)這個詞語,是地地道道北京的土語,恐怕直到現在,北京的老年人還是這様叫吧?北京旧時点心舗,有的就叫孛孛舗,門前房檐下挂着四塊長木牌,紅漆金字作幌子,有一塊上一定写着“大小八件,満漢孛孛”八个字。這也好像飯館子写満漢全席一様。孛孛実際就是点心、糕点的同義詞。人們把好吃的糕点叫作香孛孛,方言中意思又有転折,如嘲笑“紅人”,大家都找的大忙人,就叫“香孛孛”,這在《紅楼夢》里用的極為伝神。這里且不多説,我只提個醒儿,留待読者自去翻閲吧。

・孛孛(実際は食偏)bo1bo 小麦粉など穀物の粉を焼いたり蒸したりして作った菓子。主に北京など北方の言い方
・地道 di4dao [形容詞]正真正銘の。生粋の。本場の。本文のように、重ねて“地地道道”di4didao4daoというように用いて、意味を強める。
・土語 tu3yu3 “土話”tu3hua4ともいう。方言。
・房檐 fang2yan2 軒。軒先。
・大小八件: 昔、北京や天津のお菓子屋で贈答用に売られているお菓子は、中に餡の入った、外側は型に入れて作った焼き菓子で、中の餡が八種類あって“八件”と呼び慣わした。大と小は大きさ、重さの違いで、大八件は、8個合わせて重さが1斤(500g)、小八件は8個合わせて重さが半斤(250g)であった。
・紅人 hong2ren2 売れっ子。人気者。
・伝神 chuan2shen2 真に迫る

 「ボォボ」ということばは、生粋の北京の方言で、おそらく現在でも、北京の年寄りはこう呼んでいるのではないだろうか。北京の昔のお菓子屋は、あるものは“孛孛舗”と呼ばれ、店の軒先には四枚の細長い木の看板が掛けられ、赤い漆の地に金文字で書かれた看板は、中の一枚には必ず「大小八件、満漢孛孛(満族風・漢族風の孛孛)」の八文字が書かれていた。これはちょうどレストランの看板に「満漢全席」と書かれているのと同じである。“孛孛”は、実際は“点心”、“糕点”と同義語である。人々は美味しいお菓子を“香孛孛”と呼んだが、そこから派生して、例えば「売れっ子」をからかうのに、皆が会いたがっている大忙しの人のことを、“香孛孛”と呼んだ。このことは《紅楼夢》の中でよく書けている。ここではこれ以上言わないが、敢えて指摘しておく。皆さん自身で実際に読んで確認してほしい。

■ 按:孛孛也可写作“波波”,或作“磨磨”、“莫莫(●食偏。mo2mo)”,実皆“畢羅(●共に食偏)bi4luo2”一詞的一音之転,意思都是一様的。楊升庵《升庵外集》中,就明確注明:“畢羅今北人呼為波波。”在北京方言中,它最少有三四種涵義。一是如満漢孛孛所説的,汎指一切糕点餅餌。二是売硬面孛孛的小販売的,的確是以孛孛命名的面餅等,如硬面孛孛、発面孛孛、杠子孛孛、笪da2子孛孛(即鐲zhuo2子孛孛,一個面做的圓圈)、片儿孛孛等等。三是“孛孛卓”的孛孛。四是把水餃也叫作煮孛孛。按《正字通》的解釈,“畢羅用面為之,中有餡”,因而就詞的内涵説,是有不少東西都可叫作孛孛的。

・畢羅(●共に食偏)bi4luo2 中に餡の入った点心のこと。
・涵義 han2yi4 “含義”とも書く。字句の中に含まれている意味。
・餅餌 bing3er3 小麦粉や米の粉で作った餅(ビン)類の総称。
・硬面 ying4mian4 後出の“発面”に対し、イーストで膨らませていないクッキー。“硬面孛孛”:堅焼きのクッキー
・小販 xiao3fan4 天秤棒を担いで街中を売り歩くもの売り。
・発面 fa1mian4“硬面”に対し、イーストで発酵させてふくらませ、柔らかく焼いたクッキー。
・杠子 gang4zi 棒。“杠子孛孛”で棒状のクッキー。
・笪子 da2zi 竹で編んだむしろ
・鐲子 zhuo2zi 腕輪
・片儿 pian1r 平たくて薄いもの。

 孛孛は“波波”とも書き、また“磨磨”、“莫莫(●実際は食偏)”とも書くことから、皆“畢羅(●共に食偏)”ということばの音が一つ転化したもので、意味は皆同じである。楊升庵《升庵外集》の中で次のように明記している。「畢羅は今の北方の人は“波波”と呼んでいる。」北京の方言では、これには少なくとも三、四種の意味を含んでいる。一つは“満漢孛孛”と言うように、およそ全ての菓子や餅(ビン)を指した。二つ目に、“硬面孛孛”(堅焼きのクッキー)を売るもの売りが売るのは、確かに“孛孛”の名の付いた菓子や餅(ビン)で、例えば、硬面孛孛(堅焼き)、発面孛孛(柔らかいクッキー)、杠子孛孛(棒状のクッキー)、笪子孛孛(すなわち鐲子孛孛。生地を丸い輪の形にして焼いたもの)、片儿孛孛(薄焼)などがあった。三つ目は“孛孛卓”の孛孛である。四つ目は、水餃子も“煮孛孛”と呼んだ。《正字通》の解釈によれば、「畢羅は小麦粉でこれを作り、中に餡がある」。したがって、ことばの内包する意味から言うと、多くのものを“孛孛”と呼ぶことができる。

■ 以上四種,第一種最容易理解,第二種将另文説明,這里先説説第三種。這是一種有関満族風俗的特殊東西,在几十年前旗人家庭中還常常遇到,因之要稍微細説一下。《京都竹枝詞》有詩道:

     満洲糕点様原繁,踵事増華不可言,惟有卓張遺旧制,几同告朔餼xi4羊存。

・旗人 qi2ren2 清朝の時代、満州族の貴族は八つの“旗”に属した(八旗)ことから、満州族の貴族のこと。
・竹枝詞 zhu2zhi1ci2 竹枝(ちくし)。七言絶句に似た漢詩の形式。土地の風俗や人情を詠んだものが多い。
・踵事増華 zhong3shi4zeng1hua2 “踵”は追随する、継続する、の意味。前人の事業を継続し、より完璧なものにすること。
・告朔餼羊 gu4shuo4xi4yang2 魯では文公から自ら祖廟で祭祀を行わなくなり、生贄の羊を一匹殺させてお茶を濁したという故事から、いつも通り対処してお茶を濁すことを言う。“告朔之礼”というのは、毎月一日に生きた羊を殺して祖廟に祭ることを言う。“餼”xi4は生きた家畜のこと。

 以上の四つのうち、一つ目は最も分かり易い。二つ目は別の文で説明する([訳者注]この後に《硬面孛孛》という題の一文が続く)。ここでは先ず三つ目について説明しよう。これは満州族の特殊な風習で、数十年前は旗人の家庭ではよく眼にすることができた。したがってやや詳しく説明しよう。《京都竹枝詞》に次のような詩がある。

     満州族の菓子の種類は元々たいへん多かったが、それがその後発展したとは言い難い。ただそれらをテーブルに並べてお供えするという古い制度は、“告朔之礼”で生きた羊を生贄にするのと同じように存続している。

■ 這種詩可能有的読者看不懂,這“卓張”就是孛孛卓。這是一種很古老的風俗,清代同、光時喬松年《蘿摩亭札記》云:

     満洲筵宴,以餅餌為尚。按楼攻愧《北征行紀》謂遼宴使臣,茶食以大盤陳四十碟,此似今之孛孛卓矣。

・使臣 shi3chen2 使節
・茶食 cha2shi2 茶菓子

 このような詩は読者の中には意味が分からない人がいるかもしれない。ここにある“卓張”(テーブル)というのが“孛孛卓”なのである。これはたいへん古い風習で、清代の同治、光緒時代の喬松年《蘿摩亭札記》に言う:

     満州族の宴席では、小麦粉などで作った餅(ビン)や菓子類が尊ばれた。楼攻愧《北征行紀》によれば、遼が使節を接待する時、茶菓子を大きな盆の上に小皿40枚分並べたそうで、このことは今日の“孛孛卓”に似ている。

■ 這也就是辧紅白喜事宴客以及過年擺的餅供。宴客不設菜肴,只擺点心果品,即孛孛卓。《紅楼夢》中“寿怡紅群芳開夜宴”所説擺四十碟果子,似即孛孛卓。至于過年時,一般家庭由孛孛舗買来敬神的餅供,那是很蹩bie2脚的。一大畳面餅,堆起来一只比一只小,像座小塔,或二盤,或四盤,或六盤,擺在高卓上敬神行礼,這就叫作孛孛卓,過寿叫寿意孛孛,喪事叫層台孛孛等等。孛孛的外形看着像“自来紅”月餅,却不能吃,都是半生半熟的。

・紅白喜事 hong2bai2xi3shi4 紅事は結婚式、白事は葬式のこと。冠婚葬祭。
・餅供 bing3gong1 餅(ビン)、つまり小麦粉で作ったお供え。
・蹩脚 bie2jiao3 品質が悪い
・自来紅月餅 北京の伝統的な月餅で、日持ちするよう固く焼かれていて、表面は砂糖で白く塗られ、てっぺんに赤い印が付けられている。餡も乾した果物や砂糖を煮詰めたもので、お供えに用いれるよう、日持ちはするが、美味しくなかった。

 これは、冠婚葬祭で客をもてなしたり、年越しの時に並べる菓子のお供えでもある。客をもてなすのに料理を用意せず、菓子や果物だけを並べる。すなわち“孛孛卓”である。《紅楼夢》の「怡紅の誕生日を祝い群芳が夜宴を開く」(第63回)で四十皿の菓子を並べると言っているのも、孛孛卓に似ている。年越しの時、一般家庭では孛孛舗から神様を祭る菓子のお供えを買ってくるが、それはたいへん品質が悪い。何段にも重ねられた小麦粉の菓子で、上へ行くほど小さくなるように並べられ、小さな塔のようで、二基、或いは四基、或いは六基から成り、背の高いテーブルの上に並べて神様を祭る礼拝をする。これが孛孛卓と呼ばれ、誕生日の時は“寿意孛孛”、葬式では“層台孛孛”と呼ばれる。孛孛の外観は“自来紅”の月餅のようだが、食べることはできず、十分には火が通っていない。

■ 第四是老北京把煮餃子叫作煮孛孛,這是非常親切的。外祖母対小外孫説:“好孩子,乖啊 ―― 姥姥給你煮孛孛吃!”結婚時,新郎和新婦要吃子孫孛孛、長寿面。取子孫万代、長生不老之意。

 四つ目は、北京っ子が餃子を茹でることを“煮孛孛”と呼ぶことで、これはたいへん親しみがある。おばあさんが孫に言う:「おりこうさん、おばあさんがおまえに孛孛を煮てやるからね。」結婚の時は、新郎、新婦は“子孫孛孛”と“長寿面”を食べないといけない。何代も絶えることなく子孫が続き、長生きできますように、という意味である。

■ 売満漢孛孛的孛孛舗,大部分都開在鼓楼前、后門大街和東四一帯,舗子里自己不做点心孛孛,門市所売均是作坊送来的。這種作坊叫“紅炉会子行”,恐怕也是北京老式孛孛舗中買不到好点心的一個原因吧。早在三十年代,豈明老人就写文章嘆息当時北京没有好茶食、好点心了。

  “満漢孛孛”を売る孛孛舗は、大部分が鼓楼前、后門大街、東四一帯に店を構えていたが、店では自分では菓子を作らず、店で売るものは全て工場で作って届けられたものだった。こうした工場を“紅炉会子行”と言ったが、おそらく北京の伝統的な孛孛舗では美味しい菓子が買えない原因の一つだろう。早くも1930年代に、豈明老人は文章の中で当時の北京には美味しいお茶受けや菓子が無いと嘆いていた。


【出典】雲郷《雲郷話食》河北教育出版社 2004年11月

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