テレビ朝日「時は立ちどまらない」 山田太一ドラマスペシャル
山田さんは、二年前に
NHK土曜ドラマ「キルトの家」で震災と老人問題を比較して描いた。震災から三年近く経てば当事者以外、頭をかすめることさえまれなのではないか?
ただ、震災以来「絆」、「家族」、「一人ではない」等の言葉だけが一人歩きしているような気がする。人間は基本的に個である。家族もまた個である。震災を語る時エゴの問題がどこかに置き去りにされている。きれい事ばかりが増殖する。

この作品は人間のエゴをテーマにしているように思われる。婚姻で親戚になる予定の家族。一方は被災し一方は無事だった。一方は救済を受ける側で一方は施す側だった。被災した家族は救済の手をさしのべる家族の家具を壊して逃げ去る。「自分たちの不幸に巻き込みたくない」という新しい視点が示される。
ドラマに明確な答えはない。ただ、

人間は他人を考えることが出来る。また、他人なしでは生きていけないのも確かだ。そして、「時は立ちどまらない」。震災は今も続いている。原発は再稼働に向かって進んでいる。今こそ傍観者が震災を考える時かもしれない。