朝8時半に博物館に入る。フロアーの掃除。ほとんど人が訪れないので汚れがない。だが、決めた行程で丁寧に掃除をする。トスカナ石は柔らかい布で丁寧に拭く。丘の上に立つ廃墟。それは城砦なのだろう。石の中から浮かび上がってくる。最初は見えなかった光景が見え始めていた。見るたびにそれは変化し、現実味を帯びてくる。そこにあるように。一通り掃除が終わると、サイホンでコーヒーを入れる。パンを一枚焼く。バターを少し塗る。10時。入口の札をOPENにする。
森へ行った子供は帰ってこなかった。子供の靴が見つかった。それ以外は何もなかった。
イローナの朝は早い。まだ星が出ている。納屋の掃除、葡萄畑の道具を揃える。雑草を引き、秋の収穫に備えるのだ。家族はまだ誰も起きてこない。水汲みに近くの泉に行く。透き通った水で、顔を洗い、口をすすぐ。深呼吸をする。そして、静かに歌い始める。
優はかすかな歌声を聞いた。近所のテレビかレコードかと思ったが、歌声は二階から聞こえてくる。「三日に一度」。今日はその日だった。階段を上がる。歌声ははっきりしてくる。ドアーの前に立つと、スーと消えた。鍵を差し込みドアーを開ける。部屋の隅に肖像画はあった。少し左の方を見ている。澄んだ瞳が印象的だ。白い頭巾を被り、右手に天秤を持っている。時の秤にそっくりだった。ilona。イローナ。右隅に書かれた文字はそう読めた。
森へ行った子供は帰ってこなかった。子供の靴が見つかった。それ以外は何もなかった。
イローナの朝は早い。まだ星が出ている。納屋の掃除、葡萄畑の道具を揃える。雑草を引き、秋の収穫に備えるのだ。家族はまだ誰も起きてこない。水汲みに近くの泉に行く。透き通った水で、顔を洗い、口をすすぐ。深呼吸をする。そして、静かに歌い始める。
優はかすかな歌声を聞いた。近所のテレビかレコードかと思ったが、歌声は二階から聞こえてくる。「三日に一度」。今日はその日だった。階段を上がる。歌声ははっきりしてくる。ドアーの前に立つと、スーと消えた。鍵を差し込みドアーを開ける。部屋の隅に肖像画はあった。少し左の方を見ている。澄んだ瞳が印象的だ。白い頭巾を被り、右手に天秤を持っている。時の秤にそっくりだった。ilona。イローナ。右隅に書かれた文字はそう読めた。