猫研究員の社会観察記

自民党中央政治大学院研究員である"猫研究員。"こと高峰康修とともに、日本国の舵取りについて考えましょう!

ODA企画・実施それぞれ一元化―ODA改革で政府案の方向性明らかに

2006-01-13 05:51:27 | 外交・国際問題全般
 政府開発援助(ODA)の管轄などをめぐって、昨年秋以来、政府系金融機関の再編問題に端を発する形で検討が進められてきた。最近明らかになった政府案では、ODAの企画立案部門と実施部門をそれぞれ一元化して二本立てで行くという方向である。
 まず、実施機関の方は、国際協力機構(JICA)を母体とする「国際援助機構」(仮称)に統合し、円借款を実施してきた国際協力銀行(JBIC)は廃止する。JBICのこれまでの非効率性や援助決定までの経過の不透明性を考えれば、廃止は当然である。外務省の無償資金協力の機能もここに統合する。一方、企画立案機関としては、外務省の下に「援助庁」(仮称)を創設することを検討している。これは、外務省の経済協力局を中心に、文部科学省の留学生交流部門や、厚生労働省、警察庁の途上国との人事交流部門などを統合するというものである。現行の13省庁がかかわる現行の複雑な体制を改めるべきなのは当然であるが、外務省に集約してしまって果たしてよいものか疑問は残る。そのトップを首相や閣僚が直接任免する「政治任用」ポストとして首相補佐官を充てて企画立案に首相の意向を反映させる案も出ているようだ。しかし、形としては外務省が巻き返しに成功したといって過言でないと思う。もちろん、ODAは外交に密接に結びついているという外務省の論理も筋論としてはその通りだし、ましてや外務省を敵視する気はさらさらないが、過去におけるODAに関する戦略性の欠如という蓄積を見ると、やはり官邸直属の「対外援助庁」を設置する価値はあるのではないかと考える。ODAという分野は試行錯誤の許される分野である。したがって、一度”失敗”している(もちろん功績も認めるにやぶさかではないが)外務省から管轄を官邸に移してみるべきである。それでうまく行かないようならば、また外務省に戻してもよい。少なくとも外務省がODAに関して新しい戦略を示せていないことは確かである。
 ついでに指摘しておくと、二国間援助だけでなく国際機関への任意拠出金を含めたバランスにもっと注意を注ぐべきであろう。これは対外援助における重要な戦略の一つである。


(関連エントリー)
『ODA改革は「二正面作戦」―外務省・財務省が抵抗 』
『「国際開発庁」を設置すべきだ』


(参考記事)
[ODA企画・実施それぞれ一元化、「援助庁」など創設]
 政府は10日、政府開発援助(ODA)を担う機関を、実施と企画立案のそれぞれで一元化する方針を固めた。
 実施機関は「国際援助機構」(仮称)に統合し、円借款を実施してきた国際協力銀行(JBIC)は廃止する。企画立案機関は、外務省の下に「援助庁」(仮称)の創設を検討している。体制を簡素化し、効率的な援助を実現するのが狙いだ。
 国際援助機構は、技術協力を担当している国際協力機構(JICA)が母体となる。ここに、JBICの円借款の機能と、外務省の無償資金協力の機能を統合する形だ。
 JBICについては、2005年の政府系金融機関改革で一時、他機関と統合する方向となったが、財務省が「円借款と企業融資などの国際金融を一体的に行うことで、初めて被援助国での日本の権益が確保できる」などと反対し、結論を先送りした。
 政府内ではJBICに関し、無駄な援助が多いことや援助決定までの経過が不透明なことへの批判が根強い。
 また、政府は08年度をめどに中国に対する円借款の新規供与を終了することを決めており、今後は円借款を縮小し、アジア・アフリカ向けの無償資金協力や技術協力を充実させる方向となっている。
 こうした事情から、「JBICを存続させる意義は薄い」との判断に傾いた。国際金融業務は、政府系金融機関の統合で誕生する新機関に移す。
 ODA全体のあり方については、安倍官房長官の下に設置した私的諮問機関「海外経済協力に関する検討会」(座長=原田明夫・前検事総長)が、3月末までに結論を出すことになっている。政府は、検討会の判断を待って最終的な結論を出し、関連法案を06年の通常国会に提出する方針だ。新体制移行は08年度を目指す。
 一方、援助庁は外務省の経済協力局を中心に、文部科学省の留学生交流部門や、厚生労働省、警察庁の途上国との人事交流部門などを統合し、13省庁がかかわる現行の複雑な体制を改める。
 トップは、首相や閣僚が直接任免する「政治任用」ポストとする方針で、首相補佐官を充てて企画立案に首相の意向を反映させる案も出ている。
 ただ、自民党には「何らかの形で内閣官房がODA全体の戦略調整をする機能は必要」(中川政調会長)との声もあり、慎重に検討する必要があるため、実現は09年度以降となる見込みだ。
(読売新聞) - 1月10日14時51分更新


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3 コメント

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Unknown (暇人28号)
2006-01-13 12:57:11
中国に対する円借款は感謝もされず、友好にも役立たず軍事費やアフリカの諸国への援助に化けているようです。中国が脅迫まがいの継続を要求で、中止もできないとは情けない。8年に中止などと言わず即刻中止できないでしょうかね。
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トルコ訪問 (wnm)
2006-01-13 18:50:05
こんばんは。小泉首相はトルコ訪問中ですが、最近読み始めた渡辺豊和『扶桑国王蘇我一族の真実』によると、蘇我氏、それから、その血を引く聖徳太子は自らのルーツでもある西域諸国(北東ユーラシアのトルコ系の小国群、ペルシャ、インド)をバックに中国の隋王朝と相対したとか(例の「日出る所の天子、日沈むところの天子に.......」です)。外務大臣のインド訪問と併せて考えると、非常に興味深いですね。遠交近攻です。今の旧ソ連のタジキスタン、キルギスタン、カザフスタンはロシアの影響が強く、聖徳太子の時代とは様相が異なりますが、中国を牽制するという日本にとっての戦略的な重要性は変わらないのではないでしょうか。
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コメントありがとうございます (猫研究員。(高峰康修))
2006-01-14 01:30:13
>暇人28号様

全くもって、対中ODAは即刻停止するのが筋です。2008年というのは悠長な話ですが、これでも今までの内閣だったらできかったかもしれません。そう思うと、現内閣を褒めるべきか、これまでの情けなさを嘆くべきか…。



>wnm様

トルコから中央アジアにかけてのシルクロード諸国、それからインドとの関係強化は、もちろん対中牽制の一環でしょう。これは、米国の世界戦略ともシンクロしています。さらに、イスラム圏にトルコのような親日国家が存在することの意義は、それ自体極めて大きいものです。復興後のイラクも中東における重要な親日国家たりえます。
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