猫研究員の社会観察記

自民党中央政治大学院研究員である"猫研究員。"こと高峰康修とともに、日本国の舵取りについて考えましょう!

ODA改革続報―企画立案・実施ともに内閣府・首相直轄案

2006-01-16 00:09:56 | 外交・国際問題全般
 ODA改革についての動きの続報をお届けする。政府の方針と海外経済協力に関する検討会の意見が入り乱れて、正直言って混乱の極みである。1月13日に『ODA企画・実施それぞれ一元化―ODA改革で政府案の方向性明らかに』の中で、企画・立案部門は外務省のもとに一元化し、実施部門はJICAを母体に一元化するという方向性を紹介した上で「官邸直轄にするか少なくとも官邸の関与をもっと強めるべき」という趣旨のコメントをした。しかし、最新の動きでは、企画立案部門は内閣官房に新組織を作って統括する方向性となっている。実施部門についても内閣府が一元的に所管すべきだという意見が出てきている。参考記事に是非目を通してみてください。
 さて、国際援助について、内閣府のもとに「国際援助庁」を設置して、戦略的かつ効果的な国際援助を実施していくことは正しい方向性であると思う。例えば英国の対外援助もそのような形をとっており、大いに参考にすべきであろう。しかし、一連の議論では組織の形態に関する議論ばかりが目立ち、具体的にどういう方向で何を所管するのかといった本質的な論議が忘れられているように見える。国際援助において、2国間援助と国際機関を通じた援助のベストミックスがいかにあるべきか、など色々論点はあるはずである。今回の議論は、もとはといえば政府系金融機関の統廃合に端を発するものである。仮に、そのゆえに組織論先行という本末転倒気味な動きになっているのだとすれば遺憾なことである。せっかくのODA改革がやっつけ仕事になってしまっては無意味である。


(参考記事1)
[内閣官房にODAの新組織=企画・立案を統括-政府方針]
 政府は14日、円借款など政府開発援助(ODA)の企画・立案を統括する新組織を内閣官房に設置する方針を固めた。現在、13省庁で構成する対外経済協力関係閣僚会議がODA大綱や中期計画などを議論しているが、年に数回開かれる程度で形骸(けいがい)化している。担当省庁を絞り込んで新組織を機動的に運営し、政治主導で援助政策を推進する体制を整える考えだ。 
(時事通信) - 1月15日7時1分更新

(参考記事2)
<ODA>企画立案を一元化 首相直属の新組織設立へ
 政府の「海外経済協力に関する検討会」の第3回会合が12日、首相官邸で開かれ、円借款、無償資金協力、技術協力の3機能に分かれた政府開発援助(ODA)の企画立案を統括する新組織を首相直轄で設ける方向で一致した。ODAの一体的な運用を実現させるための「司令塔」に位置づける考え。
(毎日新聞) - 1月12日21時25分更新

(参考記事3)
[ODA検討会 首相の関与強化で一致]
 政府開発援助(ODA)のあり方を考える「海外経済協力に関する検討会」(座長・原田明夫前検事総長)の第三回会合が十二日、首相官邸で開かれ、ODAの企画、立案は、首相サイドの関与を強める仕組みにすべきだとの見解でほぼ一致。実施部門は円借款を担う国際協力銀行(JBIC)の機能存続を求める意見が出され、円借款と無償資金協力、技術協力の三分野を一元化させるかどうかが、今後の焦点となりそうだ。
 この日のヒアリングでは、技術協力を担う国際協力機構(JICA)の緒方貞子理事長が、「円借款、無償資金協力、技術協力を統合することで相互効果を高めることができる」と主張。これに対し、JBICの篠沢恭助総裁は「ODAと民間資金の整合的な運用が重要だ」と述べ、JBICが担ってきた非ODA関係の国際金融機能の役割の重要性を訴えた。日本経団連の米倉弘昌副会長も、「日本の公的国際金融は窓口が一つであることが望ましい」と、JBICの機能を存続させるべきだとの考えを示した。
(産経新聞) - 1月13日2時53分更新

(参考記事4)
[内閣府がODA実施を所管 一元化で戦略的活用]
 政府開発援助(ODA)のうち実施業務を内閣府が一元的に所管する見直し案が政府内で浮上していることが12日、明らかになった。現行の実施業務は外務省の無償資金協力、国際協力銀行(JBIC)の円借款、国際協力機構(JICA)の技術協力に分かれている。こうした業務を内閣府に集約することで、ODAの戦略的活用や効率化に向けた政府一体の態勢をつくるのが狙いだ。
 現在、13省庁がかかわっている企画立案業務については外務省に委ねるべきだとの意見も出ているが、慎重論があり調整が続いている。
(共同通信) - 1月12日21時27分更新


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4 コメント

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「ベストミックス」大賛成 (Taka)
2006-01-18 18:45:19
シリーズでのご報告ありがとうございます。

まさにおっしゃる通りで、二国間援助と国際機関を通した援助のベストミックスを考えることは大切です。日本にとって必要と考えられても、「日本」を表に出さないほうが良い場合、日本だけではできない場合もありますから。

「海外経済協力に関する検討会」に出された資料(第一回資料6)を見ると、2004年実績で「国際機関に対する出資・拠出」は約30億ドルで、二国間援助の2分の一の規模にもなります。この予算もまとめて管理しないと意味を成さないと思います。以前外務省から移す云々というご発言がありましたが、これは、財務省にもいえると思いますが、いかがでしょうか。

(こうした面でも英国援助庁が参考になります。)

それから、これも昔から言われていることですが、日本の援助は万年素人が担当している状況です。皆さんジェネラリストで転勤なさって、例えば外務省でもODAを受け持っている人も次から次へと変わられます。これでは、プロの集団である他の国や国際機関の人たちになかなかかないません。そういった意味でも、企画立案さらに実施を専門のところで一手にさせるということは大事です。財務省や他の省庁をも率いるとなると、やはり内閣府でしょうか。(それにしても、どこから人材を見つけてくるんでしょうかね。)
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Takaさまへ (猫研究員。(高峰康修))
2006-01-18 23:43:57
いつもコメントありがとうございます。

当該国際機関が国際社会において価値の高いものとみなされている場合には、国際機関を通して援助することにより、ジョゼフ・ナイがいうところのソフトパワーが高まりますしね。

財務省の分というのは、資料6の中の「国際機関(財務省所管)1788億円」というのを指しているのだと思いますが、当然これも一元化して内閣府のもとで管理しないと改革にはならないですよね。

組織論と並んで重要なのが、再三指摘してくださっている「人材」の面なのですが、ゆっくりだけれども着実に育成していくしかないのかもしれません(かなり抽象論ですが)。対外援助庁を内閣府に設置したとして、スペシャリストを育成できなければ失敗に終わってしまいます。当面はJICAなどからリクルートするしかないのでしょうが、これまでのしがらみとの関連で、全面的に依存するとこれまた改革の妨げになるだろうし…。難問です。

これからも現場の声を是非お聞かせください。
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ソフトパワーの鍵は「人」 (Taka)
2006-01-19 13:59:45
まさに、ソフトパワーです。これはある人の意見の受け売りですが、「顔」の見える援助だけでなく、「声」を出していくことも必要です。そのためには、しつこいようですけれど、人材が鍵。



これまで、日本でも開発関係の育成機関が、大学も含め、かなり増えているようですし、民間コンサル、NGOなど、日本にも、そして海外にも国際機関、国際NGO、研究所などにいらっしゃる日本人の方がかなりいらっしゃいます。

周りを見渡すだけでなく、いっそのこと公募するということを考えてみるのも良いかと思いますが。しがらみの無い優秀な人はたくさんいらっしゃいます。
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Takaさまへ (猫研究員。(高峰康修))
2006-01-20 02:00:08
声が届いて説得力に至るのがソフトパワーですからね。

公募による人材発掘はよい考えですね。ちょっと視野が狭かったというか、迂闊にも思いつきませんでした。近年の対外開発政策においてNGOなどの果たしている役割は目覚しいものがあります。それらのネットワークの調整も任務に入るでしょうから、そういったところなどから公募することは大いに意義あることですね!
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