猫研究員の社会観察記

自民党中央政治大学院研究員である"猫研究員。"こと高峰康修とともに、日本国の舵取りについて考えましょう!

『中東和平へ”MATO”創設を』―米タイムス誌

2007-02-09 01:00:55 | 外交・国際問題全般
 読売新聞2月8日付「世界の論調」欄に掲載された『中東和平へ”MATO”創設を』という米タイムス誌の論説が興味深いのでご紹介したい。


『中東和平へ”MATO”創設を』
 60年前、ソ連の共産主義拡大という地球規模の脅威を前に、米国の指導者は驚くべき創造力を発揮した。世界銀行やマーシャルプランなどが創設された中で、最も重要なのはNATO(北大西洋条約機構)だった。
 イスラム過激派という新たな脅威に対しても、我々は想像的で大胆な着想を駆使できるはずだ。当時の米国務長官、マーシャルとアチソンならどうするか。おそらく「MATO(Mideast Anti-terrorism Organization)」を創設するだろう。
 MATOは西側諸国と、アラブ穏健派諸国の軍や警察、情報機関などで構成される。最大の効果を挙げるためには、イスラエルを加えなければならない。それにはヨルダン川西岸からの撤退を可能にするイスラエル、パレスチナ間の和平が必要だ。
 新同盟が、スンニ派、シーア派の宗派対立を煽らない保証も課題になろう。イラク新政府が参加するなら、米国からの治安権限委譲を助け、シーア派指導者とイランとの関係を断ち切ることも可能となる。
 だが、根本的な問題点がある。アラブ穏健派とされるエジプト、サウジアラビアでさえ、民主主義の模範生とは言い難い点だ。
 米同時テロ以来、ブッシュ政権は、不安定化の危機が迫る地域にも理想主義と新保守主義を推し進め、民主化を目指した。それは長期的には正しいかもしれないが、現実はより複雑で負の効果があった。パレスチナ自治区での選挙やイランが示すように、民主主義は必ずしも穏健化に結びつかないからだ。
 マーシャルやアチソンなら、NATO型の反テロ連合に加え、インドやトルコ、イスラエルまでの民主主義国家による世界連合を作っただろう。民主主義の理想を育て、反テロ軍事同盟として安全保障上の利益確保も可能だ。
 これなら、中東民主化の負の側面を最低限に抑えられる。特にイスラエル、パレスチナ間の憎悪を取り除けば、エジプトやサウジアラビアなどの指導者の安心感を生む。そして、民主主義と改革の道はより開かれたものになる。
(米タイムス誌2月5日号)


 我が国は、新たな外交の柱として「自由と繁栄の弧」という概念を掲げている。これは、東南アジア、中央アジアから東欧に至る新興民主主義国家群への支援を積極的に行い、民主主義と経済発展に貢献することで、ひいては地域の安定化や天然資源確保を通じて国益を追求しようとするものである。具体的には、次のようなものが挙げられている。すなわち、カンボジア・ラオス・ベトナムへの支援継続、中央アジアの自立的発展の支援とアフガニスタンの安定、グルジア・ウクライナ・アゼルバイジャン・モルドバの安定などである。
 ところで、中東地域は我が国のエネルギー源供給地域であるとともに、自由と繁栄の弧にあたる地域の南西に隣接している。したがって、我が国が上記タイムズ誌の論説にあるような穏健な中東安定化構想に「自由と繁栄の弧政策」の延長として積極的に関与することは、十分に可能であるし望ましいことである。この地域の安定自体が我が国の国益に繋がるし、中東における我が国のプレゼンスを高めるチャンスだからである。幸い我が国は中東地域において敵意をもって見られているわけではない。この点では、かかる構想を推進するのに米国以上に適役といえよう。問題は日本の外交力がどれほどのものだろうかという点と、何よりも軍事力に関する憲法上の制約である。もっともこれらは外交全般について当てはまることではある。
 いずれにせよ、我が国が中東情勢にも積極的に寄与するという意思を持つならば、先の安倍・麻生訪欧の意義が深まるといえるだろう。EU諸国の有志とも中東の安定という課題を共有することで、多少なりとも独自外交といえるものが展開できることに繋がる。

☆ぜひとも、Blog●Rankingをクリックして、ランキングに投票して応援してくださいm(__)m


最新の画像もっと見る