猫研究員の社会観察記

自民党中央政治大学院研究員である"猫研究員。"こと高峰康修とともに、日本国の舵取りについて考えましょう!

高校教科書検定―領土問題、難易二極分化、私は検定不要論

2006-03-30 17:59:50 | 教育・教科書・学力
 文部科学省が二十九日に発表した、来春から使用される高校教科書の検定結果では、領土問題についての正確な記述を要求する方向で検定意見が付けられ、出版社側が修正した。ごくかいつまんで言えば、単に領土問題の存在を記述するだけではなく、我が国が実効支配していない北方領土と竹島に関しては「不法占拠されている」というニュアンスを出させ、尖閣諸島については我が国が実効支配しているので、「領土問題」ではなく「中国も領有権を主張している」という表現に改めさせた。今までになく正確を期した点で高く評価できる。実効支配の有無は極めて重要なポイントだからである。中学校の教科書でも、領土問題について詳しく記述するようになっている。
 ここで、私の個人的経験を申し上げると、中学生の時に、地図帳に載っていた各県の統計表の島根県の面積の項目に「竹島を含む」と見慣れぬ注釈がついているのが気になって、教科書を隅から隅まで調べてみたものの何の記述もなく、苦労して調べた記憶がある。教科書問題に興味を持つようになった原点なのかもしれない。そういうわけで、領土という国家主権に関わる問題を正確に教えるようになったことの意義に加えて個人的な感慨もある。
 それから、もう一点注目すべきなのは、難易度が二極分化の様相を呈し始めた点である。今流行の言葉である「格差社会」が教育界にも侵入してきたなどと批判する人もいるかもしれないが、難しすぎる教科書を使わされたり簡単すぎる教科書を使わされたりする生徒の身にもなってみてもらいたいものだ。必要最低限の内容すら教えないようなものは欠陥品に違いないが、それをクリアした範囲内で難易度がばらつくのは当然のことであり歓迎すべきことであろう。
 さて、私自身の長期的な考え方としては、今回の検定の評価とは別に、教科書検定という仕組み自体を廃止しても構わないと思う。その代わり、指導要領の内容を理解しているか全国統一学力テストを実施して確認しそれに実質的な統制力をもたせることと、教科書選定に裁判員制度のように一般国民を関わらせることにより自然淘汰の原理を働かせることをセットにする方向で改革すべきだと考えている。全国統一学力テストの成績を卒業要件に加えてもよいぐらいである。倫理道徳の涵養に関しては別途方策を講じる必要があるだろうが…。教科書検定という国の直接介入よりは、もっと間接的な介入の方が「小さな政府」の理念と整合的である。また、教科書選定が密室の合議で行われるという不透明性を打破する事が「左翼教師」の温床を断ち切ることに繋がる。



(参考記事)
[高校教科書検定 「日本の竹島、韓国占拠」 領土、正確な記述求める]
 文部科学省は二十九日、来春から使用される高校教科書の検定結果を発表した。領土問題や北朝鮮による拉致事件、「ジェンダー」用語などでより正確な記述を求める検定意見が付けられ、出版社側が修正した。一方で、南京事件の犠牲者数について二十万人以上説が最有力とするなど近現代史を中心に不適切な記述が数多く残った。
 竹島(島根県隠岐の島町)と尖閣諸島(沖縄県石垣市)は、前回検定(平成十三年度)より記述が増え、地理歴史、公民では世界史、倫理を除くほとんどの教科書が記述。四十カ所ある記述のうち、半数を超える二十六カ所に日本固有の領土であることを明確にするよう求めるなどの検定意見が付いた。
 尖閣諸島については「北方領土、竹島と違い日本が実効支配しており『領土問題』ではない」との立場から意見を付け、「日本の領土である北方領土と竹島は、それぞれロシアと韓国に占拠され、領土問題となっている。尖閣諸島も日本の領土だが中国などが領有を主張している」などと、北方領土や竹島の扱いと区別する記述に改められた。
 北朝鮮による拉致事件では、解決していないことを強調するよう求める検定意見が目立った。「北朝鮮から帰国した拉致被害者たち」との写真説明に「解決済みであるかのように誤解する恐れのある表現だ」との意見が付き、「しかし、まだ拉致被害者全員の帰国は実現していません」と追加された。
 「ジェンダー」(社会的・文化的な性差)については現代社会や家庭科など三十八種類が記述。「男らしさ・女らしさ」の否定ととられる記述などに検定意見が付いた。「ジェンダーフリー」(性差否定)は、現代社会の二種類にあったが、検定によって消えた。
 一方で、検定をパスした不適切記述も相次いだ。南京事件の犠牲者は二十万人以上説が最有力とする記述が登場するなど誇大な数字が記述されている。慰安婦については「日本軍により慰安婦にされた女性」が「日本軍の慰安婦にされた女性」に修正されるなど、軍による強制連行に検定意見が付いたが、主語のない強制連行記述はフリーパス。慰安婦を取り上げた二十五種類中、「強制的に連行」が二種類、「連行」が二種類ある。
     ◇
 ■ABCから復習 学力低下深刻 広がる難易差
 高校生の学力について二極化が広がる中、教科書会社は難易度が異なる複数の教科書を申請。生徒の学力に応じて教科書を選べる採択対策が定着した。大学受験問題を掲載し、進学対策を鮮明にした教科書もあれば、一方で、中学で習う英語の「ABC…」の復習から始まるものも。学力低下の深刻ぶりも浮き彫りとなった。
 高一生向けの英語Iで開隆堂は、進学校向けの教科書の難易度を上げ、逆に学力の低い学校向けの教科書レベルをさらに下げた。進学校向けは、導入部分の説明文を日本語から英語に。全体の英文量も増やした。逆に、やさしい教科書では、アルファベットを列記、十カ所の空白を埋めるコーナーから始め、一文あたりの単語数も少なくした。中学校で習う「不規則動詞の活用表」を巻末に掲載。大半が中学の復習で占めた。
 このほか、文英堂や桐原書店なども難易度別に教科書を発行。桐原書店のやさしい教科書では巻末の単語リストにカタカナで読み方を振っており、担当者は「上位層の学力は落ちていないが、中位層以下が落ちている。bとdの区別がつかない生徒もいる。学校からは『やさしくしてくれ』との要望が多い」と話した。
 合格した三十四種類の英語I教科書を見ると、四種類が「ABC…」の復習を盛り込んでおり、現行の採択率に照らした場合、一割弱の十三万人がこうしたやさしい教科書で学ぶ計算だ。
 国語総合も同じ傾向。二社が、やさしい教科書を新たに作成、種類を増やし三種類に。このうちの一つは、これまでより文章もやさしく、写真も多用。音読でつまずかないようルビも増やし、大きさもノート大にして生徒が書き込んで使うタイプにした。
 数学Iでは三種類の教科書を出していた会社が今回、さらにやさしいタイプを出版。「少しでも教科書を開いてほしい」との配慮で方程式と不等式の章ではマンガが登場した。
 理科では、三社が理科総合Aや化学Iなどで発行種類を増やした。理科総合Aで、これまでより難しい教科書を出した会社は、過去のセンター試験問題を載せ、「発展的内容」の問題も登場させた。化学Iを三種類にした会社は、進学の有無や受験先の文系・理系の別を考えて編集。進学希望者向けには発展を多く入れた。
(産経新聞) - 3月30日3時12分更新


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