猫研究員の社会観察記

自民党中央政治大学院研究員である"猫研究員。"こと高峰康修とともに、日本国の舵取りについて考えましょう!

「国際開発庁」を設置すべきだ

2005-11-26 20:01:13 | 外交・国際問題全般
 まずは補足説明から。23日のエントリーで「アメリカではODAを国際開発局が管轄している」と書いたけれども、1998年から国際開発局は国務省傘下に組み込まれている。これに対して、対テロ戦争の一環として、破綻国家を建て直すことがテロ組織の温床を絶やすことに繋がるという戦略的判断から、大統領直属の機関に戻すべしという議論がある。英国では、1997年に外務省から独立した国際開発庁を創設した。日本でも、外務省を中心に財務省、経済産業省などにまたがるODAを一元的に扱う庁を創設し、ODA戦略の効率化、一貫性確保を目指す「ODA庁」構想が出ては消え出ては消えてきた。
 このたびの政府系金融機関の統廃合の議論の中で、国際協力銀行(JBIC)のあり方を見直すにあたり、再びODA庁構想が浮上してきた。二十二日開かれた政府の経済財政諮問会議では、政府系金融機関改革に伴うJBICの取り扱いについて、(1)首相直属または国際協力機構(JICA)に統合(2)新機関として存続-の二案が示された。この中の「首相直属」というのがそれである。私は、このODA庁構想に賛成する。理由は、中川政調会長の言う「ODAは顔の見える外交という意味から、政府機関でやるべきだ」という言葉そのままである。外務省は「外務省がODAをハンドリングすべきだ。その線を守るために死力を尽くす」と早速反発している。塩崎恭久外務副大臣も二十四日の会見で、「ODAは首相の指揮の下で外相がまとめていくべきもので、ODAと外交は一体不可分だ。その基本を外さないで、どういう政府系金融の組織をつくっていくか。これからの勝負だ」と述べたそうだ。しかし、それならば、外務省が引き続きODAを管轄していくに当たりどのようなビジョンをもってやっていくのか明確に示すべきである。さもなくば、外務省主導を続ける正当な理由がないということになる。従来のODAはもちろん有益な側面も多くあったが、不明朗さという弊害や、それを用いていかなる日本外交を展開していくかというビジョンを欠いていたからである。軍拡を進める中国へのODAを唯々諾々と続けてきたことはその典型例である。「新組織をつくっても省庁間の協議が増えて逆に非効率だ。屋上屋を架すことになる」という官僚による批判も繰り返されてきた。しかし、これなどは、単に外務省中心の構造を崩されることへの抵抗ととられても仕方ない。実際、そうなのであろう。省庁間の協議が増えることは、ターゲットの厳選によって本当に必要なODAだけが実施されることにも繋がりうる。
 ODA予算は約一兆四千七百億円(平成十七年度)にのぼり、財務、経済産業など多くの省庁が関与するものである。これだけの額を支出(建て前では有償援助は返ってくることにはなっているが)するには、戦略の効率化と一貫性確保がなされなければばらない。そのためには、日本版「国際開発庁(ODA庁)」を内閣府の外局として設置するのがよいと、私は認識する。



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2 コメント

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言い得て妙 (劇団たぬき)
2005-12-03 18:36:05
>戦略の効率化と一貫性確保がなされなければばらない。



ホントそう思います。

そのためには、いままでの外務省(経済協力局)主導及び財務省・経済産業省がまたがるような分化体制で進めるよりも首相直属のODA庁(一元化)がよろしいかと思料します。



「ODAは顔の見える外交という意味から・・・・・・」というのも言い得て妙ですね。

なるほど。







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劇団たぬきさまへ (猫研究員。(高峰康修))
2005-12-05 00:18:26
コメントありがとうございます。

劇団たぬきさまが記事で触れておられる「ODA検討会」の議論の進展が楽しみです。

外務省は、自分のところが主にODAを管轄する今までの体制が一番効率がいいと主張していますが「役所が固執するところには省益あり」と判断して外れることはまずありません。
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