猫研究員の社会観察記

自民党中央政治大学院研究員である"猫研究員。"こと高峰康修とともに、日本国の舵取りについて考えましょう!

「憲法改正、自衛組織明記せよ」71%―讀賣世論調査

2006-04-05 00:44:45 | 憲法
 読売新聞社が実施した憲法に関する全国世論調査において、自衛のための組織を持つことについて、憲法上明確にすべきだと回答した人が71%に達した。「憲法改正は9条だけではない。国民はもっと多様な論点について議論を求めている。9条改正だけが一人歩きするのは世論を正しく反映していない」などという言説が、政治家や知識人と呼ばれる人々からまことしやかに流されがちだが、世論調査の結果を見る限り、国民の憲法改正に関する最大の関心事は、間違いなく第9条を中心とする安全保障面である。世論調査の数字を絶対視するつもりは毛頭ないが、大きな潮流を見るには十分な資料であろう。71%もの人々が、濃淡はあれ「自衛のための組織を持つことについて憲法上明確にすべきだ」と回答したことは健全なことであると思う。命を賭して国防に従事するという崇高な使命を持った組織が、憲法上全く言及されていないなど正常なことではない。一つには、日陰者扱いは申し訳なく、もう一つには、憲法上の存在でなければ存在が超法規的な色彩を帯びてくるので不都合なのではないかということである。
 ところで、現行憲法9条の解釈に関する大きな問題の一つに、集団的自衛権の行使を認めるか否かという点がある。集団的自衛権というのは、国際的な標準的解釈では次のようなものである。すなわち、侵略を典型例とする不法な武力攻撃を受けた国を、その国の要請と同意を得て第三国が、武力によるものであれそうでないものであれ、これを援護する権利である。武力攻撃を受けた際にいちいち第三国に援護をお願いしていたのでは甚だ心許ないので、平時からかかる契約をしておくのが同盟の本質である。従って、日米同盟を確実に運用するには集団的自衛権の行使をきちんと認めるべきだという議論になるわけである。政府の定義では、集団的自衛権とは「他国が第三国から武力攻撃を受けた場合、その他国と利害を同じくする我が国が、直接武力攻撃を受けていないにも関わらず、その他国を防衛するために第三国に対してなす武力の行使」ということだが、国際的に広く認められている定義とはいささか趣が異なる。そして、政府解釈によれば、「集団的自衛権は自然権として国際法上当然に保有しているが、憲法上これを行使できない」というものである。それで、集団的自衛権の行使を認めるためには、憲法改正が必要なのか解釈を改めれば十分なのかという問題が出てくる。私は、集団的自衛権が自然権であり9条が明文でこれを否認しているわけではない以上、解釈をただちに改めるべきだと考えている。しかし、この問題に関心が深い人ほど解釈変更ではなくて改憲によるべきだとする人が多いようだ。政府見解を改めることの政治的ハードルの高さや、解釈変更により集団的自衛権を認めてしまうことにより9条を改正するためのモメンタム(推進力)が一つなくなってしまうことへの警戒感があるのかもしれない。この点、今回の世論調査で興味深いと思ったのが、集団的自衛権に関して「憲法の解釈を変更して、使えるようにする」と答えた人が23%にも達した点である。これは、正直言って予想以上の数字であり嬉しい驚きである。
 自衛の組織を憲法上明記することは当然のこととして、ひとつ注文を付けたいのは、いわゆる国際貢献に関する事項である。国際貢献は、我が国が国際社会で安全に生存していくために不可欠の行為ではあるが、国際貢献を、自衛の組織を保有する憲法上の目的としてはならない。憲法にそう書いてしまえば、自衛の組織、すなわち軍隊に対して、その憲法は、国際社会のために命を賭して働けと命じていることになるからである。それでは、国防軍ではなくて「地球市民軍」になってしまう。国際貢献は、本来は憲法には何も書かずに法律で定めるべき事項である。国際貢献に関する憲法上の何らかの根拠がほしいのであれば、「国際の平和と秩序の維持のために用いることができる」という表現でなければならない。そこら辺のけじめは、軍の本質を考えると、決して軽いものではない。
 いずれにせよ、憲法9条を改正して自衛隊を憲法上の存在にすべしという要請は、国民世論の面からも正当性を持つものであることは間違いない。「時期尚早」という批判はもはや当たらない。時期尚早だと主張する人には、いつが一体その時期なのか、逆に質問したいところである。一日も早く、9条を中心とする憲法改正を具体的な政治日程に乗せる事が、政治家の務めであると思う。



(参考記事)
[改憲賛成が9年連続で過半数、「自衛組織」明記71%]
 読売新聞社が実施した憲法に関する全国世論調査(面接方式)で、「改正」に賛成の考えを示す人が56%に上り、1998年以降9年連続で半数を超えた。
 また、現行憲法では触れられていない、自衛のための組織を持つことについて、憲法上明確にすべきだとする人が71%に達した。11月に公布から60年を迎える現行憲法だが、社会や時代の変化に対応した新たな憲法を求める国民の声が強いことが改めて浮き彫りになった。
 調査は、3月11、12の両日に行った。
 憲法を改正する方がよい理由では、「国際貢献など今の憲法では対応できない新たな問題が生じているから」47%が最も多かった。
 今の憲法を「改正しない方がよい」は32%だった。
 憲法改正の焦点である9条に関しては、「解釈や運用で対応するのは限界なので、改正する」が39%で5年連続最多だった。「これまで通り、解釈や運用で対応する」が33%、「9条を厳密に守り、解釈や運用では対応しない」は21%だった。
 「集団的自衛権」については、「憲法を改正して、集団的自衛権を使えるようにする」27%、「憲法の解釈を変更して、使えるようにする」23%を合わせた行使容認派が50%に達した。「これまで通り、使えなくてよい」は44%だった。
 憲法のどんな点に関心を持っているか――では、「戦争放棄、自衛隊の問題」49%が5年連続でトップ。これに、最近論議を呼んだ「天皇や皇室の問題」31%や「靖国神社への公式参拝の問題」28%が続いている。
(読売新聞) - 4月3日23時0分更新


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4 コメント

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全く同感です・・・・ (tsubamerailstar)
2006-04-05 14:00:27
「地球市民軍」は爆笑ですね!「自衛軍だと響きがカッコ悪いから帝國防衛軍がよくね?」と知人に話したら「あんた右翼?」と言われてしまいましたが。(爆)



>国際貢献に関する憲法上の何らかの根拠がほしいのであれば、「国際の平和と秩序の維持のために用いることができる」という表現でなければならない。



慧眼です。社労士の試験勉強やっている際に「期限を定めて督促することができる」という国民年金法の条文を初めて見た際に??だった(私は法律の学がないもので・・・・)ことを思い出しました。(汗)

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Unknown (猫研究員。=高峰康修)
2006-04-05 22:38:58
>tsubamerailstarさま

自民党案では

『自衛軍は、第一項の規定(筆者注:自衛の目的)による任務を遂行するための活動のほか、法律の定めるところにより、国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動及び緊急事態における公の秩序を維持し、又は国民の生命若しくは自由を守るための活動を行うことができる。』

となっているので問題ないんですよ。これが、国際貢献を前面に出したがっている民主党や公明党との折衝でおかしなことにならないように願うのみです。



>帝國防衛軍



実体は確かにそうですが…(笑)私は国防軍という名称を推奨(?)していますが、それでも「おどろおどろしい」とか言われますもん。
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変ですね (PJ)
2006-04-06 10:10:22
自衛軍より国防軍のほうが攻撃的に聞こえるのはなぜでしょう?w

耳慣れないせいなんでしょうかw
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Unknown (猫研究員。=高峰康修)
2006-04-07 00:39:47
>PJさま

米国防総省を連想するからじゃないですか?(笑)

まあ、戦後の風潮として「国防を考えるのは右翼だ」という変な刷り込みがなされてしまったからなのでしょう。
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