猫研究員の社会観察記

自民党中央政治大学院研究員である"猫研究員。"こと高峰康修とともに、日本国の舵取りについて考えましょう!

杉浦法相インタビュー「人権法案は白紙」「死刑制度廃止は軽々には結論出せず」

2005-11-03 06:15:43 | 訴訟・裁判・司法
 杉浦正健法相は二日、産経新聞などのインタビューに対して、問題が多いと指摘されている人権擁護法案に関して、白紙に戻して検討する意向を表明した。人権擁護法案とは、その名の通り差別等の人権侵害の被害者を救済することを趣旨とする法律である。大まかに言えば、人権委員会が人権侵害や「人権侵害を誘発・助長する恐れのある」発言や出版などに対して調査を行う権限を持ち、人権侵害等が疑われると認定された場合には、出頭や証拠品提出の要請、立ち入り検査を行うなどの措置を取ることができるというものである。また、罰則もある。本法案について懸念されている事柄は主に次の通りである。

1.人権侵害の定義が曖昧→罰則を伴う法律なので、これでは罪刑法定主義に反するのではないか?
2.人権委員会の権限が強大である→証拠品提出の要請、立ち入り検査など、司法官憲が発する令状によるべしとする憲法上の「適正手続き」に抵触しないか?
3.人権委員会に国籍条項がない→特定の国家の日本に対する敵対行為を非難することが、当該国家の国籍をもつ人により委員会が占められた場合、それが「差別行為」と認定されないか?
4.誤認定がなされた際の救済措置が曖昧
5.メディア規制→これに関しては凍結するとのことだが、インターネットに関しては規制される可能性なしとしない。

ざっと見ただけでもこれだけの疑問が出されている法案なのだから、白紙に戻して検討し直すというのは、妥当な判断である。これらの疑問は完全に拭い去っていただきたい。特に国籍条項は必ず入れなければならない。上記の事態が現実問題として起こるかどうか以前の問題として、日本国籍を持たない者が日本国民に対して「罰」すら与えることができる可能性など、論理的に考えて、あってはならないことである。

 人権擁護法案以外にもう一点注目されるのは死刑制度に関してである。就任時の記者会見で杉浦法相は「死刑執行の命令書には署名しない」と発言して後に撤回したという経緯がある。杉浦法相の念頭には死刑を廃止して終身刑を導入することがあるようだ。また、無期懲役の運用実態について、仮釈放を安易に認めすぎることを批判している。後者は全く正論であり全面的に賛同したい。言葉どおり実行していただきたい。死刑制度に関しては、現時点では私は廃止には反対である。死刑制度による威嚇効果はあると認識している。もっともこれには否定的な研究結果もある。結局のところ刑罰観の問題になる。すなわち、刑事政策の問題に属するのだから国民世論を聞くべきだということである。そして、国民世論は死刑制度容認論が多数である。

(参照記事)
[法相「人権法案は白紙」 メディア規制など問題視]
 杉浦正健法相は二日、産経新聞のインタビューに応じ、政府が来年の通常国会提出を目指していた人権擁護法案について、「このまま出せばつぶれるのは分かっている。通らない法案を出してもしようがない。どういう中身、出し方にするかもう一度、議論したい」と述べ、通常国会提出にこだわらず、白紙に戻して検討する考えを表明した。
 杉浦氏は法案は必要としながらも「中身に問題があったから、(さきの通常国会で)見送りになった」と指摘。具体的な問題点として「メディア規制の定義があいまい」「国籍条項がない」などを挙げた。
 さらに「法律は一度できると独り歩きする。与党できちんと詰めないとどうしようもない」として、法案を議員立法とし、与党内に新たなチームを作ったうえで、議論をやり直すよう求めた。
 人権擁護法案は、自民党の野中広務元幹事長らの主導で、平成十四年に国会に提出されたが、メディア規制の項目に報道機関が反発し、十五年十月の衆院解散で廃案となった。しかし、法務省や与党人権問題懇話会の古賀誠座長らは、メディア規制の部分だけを凍結して再提出を目指している。
 これに対し、自民党内の反対派は、「真の人権擁護を考える懇談会」を結成して対抗。党内手続きは中断している。
 また、杉浦法相は、刑法見直しに関し、「終身刑を導入せよという考えもあるし、無期刑の運用改善という考えもある。無期刑でも仮出所が多ければ有期刑と同じだ」と述べ、刑罰の運用実態を調査する考えを明らかにした。死刑制度廃止については、「世論調査などを考えると軽々には結論は出せない」と述べた。
(産経新聞) - 11月3日2時34分更新


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
とりあえず (大地)
2005-11-04 03:36:03
うちにコメントありがとうございました。この杉浦と言う人は色々と問題のある人であまり信用は置けないんですけどとりあえずこのニュースはよかったですね。先の総選挙で反対派が次々と落ちたり影響力を失ったのでどうしようかと思ってました。まあ新内閣にも推進派はいっぱいいるので油断はできませんが・・
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大地さま (猫研究員)
2005-11-04 08:13:45
コメントありがとうございます。

「死刑執行命令書に署名しない」なんて就任記者会見で言ってしまうのだから、それひとつで問題大ありなんですが、どれだけちゃんと「白紙に戻して検討」してくれるか注視しましょう。

そうなんですよね、人権擁護法案反対派は先の選挙で総崩れに近い状態ですね。ここは首相の決断一つにかかっています。
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