石橋みちひろのブログ

「つながって、ささえあう社会」の実現をめざす、民主党参議院議員「石橋みちひろ」の公式ブログです。

民主党マニフェストを読む:日米FTAについて

2009-08-02 22:00:23 | 政策
民主党が発表したマニフェストについて、メディアでもネットでもいろいろな論争が巻き起こってますね。先日ブログに書いたように、多くの国民が政党のマニフェストに興味を持って、政策論議と検証に参加するというのは、より開かれた参加型の政治をめざす私たちの方向性とマッチしていると思います。

さて、今日は、ネット上で話題になっている日米FTAについて。

私も、最初に民主党のマニフェストに目を通した時に、この箇所に赤線を引いて「農業への影響は?」とコメントを付していました。マニフェストには、政策各論の「7.外交」の項、「51.緊密で対等な日米関係を築く」の中で下記のように示されています:

「米国との間で自由貿易協定(FTA)を締結し、貿易・投資の自由化を進める」

実は、民主党政策集のINDEX2009では、「自由貿易協定(FTA)を推進」という記述になっていて、「なぜマニフェストで推進から締結へと踏み込んだのか?」という議論が沸き起こっているようです。でも、この点自体は本質的な問題ではないですね。そもそも「締結」することを念頭に「推進」するので、方向性自体はブレてない訳ですから。

議論すべきは、そもそも米国とのFTAを推進すべきなのかどうか、という点にあります。なぜ日米FTAが必要なのか、それによって日本は何を得て、何を失うのか、それが私たちの社会・経済・雇用にどのような影響を与えるのか、利益を最大化して、不利益を最小化するために何が必要なのか、そういう議論こそしっかりとすべきなのです。

私としては、今後の議論において、下記の視点が必要だと思っています。

まず、日米FTAが外交の項、特に日米関係のあり方についての項で提起されていることの是非です。確かに、日米関係を検討する際に、両国間の経済・貿易関係を併せて検討することは必要でしょう。しかし、FTAを純粋に政治・外交マターで処理するのは違うのではないかと。むしろ、WTO問題や、他国とのFTA問題と併せて、雇用・経済の項で位置づけて議論する方が適切なのではないかという気がしています。(なお、INDEX2009では、経済産業の項でWTO交渉やEPA/FTAに関する記述があるので、マニフェストでは省いただけなのかも知れません)

次に、一点目とも関連しますが、日米FTAだけを独立して取り上げるのではなく、WTOや他のFTAと併せた、全体的な視点でこの問題を議論することの必要性です。今、二国間のFTAが盛んに議論されているのは、多国間の枠組みであるWTOのドーハ開発ラウンド交渉が暗礁に乗り上げていることが影響している訳です。そもそもドーハ開発ラウンドでは、農業分野の自由化推進が主要な課題となっていますから、それを無視して日米FTAだけを議論しても仕方ないと思うのです。同時に日本は、オーストラリアとのFTA、日韓FTA、日欧FTA、日アセアンFTAなど、多くの個別FTAも検討しています。これらが連関して総体としてどのように日本社会・経済に影響を及ぼすのか、そういう視野で議論しないと、本当の将来像は見えて来ないでしょう。(なお、民主党もINDEX2009では、「EPA/FTAの適切な推進」と「一元的・一体的な交渉窓口の設置」を約束しています)

第三に、特に農業に対する影響については、他の農業政策と併せて議論する必要があるということです。今、ちまたでは、「日米FTAが日本の農業を壊滅」させ、「食糧自給率の更なる悪化につながる」という議論が盛んです。これは、日米FTAの影響(予想)を、現時点での日米農業の比較優位(米国における莫大な農業補助金の存在も含めて)の観点から見た時に当然、起こりうる懸念でしょう。例えば、農林水産省の試算(出所が明らかではありませんが)によると、FTAで関税などの国境措置が撤廃された場合、日本の農業総生産額の42%に相当する約3兆6千億円が失われ、食料自給率が12%に低下する可能性があるそうです。

しかし民主党は、「農業・農村の再生と活性化」を重要政策課題に据えて、所得保障制度、食料自給率向上、担い手支援、農地制度改革、6次産業化などの農業政策・戦略を併せて示し、「自由化との両立」をうたっています(INDEX2009の農林水産の項を参照して下さい)。つまり、将来を見据えた農業政策の全体像を議論せずして、日米FTA(の農業部分)だけを議論しても意味がないということですね。

そして最後に、これは日米FTAに限りませんが、議論の際に雇用と社会への影響をしっかりと検討することが重要です。連合も、政策・制度要求と提言2010~2011の中で、「二国間FTA/EPA締結にあたっては、労働者の権利を保護するために中核的労働基準遵守条項を組み込む。また、FTA/EPA交渉の前提となる共同研究会に労働組合を参画させる」と提言しています。これまでは秘密裏に交渉されていたFTAですが、FTAによって一番影響を受ける労働者の代表や他の利害関係者に準備段階からしっかり参画してもらうことによって、より社会的観点からFTAの是非、中身の検討がなされるように変えていかなければならないと思います。

以上、民主党マニフェストに含まれている日米FTAの推進(締結?)について、私なりの議論の視点を提示して見ました。まだまだ十分に理解し切れていないと思いますので、今後出されるであろう民主党からの詳しい説明を注視して、さらに理解を深めていきたいと思います。