古代地中海世界における神の多神教から一神教への変遷がテーマとなっているが、本書を読んで神の「数」ということを考えた。
存在する神の数が数学での方程式の解の数というもので類推することを許されるのであれば、一神教というのは、方程式の解の数がただ一つに限られる場合であろう。これに対して多神教というのは、解の数が複数あるものといえる。その場合に、解が特定の数でなくてもよいもの、すなわちどの解であっても正解である場合と、ある限られた複数の解のみが方程式を満たす場合とがあげられる。神が存在しないという無神論は、したがて方程式を満足する解が存在しないという場合であろう。
本書では社会の「危機と抑圧」と神の複数性の関係について触れられており、ほかの神々に対して排他的になるときに一神教が成立すると述べられていたが、それは方程式の解の成立条件がより限定的になるということであろうか。