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原潜保有 政府が検討 16年防衛大綱 中国に対抗も断念

2011年02月17日 | 防衛
2011/02/17 産経新聞

 平成16年にわが国の防衛の基本的指針となる前回の「防衛計画の大綱」を策定した際、政府内で極秘に原子力潜水艦の保有の可否が検討されていたことが16日、分かった。当時の複数の防衛庁幹部が明らかにした。中国が潜水艦戦力の近代化を急ピッチで進めていたことに対抗するためだった。だが、法的側面や予算、運用面で乗り越えるべきカベは多いとして、導入を断念した。原潜保有を検討した経緯が具体的に明らかになったのは初めて。

 海上自衛隊はディーゼル式などの通常動力型潜水艦しか保有していない。

 自民党政権が16年12月に前防衛大綱を策定するのに合わせ、防衛庁(当時)内では13年9月、防衛庁長官の下に「防衛力の在り方検討会議」が設置された。その際、テーマとして「日本独自の原子力潜水艦保有の可能性」を掲げた。

 日本が自主開発することに加え、米国から導入する案も検討した。念頭にあったのは、弾道ミサイルを搭載し「核抑止」を担う「戦略原潜」ではなく、艦船攻撃用の「攻撃型原潜」だ。

 原潜が通常動力型よりも高速性や長時間潜航で優れている点に着目し、中国海軍の潜水艦に対抗することを主眼に置いた。米議会調査局の報告書によると、中国は1990年代中頃から潜水艦増強を軍全体の近代化の中軸と位置づけ、2010年までに年平均2.6隻のハイペースで増やしていった。

 当時の防衛庁幹部によると、原子力の「平和利用」を定めた「原子力基本法」との法的な整合性や、日本独自で潜水艦用の原子炉が開発できるかといった技術論に加え、運用面にも踏み込んで議論した。

 前防衛大綱では潜水艦は16隻態勢を維持した。その上限内で原潜を保有した場合、潜水艦戦力全体の警戒監視任務に与える影響や、乗員の確保策や訓練方法なども総合的に検討した結果、導入は「時期尚早と判断した」(幹部)という。

 民主党政権は昨年12月に4度目となる防衛大綱を策定し、通常動力型の潜水艦を16隻態勢から22隻態勢に増やした。