学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

サントリー美術館「和ガラス 粋なうつわ、遊びのかたち」展

2010-05-13 19:02:48 | 展覧会感想
サントリー美術館で開催されている「和ガラス 粋なうつわ、遊びのかたち」展を見てきました。和ガラス、つまり江戸時代から明治初期に日本で作られたガラス製品の展覧会です。

展覧会を見終えて、率直に感じたこと。私は江戸時代の何を知っているのだろう?と思いました。あまりにも江戸時代について知らなさ過ぎるのではないかと。それほど私にとって衝撃的な内容でした。

ガラスの国内生産は、17世紀の初め頃から行われたようです。日本人は南蛮船がもたらしたガラス製品にあこがれて、自分たちでも作ってみようと考えたわけなんですね。出来上がったものはとてもモダンなデザインです。展示室に入ってすぐに展示してある《藍色ちろり》、《藍色緑杯》はとても美しく、これで夏に冷酒を飲んだらさぞかし美味いでしょう。ガラス製品はこうした器だけでなく、かんざし、のれん、虫かご、金魚鉢など、かなり幅広く使われていたようです。もちろん、一般庶民が日常使うものではなかったのでしょうが、こうしたものに囲まれて江戸時代の人々は生活していたことがわかります。

和ガラスを見て、江戸時代とは一体何だったのだろう?と考えさせられるような展覧会です。ぜひ、皆さんご覧下さい!
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ゴールデンウィーク最後の日

2010-05-05 19:40:22 | 仕事
長かったゴールデンウィークも、今日で終わりですね。連休中の美術館は大賑わいでした。多くの人に展覧会をご覧いただけることは、私にとってとても嬉しいことです。毎日バタバタしましたが、心地よい疲れでした。

さて、これから私はゴールデンウィーク(笑)代休です。本来なら旅行へ出るところですが、少し欲張って、日帰りで色々まわってきたいと思っています。日帰りの旅?の模様はブログでご紹介したいと思います。思う存分、美術館巡りをしてきたいものですね!

今夜は久しぶりに例の頭痛です。こればかりは痛くてたまらない。明日の休みを思う存分楽しむため、今夜はすぐに寝ることにします(笑)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

古典のページをめくる

2010-05-02 20:08:08 | 仕事
ゴールデンウィーク、暖かい陽気が続いていますね。近くの田んぼにもいつの間にか水がはり、蛙が少しずつ鳴き始めました。この陽気で、私の心身もともに回復!天気が悪くて、寒い日が続くと、人間の体はどうも調子が悪くなってしまうようです。

最近の私は、日本の古典に興味を持っており、寝る前に布団のなかでページをめくっています。『竹取物語』、『土左日記』、『更科日記』、『和泉式部日記』、『枕草子』、『方丈記』…とにかく面白い。私の今まで知らなかった世界が広がっている、といった調子です。怖い話もなかなか。上田秋成の『雨月物語』。夜中に小さくて淡いライトの下で読み出すと、結構震えてきます(笑)古典のなかでも『堤中納言物語』や『源氏物語』はかなり読解が難しいそうです。実際に私もページをめくってみましたが、ちょっとわからないところがあります。これは挫折するな…と思ったら、一度離れて、別な本を読んで回り道してみるのもまた一興。楽しんで読むことがまず第一ですね!

今日はこれから『耳袋』を読みます。これは江戸時代中期の随筆集。しばし、江戸の世界を楽しむことにいたしましょう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

林洋子著『藤田嗣治 手しごとの家』

2010-05-01 19:26:09 | 読書感想
現在の日本はストレス社会。ストレスから開放される意味でも、本当に豊かな生活とは何なのかが問われています。アートとふれあう動機として、「いやし」の要素が生まれ、これまで以上に価値観が多種多様になってきたことを実感します。

昨日紹介した『藤田嗣治 手しごとの家』が読み終わりました。藤田の「手しごと」をテーマに豊富な図版が組み込まれており、またコンパクトなので、とても面白く読むことができました。画家藤田嗣治(1886~1968)は、キャンバスに向かう仕事のほか、自宅の装飾、額縁や絵付の制作、裁縫、写真撮影などあらゆることに興味を持ち、そして実践しました。自分の作ったもの、あるいは自分の好きなものに囲まれて暮らしたのですね。藤田の残したものを見ると、人生をとても楽しんでいたことが伝わってくるようです。

この本から、藤田の「手しごと」の一面だけでなく、日々の生活を彩ることの大切さを学ぶことができます。ストレス社会を一個人の力だけで乗り切ることは不可能です。こうした社会を否定するよりも、むしろ上手に付き合っていくことが今求められるのでしょう。そうしたとき、せめて自分の生活には少しでもこだわりを持って、自分で作ったもの、あるいは自分の好きなものをパートナーとしてそばに置いておくだけでも、「いやし」あるいはストレス解消につながるのかもしれません。生活をデザインする生活。藤田の豊かな生活は私たちにヒントをくれているようにも思えます。とてもオススメの1冊です。

●『藤田嗣治 手しごとの家』林洋子著 集英社新書ヴィジュアル版 2009年
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする