学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

国立新美術館「至上の印象派展」を観る

2018-03-19 21:21:28 | 展覧会感想
ある時期まで、私は印象派のルノワールやモネなどの作品が大好きでした。明るくて、美しくて、遠い異国ヨーロッパの息吹を感じさせるものとして、それらの作品の世界に憧れを抱いていたのです。地方に居た私は、なかなか本物を見る機会がなかったのですが、岩手県立美術館のこけら落とし「モネ展」の開催を聞いて、雪の残る岩手県盛岡市まで足を運んだものでした。でも、それからなぜかだんだんと印象派とは縁遠くなり、今ではほとんど印象派に関する展覧会に出かけることは無くなってしまいました。

現在、国立新美術館で開催されている「至上の印象派展」はドイツ出身の武器商人ビュールレが収集したコレクションを展示しています。「武器商人」でだいたい予想はつくと思うのですが、年譜を見ると、彼の生涯は第一次世界大戦と第二次世界大戦を通っており、やはりそれで財を成したよう。展示されているコレクションはなかなかのもの。印象派を柱として、その前後の時代の作品も収集することで、印象派の仕事を明確化し、さらに19世紀後半から20世紀前半のヨーロッパ美術の流れがわかるような集め方をしていたようです。私は印象派…よりも後期印象派のゴッホ、セザンヌ、ゴーギャンらを食い入るように見ていました(笑)特にセザンヌの肖像画は、のちのキュビスムともつながるような気配を感じさせるもので、その後のピカソやブラックへと続く流れが良く分かるものでした。

こうして展覧会を見終えて思うことは、私の中で印象派はもうお腹いっぱいになっているなと(笑)後期印象派のほうへ興味が移ってしまいました。人の好みは年を経れば変わるものですねえ。それはそれとして、重複しますが、展覧会は19世紀後半から20世紀前半のヨーロッパ美術の流れがわかる、さらにいえば、わかりやすい内容です。とても満足のいく展覧会でした。