今回は白井さんが出張でご不在のため、私の達ての希望で信濃屋さんのスタッフ・牧島さんにご登場いただいた。
画像にモアレが出ているのお許しいただきたい。この日、牧島さんがご披露してくださったのは真夏の着こなしには決して外せない“シアサッカー”のジャケットスタイルのコーディネートだ。
1枚目のコーディネートは、黒のシルクニットタイ、グレーのサマーウールのパンツ、コードバン・サドルシューズ。
2枚目は、縞のボウタイ、パンツは白のコットンギャバ、ストライプリボンベルト、足元はレッドラバーソールのホワイトバックス。
シャツは当然オックスフォードBD。牧島さん曰く、
『どちらもシアサッカーの着こなしの“基本”。』
とのこと!さすがは牧島さん、“アイビーボーイ”の面目躍如といった素晴らしい着こなし。ただ、同時に無類の“シャイボーイ”でもある牧島さんは、始めは表情が硬く、撮影中も絶えず恥ずかしそうにされていた(笑)。
私、 『牧島さん、白井さんみたいに“普通な感じ”でお願いします。』
牧島さん、『それは無理(汗)。白井さんは“特別”なんだから(笑)。』
こんな風に、若年の私にもざっくばらんに接してくださるのは牧島さんの大きな魅力の一つだ(笑)。
更にこの日はご自宅から、このタナークロール(英)のダレスバッグに“アイビー”に関する色々な資料を入れてお持ちくださったのだ。
まずはこの日のタイ2本。VANのニットタイと信濃屋のボウタイ。
1960年代のアメリカの高校生の誰もが経験したであろうエピソードを落書き(グラフィティ)のように綴った映画“アメリカン・グラフィティ”のサウンドトラックのレコードジャケットと、映画パンフレット。もちろんいずれもリアルタイム(公開当時)のものだ。
そうそう、以前私がこのブログ上で、
『私にとっては“アイビー”といえば映画“バック・トゥ・ザ・フューチャー”のイメージです。』
と書いたところ、牧島さんは、
『“アイビー”といえば“アメリカン・グラフィティ”でしょ!』
と力説されていた(笑)。今度観てみようかな(笑)。因みに、この映画の初公開時のアメリカでのキャッチフレーズは“1962年の夏、あなたはどこにいましたか”
雑誌『メンズクラブ』の“増刊・アイビー特集号”と、『TAKE IVY』。牧島さんが10代後半の頃はこれらの雑誌や本が、まさに“アンビーボーイ”の“聖書”のように扱われていたそうだ。内容は今では考えられないくらい実に“硬派”(もちろん良い意味)で、“~ねばならない!”といった風な読者を“縛りまくる”(これも良い意味で)警句に満ち溢れたもの。編集者が街頭で無作為(?)に撮影した読者モデル(?)を指して、
『街中でこのような組み合わせは如何なものか。』
といったかなり手厳しい(汗)指摘をしているコーナーもあり、これも今では在り得ないくらい“大人目線”(またまたこれも良い意味で)なもの。
それから“聖書”といえば写真中央の本!穂積和夫氏著作『絵本アイビーボーイ図鑑』(初版)。前々回の更新『Four pockets jacket & white linen pant』の回でお話しされた本を持ってきてくださったのだ。因みに左隣はその女の子版『絵本アイビーギャル図鑑』で、右はタータンチェックの図柄、名前、由来、モットーなどが纏められた『CLANS & TARTANS OF SCOTLAND』の日本語版。
『絵本アイビーボーイ図鑑』の初版は今から30年前。内容はやはり“硬派”で“縛り全開”で“大人目線”。まさに“トラッドの着こなしの基本”がドレスからカジュアルまでくまなく網羅されており、そこには古から連綿と続いているクラシックの世界が“IVY”というスタイルで表現されているのだ。
牧島さんは言う、
『昔はちゃんとした恰好良い大人が当たり前にいたよね。そして若い人達はそういう大人に憧れていた。若者の目線が上を向いていたっていうのかな。今は逆だけどね(苦笑)。大人が子供の方を向いている。』
『やっぱり、大人がきちっとした綺麗な、TPOをわきまえた恰好をしないと。それが“着こなし”であり、そこには“基本”がちゃんとあることを知らないと駄目。』
『“自分の好きな服を好きなように着る”って、口で言うのは簡単だけど凄く難しいこと。自分の今の好みにばかり囚われてしまうとどこか偏った着こなしになってしう。パーツ一つ一つを見れば良いんだけど全体のバランスが悪くなる。“基本”ってそのバランスを保つために必要なんだと思うよ。』
『白井さんは本当に特別な人。何十年にも渡って多くの経験を重ねてそれが今の“味”になっている。“懐の深さ”が他の人とは比べものにならないんだよ。真似しようったってそりゃあなかなかできるもんじゃないよね(笑)。』
だが、牧島さんもまた白井さんと同じく、青春時代に影響を受けたスタイルにこだわり続ける人なのだ。生涯を通して貫く何かを持つ。
“カッコいいとはこういうことさ”
と、いつもと変らない笑顔が教えてくれたような気がした。