ひと日記

お気に入りのモノ・ヒト・コト・場所について超マイペースで綴ります。

“サマーフランネル”のスーツ

2010-04-29 04:00:00 | 白井さん


 今日のスーツは目にも鮮やかな“ナポリブルー”のスーツ。チェーザレ・アットリーニ(伊)の1991年モデル。信濃屋さんのHP『洗練された男が際立つコーディネート術』でも白井さんがこのスーツをお召しになっています。『もうそろそろ20年かぁ~』と白井さんも当時を思い出されてか思わず感慨深げでしたが、私にはそれだけの年数が経過しているとは到底信じられないほど、全く“古び”を感じさせない極上の一着でした。

  

   

 スーツの青の美しさに触発された私は、白井さんに屋外での撮影をお願いしました。白井さんも快諾してくださり、今日は信濃屋馬車道店さんの玄関脇での撮影です。この日は薄曇りの空でしたが、それでもやはり屋内とは写りが違いますね。レンズにたくさんの光を吸収して、私の愛機『ペンタックスK10D』のオートフォーカス機能も心なしかいつもより元気な様子でした。『いやぁ~カメラが喜んでます!』と私が口走った訳の分からない台詞を聞いて白井さんは笑っていました(笑)。

  

 『(生地が)薄くて軽いからこの時期に丁度良いんだよね、着てみなよ!』

 白井さんはそう仰って私に上着を預けてくださいました。しかし、折角の貴重な経験なのに『本当だぁ~軽~いですね~!』と白井さんが仰った言葉を繰り返す程度の感想しか言えない始末。まさに“○○に真珠”、“私にアットリーニ”といったところか(汗)。でもこういう貴重な経験って、その時はボォ~としちゃうんですけど、実は意外と後々までちゃんと体が憶えているものなんですよね(笑)。

 因みに今日のタイトル“サマーフランネル”は白井さんから特に指定された訳ではなく、白井さんがお話の中で『(ルチアーノ)バルベラなんかは“サマーフランネル”なんて言ってるよ。』と仰っていたので、敢えて今日のタイトルに使わせていただきました。

   

 この日、同席させていただいたお客様が、私から見ればこの方ももの凄くお洒落な方なのですが、白井さんがお帰りになった後『完璧な着こなしだった・・・。』と呟かれていました。信濃屋顧客列伝中のお一人として長年白井さんの着こなしをご覧になられているお客様ですので何気ない一言にも重みがあります。また以前よりこのブログをご覧頂いており、最近の白井さんの着こなしが以前に比べて更に“クラシック”になってきている、と感じられているそうです。私などは何を口に出すのも憚られるほどで、唯々“カッコ良かった”としか言えないのが我ながら情けない限りです(涙)。

   

 靴は白井さんが大塚製靴に特注したキャップトウ。いつもお馴染み天神山Iさんのブログにこの靴についての記述があり、一読以来約2年、長く私の頭の中だけに存在していた靴だったのですが、この日やっと本物を拝見することができ感慨も一入でした。ピッカピカのトウキャップと白井流ホワイトステッチが印象的です。

 

 この日は信濃屋さんにストックしてある、チャーチ、チェスターバリー、ブルックスブラザース、Jプレスなどの古いカタログを眺めつつ静かに服飾談義が交わされた午後でした。そういえば白井さんがロンドンの街並み、名店の数々を思い出されながら『イギリスにはイタリアとはまた違った良さがあるね。ロンドンにはまだ良い店があるし。そういう店ほど中は薄暗くって窓枠なんか埃かぶっちゃってるんだけど(笑)。ロンドンはまた行きたいなぁ~。』と仰っていました。写真は60年代のチャーチのイラストのカタログを眺める白井さん。

 最後に前回訂正を。

 白井さんがお持ちになっていた傘は信濃屋オリジナルの傘ではありません(汗)。以前ご紹介した桜の握りでシルク張りの“小島さんの特注傘”です。不正確な表記をしてしまいましたことをお詫びいたします。



バーズアイのスーツ

2010-04-24 04:00:00 | 白井さん


 この日の白井さんは重要な打ち合わせと、その後に急用が生じられた為、今回の撮影&お話を伺う時間は限られたものになりました。

  

 今回のようなハッキリと“間モノ”といえるスーツは初登場だと思います。生地はバーズアイ(Bird's eye)。いつもお馴染み天神山のIさんから“間モノとして活用される伝統的な柄”と聞いていましたが本物を見るのは今回が初めてでした。大人の男が着るにふさわしい落ち着いた雰囲気の極めてクラシックなスーツ、という印象でした。



 スーツの印象に反して、小物の色使いや靴の選び方にささやかな、そして絶妙なバランスの遊び心を感じます。でも靴紐は、オリジナルが古くなってしまい急場凌ぎで替えただけ、ということなのであまり気に入られていないとのこと(笑)。

    

 この日は一日雨模様でしたのでお帰りは、バーベリーのレインコート“Rider”にボルサリーノ、傘は信濃屋オリジナルのシルク張りです。



 私はこのブログの撮影の全てを白井さんのお仕事中にさせて頂いているので、今回のようなケースは当然起り得るものと当初より覚悟はしていましたが、それでも白井さんは私を気遣ってくださりギリギリまでお時間を割いてくださいました。本当に身に余る光栄です。また翻って考えると、普段白井さんからじっくりお話を伺えることが如何に贅沢なことかということに気付かされます。

 そして、更にもっと突っ込んで考えると、白井さんからお話を伺わなければ私がお伝えできることはほぼ皆無に等しいという事実が浮かび上がってきます。

 実はこの日、白井さんからは『もうそろそろ何処其処のメーカーだとか、そういうのは卒業しないとね。』という言葉をいただきました。もちろん私とこのブログが進むべき新たな段階への示唆も含まれていると思います。私も以前から、このブログ・・・このままで良いのかな?・・・という想いが密かにあったので、今後は新たな方向性を模索しながらタイトル“白井さん”に相応しい“洗練”を目指して、撮影とブログ作製に臨みたいと思います。



ノーフォークジャケット

2010-04-22 04:00:00 | 白井さん
 

 今回は実に景色の良い写真が撮れましたので、扉に使わせていただきました。

 白井さんのお隣の紳士は信濃屋顧客列伝中のお一人、T市様。旧知の仲でもあられるお二人はこの日の夕方、白井さんが『そろそろ帰ろうかな~』とお支度を始めた頃、T市様がふいにご来店されたことで、実に久しぶりの再会となったご様子でした。お二人は久闊を叙しつつ記念撮影(笑)。上の写真はその時のベストショットです!お二人とも実に良い笑顔ですし、凄い着こなしです(汗)。

 

 T市様は白井さんに『服の話ならこういう人の話を聴かなきゃいけない!』と言わしめる程の洒落者。お仕事は服飾とは関係の無い職種だったそうですが、数寄が高じてなのでしょうか、ご自分で気に入った素材を調達されて自らの手で服を作ってしまうこともあるそうです。この日はヘビーシルクを使ったお手製の巾着を拝見させていただきました。

 元祖アイビー世代のT市様はもちろんお店巡りも頻繁になさるそうで、信濃屋さん始め、名の知れている店は言うに及ばず、果ては“裏”原宿までもが守備範囲なのだそうです。白井さんがよく仰る“服数寄”とはまさにT市様のような方を評してのことでしょう。因みに、この日お召しになられているお着物は“大島”。その上に羽織られているのは“とんび”って云うのでしょうか、以前昭和30年代の銀座の風景を写した写真で見たことがあります。確か和装でも洋装でもOKなコートではなかったでしょうか、あ~白井さんにちゃんと伺っておくべきでした(汗)。

 

 お二人の服飾談義は数十分の間、まさに丁々発止のマシンガントークで展開。この日のお互いの装いを其々褒め称え、昨今の服飾素材が昔のものとは比べるべくも無いと憤り、故に今の人たちは本物を知らないと嘆かれ、かつての名品や若き日のお二人を唸らせた大先輩の洒落っぷりを懐かしむ・・・お二人のお姿は、私を含めその場に居合わせた諸兄の耳目を釘付けにするほどに真剣で、熱く、そして実に楽しげで、本当に服が好きな人にしか語れないお話ばかりでした。まさに“真の服飾談義とは斯くの如し”そんな言葉がピッタリな光景で、白井さんが仰る“お洒落な人は他人の服装にも興味を持つもの”というのはこういうことを指すのだな、と目から鱗が落ちる思いでした。T市様と白井さんはほぼ同世代。お二人のツーショット写真からは着こなしを楽しむゆとりや自由、何よりも“年季”を感じます。そうそう、白井さんは常日頃、『この歳になったらもう怖いものなんてないよ。』と仰っています(笑)。

 T市様、撮影にご協力いただきありがとうございました!

     

 さて、改めまして本日の着こなしのご紹介です。今日の主役は“信濃屋オリジナル・ノーフォークジャケット”。この日は前日からの猛烈な寒気と雨が午前中まで引き続いていて、

 『今日はダークで無彩色な感じにしたくて、これとは違うグレーのジャケットを着てこようと思ったんだけど、朝は寒いし、でも午後から雨も止むって言うからレインコートは着たくないし、で“お!こんなのがあった”と思って、中はニットにしてコート代わりに着てきたんだけどね。』

 とのことで、思いがけずの登場となった“ノーフォークジャケット”は19世紀から20世紀初めにかけてイギリスで狩猟用、ゴルフ用などに使用されていたスポーツ・ジャケット。その後はタウン・ウェアとなり、現代まで引き続いてベーシックな男の衣料となっているそうですが、写真とかイラストで見たことはありましたが、実物を見るのは私は初めてでした。早速触らせていただきましたが、ピンチェック柄の、未確認ですがツイードっぽい感じの生地でした。襟元にはシンプルな黒地に白いドットのシルクマフラーを軽く巻いて、帽子はグレーのグレンチェックの八枚剥ぎ、ステッキは荒羅紗のダッフルコート以来2度目の登場となった白井さんご自慢の逸品“ルートブライヤー”。

 ジャケットの下、今日のニットはミラノクラシックの時にお召しになっていたものよりもう少し濃いめのグレー。ニットの下はクレリックシャツで、写真では判りにくいのですが、身頃はピンクと黒のマルチストライプでとても上品な印象のシャツでした。黒地に小さな赤のドット、細身のクラシックな雰囲気のネクタイはやはりかなりの年代物だそうです。グレーフランネルのパンツに靴は“雨靴”エドワードグリーンの黒いキャップトウ。

 上から下まで“無彩色”で統一され、クラシックでエレガントなカジュアルスタイルは、急遽予定変更になったにもかかわらず“さすがは白井さん!”と大向こうをも唸らせる見事な着こなし。白井さんがタイ、シャツ、マフラー、と黒の小物を多用するのも珍しいですね。こういうクラシックな服って、トルソーで飾られているだけだとどういう時、どんな風に着れば良いのかイマイチ判らないものですが、こうして白井さんが颯爽と着こなす姿を拝見すると、なんだか見ているだけの私までがなんとなく“クラシックな着こなしがしたくなる気分”になってくるから本当に不思議です。



 さて、最後に前回予告しましたシャツのお話を少しだけ。

 『“遠藤シャツ”なんて云わないよ。我々は皆“遠藤さん”って呼んでいたんだ。』(白井さん談)

 私如きが呼び捨てで“遠藤のシャツ”などと気安く呼んではいけなかったようで、大変な無礼をはたらいてしまいました(汗)。横浜で古くから営まれていたという“遠藤さんのシャツ”は、これは白井さんも聞いただけの話らしいのですか、大正天皇のシャツも作られていたという大変上等のシャツ屋さんだったそうです。信濃屋さんではオーダーシャツの依頼をされていたようですが、残念ながら職人の遠藤さんはもう既にお亡くなりになられて久しいとのことです。何しろ遠藤さんが全部お一人で手作業で縫われていたそうで、白井さん曰く『昔は今のような便利な機械なんて無いから全部手作業(ハンド)だよね。それにシャツだけじゃなくてスーツだって何だって昔の職人は全部一人で最初から最後まで作れたものだよ。今はそんな職人は殆どいないんじゃないかな。』とのこと。

 白井さんはかつて横浜で活躍されていた様々な職人さんに親しまれており、その技の見事さを折に触れて賞賛されては当時を懐かしむことがあります。イタリーのシャツを仕入れるようになってからも、遠藤さんに限らず、日本の職人技に馴れた眼には、それほどの驚きも無かったようで、むしろイタリーのメーカーに日本の職人が作ったシャツを見本に貸し出したりすることもあったそうです。但し、シャツのハンドメイドに関して白井さんは、アンナマトッツォのシャツの件でも触れましたが、ボタン付けとボタン穴のかがり意外はその必要は無い、と今回も断言されていました。

      

 上の写真の“遠藤さんのシャツ”は替え襟タイプのクレリックシャツ。生地は高級シャツ生地で知られるカルロリーバ(伊)。替え襟は左からラウンド、レギュラー(?)、プリンス・オブ・ウェールズ・タブカラー。3・4枚目の写真の金属の突起物は前襟部分のアタッチメントである“前ボタン”、と後ろ襟の“後ボタン”。襟の裏側から突起部分を刺し通す仕組みになっています。因みに、現在一般的に出回っているタブカラーシャツの“タブ”はスナップボタンで接続しますが、前回白井さんがお召しになっていたイングリッシュタブカラーと先程のプリンス・オブ・ウェールズタブカラーの“タブ”は、前ボタンの金属の突起部分をタブの穴に刺し通して留める形になっていてちょっぴりお洒落です。

 最後の写真は替え襟を収納するその名も“カラーボックス”(笑)。カラーボックスの中の“マトリョーシカ”のごとき小さな箱は前&後ボタンの収納箱です。う~ん、実に男心をくすぐる洒落たアイテムです!こんな名品が信濃屋さんの地下紳士フロアには普通に陳列(もちろん非売品です)されています。ということで、前回コメントをいただいていたkatkaさん、ありがとうございました、ですが残念~ん!!でした(笑)。


 

“白井さんならどうする”~3~ That\'s another story 

2010-04-20 04:00:00 | “白井さんならどうする─前編─”
  

“How would Lubitsch have done it?”

 映画『昼下がりの情事』『お熱いのがお好き』『アパートの鍵貸します』などを手掛けたハリウッド・コメディーの巨匠ビリー・ワイルダー(監督・脚本家)の仕事場には、自身が尊敬する映画監督エルンスト・ルビッチへのオマージュを込めたこの一文が額に飾ってあったそうです。曰く、“ルビッチならどうする?”

 そして私もまた、毎朝ワードローブの前で一人こう呟きます・・・“白井さんならどうする?”と・・・

                             

 今回で3回目を迎える“白井さんならどうする”は、前回から今回までの5週間、撮影がお休みになることが無かった為、“え!?もう30回目!?”という驚きを伴っての更新となりました。そしてズラッと並んだ30パターンの着こなしを見るにつけ、白井さんがこれだけの時間をこのブログの撮影にご協力してくださったのだと改めて感じ、まず何よりも白井さんへの感謝の気持ちがぐっとこみ上げてきました。そして次に感じるのはやはり、白井さんの着こなしの多彩さ。千変万化、縦横無尽、融通無碍・・・と賛辞は尽きませんが、言葉にするのは簡単なことですし、この30枚が白井さんがこれまで数十年続けてこられた作業のほんの極々一端に過ぎないことを思うと、私如きが軽々に言葉に置き換えるべきではありません。でもきっと・・・

 “別に意識はしてないよ”・・・そう白井さんは仰るでしょう(笑)。

 気取らず飾らず、余分なものは何一つ無く足りないものもまた何も無い。上から下まで完璧で、見る人が心地好く、着ている人の個性もキラリと主張する。大人の男の着こなしは斯くあるべし。そう、“カッコいいとはこういうこと”なのです。(画像をクリックすると其々の回にジャンプします)


※ ご高覧いただいている皆様へのお知らせ ※

  今週から私の都合により、当ブログのカテゴリー“白井さん”の更新曜日を

    火曜日・土曜日  →  木曜日・土曜日

  へ変更します。更新時間は今までと同じ早朝4時です。

  宜しくお願いします。


 “暑い寒いよりもまず何を着るべきか考えるべし”

 “白いシャツは多めに所有すべし”

 “遊び心を忘れるべからず”

 “紳士服飾はクラシック(正統)な呼び名で語るべし”

 “一つ足したら一つ引くべし”

 “どんな色だって似合うぞ!と思うべし”

 “職人技に有名無名は無関係”

 “着こなしのルールに絶対は無い”

 “着こなしの基礎を身につけたければセパレートを積極的に着るべし”

 “小物を多く揃えて組み合わせの妙を味わうのは着こなしの醍醐味”

         

濃紺のスーツ

2010-04-17 04:00:00 | 白井さん


 この日4月15日の天気は、朝からの雨に加え4月中旬にもかかわらず最高気温が10度を下回る真冬並みの寒さで、着るものに悩んだ方が相当多かったのではないでしょうか。斯く云う私も、雨だし、寒いし、でももう4月だし、果てさてどうしようと、あまりに悩みすぎたせいで途中から訳が判らなくなってしまい、信濃屋オリジナル・ライダーコートを無帽で、天神山製ダイヤゴナルの枯れ草色のジャケット、ウーステッドのグレーパンツ、信濃屋オリジナルのUチップシューズ、オリーブ色のチーフとソックス、とここまでは良かったのですがその後、これを落札したせいでネットオークションに嫌気がさした“いんだら”フライの茶系チェック柄シャツ、この時期に何故か紺のツイード地ネクタイ、という最終的には“なんだかよくわからない”コーディネートになってしまいました。余りのセンスの無さに呆然としつつ、

 “こういう日は白井さんはどうするのかなあ?”

 と、考えながら信濃屋さんへと向いました。

  

 白井さんがこの日選ばれた服はシンプルな“濃紺のスーツ”(信濃屋オリジナル・天神山製)。『そういえば最近は紺を着てないなぁ、と思って。』と選ばれた理由も実にシンプル。『今日は凄く寒いけどこれはフランネルよりはもうすこし薄手。冬物のスーツはフランネルが多いけど。』と仰っていたので、今日の一着は恐らくウーステッド素材だと思います。この日はダウンのハーフコートを着た人を見かけるくらい寒い一日でしたが、だからといって花見も終わったこの時期に真冬物に逆戻りするといった“野暮”は、やはり白井さんにはあり得ないことのようです。

 『お洒落は“暑い”とか“寒い”とか言っちゃいけないよ。』

 これは以前、白井さん、いつも控えめな白井さんのお散歩お友達Kさん、私の三人で“暑さ”について話していた時に、白井さんが何気なく仰った一言。その時の会話の流れの中でさらっと仰っただけなのですが、“白井流”の着こなしを語る上では決して外すことができない言葉なような気がして今もって忘れられない一言です。

 因みにその時は、夏場のイタリアで、日本人観光客が暑さに負けてすぐジャケットを脱いでしまう姿をしばしば目撃した経験を思い出されて、『あれは何年の夏だったかなぁ~ミラノの日本食のお店で食事をしていると、○○さん(世間では“紳士”として知られる大変有名な方)がやって来てさ。我々のすぐ近くの席に座ったんだけど、席に着くやいきなりジャケットを脱いじゃうんだよなぁ(苦笑)。“○○さん、ジャケット脱いじゃだめですよ!”って思わず言いそうになっちゃったよ(笑)。』と、ちょっとしたエピソードもこっそり教えて下さいました。おっと、まだ夏まではしばらく間があるのに、ちょっとフライング気味のエピソードですね(苦笑)。

    

 『紺無地って何着か持ってるしシングルもあるけれど、やっぱりあまり着ないね。』(白井さん談)

 上の最後の写真は感度を上げて撮影しましたが、それでもご覧の通りかなり濃いめの紺です。信濃屋さんに就職された当初から“誂えの、当時はまだ珍しかったというチョークストライプのスーツを着てたよ”と仰る白井さんですので今日の写真は貴重なショットですが、実は白井さんは今日のこのダブルのスリーピースを昨年の“信濃屋クリスマスパーティー”でもお召しになっていました。憶えている方もいらっしゃると思います。



 昨年末のコーディネートは、紺地に白い水玉の蝶タイ、カラフルなポケットカチーフ、というパーティースタイル。今日は、紺白千鳥格子のプリントタイ、同じく紺白ドットのポケットカチーフ、というストイックなビジネススタイル。

 

 靴は昨年末は黒のキャップトウでしたが、今日はスウェードのフルブローグ。シルヴァーノ・ラッタンツィ(伊)の初期の頃で“ベンティ・ヴェーニア仕様”モデル名“ウィリアム”。因みに今回で2回目の登場ですが、前回も白井さんは紺(のチョークストライプ)の服に合わせていました。どんな靴とも合うオーソドックスな靴ですから恐らくたまたまかと思われますが、もしかしたらこの靴と紺の服に相性の良さを感じられているのかもしれませんね。白井さん曰く『紺の服に合わせる靴は、明るい茶は足元が浮いちゃうからあまり合わないと思うけど、黒、濃茶、ワイン系なんかも良いよね。』とのこと。靴下は一瞬、“え!黒!?”と思いましたがこちらも濃紺です。

 さて、濃紺無地は所謂“ダークスーツ”と呼ばれ、着る人の品格が最も表われる服の一つ。前回の“春のフランネル”でも同じことを書きましたが、飽くまでも基本に忠実に、気取らず飾らず、余計なものは足さず、足りないものもまた一つも無い、上から下まで完璧でエレガントな着こなし。そして、昨年と今年、是非二つの着こなしを見比べてください。

 “着こなしの醍醐味は組み合わせの変化”

 “服なんてどうでもいい、小物が大事”

 “コーディネートは基礎が大切”

 これまで何度も登場してきたこれらの言葉が自然と頭に浮かんできます。書店の棚にたくさん並んでいる服飾の雑誌には毎号実に多くのコーディネート例の写真が載っていますが、このたった2例の白井さんの着こなしから学べることの方がはるかに多いような気がするのは私だけでしょうか。

 実は今日でこのカテゴリー“白井さん”は 更新30回目の節目を迎えたのですが、このような好例を掲載できたことは“ここまで続けてこれたからこそ”と、ちょっぴり誇りを感じます。もちろんそれは、白井さん、信濃屋の皆さん、いつもお馴染み銀座天神山のIさん、ご高覧下さっている皆様のお陰であることは言うまでもありません。本当に感謝、感謝です(笑)。

 
 

 さすがにこの日の寒さは厳しかったので、コートを羽織ってのお帰りです、チェスターバリー(英)の綿のバルマカーンコートですね。少し緑がかったベージュが良い色です。いかにスプリングコートとはいえ、白に近いベージュだと些か気恥ずかしいような気がするのですが、これくらい落ち着いた色なら大人の男が羽織るのに最適です。帽子(ボルサリーノ・伊)は久しぶりの登場となりました。グレーの中折れは個人的にも思い入れのある帽子なので、これを被られた白井さんを見るといつも“あ~グレーの中折れが欲しいなぁ”と思ってしまいます。写真だとちょっと判り難いのですが、少し焼けたグレーの色が実にカッコいいんですよ。ただこういう風になるには時間も当然必要な訳で、白井さんが常日頃仰る通り“良い小物ほど早くから揃えなくてはいけない”ということを如実に物語る帽子でもあるのです。

 前回訂正です。イタリーの鞄メーカー・レッドウォールについて、白井さんから“強いて言えば”とご指摘をいただきました。

 『レッドウォールは“グッチの初期の頃の鞄を作ってた”というよりは、“そのうちの一つのメーカーだった”といった方が正確かな。当時、グッチの鞄で定番だったのは、こげ茶のなめした豚革の腹に赤と緑のウールンバンド、所謂“シンチ”が巻かれた鞄だったのだけれど、それをつくっていたのがレッドウォールだったんだよ。』

 とのことですが、もしかしたらこれでも正確には説明できてないかもしれませんので、もし更に訂正があったときはお知らせいたします。



 ??・・・これ何だか判りますか?正解は次回発表します(笑)。お楽しみに!といってはあまりに不親切なのでさわりだけ・・・

 今回の撮影日はそのあまりに極端な寒さの影響か横浜の街は人影少なく、“紳士の巣窟”信濃屋さんの地下フロアも私と白井さんの二人きり。実は私、未だに白井さんと二人っきりは緊張します(汗)。また、この日は更に間の悪いことに、私が電車を寝過ごして来る時間がいつもより20分程遅れたためインタビュー時間がかなり短め・・・私は絶体絶命の窮地に立たされていましたが、そんな時はいつも私のお相手をしてくださる牧島さんが何気なく会話の助け舟を出してくださる、はずなのですがその牧島さんはそんな日に限ってお休み。

 しかし、信濃屋(馬車道店)さんには牧島さんともう御一方、いつも優しいY木さんがいらっしゃいます。この日は牧島さんに代わり、Y木さんがお話に加わってくださったお陰さまで私はいつも通りリラックスして撮影に臨むことができたのです。そしてあっという間に6時になり、白井さんがお帰りの支度にかかられたその時です!Y木さんがさり気なく『白井さんの今日のシャツ、タブカラーですか?』と白井さんに質問されました。これは勿論Y木さんから私へのお気遣いだったのは言うまでもありません。

 『そうそう、“イングリッシュタブカラー”。古い(信濃屋)オリジナルのシャツだね。タブカラーっていってもピンで留めるやつで今はこんなの中々無いと思うよ。あ、そうそう、ピン留めといえばこれも・・・』

 そう仰って白井さんが私に見せてくださったのが“遠藤のシャツ”。このシャツは以前Y木さんに“是非白井さんからお話を伺ったほうか良いですよ”と教えていただいていた“メイド イン ヨコハマ”の超逸品!!以前、ロッカーループのお話が出てきた際にもチラっと登場し、その時も白井さんに『フライ(伊)よりもずっと良い。』と言わしめた幻のシャツなのです。ただ折角ながらこの時はお帰り間際、白井さんは大好きな野球観戦(テレビ)が控えているのでゆっくりお話を伺うわけにもいきません。私はとりあえずその時は写真だけを何枚か撮らせていただいたのですが、上の写真はその内の一枚なのです。という訳で次回は是非とも“遠藤のシャツ”について白井さんにお伺いしたいと思っています。最後になりましたが、Y木さんありがとうございました(笑)。

 


春のフランネル

2010-04-15 04:00:00 | 白井さん


 またも余談からで恐縮ですが、数回前の撮影から信濃屋さんに伺う際に携えて行く鞄を、フジイさんのスウェードの抱え鞄から、大峡製鞄のオーバーナイトに替えました。理由は、中に入れるカメラの大きさに比べて抱え鞄がいささか小さく、不自然にふくらんだ鞄を見かねた白井さんから『鞄が型崩れしちゃうんじゃない?』とご指摘を受けたからです。その点は私も以前から気になってはいたのですが、お気に入りの鞄なのでついつい(汗)。でもお気に入りなればこそ大切に使うのが当然、と反省した私は、遅ればせながら鞄を替えることにしたのです。実はフジイ鞄の登場以来すっかり出番が減っていた大峡製鞄の“オーバーナイト”。クロゼットの中で静かに出番を待っていた間も、自慢のタンニンなめしの革はひっそりとエイジングを重ねていたようで、少し色艶が増したような(笑)。

 白井さんのアドヴァイスはいつもさり気なくて的確。もちろん、押し付けがましいなどということは皆無です。そして、白井さんに“こうすれば?”と言われると何故か“じゃあ、そうしようかなぁ”という気持ちになるから不思議です。お陰様で、フジイ鞄はストレスから解放され、大峡の鞄は再び日の目を見ることができ一挙両得です。何気ないエピソードなのですが、そこから着こなしにも一脈通じるエッセンスが感じられるのは私だけでしょうか?

   

 タイトルを“春のフランネル”としたのにはある理由があります。昨年の春、いつもお馴染み天神山Iさんのブログ『天神山メンズスタイル』で、白井さんの“ワンランク上の着こなし”が紹介されました。その時、白井さんがお召しになっていたのが今日と同じイザイア(伊)のフランネルブレザー、私はその時の白井さんの着こなしが大好きで、今春、このブレザーの登場を心待ちにしていました。その時のIさんのブログのタイトルが“春のフランネル”という実に洒落たタイトルだったので、今日使わせていただいた次第なのです(笑)。

 私、   『白井さん、今日のブレザーは“イザイア”ですね!?』

 白井さん、『また!そんなことはどうだっていいの。そういうのはそろそろ卒業しないと(苦笑)。』

 と、この日も余計なことを伺い、白井さんから窘められてしまいましたが、私としては上記のような思い入れがあったので、今回だけはどうしても確認しておきたかったのです(笑)。

      

 『お彼岸を過ぎたら起毛系の服はなるべく着ないようにするけど、フランネルのブレザーだけは春になっても好んで着るよ。』(白井さん談)と仰っていたのはまだ記憶に新しいことと思います。因みに、この日は快晴、気温20度、と春らしい一日でした。

 白のオックスフォードBDシャツに、臙脂とゴールドのハッキリ太目のレジメンタルストライプのネクタイ、ポケットカチーフはネクタイの色を拾ったペイズリー柄をパフで。パンツも恐らくフランネルと思いますが、この日の陽気を考慮されてか明るいグレーを選択されたようです。ライトグレーのパンツは二回目の登場、一回目も暖かい陽気の日で、やはり同じくブレザー時に着用されていました。それと、写真には写していませんが、赤いフェルトのサスペンダーでの着用でした。セミブローグの靴はエドワード・グリーン(英)。ロンドンのエドワードグリーンで購入されたそうで、店がまだバーリントンアーケードに在った頃(現在はジャーミンストリート)だったとか。

 コーディネートは飽くまでも基本に忠実に、気取らず飾らず、余計なものは足さず、足りないものもまた一つも無い、上から下まで完璧なブレザースタイル。“教科書通り”という表現がありますが、確かにこうして文字にするだけだと“教科書通り”なのに、写真で見ると(実際はもっと)何故こんなに“エレガント”なのでしょう??

 

 それから、今日のブレザーに使われていたメタルボタンは“被せ”といわれている軽量が特徴のボタン。白井さん曰く『この軽さが好きなんだよね。もちろん(純)銀のボタンもいいけど重さでボタンが下を向いちゃうのが難点だね。』とのことです。

 さて、シンプルな白いシャツを殊に好まれる白井さん。今日もフランネルのブレザーにはこれ!とばかりに基本通りオックスフォードBDの白を鮮やかに合わせていらっしゃいます。ただ、私個人のことで恐縮ですが、私は真っ白なシャツ特有の“清潔感&爽やかさ”に、何となくある種の“気恥ずかしさ”を感じてしまい、白いシャツをワードローブに加えることを今まで敢えて敬遠していました。でも、白井さんが白いシャツを積極的に着こなす様を何度も何度も目にすると、その気高さ、汎用性の高さ、シンプルゆえに奥深い魅力に改めて気づかされます。そしてこの日、シャツの話にさしかかった時、かなり恥ずかしかったのですが思い切って白井さんに伺ってみました。

 私、   『僕、実は白いシャツはBDのオックスフォードを一枚持ってるきりなんです。』

 白井さん、『え!そりゃだめだなぁ~、白いシャツは100枚は持ってないと!(笑)』

 私、   『ええ~!!ヒャクマイですか!?』

 白井さん、『じゃあ、せめて46枚。白(シロ)だから(笑)。まぁ、たくさん持ってたほうがいいよ。どんなネクタイとも合うしね。それに歳取るとやっぱり白が良くなる。』

 と、いつものように実に明快なお答えを頂きました。なるほどなぁ~・・・よし!少しずつ増やすぞ白いシャツ!

  


 この日は多くの紳士諸兄のご来店があり、信濃屋馬車道店地下紳士フロアはさながら“紳士の巣窟”といった観がありました(笑)。白井さんを中心に実に多くの服飾談義が交わされましたが、その中から一つ二つ。

 この日の白井さんは、まず手始めに紳士服職雑誌の最新号を眺めつつ、あれこれとご感想を仰っていました。『お、このジャケット良いね~、やっぱりラルフローレンだな、これと同じような柄のジャケット持ってるからその内に着てくるよ。』と仰ったり、復活したウォークオーバーのダーティーバックスに目を留められ『メイド イン USAだ、粗い作りだよね(笑)。でも、ラバーソールの靴とかデザートブーツなんかは、こういう“粗い作り”の方が逆に雰囲気が出るよね。』と“白井流”靴選びもご披露されていました。

 私如きが生意気ながら、白井さんについていつも“凄いな~”と思うことの一つは、こうして世間の傾向にも関心を寄せていることです。白井さんくらいになればそんな必要も無いんじゃないかな、と素人の私は思ってしまいますが、そうじゃないんですよね~・・・白井さんはいつも人の服装に凄く興味をお持ちなんですよね。先日、外出時にご一緒させていただいた時なども、例えば電車の中で『あ、あの男の子ホンブルグ被ってる・・・でも本物はもうちょっと鍔の周りがはね上がってるけどね。』なんて仰りながら観察されていました。

 以前、白井さんが何かのインタビューにお答えになられて、『ずっと感じていることですが、日本の男性は他人の服装に興味がない人が多い。僕なんかたとえば冬になると、すごいコート着て、帽子かぶって、ステッキ持って…みたいな、昔だったら何だろう?というような格好をしていますが、誰も見ませんよ。ところがイタリアなんかに行くと、じーっと見られる、振り返るぐらいにね。彼らは他人の着ているものにものすごく興味ある。だからおしゃれな人が多いんです。』と仰っていました。

 上の1、2枚目の写真は白井さん愛用の名刺入れ。購入から約40年近く経っているそうで、以前このブログでもご紹介したことがある藤田商店さん、そちらでのお取り扱いだったというレッドウォール(伊)製の品です。レッドウォールはGucci(伊)の初期の頃のバッグを作っていたメーカーだそうです。3枚目の写真はそのお話の流れで登場してきた“鞴(ふいご)”。赤と緑のチェック柄が魅力的で、このチェック柄を私に見せるために、いつも優しいY木さんがこの鞴をお店の奥から出してきてくださったのですが、この前後のお話が私にとってはかなり複雑で、私の読解力では把握しきれず、この鞴が何処のものか、何故信濃屋さんに置いてあるのか、このチェック柄が如何に価値があるのかについてご紹介できません。折角見せて頂いたのに、信濃屋の皆さん申し訳ありません。また、この時のお話では、ドーメル、ロンシャン、コーチ、近文、真下、と色んなブランドや、メーカーや、代理店などなどの名前が出てきました。私の理解力と記憶力が低く、ここで詳しくご紹介できないのが残念ですが、一つだけ私にも判ったことは、紛れも無く白井さんは、戦後の紳士服飾業界を牽引されてきた重要な人物のお一人で、膨大な商品知識と豊富な人脈もお持ちなのだなぁ、ということです。ま、でもそれは以前から皆さんもご存知のこと、今更私がここでくどくど説明する必要はありませんね(笑)。


 
 

グレンチェックのスーツ

2010-04-10 04:00:00 | 白井さん


 冒頭からいきなりで恐縮ですが前回訂正を・・・

 ● サルフラ(伊)の社名について、『恐らくだけど、サルヴァドーレ・フラテッリ、だろうね。』(白井さん談)とご指摘をいただきました。フラテッリは“兄弟”という意味です。

 ● リヴァーシブルのミラノクラシックが昨今希少となっている理由は、ブルゾンのメーカー側ではなく、革のなめし屋側にあるとのこと。私はてっきりリヴァーシブルの革は裏と表で2枚の革を張り合わせていて、それに手間隙が掛かるのだと思っていたのですが、リヴァーシブル用の革は一枚の革の表と裏を表情を変えてなめしているものなのだそうです。ですから手間が掛かり高い技術が必要なリヴァーシブル用の革作製は敬遠され気味なのだそうです。

 ● “来秋サルフラのオーダー会があります!”と書きましたが、“サルフラ製のミラノクラシックが入荷予定!”の誤りです。前回の撮影で『秋にサルフラやるからね。』と白井さんから伺った私は、今年の2月にヴァルスターのオーダー会が信濃屋さんであったこともあり、てっきり“サルフラのオーダー会をやる”という意味だと思い込んでしまったのが原因です。因みに“○○やる”という台詞は信濃屋で頻繁に耳にする言葉で、どうやら“○○を仕入れる、入荷する、取り扱う”といった意味で使われているようです。

 ● 伊勢崎町→伊勢佐木町 の誤りでした。

 ● 靴磨きのおじさん→靴磨きのお兄さん(達) の誤りでした。

 今回は重要な誤りも多く大変申し訳ありませんでした。では本日の着こなしスタートします。

   

 “さて、今日の白井さんの装いは、えぇ~と~赤いオーバーペインが入った黒白のグレナカートチェック・・・ん?・・・赤いペインのグレンチェック??・・・あれ?確かつい最近もお召しになっていたんじゃ!?・・・否、ちょっと違うかな??”

 この日の私が白井さんにお会いした時の第一印象です(苦笑)。しかし、その第一印象を直接白井さんに伝えるには私は余りにも小心者。白井さんが古くからのご婦人の顧客の方を接遇されている隙を見計らって、私は信濃屋さんイチの記憶力を誇るY木さんに『今日の白井さんのスーツって以前にお召しになられていたのと同じですか?』と訊ねたところ、『いえ、今日のはカンパーニャ(伊)ですね。前回のはオリジナル(信濃屋)で、ペインの赤が今日のより強かったと思いますよ。』と教えていただきました。なるほどなるほど!やはりそうでしたか(笑)と、ほっと胸を撫で下ろした私。

 すると、やがてお手すきになられた白井さんが私に『今日着ているのは・・・あれ?これは一回着てきたかな?(ニヤリ)』との問いかけをされます(笑)。白井さん一流のいたずらタイムの始まりです(笑)。

 “白井さん、さては僕を試されてるのかな?”そう直感した私は、先ほどY木さんに確認したことは伏せて、『いえいえ、前回のはペインの赤がもう少し強かったと思います(ニヤリ)』と涼しい顔でお答えしました。

 『そうそう・・・。』白井さん、ちょっと驚いてました(笑)。ズルをして申し訳ありませんでした(汗)。改めて、季節が巡ると同じグレンチェックでも今回はあいモノに適した若干薄手の素材、そしてツーピースでの着こなし“ジャンニ・カンパーニャ(伊)”です。

 発色の良いブルーのネクタイはステファノ・ビジ(伊)。とても柔らかそうな生地感だったのでカシミアかと思いましたが100%ウールでした。白井さん曰く『ネクタイのカシミアってあんまり意味が無いよね。暖かくなる訳じゃないしね(笑)。単なる付加価値の問題だね。』とのこと。私などはつい、柔らかさや色の美しさは“ウールよりカシミアの方が上”と思い込んでいましたが、今日の白井さんのネクタイはとても柔らかく色も綺麗ですし、私が昨年からいつもお馴染み銀座天神山さんで購入しているエディ・モネッティ(伊)のウールタイも色・質感ともに素晴らしい品質を誇っていて、ウールよりカシミアの方が全ての面で優れているとい考えるのは、単なる思い込みに過ぎないということに気づかされます。

     

 さて、スーツのなぞ掛けで私に出端をくじかれた白井さん。しかし、天性イタズラ好きの白井さんはめげません。次は上着のポケットから何か取り出されて鼻の穴に突っ込んでいました。カメラのファインダー越しに覗いていた私は、それはてっきり“薬用リップ”だろうと思い込んでいました。私は白井さんがどんな理由で“薬用リップ”を鼻に突っ込んでいるのかその真意を図りかね、どんなリアクションを取ったらいいのか判らず、白井さんにそのままお好きなようにして頂くしか手がありませんでした。反応の鈍い私にガッカリされたのでしょう。白井さんは徐に私にその“リップ”を見せてくださいました。そう、それはリップではなかったのです!

 

 『“ヴィックス”だよ。樟脳の時に話してたやつ、今日持ってきたんだよ。ほら、“カンファー”(樟脳)って書いてあるでしょ。』

 “VICKS Inhaler”鼻の通りが悪いときなんかに使うアメリカ合衆国製の点鼻薬で、アメリカの古い映画にもよく登場するちょっとした気付け薬です。以前、樟脳のお話をしていただいた時に、白井さんから教えていただいていたのを思い出しました。白井さんはちゃんと憶えていてくださって、この日ご自宅からわざわざ持ってきてくださったのです。そんなこととは露知らず、申し訳ありませんでした!そして、ありがとうございました。因みにこのヴィックスですが、薬事法の関係で日本での取り扱いは無いようです。

   

 靴はシルヴァーノ・ラッタンツィのベンティベーニア。2回目の登場です!今回は更に寄っての撮影に成功しました。

 この日の撮影はこの後、白井さんがお客様との接遇にお忙しかったのであまり進みませんでした。今日はこの辺でお別れですが、この日白井さんがご覧になっていたアレン・エドモンズ(米シューメーカー)の古いカタログをリンクさせておきます。これは信濃屋さんのお馴染みのお客様“W様”がネット上で発見し信濃屋さん宛にURLを送られたページです。白井さんは特に50年代の古いイラストの靴の数々の素晴らしさを賞賛していましたので是非ご覧下さい。

 最後に、私がこの日の撮影が物足りなさそうな顔をしていたからでしょうか、Y木さんが、ロンドンハウスのマリアーノ・ルビナッチ氏が白井さんに贈られたという、イタリーにある名店ばかりを写した写真集を見せてくださいました。今日はその中からこのブログでも何度か登場したミラノの『ティンカーティ』の写真を何枚か掲載します。

 明日からは更に気温が上がるようです。白井さんの着こなしも新たなステージに突入するかもしれませんね。

    
      



MILANO CLASSIC

2010-04-08 04:00:00 | 白井さん


 先日、白井さんと、白井さんのお散歩お友達のKさんをお誘いして、昨年の12月にこのブログでご紹介もさせていただいた中目黒の“CAFE FACON(ファソン)”に行ってきました。

 こちらのカフェは、オーナーの岡内さんが“自分の流儀で珈琲を点て、お客様の流儀で寛いでいただく”ようにと、フランス語の“FACON”(流儀)を店名に冠し、“スペシャリティーコーヒー”と呼ばれる厳選された豆にこだわり、高い技術で丁寧に抽出した美味しい珈琲と、全てのスタッフに共通するもてなしの姿勢、寛ぎの時間と空間が楽しめるオープン2年目の新しいお店。私は昨年の秋頃から通い始め、最近は有難いことに岡内さんやスタッフの皆さんとも親しくお話をさせていただいています。お陰様ですっかりリラックス気分の私は、話題の中に“白井さん”をしばしば登場させ、といってもファソンの皆さんは白井さんとの面識は全くありませんので最初は面食らったでしょうが、今では皆さんすっかり“白井さん=会ったことは無いけど知っている人”状態。さらにお調子者の私はいつしか“白井さんにもファソンの珈琲を飲んでいただけたらなぁ”と思うようにまでなっていました。

 ただ、私が白井さんをお誘いするなど生意気ですし、中目黒は横浜からはいささか遠い距離。ですからこの企てを実行に移すにはちょっと二の足を踏んでいたのですが、前回『ウーステッドフランネルのブレザーwith Emblem』の撮影で、白井さんとたまたま珈琲の話題になったので、思い切って『白井さん、中目黒に美味しい珈琲が飲めるお店があるんです。』とお話しすると、驚くほどあっさり『じゃあ今度行こう。』ということになりました。レスポンスの速さと逞しい行動力はいずれも“白井流”の大きな特徴です(笑)。私も早速ファソンさんに予約の電話を入れました。

 『珈琲は物心ついた頃から毎朝飲んでいるよ。もちろん自分でドリップしてね。』と豪語する白井さん(笑)は、ファソンさんの珈琲を一口飲むや『うん!コクがある!』と力強く仰っていました。Kさんも同様に『うん、美味しい!』と仰っていました。お二人が納得される様子を見て“お誘いした甲斐があった”と私はほっと胸を撫で下ろしました。白井さんには、同店に3つあるブレンド珈琲の一つ、やららかい苦みとしっかりしたコクが特徴の“アンブレンド”を飲んでいただきました。私はまろやかなフルーツのような酸味が特徴の“ファソンブレンド”、いつも控えめなKさんは二つの中間の味わいの“エッフェルブレンド”を(笑)。因みに白井さんは珈琲にはいつもミルクと砂糖をお使いですが、『ブラックで飲むなんて野蛮だよ。昔はみんな砂糖とミルクを入れたもの、いつ頃から始まったのかなぁ~。』と近年増えているブラックで珈琲を喫する風潮を嘆かれています。実はブラック派の私としてはそう仰られると身も蓋もありません(汗)。

 さて、お二人の紳士と午後のひと時を楽しく過ごしておりましたところ、『ご無沙汰しています、白井さん。』と白井さんのお知り合いと思しき紳士が我々の席を訪ねてこられました。突然のことに『あ、どうも!』と白井さんもびっくり!

 件の紳士は、鎌倉『大佛茶廊』のオーナーにして、名うての洒落者として服飾好きの方々の間では知る人ぞ知るN氏。私も氏のブログを予てよりよ拝見させていただいており、その知的でウィットに富んだ内容には密かに尊敬の念を抱いておりました。『大佛茶廊』にて供されている珈琲に、岡内さんが特別にブレンドした“大佛ブレンド”をお使いのN氏は、同時にファソンさんの常連客でもあり、たまたまこの日の午前中、岡内さんから“午後、白井さんが来られる!”との話を聞き、なんと白井さんにご挨拶すべく午後改めてファソンさんを訪れたのです。N氏の紳士的な振る舞い、初めて訪れたカフェで図らずもそのような篤い礼を受ける白井さん、大人の男達が織りなす束の間のドラマティックな光景に、私は唯々ポカンと口を開けて驚くばかりでした。

 もちろん、ファソンのスタッフの皆さんからも普段と変らない心からのおもてなしを受けました。ファソンさんの珈琲の味ともてなしの心に感じ入られてのことだったのでしょうか、白井さんはこの日お飲みになったアンブレンドの豆をテイクアウトでお求めになられました。それは私への気遣いもちょっぴり忍ばせてのこととも思います。また、Kさんはこの日のことを御自身のブログで綴っておられました。普段、Kさんは余計なことはお話にはならない紳士ですのでこれは大変光栄なことです(笑)。

 更新が遅れた上に冒頭から余談が長くなり恐縮ですが、私にとっては生涯忘れられない思い出となった貴重な出来事でしたのでご紹介させていただきました。ではでは!お待たせいたしました、本日の着こなしスタートです!

   

 先に予告させていただいた通り、今日の主役は“MILANO CLASSIC”!!

 『最近“ヴァルスタータイプ”なんて呼ばれているけど、この型のブルゾンは昔からどこでも“ミラノクラシック”って云われているんだよ。』

 冒頭、白井さんはそのように仰っていました。つまり、この型はイタリアの、名だたる紳士用品店では必ず取り扱われているし、ブルゾンを作るメーカーならどこもが手掛ける、彼の地では最もクラシック且つポピュラーで、昔から誰もが“ミラノクラシック”と呼んで親しんできた定番中の定番のブルゾン。ヴァルスター社(伊)はあくまでもこの型のブルゾンを作っているメーカーの一つに過ぎない、とのことだそうです。例えが不適切かもしれませんが、我々日本人だって、この国で長年“いなり寿司”と呼ばれて親しまれてきたスタイルを、外国の方に『オ~!コゾウタイプ!』とか『ワオ!カッパタイプ!』などと、いきなり言われてやたら有り難がられても戸惑ってしまいますよね。それと同じです。

 白井さんが今日お召しになられているのは、ミラノの名店『ティンカーティ』ネームの“ミラノクラシック”。

 『どこにもそうとは書いてないんだけれども、恐らくサルフラ(伊)だと思うよ。これは良いよ~革が凄く柔らかくて。革そのものの質となめしが良い証拠だね。それと、サルフラのミラノクラシックは着丈が短くて良いんだ。ブルゾンは着丈が短い方が絶対にカッコいいからね。』

 と、白井さんも殊にお気に入りの逸品。Salfra(サルフラ)社はイタリーを代表するレザーウェアのメーカーで、信濃屋さんでも長年お付き合いされている優秀な工場だそうです。社名の由来は『サルヴァドーレ・フラテッリ、略して“サルフラ”』(白井さん談)だそうです。着丈と共に襟腰が低いのもサルフラの特徴(牧島さん談)だそうで、これは私の個人的な意見ですが、その方が着丈とのバランスが取れているのかもしれませんね。 


   

 この日のコーディネートのテーマは“ブラウン&グレー”。

 インナーのグレーのスウェーターはルチアーノ・バルベラ(伊)。一見、厚いニットに見えるかもしれませんが、この時期に最適なやや薄めのカシミア。濃茶の細かい千鳥格子のネクタイは恐らくウール(もしくはカシミア)でフランコ・バッシ(伊)。オックスフォードBDのシャツも茶の縞。茶色の縞も中々良いですね。襟元の表情に少し柔らか味が増すような気がします。

   

 パンツは初登場のサマーフランネル素材(ルチアーノ・バルベラ)。とはいえ『足は暑いとかなんとかってあんまり関係ないでしょ。』と仰り、真夏でも厚手のフランネルを涼しい顔でお履きになることがある白井さんには、“おお~!サマーフランネル!”といって驚くことでもないかもしれません。ソックスは濃茶。とても良い色で初登場と思われましたが、何処の靴下かは聞き逃しました。

 靴はジョンストン&マーフィー(米)。中敷きの“アリストクラフト”という表示を見せて頂きましたが、これまたそれが何を意味するものなのかは聞き逃しました(汗)。白井さんのご様子では、恐らくフローシャイム(米)の“インペリアル”のような意味合いのように推測されます。それよりも、ラバーソールの靴は初登場ですね!これは特筆すべきニュースです!私はてっきり、白井さんは革底以外の靴は履かない、と思い込んでいましたが、白井さん曰く『ラバー底は2足持ってるよ。これとデザートブーツね。』とのこと。確かに、今日のようなブルゾンスタイルで、ジャケットの時よりも更にカジュアル感が増す時などは、革底よりもラバー底の方が全体の雰囲気に統一感が出て良いのかもしれませんね。

 因みに、もちろんお仕事中は白井さんはブルゾンは脱いでいらっしゃいましたのでご心配なく(笑)。

 

 更に、このミラノクラシックは白井さんが『今はまずやっている所は無いんじゃないかな?』と仰るリバーシブル。リヴァーシブル仕様の革をなめすのは恐ろしく手間が掛かるので今では何処のメなめし屋もやりたがらないんだそうです。但し、白井さん曰く『とはいえ、裏返して使ったことなんて殆ど無いよ。昔一回だけかな~駅から自宅までの7~8分くらいかかるんだけど、にわか雨に降られて傘が無かったから、その時仕方なく裏返して使ったことがあっただけだよ。』とのことなので、まあ実用としてはあまり必要無さそうですね。

 さてさて、ここで珍しく宣伝です(笑)! 

 今年の秋に信濃屋さんではサルフラのミラノクラシックの入荷が予定されているそうです。珍しく、と言うより初めて、白井さんが『宣伝しておいてね!』と仰ったので驚きましたが、やはり白井さん一押しのメーカーなのでしょう。また、同時に私としては信頼していただけたものと解釈できなくもないので、これはもう身に余る光栄です!いつも頓珍漢なことばかり書いて信濃屋さん、白井さんにはご迷惑をお掛けしっ放しのこのブログですので喜んでご協力させていただいた次第です(笑)。

  


 お帰りは『あまり被らないけど、被るなら八枚剥ぎ』(白井さん談)と仰るハンチング(恐らくボルサリーノ・伊)姿で。『アイム フロム シシリー!』とシシリアン・マフィアを気取っておどけていらした白井さんでした(笑)。

 また、上記以外にも白井さんからは、いつものようにためになるお話、面白いお話をたくさん伺いましたが、特にその中で一番印象に残ったのは、白井さんが『世界一だと今でも思っているよ。』と仰っていた、終戦直後の横浜・伊勢佐木町にいた靴磨きのお兄さん(達)のお話。この“白井さんの靴磨きのお師匠さん”のお話は、余談に終わらせるには余りにももったいなく、いづれ機会をみて大々的に一大特集として扱ってみたい貴重なお話の一端ですので、私も含め皆さんお楽しみに!



ウーステッドフランネルのブレザー“with Emblem”

2010-04-03 04:00:00 | 白井さん


 昨日の撮影日は4月1日。いきなり私事で恐縮ですがこの日の私の装いは、新年度のスタートに際して白井さんに敬意を表わし心新たにする意味と、春といったらこの素材、ということで、最近新たに我がワードローブに加わったライトグレイのシャークスキンのダブルのスリーピース。コーディネイトはブルーのポプリンのシャツに、いつもお馴染み銀座天神山さんで購入したエディ・モネッティのネイビー地に白のドットが白井さん好みの縦横並びのジャガードタイ(このタイは白井さんから“良いネクタイしてるね~”とやはりお褒めの言葉をいただきました!嬉しいっ!)、青色系のペイズリー柄ポケットカチーフ、前夜ピッカピカに光らせたエドワード・グリーンの中茶の一文字。

 私は普段セパレーツスタイルが圧倒的に多いので、久しぶりのスーツスタイルに自然と身が引き締まります。『どうだ!これが大人の男の新年度スタイルよ!』と、街往く“ベネチアンゴンドラ”のような新入社員の方々を睥睨するが如く(もちろん誰一人私の装いなど気にも留めてはいませんが)、私のテンションも若干いつもより高め(笑)。

 しかし、そんな気合十分の私をあざ笑うかのように昨日は風速20mを超えるもの凄い暴風が首都圏を席捲。あまりの凄まじさに折角その日の装いに合わせてビシッとキメた髪も、僅か数分の間にものの見事にぐしゃぐしゃになってしまいました。ほうほうの体で到着した私をいつものように暖かく迎えてくださった白井さん。開口一番、

 『今日は知り合いにいきなり誘われちゃってこれから野球観に行くことになっちゃって♪』

 外を吹いている強風も文字通り“何処吹く風”の白井さん・・・では本日の着こなしスタートです(汗)。

   

 今日のタイトルに“with Emblem”とした割にエンブレムがはっきり見えている写真が少なくて申し訳ありません(苦笑)。さて!今回で都合4回目となるブレザーの着こなし。何度も書きますが、永遠の定番・ブレザーの着こなしは“白井流”の必須科目!です。
 
 

 今日のブルーブレザーはダリオ・ザファーニ(伊)製。少し綾目の見える柔らかいウーステッドフランネル素材を使用したこの時期に最適の一着。さて、先程“ブルーブレザー”と書きましたよね。白井さん曰く『海外のブックには“Blue Blazer”って書いてあるよね。この表現なら明るい水色から濃紺まで幅広くカバーできる。日本では“紺ブレ”なんて云うけどあれはどうなのかな~(苦笑)。もちろん紺色はブレザーでは一番定番だけど、“ブレザー=紺”みたいになっちゃってる。』とのこと。

  

 シャツは新年最初の回にお召しになっていたものと同じメーカー(伊)で同時期に作らせたもの。前回はフレンチカフでしたが今回はシングルカフ。『採寸して作らせたんだけど、襟がぴろっと外に撥ねちゃうし、着心地は悪いし、袖は短いし、おまけに値段は高いし・・・全然ダメだな○○○○○(有名シャツ屋さん)!』とやはり今回も憤懣やるかたないといったご様子でした(汗)。ただ今回は生地に関してちょっとお褒めの言葉がありました。生地は前回同様白のポプリン。以前にも書きましたが白井さんは白無地のシャツはポプリンかオックスフォードしかお召しになりません。“変な織柄の入った白無地のシャツは生理的に”お嫌いなのです。

 『カットは酷いけど、まあ高かったからそれなりに生地は良いものを使っているね。俺は下着は着ないから違いはよく判るよ。』

 『あ、僕も下着は着ないで素肌に直接シャツを着るほうです。』

 『あ、そう~じゃあ気をつけないと・・・例えば200双なんかのシャツを一度着ちゃうと元のシャツには戻れなくなるからね。』

 なるほど~要注意ですね!これも白井さんに以前伺ったお話ですが、スーツに使われる服地でよく使われるスーパー○○○という表記。○の中の数字が大きいほどより細い糸が使われていて一般的には高価とされていますが、以前このブログでご紹介したダリオ・ザファーニ氏は『値段の高い服地を使ったからといって良い服に仕立て上がる訳ではない。』と言っていたそうです。殊スーツに限っては糸の細さは着心地にはあまり関係が無さそうですが、シャツに関しては生地番手が着心地に大きく影響するようです。但し、白井さんは良いシャツの要諦はあくまで“カット”と仰っていました。例えばカットの良いシャツは襟腰が低くても上着の襟元から綺麗に顔を出すのだそうです。

 シャツについて白井さんに教えていただいたお話をもう一つ。

 『“素肌にシャツ”は映画「或る夜の出来事」のモーテルのシーンで、クラーク・ゲーブルがやったのが最初。当時アメリカではその影響で下着が全然売れなくなったんだそうだよ。』

 ふむふむ、このお話はかなり有名なようですね。ゲーブルは件のシーンの撮影のとき、着ていた下着があまりに着にくかったので裸の上からシャツを着て撮影に臨んだのだとか。嘘か真実かはゲーブルのみぞ知るですが(笑)。

  

 タイは未確認ですが、信濃屋のY木さんの予測では恐らくフランコ・バッシ(伊)かルチアーノ・バルベラ(伊)ではないかとのことでした。お気づきの方も多いと思われますが、今回も含めた過去4回のブレザーの着こなしで登場したタイは全てレジメンタルストライプ。いつもお馴染み銀座天神山のIさんが口を酸っぱくして(笑)、私の耳にタコができるくらい(笑)、説き続けていた“ブレザーにはレジメンタルストライプが基本”という言葉が思い出されます。本当に凄い方達です。きっと“基本ができている”ってこういうことなんだと思います。

 それともう一点、お気づきの方いらっしゃるはずです。今日はノーポケットカチーフ、もちろん初めてです!

 『エンブレムがあるからね、(チーフがあると)五月蝿いでしょ。これはそういう“決まり”ってことじゃなくてそう思うから勝手にそうしているってだけね。』

 とのことでした。つまり“白井流”独自の着こなしのルールということになりますでしょうか。胸のパッチポケットから覗いているのは白井さんご愛用の赤いフレームの眼鏡。今日はチーフが無いので目立っていますが、白井さんはいつも必ず眼鏡を胸ポケットに挿しています。私は“もしかしたら眼鏡はチーフがポケットの中に落ちたりしないようにするための小道具も兼ねているのかな?”などと一人密かに勘繰っていたりしていましたが、それ程白井さんのチーフはいつもビシッと決まっていてカッコ良く挿してあります。またいつも挿し方にいろんな形の違いもあります。チーフを挿してない人は言わずもがなですが、私も含めてよく見かけるのは、チーフがヘにゃっとなっちゃってたり、ちょびっとだけ顔を出しているだけだったり、はたまた完全に埋没しちゃってたり、といった“あぁ~残念チーフ~”な光景です。どうせ挿すなら白井さんのように堂々と挿した方が断然カッコいいと思います。

  

 やっとエンブレムまで辿り着きましたが、この辺りで白井さん、野球観戦のお待ち合わせの時間が気になり始めたご様子(笑)。『18時に横浜スタジアムで待ち合わせなんだけど、俺チケット持ってないから遅れたら入れなくなっちゃうんだよ(苦笑)。』

 今更説明の必要も無いと思いますが(笑)、横浜生まれの横浜育ち、生粋の“浜っ子”である白井さんは横浜ベイスターズファンです。また、これも白井さんらしいですが、アメリカの大リーグも大好きなのだそうです。

 という訳であまり詳しくはお伺いできませんでしたが、エンブレムと、これも初登場ですね金のメタルボタンは全く同じ意匠。ただし、白井さんのお話ではこの二つのアイテムの購入時期は全く別だったそうです。ちなみに双方英国製とのこと。

  

 靴は信濃屋オリジナルのコードヴァン・サドルシューズ。モデル名は往年のアイビー映画スターに因んで" ANTHONY " PERKINS 。命名は信濃屋の牧島さんです。

 『まだあまり履いてないけどブラックウォッチのパンツに合わせたりね。磨くのが楽しい靴だね。』(白井さん談)

 また、天神山のIさん曰く『アイビーっぽい着こなしの時に履く靴だね』とのこと。

 さて、この“アイビー”・・・特にIさんや牧島さん(お二人は共に50歳代前半の世代)の口から多く聞かれるこの言葉。かつて一世を風靡した一大ムーブメントだったということは私も勿論知識として知っていますが、実は未だによくわかりません(苦笑)。“何ぃ!勉強不足だぞ!”とお叱りを受ければそれまでなのですが、私の中では映画『バックトゥザフューチャー』の第一作目のイメージ、という感じです。“アイビー”と言ったら“ああ~あれね!”という風にピピっとイメージの共有ができるまでには到底至らず、またそれができる世代の方々がちょっぴり羨ましくもあります。

 サドルシューズは、かわいらしい外観ですが、ちょっと手が出しにくい、でもいつかは履きこなしてみたい、そんな靴です。

   

 さて、最後になってしまいましたが、実は今日の影の主役はこのサスペンダー!ただ、残念ながらこちらももう少し詳しくお伺いしたかったのですが、ちょっと慌しさに紛れてインフォメーションは少なめです(涙)。O様申し訳ありません。

 O様はこのブログで何度かお名前を登場させていただいている信濃屋顧客列伝中の方で、白井さんをも唸らせるほどの実に数多くの名品をお持ちなのだそうです。今日のサスペンダーはO様がお電話で白井さんに“是非登場させて欲しい”とリクエストされていた古の逸品。ボタンを留める部分が現行品は革が殆どですが、今日のこのサスペンダーは“ガット(腸)”を使用しているのです。まさか紳士服の材料に腸が登場してこようとは努々思っておりませんでした。恐るべしクラシック!

 後ろのボタンは外付け、つまりズボンの後ろ腰の外側に付けてあります。この方が内側に付けた場合よりもズボンのラインが綺麗に出るのだとか(信濃屋元町店のK田さん談)。今日の白井さんのサスペンダーは赤ですが、白井さんはサスペンダーも服に合わせて色を変えています。また、ベルト部分はフェルト素材を使っていて布製に比べると身体への当たりが柔らかいそうです(天神山Iさん談)。私も最近、白井さんのお散歩お友達のKさん からいただいたサスペンダーを使わせていただくようになり、このアイテムの楽しさを覚え始めてきましたので、信濃屋さんがアルバート・サーストン社(英)に別注で作らせているフェルトを使ったサスペンダーもいずれ購入してみたいと思います。因みに、白井さんに『最初の一本目に買うなら何色のサスペンダーが良いですか?』と、無謀ながらお叱り覚悟でお伺いしたところ、『色のあまり無いやつ。グレーとかね。』というお答えをいただきました。実は“赤”とか“黄色”とか色の強いものを薦められるのかな?と思っていたので意外でした。やはり何にでも合わせ易いから、ということからなのでしょうか?今度チャンスがあれば伺ってみたいと思います。

 最後に前回訂正。シャツの件、“ちょんまる”(白井さん命名)と書きましたが、“ちょんまる”は暦としたシャツの仕立て屋さん用語でした。白井さん、関係各位の皆様にはこの場をお借りしてお詫び申し上げます。申し訳ありませんでした。

 さてさて、白井さん、喜び勇んで浜スタに向かわれましたが、あの強風の中、コートもお召しにならず大丈夫だったのでしょうか・・・(汗)。かなり心配です(汗汗)。