ひと日記

お気に入りのモノ・ヒト・コト・場所について超マイペースで綴ります。

Blue stripe suit

2010-09-30 04:00:01 | 白井さん


 『早くフランネルが着たい。』

 と、夏の終わりに仰っていた白井さんが遂にフランネルに袖を通されました。この日選ばれたのは初秋に相応しく、そして鮮やかなブルーが印象的な軽めの素材。白井さんはこのスーツをもう20年近く愛用されているとのことですが、それが俄かには信じられないほどに大変“綺麗な”スーツです。

 前回のブラックウォッチのパンツが屋内撮影(私の撮影技術にも問題がありますが)のため殆ど“ブラックのパンツ”にしか見えなかったという反省を踏まえ、今回は屋外撮影にこだわりました!でも、これからは寒くなってくるのでちょっと心配です(汗)。

   

 ストライプのスーツにストライプのシャツとフーラール(シルクプリント)のタイ、大胆なパターン・オン・パターン、そして足元は柔らかいスウェードのセミブローグ。今日の白井さんの着こなしに爽やかな秋晴れの空と大地の実りの喜びを連想するのは私だけでしょうか。

   

 久しぶりに余談を(笑)。

 先日、NHKのBSで『アル・パチーノ自らを語る』というNYアクターズ・スタジオの名物番組を観ました。アル・パチーノ氏が如何に偉大な俳優であることはここで殊更説明する必要は無いでしょう。でも、私が氏を気にし始めたのはつい最近のこと。白井さんが『アル・パチーノってカッコいいよな。』と仰ったのを聞いてからでした。

 名司会者のジェームズ・リプトンが進行するインタビュー番組は、台詞以外の言葉を話すアル・パチーノが観れるだけでもかなり刺激的。番組の最後には、撮影スタジオ内で観客となっているアルアクターズ・スタジオの学生達が様々な質問をしてゲストがそれに答える、という名物コーナーがありますが、そこでのアル・パチーノの言葉が大変印象に残りました。

 『よく私と共演する俳優は“緊張する”と聞くが、それは私も同じ。私だって君達と同じ挑戦者なんだ。“挑戦する”その気持ちが無くなったらこの仕事をする意味は無い。─中略─ 今はどんどんチャレンジしてたくさん失敗することが大切。そこから学ぶことは実に多い。』

 みたいな大意でした。やはりあのアル・パチーノがあの大きな瞳をカッと見開いて真剣に語ると、テレビを通して聞いても俄然説得力があります。まあ、20代の学生さんに向けての言葉ですから、不惑真近の私が鵜呑みにしてはいけませんが、私ももうしばらくは、着こなしも含め、どんどん挑戦して、でもできれば失敗は少なめにして、そこから何かを学んでいきたいと思います。



“白井さんならどうする”~7~ Build a basic wardrobe

2010-09-30 04:00:00 | “白井さんならどうする─後編─”
  

“How would Lubitsch have done it?”

 映画『昼下がりの情事』『お熱いのがお好き』『アパートの鍵貸します』などを手掛けたハリウッド・コメディーの巨匠ビリー・ワイルダー(監督・脚本家)の仕事場には、自身が尊敬する映画監督エルンスト・ルビッチへのオマージュを込めたこの一文が額に飾ってあったそうだ。曰く、“ルビッチならどうする?”

 そして私もまた、毎朝ワードローブの前で一人こう呟く・・・“白井さんならどうする?”と・・・

                    

 さて、今回で7回目となる“白井さんならどうする”です。今回の20枚の写真は、最初の『ダークグレーのシャークスキン』の更新が7月1日で、前回の更新が秋のお彼岸終わり、ということで、目を閉じると改めて今年の夏の暑さが思いだされます(汗)。というのは冗談ですが(笑)、初夏から晩夏まで、白井さんが季節の変化とともに組み合わせを徐々に変化させているのがよく判ります。そしてその全てが完璧な着こなし。まさに“真夏の着こなし20選!”といった観があります。

 さて、前回尻切れトンボに終わってしまった“色の分量”について・・・

 白井さんは、

 『例えば、赤いシャツに白いパンツっていう組み合わせって何かおかしい感じがするんだけど、同じ上半身が赤でも半袖のポロシャツにすれば印象は変ってくる。白いスーツに少しだけ赤を使う組み合わせなら更に印象が違う。ところが赤を青に変えると話はまた全然違ってくる。全体の中での色の分量・・・組み合わせる色同士のバランス・・・上手く言えないけど、そういうのが大事なんだよね。』

 と仰っていました。感覚的な部分のお話なのでそれを表現されるのは難しそうにされていましたが、“色の分量”という言葉を繰り返し強調されていました。それと同時に、やはり全体的なバランスを客観的に把握することが大切なんだな~と思った私は、

 『では、白井さんは毎朝組み合わせを考えられる時は、鏡の前で色々と試しながらなさるのですか?』

 と思わず頓珍漢な質問を(汗)。白井さんは、

 『鏡は見ないよ(笑)。全部頭の中で決める。鏡を見るのは最後の最後。』

 と仰っていました。

 『とはいえ、普段から鏡を見て身だしなみを気に掛けることは大切なことだけどね。』(白井さん談)

 

Saxe blue jacket & Black watch pants

2010-09-25 04:32:39 | 白井さん


 『“満艦飾”だね(笑)。』

 これは白井さんがこの日のご自分の装いを揶揄されての一言(笑)。

 この日は生憎の雨で屋内の撮影だったので色がうまく出ていないのが口惜しいですが、今日の白井さんは“暑さ寒さも吹き飛ばす”彩り豊かな着こなしです!

  

 サックスブルーのジャケットにブラックウォッチのパンツ、白抜きのスプレッドカラーのシャツに黄色いタイ、胸元に臙脂と鶯のチーフ、足元は中茶のスウェード、レッドソックス、メイプルのステッキ。赤、青、黄、緑、白、黒、茶色・・・これだけ多くの色を破綻無く纏め上げる。白井さんは、

 『色の“分量”が重要だと思うよ。バランスっていうのかな~黄金比みたいなのがあるよね。』

 と仰っていました。“色彩”という感覚的な分野を言葉で表現するのはとても難しいことなのですが、白井さんは特に“色の分量”という言葉を重ねて強調されていました。

   

 尻切れトンボですみません(汗)。執筆時間切れになってしまいました(涙)。この続きは『白井さんならどうする-7』にて!


 

Glen plaid suit

2010-09-23 04:00:00 | 白井さん


 テレビのニュースでは温暖化の影響で、やれ秋刀魚が獲れない!舞茸が採れない!と喧しいですが、今朝、私の家の前の街路樹は枯葉を一枚はらりと落としていました。

 今夜(22日)は中秋の名月。

 ところが、今夜の横浜方面は月が雲に隠れて見えません、残念~!ただ、秋の虫はその羽を震わせて、せめて音だけはとばかりに十五夜を耳で楽しませてくれています。

   

 “Glen plaid suit”

 この日、白井さんはお忙しかったのですが、そんな中でもこのブログの撮影のために時間を割いてくださいました。白井さん、ありがとうございました。この項は白井さんの着こなし、その写真をさえアップできれば、その目的は9割9分まで果たせたことになります。なので撮影が完了すると毎回ホッとします。今日は私が感じた印象だけしかお伝えできませんが、この日の白井さんの着こなしは強めの色や柄を用いない、なんというか、とても“静か”な着こなしでした。

 訳のわからないコメントですみません(汗)。幸い写真は綺麗に撮れていますので是非じっくりご覧下さい(苦笑)。

   

 そうそう・・・写真といえば先週、前々回の項末に載せている“デジタル写真集『白井さん』”が、運営サイトの“デジブック.net”のトップページに一週間掲載されました。毎回コツコツ続けていた甲斐があったようです(笑)。新しい読者の方から『白井さん、かっこいい☆』とコメントを頂いたり、アクセス数もちょっぴり上がったりで嬉しい限りです。皆様、ありがとうございました。





Two button suit

2010-09-18 04:00:00 | 白井さん


 『(セパレートの着こなしに比べると)スーツはネクタイ選ぶだけだからなぁ~。』

 以前、白井さんはスーツの着こなしについてこう仰ったことがありました。

 “着こなしの基礎を養うならセパレートで組み合わせの変化を日々心掛ける”

 これもまた白井さんに教えていただいたこと。スーツに比べると選択の幅が広いジャケット&パンツには学ぶ点が多いと。

 では、スーツの着こなしは簡単なのでしょうか。

 答えは勿論“否”。

 “ネクタイを選ぶだけ”

 というのはもちろん白井さん一流の表現であり、私などは決して鵜呑みにしてはなりません。個々の組合せが全体の印象を決する、という意味においてはスーツもセパレートも同じなのですから。

 

 控えめな光沢を湛えたシャークスキンのスーツは着こなしを知り尽くした大人のための服。クラシックな2ボタンがその印象をより一層強めているように感じます。

 ネクタイはブルーをベースにしたジャカード織り。麻のチーフは、一見無造作に感じるほど、緩やかなピークを形作り胸元へと忍ばす。シャツは上質のポプリン。スーツの光沢、ネクタイの色合いに合わせるように、ダブルの袖口には14金ホワイトゴールド(オーバーレイ)のカフリンクス。足元は黒のキャップトウ。靴下はブルー。

 それぞれが意味を持ちながら、でも主張しすぎず、互いに共鳴しあい全体の印象を構築する。そして、それらすべてはいつも“さりげなく”組み合わさっているのです。白井さんのスーツ姿はいつもそうです。シンプルで、さりげない・・・。

     

 さて、昨年の12月18日に、この項“白井さん”の掲載をさせていただいてから今日ではや9ヶ月が過ぎました。第1回目は冬の初め、コートを羽織り始めた頃だったと思います。季節はそれから春、夏と過ぎ、今ゆっくりと“秋”を迎えようとしています。





Forest-green jacket & Parasol for gentlemen

2010-09-11 04:00:00 | 白井さん


 台風一過の昨日の横浜は約一ヶ月ぶりに最高気温が30度を下回り大変過ごしやすい一日でした。頬を撫でる港の風も心地好く、ようやく暦の上だけでなく身体でも秋を感じることができました。明日からまた残暑がぶり返すようですが、その後はゆるゆると穏やかな陽気になってゆくそうです。

 そんな爽やかな秋晴れの一日に白井さんが選ばれた服は、今期新たにワードローブに加えられた綺麗な深緑のジャケット。

 『新しいから少しいじめてやらないとね。』

 なるほど“いじめる”かぁ~(笑)。これまた独特な表現!

       

 今回のコーディネートは白井さんがお好きな組み合わせ“Green & Blue”。ジャケットの緑とイングリッシュタブカラーシャツの青、いずれも上質な生地が用いられているので発色が良く、そのコントラストは目に鮮やかに写ります。縞のタイはジャケットから、チーフはシャツから、それぞれ色を拾い“初秋の清涼感”を感じる装いです。

 靴は金茶の柔らかな色合いが殊に美しいスウェードのキャップトウ。細部に至るまで白井さんが細かく指定して作製された一足ですので、色のみならずその形も思わず溜息が出るほどの晴らしい靴です。靴下にはジャケットとほぼ同色の深緑を。

 いずれの品も匠の技で仕立てたベーシックなフォルムに上質な素材を纏わせたシンプルなもの。しかし最も大切なのはそれらを着こなすこと。長年の経験から導き出された組み合わせの妙がキラリと個性を主張する、それが“白井流”・・・ですね!



 さて、白井さんがお手に取られている傘は、傘は傘でも“Umbrella”ではなくて“Parasol”、つまり“日傘”。それも白井さんの為に作られた暦とした“紳士用の日傘”なのです。

 私は昨年の夏、この日傘を白井さんに見せていただいたのですが、“紳士用の日傘”というもの珍しさもさることながら、ほとんど芸術品と云っていいまでの完璧な美しさは私の脳裏に鮮烈に焼きついていて、この項を始めた際も“是非、真夏の盛りに麻のスリーピースと一緒に写真に収めてみたい!”と心中密かに企画していたにもかかわらず、その麻のスリーピースを拝見した際は白井さんの着こなしの素晴らしさに唯々心奪われてしまい、日傘のことはすっかり忘れてしまった(汗)、という経緯があり、些か旬を過ぎてしまいましたが、夏が終わってしまう前にこれだけは何としてもご紹介したい!という私のわがまま企画です、今回は(長い・・・汗)。

    

 張りは支那絹紬(けんちゅう・・・柞蚕糸(さくさんし)で織った薄地の平織物。淡褐色を帯びて節がある。布団・洋傘・衣服などに用いる。)。マラッカ(籐)の柄にシャンクは樫、石突は水牛。骨は英国の古の老舗スティールメーカー、S.FOX社製。裏地の緑にもご注目を!!

 この項をご愛読いただいてる方ならどちらの日傘かはもうお判りでしょう(笑)。以前にもご紹介させていただいた、今はなき元町の洋傘職人・小島さん製作のまこと美しき日傘です。

 白井さんは、

 『昔は本当にお洒落な人が多かったんだろうね~。この日傘を差して13本柾目の桐の下駄履いてちょっとぶらり、なんてのは洒落てるだろうね~(笑)。』

 と仰りながら傘を丁寧に丁寧に巻き直し仕舞われていました。







Cotton suit & alpaca knit tie

2010-09-09 04:00:00 | 白井さん


 信濃屋さんのウィンドウがぐっと秋めいてきて道往く人の目を楽しませています。毎年の風景なのに何故か新鮮に感じるのはきっと私だけではないでしょう。我々のDNAの中にある四季を愛でる心がそう感じさせているのに違いありません。

 今日の“白井さん”は初秋を楽しむコットンスーツの着こなしです。

   

 イタリーの豊かな遊び心と優れた色彩感覚がこの色を生み出すのでしょうか。ジャンニ・カンパーニャ(伊)のハンドメイド・スーツは見る者も楽しませる独特の色合い。そして合わせる小物もまた遊び心溢れ色鮮やかです。

 足元はスウェード&ラバーソールの外羽根プレーントウ。鮮やかなグリーンのニットタイは複数の色の糸が複雑に絡みあい躍動感のある編み込み。胸元にはタイとは少し色のトーンが異なるグリーンのペイズリー柄のチーフを。

   

 夏が始まった頃、このブログを楽しみしてくれている服飾仲間のT君との会話で、

 『白井さんは麻のシャツは着ないんですかね?』

 という素朴な疑問がテーマになったことがありました。早速後日、白井さんにこのことを質問してみると、

 『何枚か持ってはいるけど滅多に着ないねえ。シャツは上質の綿が一番良いよ。』

 とのお答えをいただいたことがありました。確かに夏の間も最も“登板数”が多かったのは白井さんが“絹ポプ”と呼び、愛用されている超細番手の綿のポプリン織りのシャツでした。

 しかし!今日はその滅多にお召しにならない“LINO”麻のシャツの登場です。但し、白井さんは基本的に人前ではジャケットは脱がない主義なので、私の判断で写真の構図がちょっと控えめにしてあります。ご容赦を(笑)。

 ナポリで衝動買いされたというシャツはノータイでも決まる小さめで柔らかい襟。各所に施されたギャザーや両胸のフラップポケットもエレガントで、これならジャケット無しでも品良く決まります。そして、何となく白井さんの中での麻のシャツの位置付けが解ったような気がします。

   

 それから、今日のニットタイの素材はタイトルにある通り“アルパカ”。

 実は先日、ひょんなことから白井さんとこのアルパカのニットタイの話になり、その時私が、

 『ええ~!アルパカですか!じゃあ冬用ですね?』

 と伺ったところ、白井さんが、

 『いや、そんなこともないけどね。』

 と説明してくださった、という経緯がありました。まさに“百聞は一見にしかず”。私にとっては今日の白井さんの着こなしにはそんな意味も含まれているのです。白井さん、ありがとうございました!



Pistachio green jacket

2010-09-04 04:00:00 | 白井さん


 9月最初の白井さんの着こなしは季節を先取りした“秋色”の装いです。

   

 そろそろ収穫を迎えるピスタチオの緑を連想させるグリーンのグレンチェックのジャケットはダリオ・ザファーニ(伊)。そして濃茶のギャバディンのパンツは信濃屋オリジナル。茶系のパンツは更新65回目にして初めてではないでしょうか!これは大変貴重なショットです(笑)。

 細身のドットのタイも濃茶(信濃屋オリジナル)、艶やかに輝くタッスルスリップオンも濃茶、ソックスの色にもご注目を(笑)。ジャケットの“緑”とストライプのシャツの“青”のコントラストは目に爽やかで、この色の組み合わせは白井さんもお好きなのだとか。

“シーズンの過渡期には色で変化をつける”・・・前回お話いただいた通り、早速濃い目の色を組み合わせに取り入れて“秋の気分”を表現されています。洒落者とは常に一歩先を歩むものなのですね。

     

 この日は元町の家具屋さんと喫茶店に寄り道してから帰ろうと思い、白井さんと帰り道をご一緒させていただきました。日中の暑さを残した夕暮れの馬車道を歩きながら白井さんは、

 『早くフランネルが着たい。ツィードもね(笑)。』

 と仰っていました。“ああ~白井さんらしい表現だなぁ~”と思い、心のメモに留めました。

 If summer comes, can Autumn be far behind?



Stripe suit & shoes like an antique furniture

2010-09-01 20:16:12 | 白井さん


 今回からこのブログの更新も9月を迎えることとなりました。9月はまたの名を長月。秋の夜長が語源らしいですが、最近では長いといえば“残暑”。夏が大好きな私ですが、こうダラダラと暑い日が続くと些かうんざりしてしまい軽く夏バテ気味になってしまいます。ひょっとすると今年の十五夜は“カキ氷片手に月見”なんてことになるかもしれません。

 

 まだまだこの暑さはつづきそうですが、残暑来たりなば秋遠からじ、この項をご覧頂いている洒落者の皆さんは来るべき次の季節を見据えつつ着々と準備を整えていらっしゃることでしょう。とはいえ、季節の変わり目は着るものにとかく悩むもの。そんな時は、

 『色で変化をつけるのがいいね。』

 と、この日は白井さんから着こなしのワンポイント・アドヴァイスを頂きました。いきなり秋冬物の素材へ移行するのは無理があるので、素材は夏物でも少し濃い目の色や抑えた色調のものを使うなどして着こなしに変化をつけるのが良い、とのことです。

 今日の着こなしは明るめの色使いながらも色調を揃え、落ち着いた“晩夏”の雰囲気が表現されているのかな、と感じました。

   

 さて、タイトルに“shoes like an antique furniture”なんてちょっと大胆な表現を使ってしまいましたが、決して言い過ぎではありません。白井さんの靴はこの日も素晴らしい、そして独特な輝きを放っていました。シルヴァーノ・ラッタンツィ(伊)のキャップトウです。

 セブンアイレッツ、リヴォルターテ、コバ内側の鋭角的な切れ込みから続くべべルドソール、といったディテイルもさることながら、特筆すべきは独特な“古び”を纏わせる白井さんの“磨きの技”。今日の靴はさほど古いものではないとのことですが、まるでアンティークの家具を連想させるような深みのある艶と輝きを湛えています。白井さんは、

 『ちょっとイタズラしてみただけだよ(笑)。』

 と仰っていましたが、誰もがおいそれと辿り着ける境地ではないことは火を見るよりも明らかなことです。表面をツヤッと光らせるだけなら私にもできるのですが、白井さんの靴は内側から底光りするように、時に鈍く、時に強く、時に柔らかく、時に鋭く、見る角度によって様々な輝きを放ち見る者を魅了して止まないのです。