ひと日記

お気に入りのモノ・ヒト・コト・場所について超マイペースで綴ります。

グレーフランネルスーツ&アルパカのアルスターコート

2010-01-15 15:43:23 | 白井さん
 

  “かつてビジネスマンの服はドブネズミ・ルックと 呼ばれていたことがあった。漢字で灰色と書くと暗く冷たいイメージになるが、これがグレーのフランネルとなればこれはもう身も心も暖かくしてくれる冬服の定番となる。” ~2007年12月12日 信濃屋さんのHP 『THE FLANNEL』より~

 今週から関東の最高気温は連日一桁を記録し、横浜の街もいよいよ冬本番を迎えました。今日の白井さんの装いはグレーフランネルスーツ、そしてアルパカのアルスターコートです。



 冒頭の文章は何度も繰り返し読み今では諳んじることができるほどに私にとっては記憶に残る一文。素晴らしい表現は私の中の何事かに感応したのか、永遠の定番“グレーフランネルスーツ”は一読以来私にとって特別な一着。残念ながら我がワードローブには未だ加わってはいませんが、いつの日かこの身に纏いたいと夢見ています。そして今回、念願叶って憧れの白井さんのグレーフランネルスーツの着こなしを、今まで白井さんには何度もお会いしていますがようやく(涙)、初めて拝見することができました。あまりお好きではないと仰っていましたが散髪に行かれて心なしかすっきりした表情の白井さん。ご愛用の鼈甲の眼鏡姿は貴重な一枚。シャツの襟が撥ねているのはご愛嬌(笑)。では本日の着こなしスタートです笑。

      

 白井さんの無地の服の着こなしもこのカテゴリー初登場ですね。霜降りが美しいフランネルグレーのスーツは2003年、伊ガエターノ・アロイジオ(GAETANO ALOISIO) の手によるもの。アロイジオ氏は服作りの行程全てを自分でチェックしないと気が済まないという、真面目で丁寧な仕事振りに定評があるイタリー人らしからぬ(真面目で丁寧な仕事をする日本語が読める他のイタリアの方、ごめんなさい)若きサルト。白井さんも認める美しく繊細な服作りをするこのイタリー職人が手掛けたダブルブレストのスリーピースは、信濃屋さんでアロイジオ氏のス・ミズーラ会を始める以前に試しに作らせた最初の一着だそうで、襟幅13㎝、肩幅を広めにと指定した以外はお任せとのこと。この2点について特に拘るのが白井流。いつもお馴染み銀座天神山Iさんも“洋服は襟と肩の雰囲気が最も重要”と日頃から仰っています。因みにですが、白井さん始め信濃屋さんや天神山さんの皆さんが“服”もしくは“洋服”と言った場合、それは服または洋服全般についてではなく、特にスーツ・ジャケット類のことを指していることが多いです。

     

 クレリックシャツも初登場。信濃屋さんでかつて一時期取り扱いのあった伊エマニュエル・マフェイス。今では大変貴重な30年以上前の英ミチェルソンの細身のタイはこれもまた初登場のクレスト柄。白井さんは極めて繊細な仕事が施されているこのクレスト(紋章)に愛着を持たれているご様子で、“今はこんな細かいことできるところは無いね”と仰っていました。ネイビー色のタイは世間では最もポピュラーに使われている色だと思いますが、信濃屋流では最も出番が少ない色の一つと聞いていますのでこれも貴重な一枚かもしれません。今日のポケットチーフはタイと同色の縁取りのあるペイズリーを、縁取りが右側縦向きに出る様に挿して。

 

 靴は90年代後半の伊シルバーノ・ラッタンツィのセミブローグ。大変柔らかいスウェード革を使用していて殊にお気に入りとのこと。ライニングはちゃんと施されているにも拘わらず全体がチャッカーブーツのアンクル部分のようにふにゃふにゃで、あまりに柔らかいので白井さん『ほらほら!』と恐れ多いことにわざわざ脱いで私の手に取らせて確認させていただのにはたまげました!突然のことに緊張してついつい写真を撮るのを忘れ、またお履きになる時に“ハッ!これはルチアーノばりに靴紐を結んで差し上げた方がよいのか!?”と心中かなり悩んだ私をよそに、白井さんあっさりとご自身でフィッティング。何事も無かったかのように話題は服と同色の伊ブレシアーニのカシミアソックスへ汗。日本よりも寒さの厳しい欧州ではカシミアの靴下はポピュラーなアイテム。その履き心地が大のお気に入りの白井さんは。当地に赴いた際は好んで購入されるのだそうです。当然色んなメーカーのものを試されている白井さんは、『○○の靴下は履き口がすぐ縮んじゃって痛い』とか、『“シルクカシミア”なんて名前の響きは高級そうだけど全然ダメ』とかカシミアソックスにはひとかたならない情熱をお持ちのようです汗。そうそう、“ブレシアーニって有名なんですか?”と私が何の気なしに伺うと、すかさず『有名だろうが無名だろうが良い物は良いの!』と目力アップの白井さん!私また今日も“白井流”の洗礼を受けてしまいました笑。



 さて、今日はしばし趣向を変えて・・・上の写真で白井さんの後ろに写っている方・・・背後霊ではありません。信濃屋さんの“牧島さん”です。下の写真も背後霊ではなく“白井さん”です笑。



 牧島さんは、若輩の私が言うのは大変失礼ながら、お茶目なキャラクターが魅力の信濃屋さんでの在籍30年超のベテランスタッフ。“半生を最も身近で白井さんを見てきたMさん”として前々回匿名でご紹介させていただきました。実はこれまでも撮影を頑なに拒んできたシャイな牧島さんですが『牧島も撮ってよ。』との白井さんの鶴の一声でついに観念されて今回ご登場いただきました。

 

 ツィードジャケットの着こなしをこよなく愛す牧島さんはこの日も得意のカントリースタイル。信濃屋流必須のグリーンが渋いウィンドウペインのジャケットは30年程前に白井さんから譲り受けられたという伊グリッティ(現エルメネジルド・ゼニア社)の一着。

 

 『白井さんからはいっぱいもらっているんです。そうだ!これも撮って!』といつの間にかノリノリの牧島さん(笑)がご披露してくださった、これまた30年以上前に譲り受けられたという一着は『そうそうこれこれ、良いよな~。』と思わず白井さんも目を細める英アクアスキュータムのアルパカのポロコート。

   

 牧島さんには、紳士服のこと、着こなしのこと、信濃屋流のこと、もちろん白井さんのことなどいつも様々なことを教えていただいています。いつも笑顔を絶やさないやはり素敵な紳士であり信濃屋流の大先輩、牧島さんでした。これに懲りずにまたご登場くださいね笑。ありがとうございました!

 では引き続き白井さんにお戻りいただいて、今日のお帰り・コートスタイル5点セットは~

   

 遂に登場!男性服飾誌『メンズEX』の数年前の誌上で、白井さんが菊池武夫さん、赤峰幸生さんとの対談に臨まれたときの撮影で、両氏に挟まれ、編集者から『偉そうにしてください!』(笑)と言われて写っている白井さんがお召しになっていたのがこのコート。英チェスターバリー(CHESTER BARRIE)のアルパカのアルスター(カラー)コートです。ここで以下にいつもお馴染み銀座天神山Iさんのブログの一説を拝借させていただき、このコートについて解説していただきます。

   『ポロコートは、1890年頃アメリカ、ブルックス・ブラザースによって命名されたと言われていますが、当時は白いウール地のコートで、やはり白いパール・ボタンが付いていて、今のように背バンドではなく、全体にぐるりとある共ベルトであったとのことです。もちろんイギリスのポロ競技にも使われ、選手たちが競技の合間に軽く羽織るためのコートで、当時のユニホームはたいてい白だったので、その上に重ねるコートも白で揃えたのでしょう。最初はブルックスも競技用コートとして紹介したのですが、町着用としても使う人が増えた為にライト・ブラウンやライト・グレーでも仕立てられるようになったのではないのでしょうか。 ちょっと余談ですが1985年頃、信濃屋で仕入れたチェスターバリー製のアルパカ素材を使ったポロコートがあまりにも格好よく今でも忘れられません。チェスターバリーの古いサンプルブックの中からモデルと素材を選びオーダーしたものでした。衿幅が肩に付くほど広く、バックベルトではなく縛るタイプで、毛足の長いアルパカ素材がよりゴージャスで1930年代のギャングが着ていたものを再現したみたいでた。ただ、白井さんならさまになるのですが私には着こなせませんでした。』~2006年11月27日 ブログ『天神山メンズスタイル』“ポロコート”より~

 今日、白井さんがお召しになっていたのはまさに上述と寸分違わぬコート。Iさんの記憶力、まことに素晴らしいの一言です。そしてまた、良いものは長く記憶に留まることの証しでもあります。ただ一点、白井さんからは『このコートについては“ポロコート”というよりは“アルスターコート”と呼ぶべきだろうね。』とのご指摘を受けました。アルスターコートという名称はその襟の形状(アルスターカラー)に由来しているそうです。クラシックなムードがより強調されているこのモデルは、確かにIさんが仰る通り誰もがおいそれと着こなせるコートではないでしょう。まさに白井さんならではという逸品ですね。このコートについてはIさんから口伝でも伺っていたので、実物を目の前にしたときはちょぴり感動しました。

    

 今日のマフラーは手にするとずしりと重い、伊マキシミリアン(後年のマニファトゥーレ・クラバッテ)のガムツイルシルクのプリント柄。マキシミリアンはフィレンツェのシルクメーカーで、1990年代前半に世界で最初にセッテピエゲのネクタイを作ったのがここ(当時はマニファトゥーレ・クラバッテ)だそうです。他にはボルサリーノ、エルメスのペッカリーグローブ、ラヴァリーニのステッキ、以上の装いでのお帰りでした。

   

 これでも結構頑張って文章は短くしたのですが、今日も内容の濃い一時間半でした笑。次は恐らくジャケットかな!?では次回もお楽しみに!

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4 コメント

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これが (NT478)
2010-01-18 00:16:27
hito0815さん、こんばんは。

これが、信濃屋さんのホームページ?で紹介されていたグレーフランネルですか。凄い迫力のあるラペルですね。最近、よく見かけるスーツとは全く違う白井さんならではの仕様ですね。うーん、やはり白井さんのダブル姿は格好良いですね。

ところで、毎回お宝コート類が紹介されるたびに思うのですが、信濃屋さんは最近もお宝コートを扱ってるのでしょうか?

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う~ん、どうでしょう笑 (hito0815)
2010-01-18 20:31:16
 NT478さん、いつもコメントありがとうございます。

 ご質問についてですが、う~ん、どうなんでしょう笑。今度チャンスがあれば伺ってみます。

 それから、“お宝コート類”の基準が難しいところですが、先だってご紹介させていただいたバルベラのヘリンボーンツイードのコートは売り切れ後も問い合わせが多く、白井さんがすぐにカルロ氏ご本人に生地在庫の確認をされたそうですが、残念ながらもう無かったという経緯があったそうです。『まさに“奇貨おくべし”だね。』と白井さんは懐かしそうに仰っていました。

 では。
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手袋 (mssoook)
2010-01-21 15:21:23
アルパカのアルスターコート姿の白井さんのステッキを持つ手にペッカリーの手袋が握られていました。わくわくするほど素敵ですね。近頃コートを着ていても手袋をしている男性をあまり見かけません。温かい気候のせいでしょうか。手袋はコート姿を完璧にすると思うのですが・・・。
男性でも女性でも本物のお洒落をしている人を見ると刺激され生きる力さえ湧いてきます。自分に許されるのはささやかなお洒落ですが、本物の持つessenceを学びたいと思います。

殿方のお洒落の蘊蓄に老女が口出しをしてごめんなさい。お邪魔のようでしたらスルーしてくださいね。ますます楽しいお話や写真を期待しています。


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mssoookさん (hito0815)
2010-01-23 05:46:10
コメントありがとうございます。手袋をはめていないと見ている方も寒く感じてしまいますよね笑。私のブログが幅広い層の方にご覧いただいていることに喜びを感じます。では。
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