ひと日記

お気に入りのモノ・ヒト・コト・場所について超マイペースで綴ります。

アイビーボーイ

2010-07-31 04:00:00 | お気に入り




 今回は白井さんが出張でご不在のため、私の達ての希望で信濃屋さんのスタッフ・牧島さんにご登場いただいた。

 画像にモアレが出ているのお許しいただきたい。この日、牧島さんがご披露してくださったのは真夏の着こなしには決して外せない“シアサッカー”のジャケットスタイルのコーディネートだ。

 1枚目のコーディネートは、黒のシルクニットタイ、グレーのサマーウールのパンツ、コードバン・サドルシューズ。

 2枚目は、縞のボウタイ、パンツは白のコットンギャバ、ストライプリボンベルト、足元はレッドラバーソールのホワイトバックス。

 シャツは当然オックスフォードBD。牧島さん曰く、

 『どちらもシアサッカーの着こなしの“基本”。』

 とのこと!さすがは牧島さん、“アイビーボーイ”の面目躍如といった素晴らしい着こなし。ただ、同時に無類の“シャイボーイ”でもある牧島さんは、始めは表情が硬く、撮影中も絶えず恥ずかしそうにされていた(笑)。

 
   私、   『牧島さん、白井さんみたいに“普通な感じ”でお願いします。』

   牧島さん、『それは無理(汗)。白井さんは“特別”なんだから(笑)。』

 
 こんな風に、若年の私にもざっくばらんに接してくださるのは牧島さんの大きな魅力の一つだ(笑)。

 

 更にこの日はご自宅から、このタナークロール(英)のダレスバッグに“アイビー”に関する色々な資料を入れてお持ちくださったのだ。

 

 まずはこの日のタイ2本。VANのニットタイと信濃屋のボウタイ。

   

 1960年代のアメリカの高校生の誰もが経験したであろうエピソードを落書き(グラフィティ)のように綴った映画“アメリカン・グラフィティ”のサウンドトラックのレコードジャケットと、映画パンフレット。もちろんいずれもリアルタイム(公開当時)のものだ。

 そうそう、以前私がこのブログ上で、

 『私にとっては“アイビー”といえば映画“バック・トゥ・ザ・フューチャー”のイメージです。』

 と書いたところ、牧島さんは、

 『“アイビー”といえば“アメリカン・グラフィティ”でしょ!』

 と力説されていた(笑)。今度観てみようかな(笑)。因みに、この映画の初公開時のアメリカでのキャッチフレーズは“1962年の夏、あなたはどこにいましたか”

 

 雑誌『メンズクラブ』の“増刊・アイビー特集号”と、『TAKE IVY』。牧島さんが10代後半の頃はこれらの雑誌や本が、まさに“アンビーボーイ”の“聖書”のように扱われていたそうだ。内容は今では考えられないくらい実に“硬派”(もちろん良い意味)で、“~ねばならない!”といった風な読者を“縛りまくる”(これも良い意味で)警句に満ち溢れたもの。編集者が街頭で無作為(?)に撮影した読者モデル(?)を指して、

 『街中でこのような組み合わせは如何なものか。』

 といったかなり手厳しい(汗)指摘をしているコーナーもあり、これも今では在り得ないくらい“大人目線”(またまたこれも良い意味で)なもの。



 それから“聖書”といえば写真中央の本!穂積和夫氏著作『絵本アイビーボーイ図鑑』(初版)。前々回の更新『Four pockets jacket & white linen pant』の回でお話しされた本を持ってきてくださったのだ。因みに左隣はその女の子版『絵本アイビーギャル図鑑』で、右はタータンチェックの図柄、名前、由来、モットーなどが纏められた『CLANS & TARTANS OF SCOTLAND』の日本語版。

   

 『絵本アイビーボーイ図鑑』の初版は今から30年前。内容はやはり“硬派”で“縛り全開”で“大人目線”。まさに“トラッドの着こなしの基本”がドレスからカジュアルまでくまなく網羅されており、そこには古から連綿と続いているクラシックの世界が“IVY”というスタイルで表現されているのだ。

 牧島さんは言う、

 『昔はちゃんとした恰好良い大人が当たり前にいたよね。そして若い人達はそういう大人に憧れていた。若者の目線が上を向いていたっていうのかな。今は逆だけどね(苦笑)。大人が子供の方を向いている。』

 『やっぱり、大人がきちっとした綺麗な、TPOをわきまえた恰好をしないと。それが“着こなし”であり、そこには“基本”がちゃんとあることを知らないと駄目。』

 『“自分の好きな服を好きなように着る”って、口で言うのは簡単だけど凄く難しいこと。自分の今の好みにばかり囚われてしまうとどこか偏った着こなしになってしう。パーツ一つ一つを見れば良いんだけど全体のバランスが悪くなる。“基本”ってそのバランスを保つために必要なんだと思うよ。』

 『白井さんは本当に特別な人。何十年にも渡って多くの経験を重ねてそれが今の“味”になっている。“懐の深さ”が他の人とは比べものにならないんだよ。真似しようったってそりゃあなかなかできるもんじゃないよね(笑)。』



 だが、牧島さんもまた白井さんと同じく、青春時代に影響を受けたスタイルにこだわり続ける人なのだ。生涯を通して貫く何かを持つ。

 “カッコいいとはこういうことさ”

 と、いつもと変らない笑顔が教えてくれたような気がした。

 



信濃屋オリジナル・チャーチのコンビネーション

2010-03-13 03:59:00 | お気に入り
 

 信濃屋さんが1980年代に英国のシュメーカー・チャーチ社に別注したコンビネーションシューズ。アイビーウッド&ホワイトのカーフ。ラスト#84“Hickstead”。フィッティングF。

 いつもお馴染み銀座天神山のIさんがご自身のブログ上で、信濃屋さんご在籍当時の忘れられない大切な思い出の一つとして綴っていた信濃屋別注のチャーチの一つ。

 白井さんが『全部で約50型くらいやったかなぁ。自分が履きたい靴を注文していたようなもの(笑)。いっぱいあったけど殆ど他の人にあげちゃったから今手元に残っているチャーチは3足しかないよ(苦笑)。』と仰っていた、その3足の内の1足がこのコンビネーションのプロトタイプ(信濃屋HP『Shirai Textbook』をご参照ください

 

 英国既製靴の良心の象徴・チャーチ社が最も輝いていた時代に信濃屋さん(白井さん)とのコラボレートで生まれた秀作の靴の数々は、先達の思い出話の中にしばしば登場していました。また、エイジングが重ねられた諸兄所有のチャーチは私にとって垂涎の的以外の何物でもありませんでした。その、私にとっては幻同然の靴を、今回ネットオークションで落札しました。

 

 ここ数ヶ月、白井さんの薫陶を授かってきた私は、かつて一時期熱中していたものの、ネットオークションでのバーチャルな買い物には実はすっかり興味を失っていました。ですが今回、図らずも友人T君の導きで、本当に久しぶりに、たまたま開いたネットオークションのサイト上でこの靴を“発見”したときは、大袈裟でなく“我が目を疑い”、文字通り“胴のうちが震えるほど”の驚きと興奮を覚え、『天佑』という言葉が頭に浮かびました。

 これはきっと“白井さん”更新20回目のご褒美、と思い素直に落札することにしました。でも『禍福は糾える縄の如し』『好事魔多し』とも云われますから、これを最後にオークションは完全に“卒業”したいと思います。これ以上の喜びはもう決して無いでしょうから(笑)。

 

 流石は信濃屋さんで靴をお求めになられた方が手放された靴でした。状態はほぼ完璧に保たれていました。昨日天神山のIさんに見ていただきましたが、普段は辛口のIさんが『これなら僕も落札したかもしれない。価値ある靴だね。』と仰った時はさすがにちょっと目頭が熱くなってしまいました(照)。そして今日、白井流の靴磨きで丁寧に光らせました。元の所有者が何処の何方かは判りませんが、生涯大切に使わせていただきます。

 明日は気温も上がり春らしい陽気になりそうなので、下ろし立てのダリオ・ザファーニのグレンチェックにこの靴を合わせて履き、颯爽と“白井さん”の撮影に向かおうと思います。 明日からは白井さんの着こなしも“春編”のスタートとなるでしょうね。

天神山と信濃屋

2010-02-19 21:17:14 | お気に入り
 

 白井さんの着こなしを楽しみにしていた諸兄には大変申し訳ありませんが、前回お知らせしていた通り今週木曜日の“白井さん”撮影はお休み。ならば今日は箸休めとして、次第に去り行こうとしている冬を惜しみつつ、今シーズン新たに私のワードローブに加わった服をアップしてみたいと思います。

 毎度お馴染みの銀座天神山さんでお願いしたダイヤゴナルのジャケットです。



 しっとりとした肌触りと英国風カントリーテイストの微妙な枯れ芝色の生地は、カルロ・バルベラ(伊)のウールにカシミア5%混紡のダイヤゴナル柄。シングルブレスト3ボタン段返り、バルカの胸ポケット、腰ポケットはフラップでややスラント、チェンジポケット付き、サイドベンツ、袖のボタンはやや重ねて4つ。

    

 今回も、天神山さんの幾つかあるモデルの中の一つ“CRCS(カラチェニ)”モデル。ナチュラルショルダー、広めの肩幅、ゆったりとした肩周り、緩やかな弧を描く大き目のラペルが特徴で、私のガッチリした体型に最も合っている愛すべきモデルです。

 コーディネートは、生成り色のBDシャツにチェックのウールタイを締め、インナーに前開きの黄色いニットベスト、深めのグリーンのシルクチーフを挿し、パンツはグレーフランネル、靴は明るい茶のスウェード・セミブローグ、で纏めてみました。ネクタイ・ニットベスト・ポケットチーフは私の私物で、その他は天神山さんにお借りしました。特に靴は、いつもお馴染みの天神山Iさんが信濃屋さんに在籍されていた頃から培ってきた拘りが随所に鏤められている天神山オリジナルの力作。今回のコーディネートに華を添えていただいた形となり感謝感謝です。

 

 さて、斜め一方向に走るはっきりとした綾目が特徴のこのダイヤゴナル柄のジャケット。購入に至る経緯にはちょっとしたエピソードがありました。

 このジャケットが今秋冬シーズンのおすすめとして天神山さんのブログに登場したのが昨年の7月。私もIさんから強くおすすめしていただいたのですが、その時は正直言って、“なんか地味ぃ~な色”、それから“なんかヘンテコリンな柄”という印象しかなく、特に気になったのが襟に走るダイヤゴナルの綾目の角度が左右の襟で違う点でした。私は思ったことがはっきり顔に出る未熟者なので判り易かったのでしょう、その後Iさんからこの生地をお薦めして頂くことはありませんでした。

 それから数ヶ月が過ぎ、12月になってこのブログのカテゴリー“白井さん”の撮影を始めた頃のことです。告白しますが、実はこのカテゴリーの1回目と2回目の間には“幻の回”が存在していました。何故“幻の回”なのかというと、なんと私がデジカメのバッテリーを忘れてしまい撮影ができなかったからなのです。今思い返しても赤面するほど恥ずかしく、白井さんには無礼千万なビッグミステイクでした。ただ、幸いにもその日は、白井さんがたまたまコンパクト・デジカメを、最近撮影された写真を現像する為に持参されていて、それをお借りして撮影させていただいた秘蔵の2枚があります。後日データを分けていただきこっそり保管していましたが、それがこちら!ジャン!

 

 この日の私は唯々恐縮の体で頭の中は真っ白、小さくなってシャッターを切り、メモも執り忘れ記憶が定かではないのですが、ダブルブレストのチョークストライプ・フランネルスーツ(伊、A・カラチェニ製)に千鳥格子のタイという渋い装いながら、足元には敢えてチャーチのコンビネーションを軽やかに合わせるという超ハイグレードな着こなしでした。くぅ~今もって口惜しい記憶ですが、そのお陰というと変な言い方になりますが、その時、白井さんのデジカメの中に収められていた写真を何枚か拝見させていただきました。それは白井さんがご家族の皆様と馬車道のリストランテで食事会をされたとき写真だったのですが、その実に楽しげで穏やかな雰囲気の中、白井さんがお召しになっていたジャケットが、なんと今日のダイヤゴナルと瓜二つだったのです!

 ご家族での食事会ですからそんなに気張る必要はありません。白井さんはジャケットの色を拾ったスカーフをさらりと襟元にあしらってアクセントにし、私が第一印象で“地味ぃ~”と捉えたこのジャケットを使って“大人の男の休日スタイル”をものの見事に演出されていました。“なるほど!あのジャケットはこういう風に着こなすものだったのか!”・・・まさに目から鱗の瞬間でした。ただ“細かいことが気になるのが僕の悪い癖(杉下右京風)”。ラペルの綾目の角度の違いだけはどうしても気になったので、その点を白井さんに伺うと、『あれはそういうもの。あれが自然な形。』という明快なお答え。私がその日直ぐに天神山さんに電話をして在庫の確認をしたのは言うまでもありません。

 このダイヤゴナルのジャケットは、私に服選びと着こなしの奥深さを教えてくれた大切な一着になりました。

  

 さて、今更改まって言うのも些か気恥ずかしいのですが、私が紳士服の魅力に目覚めたのは数年前の天神山さんとの出会いがきっかけでした。以来、私の体型に合わせて少しずつ補正を重ね、今日のダイヤゴナルで天神山製は全てマシンメイド(天神山さんではマシンメイドとハンドメイドの両方扱っています)のジャケットで都合9着目となりました。今はその9着を、まだまだお恥ずかしい着数ながら、なんとかやり繰りして私なりに着こなしを楽しんでいます。

 もちろん、それ以前にも必要に迫られてスーツやジャケットを何着か揃えてはいましたが、今それらは完全に箪笥の肥しになっています。それがあまり良いことでないのは分かってはいるのですが、天神山さんのジャケットと比べると素人の私でもはっきり判るくらい、その着心地とプロポーションの差は歴然としていて、以前の服にはとても袖を通す気にはなれません。もう一つ、私は極端に幅が広いイカリ肩なので、以前の既製服では首の後ろに所謂“ツキ皺”が出てしまいます。ですから、天神山さんに出会ってからは、街で見かけた服がどんなに素晴らしいものであっても、それが既製服である以上、私にとっては手の届かない服でしかありませんでした。例えそれが信濃屋さんのウィンドウに飾られた一目惚れするほどの素敵な服だったとしても・・・。

  

 記念すべき10着目は、今まで指を咥えて見ているしかなかった憧れの信濃屋さんの既製服。信濃屋流を志してからは初めてのスーツ、そして憧れの伊ダリオ・ザファーニ(セントアンドリュース製)、初めてのハンドメイド服です。

   

 肩幅と襟幅が広めでゴージ、ボタン位置があまり高くないオーソドックスなスタイルを強く押し出したシングルブレスト3ボタン段返り、控えめにほんの少しだけバルカの胸ポケット、腰ポケットはフラップ、チェンジポケット付き、サイドベンツ、小さめの袖のボタンはやや重ねて4つ。パンツは渡り幅と股上をゆったり目にとり、当然ツープリーツ(これも初)でサスペンダー釦付き、信濃屋テイスト溢れる完全別注の逸品です。

 コーディネートは、白抜きのクレリックのピンホールシャツ(これは信濃屋さんでお借りしました。)に、白井さんに頂いた虎の子のルチアーノ・バルベラのレジメンタルストライプ、迷った時は白い麻のポケットチーフ、真っ赤なサスペンダー(これもお借りしたもの)、靴は信濃屋オリジナルのUチップ。

 白井さんが『色が良いんだよこれは。』と仰っていましたが、私がまず最初に魅かれたのもこの服の色でした。柔らかい茶色のグレンチェック柄に淡いベージュのペインが入った大人しく品のある色。まさか最初に買うスーツが茶のグレンチェックになるとは予測もしていませんでしたが、良い服との出会いはこういうものなのかもしれません。

 次に魅かれたのは、素人の私がこんなことを言うのは憚りながら、その秀逸なパターン。10年後20年後も決して色褪せることは無いであろう普遍的なフォルム。何処に着て行っても恥ずかしくない服。英国的な雰囲気の服作りを信条とするセントアンドリュースと、真の大人の男の服を提案し続けている信濃屋さん、その両者のコラボレートの面目躍如といった観があります。また決定打となったのは信濃屋さんで初めてちゃんと“肩が入った”ことでした。

 

 先月末のある日のことでした。実は白井さんの撮影の日はそれに集中するため、なかなか自分の買い物はできないもの。そんな訳で、私は撮影日を外して信濃屋さんを訪れたことがありました。私は小物を中心に久しぶりにゆっくりと買い物を堪能していました。上述の理由もあって、私は今まで一度も信濃屋さんで服を買ったことは無かったのですが、その日はたまたま他のお客様もいらっしゃらなかったので、どうせ着られないけど試すだけならと、いつも私のお相手をしてくださる牧島さんといろんな上着を着比べて遊んでいました(笑)。

 そのとき、以前から“綺麗な服だな~。あんな服が着れたら良いのにな~。”と思っていたこの服に何気なく袖を通してみたところ、“カポッ”と肩が綺麗に収まったのです。“既製服の肩が綺麗に収まる”そんな経験は初めてだったので驚きました。肩が嵌ったのはセントアンドリュースのパターンの素晴らしさが一因だったのは言うまでもありませんが、実は私の体重が、昨年末に白井さんの撮影を始めてから6kg落ちていたことも理由の一つだったのかもしれません。これは心労が祟って、という訳ではなく(笑)、上手く言えませんが、“気引き締まって身も引き締まる”とでも云いますか、白井さんの着こなしを見続けることによって私の中の何らかの“意識”が変ってきたことによるものでした。ただ、私などには分不相応な服であるのは変りません。それからも白井さんの目を盗んでは(笑)この服を羽織って一人悦に入っていたのですが、遂に白井さんの目にするところとなり敢え無く“御用”。この服との巡り合せも白井さんが導いてくれたもの、と観念して今日に至りました。

 私には10年早い服かもしれませんが、着こなせた時の喜びは如何ばかりかと胸躍ります。

 最後に、天神山のIさん、信濃屋の牧島さん、撮影ご協力ありがとうございました。今日も何だかんだで白井さんに持っていかれた観がありますが、そうは言ってもお二人の介添えが無ければ今回のアップは存在しませんし、今日私のワードローブが、余計な回り道をせず最短距離で充実できているのもお二人の日頃のアドヴァイスあったればこそ。本当に感謝しています。ありがとうございました。


Happy New Year 2010

2010-01-01 14:12:52 | お気に入り


  
          あけましておめでとうございます!

  
 “capriccioso~気まぐれ~”な更新ペースや“ad libitum~気まま~”な内容にも拘らずご覧戴いている皆様に支えていただき、2010年元旦の更新が無事果たせることを深く感謝いたします。これからも私的な“旬”の関心事をつらつらと書き連ねていこうと思っていますので、今年も何卒宜しくお願い申し上げます。


          皆様の御健康と御多幸を願いつつ


                       2010年    元旦


Shinanoya Chiristmas Party 2009

2009-12-14 12:46:10 | お気に入り
 

 昨日、横浜信濃屋さんのクリスマスパーティーに今年も参加させていただきました。

 昨年に引き続き今回で2度目となったこの会。昨年は12月なのに最高気温が20度という暑さにも拘らず、白井さんに敬意を表してかオーバーコートをお召しになられた参加者の方がじつに多く、さすが信濃屋の顧客の皆様!とその洒落者ぶりに度肝を抜かれましたが、今年は平年並みの気温となり皆さん安心して自慢の装いを満喫されていた様子でした。

 会場はこのブログでも以前紹介したことがある横浜馬車道のレストラン『パネ・エ・ビーノ』。クラシックな装いの諸兄が犇めき合う店内は巷の忘年会とは一線を画す例によって独特な光景でしたが、普段信濃屋の白井さんを見慣れているお店のスタッフですからそこは手馴れたもの。料理はいつもながら大変美味しく会の進行も手際よくスムーズでした。

 

 パーティーの前には白井さんと“マエストロ”赤峰 幸生さんの好例の“トークセッション”。今年のお題は『映画から学ぶ紳士のスタイル』。会場には赤嶺さんが持ち込まれた、ゲーブル、グラント、マストロヤンニ、クーパー、などの往年の名俳優の写真や名画のポスターが並び、大きなスクリーンにはモノクロフィルムの映像が映し出されるという趣向が凝らされていました。さすが“マエストロ”!

 白井さんはハリウッド映画、殊に西部劇をよくご覧になっていたそうです。『だって当時はそれしか無かったんだもの』とのこと笑。“ニュー・シネマ・パラダイス”のトト並に目を輝かせてご覧になっていたのでしょうか。

 

 また今年は途中からシップスの鈴木 晴生さんがトークに加わって更に充実した内容となりました。甘いマスクと、白井さんも一目置かれる抜群の着こなしのセンスで紳士服飾業界では知らない人はいないという方で、私も天神山のIさんから“むちゃくちゃ恰好良い”と以前より聞かされていたので、初めての“生”鈴木さんにはむちゃくちゃ感動しました笑。毎年2回フィレンツェで行われ世界中の紳士服バイヤーが集う見本市“ピッティ ウォモ”の会場でも、鈴木さんの着こなしのセンスは群をぬいているそうです(“The Sartorialist”のBlog June 2008←こちらのサイトにピッティ会場でリネンスーツで惚れ惚れするほどの洒脱な着こなしを見せる鈴木さんの写真《15枚目》が掲載されています)。この日もナチュラルカラーのコーデュロイスーツを小粋に身にまとう姿が洒落者が居並ぶ会場でも一際存在感を放っていました。またハリウッド映画にも大変造詣が深く、精細な内容や一流の学者さんのような明晰な語り口調と、その端正な姿とのギャップも魅力的な方でした。撮影をお願いした時も驚くほど丁寧に対応していただいて感動頻りでした。



 こちらは元テイジンメンズショップの平井 剛さん。なんと鈴木さんが“僕を撮るならこの人も撮らなきゃ”とご紹介してくださった方!銀座の通りを行き交う紳士淑女やその道のプロをも魅了し続けてきたテイジンメンズショップのショーウィンドウのディスプレイを長年に渡って手掛けてきたのはこちらの平井さんで、鈴木さんが最も尊敬する先輩のお一人なのだそうです。

 パーティーの中締めに行われたインタビューに平井さんが登場されて“ある朝、開店前にディスプレイをしているとコンコンと窓を叩く音がして、振り返るとそこにジョン・レノンが立っていた”というお話をご披露された時には会場の皆さんが思わず驚嘆の声をあげていました。一緒に居たヨーコ・オノに“ジョンはあなたの店が好きなのよ”とも言われて、しばし彼らのお買い物のお相手をされたのが良い思い出です、と仰っていました。



 こちらも大変有名な方です。天皇陛下の洋服を代々手掛けられている金洋服店の服部 晋さんです。服部さんの名著『洋服の話』は私も読ませていただきました。物腰が柔らかくて“品格”という言葉がぴったり当て嵌まる装いのまさに“紳士”でした。

 という訳で、どこを見渡してもご自身のスタイルをお持ちの錚錚たる顔ぶればかりで、私の居場所など全く無く、ずっと壁にへばりついているという状態(料理を取り分けるとき以外)でしたが、信濃屋の皆さんにお力添えをいただきながらなんとか撮影することができました。皆さんありがとうございました。

 

 そしてやはり最後はこの方を。信濃屋の白井さんです。今回もこれが撮りたくて参加したというのが理由の大半を占めています。濃紺のダブルのスリーピースに水玉のボウタイを締め、胸のチーフは艶やかに、足元はピッカピカの黒のキャップトゥ、頭にホンブルグ帽を戴き、濃紺のチェスターコートの襟元はタイと同ピッチの水玉をあしらった濃緑のシルクスカーフ、手には当然ステッキという完璧な着こなし。“凄~い!これが天神山Iさんが以前言っていた、若者の街渋谷でも一際目立っていたという白井さんのコートスタイルか!!”と一人合点していました。



 最後は昨夜のベストショット!往年の名画のどんな俳優たちの写真よりも私にとっては遥に価値のある“今を生きる”一枚です笑。

 

ダブルブレストのネイビーフランネルブレザー

2009-12-07 21:34:36 | お気に入り
 

 ダブルブレストのネイビーフランネルブレザーです。

 

 数多ある服飾素材の中で私が最も好きな冬の定番“フランネル”。鈍い輝きを控えめに放つ滑らかな光沢感、やや硬めの感触と乾いた質感、スポーティーな出自ながらどこか気品漂い、着る人の個性をキラリと主張するこの素材は長年私の心を捉え続けてきました。

  

 私が日頃お世話になっている横浜・信濃屋さんも銀座・天神山さんもこの素材は大好物。信濃屋の白井さんはHPの中で“身も心も暖かくしてくれる冬服の定番”(2007年12月12日掲載『THE FLANNNE』より)と謳い、ダブルのフランネルネイビーブレザーは白井さん御自身の“定番”といっても良いくらいしばしば愛用されている印象が私にはあります。

 地球温暖化が叫ばれ、季節感のない装いが巷を占めている昨今にもかかわらず、天神山のIさんはブログ上で毎冬必ず紹介し続けるくらいこの素材がお好きで、これは私の勝手な印象ですが、チャコールのダブルブレストの幅広のチョークストライプの着こなしがあれほどサマになる方を私は他に知りません。

 天神山オーナーのMさんが茶とベージュ地に赤いペインのプリンスオブウェールズ柄のフランネルのスリーピースを上品に着こなしている様などを見るに至ってはただもう指を銜えて羨ましがるだけという始末だったここ数年・・・涙。

 

 この様に私の周りではこの素材を小粋に楽しむ方々がわんさか居て、毎冬羨望の眼差し無くしてはいられないという状態でしたが、遂にこの憧れの素材を我が身に纏う日がやってきました。

 

 霜降りのはっきりとしたミディアムグレーにも強い憧れがありましたが、グレーフランネルといえば当然スリーピース!ということになり、普段ジャケパンスタイルが多く、スーツを着る機会が殆ど無い私にとっては折角のフランネルも出番薄となってしまうので、今回はフラノといえばもう一方の定番であるネイビーブレザーにしました。素材はフランネルでは本邦で一、ニを争うと評判の尾州の老舗テキスタイルメーカー“三星毛糸”のMerrow Flannnelシリーズから、少し明るめのネイビーを選びました。綾目が少なく重さは程よい400g/m。

 

 “ネイビー”と一口に言っても黒に近いものからブルー寄りまで色幅は広く、選択肢は限りなくありますが、昨年製作したサージのネイビーブレザーがかなり濃い色だったので、今回はそれよりほんの少し明るめのネイビーにしました。またフランネルといえば霜降り感が大きな魅力の一つで、貧乏性の私にはこの点がどうしても捨て難く、ネイビーながら少し霜降り感のあるものを選びました。フランネルネイビーブレザーの素材としては正統というよりは少し趣味性が感じられますが、長年自分の中で温めていたアイディアだったので大変満足しています。ゆっくり時間を掛けてドリップした珈琲に豆の個性はっきり感じられるように、じっくり時間をかけて自分の中を濾過したアイディアで選んだ服にもまた着る人の個性が表れるような気がします。服飾初心者の私は、素材選びに関してもこれまではIさんやMさんのお勧めを頼りに選んでいたのですが、数あるブックの中から今回初めて自分が第一発見者となったので、エポックメイキングな一着といえるかもしれません。少しステップアップです笑。

 

 モデルは細かな体型補正を繰り返しもう私の体にすっかり馴染んだ銀座・天神山“CRCS”モデルですが、今回は初のダブルブレスト。フランネルといえばダブル!ということで迷わず選びました。特徴ある幅広のダブルブレストは天神山さんのお家芸。先端が丸みを帯びたピーク、襟の返りはいつもながら美しい曲線を描き、緩やかに湾曲した襟線は私の丸っこい体型にぴったり。ダブルブレストの最大の魅力は男振りある立ち姿も然ることながら、(これはめちゃ私見なんですが汗)座ったときの“襟の開き”にあるのではと思っています。シングルよりも前の合わせが多いダブルならではの襟の開き具合にはなんともいえない雰囲気があります。特に硬めの素材であるフランネルの開き方は鋭角的で、大人の男の色気をぷんぷん振りまいて、これは諸兄と座って対面してきた時に私が長年感じていたことでした。これで私もその仲間入りを無事果たすことができ感無量です笑。

 

 今まで天神山さんでお願いしてきた服は全て3パッチのジャケットだったので、“初”バルカ(船底型)の胸ポケットに、“初”フラップ腰ポケット、“初”チェンジポケットと今回は“初”が多いです汗。私は幅が広いいかり肩なのでパッドは1/3にして、縫製は片返し、サイドベンツのメタル6ボタン仕様。袖のボタンはメタルの輝きと私の短い腕を考慮して重ねず3つの本切羽で。ブレザーということでIさんには7㎜ステッチをお勧めしていただきましたが、今回は少しノーブルな素材感に合わせて敢えてコバステッチに仕上げていただきました。

 

 コーディネートは撮影用に天神山さんにお借りして、ラウンドカラーのクレリックにカシミアのストライプタイ、胸に白いシルクチーフ、パンツは同じくフランネルのグレーのグレンチェックを合わせてみました。天神山のお二人にもご協力いただき感謝多謝です笑。万能のネイビーブレザーなのでいろいろ試して楽しんでいきたいと思っています。

 

 来週の日曜日に予定されている信濃屋さんのクリスマスパーティーにはこのブレザーにカメラをぶら下げて颯爽と乗り込んでみようと思っています。『お時間がありましたら、私とおしゃれ談義の続きでもいかがでしょうか。』(信濃屋HP『白井俊夫のおしゃれ談義』より)・・・一度言ってみたかったこの台詞(照)。

 天神山さんのHPです→http://www.tenjinyama.jp/

 信濃屋さんのHPです→http://www.y-shinanoya.co.jp/top.html





 

坂の上の雲

2009-11-27 09:43:39 | お気に入り


 最近のまめな更新に自分が一番驚いている今日この頃ですが、あまり疲れないように今日は手短に笑。

 今月29日から始まるNHKのスペシャルドラマ『坂の上の雲』。大河ドラマ『天地人』の終了時期を繰り上げてまでの放映というNHK開局以来の大変な力の入れように勝手に期待感で胸膨ませた私は、最近はドラマの原作となった“偉大なる”故司馬遼太郎先生の小説『坂の上の雲』をせっせと読んでいました。

 日清日露戦争が舞台のこの小説を読むのはこれが2度目。“偉大なる”司馬文学の大きな特徴である“まぁよくぞここまで調べ上げたもんだわいな!”と思わずにはいられない綿密な調査取材に基づいた詳細な内容と、“先生!見てきたんですかいな!”とこれまた思わずにはいられない、登場人物の息遣いまで感じられるような大胆なドラマ描写に、今回も圧倒されつつなんとか読破し、“ドラマ放映に間に合って良かった!”とほっと胸を撫で下ろしています汗。

 でも安心するのもつかの間。来年1月3日から始まるNHK大河ドラマも福山雅治さん主演で“偉大なる”故司馬遼太郎先生ゆかりの“坂本竜馬モノ”ということですので、これから年末まで苦読を積まざるを得ないようです。

“Kiwism”&冬の名脇役’09

2009-11-23 17:35:56 | お気に入り


 『僕はKIWIしか使わないよ。もう50年以上そうしている。』

 横浜信濃屋の白井さんが仰ったこのセリフに衝撃を受けてから早一年。先日アップした信濃屋オリジナルのUチップを“白井流靴磨き”(私は勝手に“Kiwism”と呼んでいます笑)でがっつり磨きました。ついでに冬の装いを彩る名脇役たちを今年も並べてみました。

     

 靴の雰囲気に合わせて紐の通し方はアンダーラップにしてみました。不思議なもので、自分の手で磨いてやっと正真正銘“自分の靴になった~!”という気分になります。存在感充分だったホワイトステッチに少し付着したKIWIの色が良い“つなぎ”になって全体的にこ馴れた感じになって落ち着きも出てきました。早速一日履いてみましたが、やはり履き心地は素晴らしく、何故か安心感さえ感じてしまいました笑。うっすらと履き皺も浮いていい感じです。ただ注意しないといけないのはつま先の減り。私はせっかちな性分で、ついつい前につんのめって早歩きをしてしまうのでソールのつま先の部分の減りが異様に早かったのですが、最近は努めて正しい姿勢でゆっくりと歩くように心掛けています。そのためには時間に余裕を持って行動することも大切ですね苦笑。

 

 履き込み口から覗いているのは冬には欠かせないウールホーズ。イタリーのソッツィ社製です。昨年信濃屋オリジナルの赤いカシミアマフラーに合わせて購入して以来、この靴下の履き心地と発色の良さに病みつきに。他でも扱っているお店はあることはありますが、私が知る限りでは、信濃屋さんが一番色のバリエーションが豊富に揃っていると思います。がばっと大人買いしたいところですが価格がクオリティに比例しているので、信濃屋さんに伺う度に各色一足づつ揃えるのが、“靴下は足元のタイ”が信条の私のささやかな贅沢です。

 因みに白井さんは年間を通して愛用しているそうで、“コットンのべたつく感じが嫌いだから夏もウール!”と仰っていました。『このソッツィの生地はあまり厚くないからあまり暑くないし、足はあまり暑いとかなんとか感じないでしょ。』とも笑。いつでもさらっとした肌触りなので『あるお客さんは水虫が治っちゃったんだって』と嬉しそうにお話していました笑。むむ~まさに万能靴下!

 

 こちらも信濃屋さんで購入したデンツのライニング無しのペッカリーグローブ。クラシックな釦一つ留めが気に入って購入しましたが有っても無くてもどちらでも良いかもしれません汗。ただ、恐らく信濃屋さんで別注したものだと思いますが、他店で扱っているモノよりも革が肉厚なようで、これは少しくたびれてきた時やポケットに入れた時の感じでわかります。質感もよりマットな感じですし、同じ焦げ茶でも色味がより渋いのが気に入っています。

 

 では、テンポ良くいきましょう!

 伊チェーザレ・ガッティ社製サックスのカシミアマフラー。銀座天神山さんでお取り扱いの品で、昨年Iさんに強く薦められたのですが、残念ながら買う時機を逸してしまっていたので、今年は一番に購入しました。暖色が多いマフラー類ですが、この色は挑戦してみる価値有りです。襟元に上品な華やかさが生まれて新鮮です。あと、フリンジも含めて180㎝程の長さがあって、コートの前を開けた時には結構迫力のあるアクセントになって楽しいです。

 

 天神山オリジナルのハンチング帽はクラシックな形が私のデカイ頭にぴったり合っていて大変お気に入りで、ハンドメイドの被り心地も柔らかくて良い気分です。モカブラウン色のヘリンボーン、カラフルなネップが入ったドネガルツィードは下のコーディネートを選ばない優れもので、冬の間は一番出番が多いかもしれません。

 昨冬から“照れていては帽子は一生被れない”という白井さんの言葉に励まされ被り続けた帽子は、冬の終わり頃には最早私の冬のコートスタイルに欠かせないアイテムになりましたが、実は帽子は被っている時よりもむしろ脱いだ時の方が難問が多いことに気づかされました。一番の悩みは脱いだ後の髪のセットの乱れ。昨年、この点について信濃屋店内のエレベーターの中で白井さんに伺うと、『こう~さっとね、さりげなく。』と上着の内ポケットから櫛を取り出し撫で付ける仕草を。それと『エレベーターで女性と同乗したらさっと脱ぐこと。』とも一言。帽子はマナーが大切との明快で鮮やかな解答にまさに“脱帽”でした笑。

 いつもお馴染みの美容師さんのW君が、先日このブログでアップした西麻布Sさんのバーがとても気になる!とのことだったので今度一緒に行く予定ですが、その時に髪形について相談してみようかなっと思っています笑。

 

 先週から出番がやってきたクラシックローデンコート。もちろん今年も大活躍させるつもりです!

 

 千鳥格子柄のフランネル調のパンツ。裾の折り返しは拘りの4.5cm!。私は年間を通じてジャケパンスタイルが圧倒的に多く、先日数えてみると手持ちのパンツのなかで一番多かった柄がこの千鳥格子。どうやら一番好きな柄と判明しました笑。こちらはトラッドの老舗ミツミネさんで購入したもの。

 冬の定番フランネルパンツはやはり、霜降りがあり打ち込みのしっかりとした厚手の、信濃屋さんで扱っているバルベラ製や抜群の履き心地と顧客の皆さんが絶賛する天神山製のものなどに強く憧れていますが、私は学生時代は体育会系で大腿部が発達しているせいかパンツの痛みがこれまた異様に早く、服の中では購入頻度が最も高いのが悩みの種で、ミツミネさんは我が家の最寄り駅に支店があることもあり、パンツは専らこちらかトラッドの本家ブルックスブラザースを贔屓にさせていただいています。ミツミネさんはトラッドの基本をきちっと抑えている老舗ですので、シーズン毎に豊富な種類の、プリーツがきっちり入ったクラシックで中庸な形のパンツを展開していて、作りの良さとコストパフォーマンスの高さには定評があります。今様のパツパツ細身美脚パンツとは無縁の私には大変有り難いお店です。

 

 一つ一つは流行とは無縁の“普通”の品ですが、どれも長く愛用できるクラシックなものばかりなので、こうやってシーズン初めに改めて眺めてみると思わず“今年も宜しく!”という気持ちになります笑。やはり“普通が一番!”ですね笑。

 自分のペースで、自分で足を運び、自分の目で選んだ品で、ワードローブを充実させていく喜びは大人の男の特権なんだなぁ~と、最近やっと解ってきたような気がします。遠回りでもバランス良く少しずつでも楽しみながら揃えていきたいと思います。


 
 

信濃屋オリジナル・Uチップ“Douglas MacArthur”

2009-11-16 17:34:35 | お気に入り


 一昨日信濃屋さんから、注文していた今期の信濃屋オリジナルシューズが出来上がってきたとお電話があり、昨日久しぶりに横浜に行ってきました。

 

 モデル名は“Douglas MacArthur”ブラウンカーフでUチップのバルモラル。今期あがった4型の中で特に白井さんお薦めの型で、やはり白井さんご自身も購入されたとか。一昨日はお客様に臨時靴磨き教室を開きつつ早速この靴を例の業で磨いていたそうで、私も先ほどのお電話でお誘い頂いたのですが、残念ながら仕事がまだ終わっていなかったので止む無く断念涙。なんだかとっても良く光る革だそうで、磨き甲斐のある革だな~とご満悦だったそうです笑。因みに色味は赤みを抑えた渋い“スリークォーター茶”といったところです。

 

 よくエドワードグリーンのドーヴァーのような型を“Uチップ”と言う人がいますがあの型はUチップではありません。ドーヴァーのような型は正式には“オーバーレイプラグ”と言い、こちらが本当の“Uチップ”です!!(一度言ってみたかったこのセリフ笑)ミッドセンチュリーのアメリカ靴によく見られた型を復刻させた靴だそうです。



 正直に言うと、最初サンプルを見せて頂いた時は『白井さんイチ押し!』とお薦めいただきつつも、最近はラッタンジやスウェードのフルブローグなどの印象華やかな靴に目が慣れてきていたせいか、パーフォレーションが無く比較的ツルッとした表情に『なんか地味~汗』とあまり良い印象がなかったというのが本音でした。

  

 でも2度目に見た時、もう一度よく巨細に眺めてその考えが変りました。やはり最大のチャームポイントは、アッパーの各パーツ(これらそれぞれの名称は何というのかわかりませんが)をなんと大胆にも4重に施されたステッチが縁取りそれぞれが調和しつつ優美な曲線を描いているという大向こうを唸らせるデザイン。その後翻意して購入を決めたポイントがココでした!恐らくどこに行ってもおいそれと見られるモノではないのでは、と思われる希少性がありながらもオーソドックスな全体の印象は着こなしの幅が広そうなこともポイントでした。白井さんの哲学が反映された繊細且つ大胆にして普遍的でありながら特別な存在感を放つ靴ではないでしょうか(大袈裟ですが)。

 

 他にも、万能のラウンドトゥ、6穴鳩目、コバの張り出した無骨なダブルソール、360度のウェルトステッチの色は私が予ねて憧れていた初の“白”、と信濃屋流てんこ盛りな靴なんですが、白井さん・・・先の靴磨きのときにこのステッチを敢えて黒く塗っちゃったそうです汗。“直感!”・・・だそうです汗。

 さてさて、では私もKIWIでがっつり磨くかな笑。

 

 

 

シネスイッチ銀座

2009-11-13 17:37:13 | お気に入り


 雨上がりの冷たい空気に冬の匂いが感じられた昨日、私は愛用の信濃屋オリジナルのレインコートを羽織りイタリア・ガッティ社製のカシミアマフラーを首元に巻き、頭にハンチング、デンツのペッカリーを嵌め、先日天神山のIさんにそそのか・・・いえいえ笑、お薦めされて購入した紳士の必需品・ブリッグの黒傘を手にぶらりの完全防寒コート5点セットのスタイルで、仕事帰りに銀座のシネスイッチへ映画鑑賞に行ってきました。

 シネスイッチ銀座はわずか200席程度の劇場規模ながら、20年前『ニュー・シネマ・パラダイス』で40週連続上映、動員数約27万人、売上げ3億6900万円という驚くべき興行成績を収めたミニシアター界の雄ですが、私は今まで訪れたことが無く、長年の念願叶って初鑑賞となりました。



 特にお目当ての映画があったわけでは無かったのですが笑、今回私が観たのは『ココ・アヴァン・シャネル』。 詳細は敢えては語りますまい。他人の話で何がつまらないといえば昨日観たという夢の話とこちらがまだ観てない映画の話。ご興味お有りの方は是非。今月の26日まで上映予定だそうです笑。因みに、20世紀初頭の紳士の装いが次から次へと登場してくる本作品はクラシックな服飾好きの諸兄にも楽しめるたいへん素晴らしい映画でした。

 初シネスイッチ銀座・・・良かったですね~!私は仕事の都合で毎朝が早いので途中眠くなってきてしまい(映画がつまらなかったという意味ではありません汗)、後半は最後尾席のうしろに立ち、手すりに頬杖をついて鑑賞しましたが、人影まばらな夜のミニシアターではむしろその方がいい感じでした。当世流のシネコンとは一味違う、懐かしい感じがするクラシックな映画館でした。

 まだ私が社会人になって間もない頃、職場の大先輩にNさんという方がいて私はたいそう可愛がって頂きました。Nさんは美食と菊水の辛口が好きで一年中オーダーメイドの藍染の作務衣を愛用し、趣味のジャズプレイヤーを被写体にした白黒のフィルム写真は玄人はだしで、何より映画をこよなく愛する風流な趣味人でした。若い頃はバンカラで学ランに下駄履きで銀ブラを楽しんだとか笑。Nさんは映画は必ず銀座で観るといっていました。音が他とは違うんだとか・・・。

 当時の私には彼が話してくれた四方山のことなど半分も理解できてはいなかったと思うのですが、生涯独身だったNさんはいつもどこか寂しげな丸まった背中に何故か大人の色気を感じさせる人でした。

 映画を観た後、暖を取るために入った劇場の隣の2階にある『凛』というなかなかよい感じの喫茶店で暖かい珈琲をすすりながらそんなことを思い出した夜でもありました。

Fugeeの時計ベルト

2009-11-10 01:25:52 | お気に入り
  
 
 暦は立冬を過ぎましたが暖かい陽射しの続く今日この頃・・・渋谷のオーダー鞄のお店『Fugee』さんにお願いしていた腕時計のベルトを受け取りに行ってきました。『Fugee』さんは完全オーダーメイドの手縫い鞄の製作をメインとされていますが、革小物の類も充実しています。中でも今回私が心魅かれたのは腕時計のベルト。

 

 このブログに頻繁に登場していただいている信濃屋の白井さんを筆頭に信濃屋流スタイルの方々は決まって革ベルトの腕時計をシャツのカフの上から巻いていて(但しこのスタイルは信濃屋流だけに限らないようで、有名な方ではイタリアFIAT社オーナーの故ジャンニ・アニエリ氏や、名門テキスタイルメーカーCARLO BARBERAのオーナー、ルチアーノ・バルベラ氏などもこのスタイルですね!)、ステンレススチール製のスポーツウォッチを虎の子の一本としている私は、彼らのスタイルに以前から密かに憧れていました。

 

 ただ、ベルト一つで大袈裟なことですが、私には悩みが一つありました。それは私の時計はスポーツウォッチで、方々の嵌めている腕時計は皆ドレスウォッチという点。やはりカフの上から巻くのであれば薄く作られたドレスウォッチが品良く様になるのは必定、ということが一般的に言われています。かといって高価なドレスウォッチは高嶺の花、若僧の自分には今の時計がお似合いさ、と自嘲気味に半ば諦めていました。

 

 ですが最近、壮年の頃のジャンニ・アニエリ氏がステンレス製ベルトのスポーツウォッチをカフの上から巻いた姿が写っている一枚を偶然ネット上で発見し、『うわ!なんだアリなんじゃん!』と勇気づけられると同時に、氏の自身のスタイルへの拘りに一種の凄みも感じ、一般論や潜入観に囚われ小さな差異に思い煩い、愛着ある時計を軽んじていた我が不明を恥じました。

 

 そのようなあれやこれやの思案と、やはり秋冬の装いには温もりを感じさせる革のベルトを巻いてみたいという想いと、昨年から『Fugee』さんを知るに及び、そのモノ造りへの姿勢に感銘を受けていた私としては、是非この職人さんの作ったベルトを腕に巻いてみたい!、という気持ちが重なり今回作製をお願いした次第です。

 

 『Fugee』さんの革ベルトは職人の藤井さんが独自に研究し完成させた『設計図』に、計測した時計の各所の寸法、腕の太さ(下の写真の4枚目は藤井さんお手製の革の計測用腕模型です!)などの数値を入力し、その人の腕に時計が巻かれた時に最も美しく映えるベルトの形(長さ、幅、厚みと時計本体からベルト先端にかけてのテーパード具合など)を導き出してから作製するというシステムです。もちろん全て手縫いですから依頼主の意向も十分に反映してもらえますし、ステッチの色、革のバリエーションは豊富であることは言わずもがな。尾錠は自分の好きなものを持参することもできますし、『Fugee』さんオリジナルのもの(各種ゴールド、スターリングシルバー、ステンレススチール)も選べます。

   

 また藤井さんには『うちのオーダーならベルト穴一つがカッコいい』と奨められ、これには驚きました。ハンドメイドなんだから穴の数は自由に選べるのはある意味当たり前のことともいえますが、藤井さんはその時計が最も美しく見え尾錠が腕の内側の真ん中にぴたりと収まるように計算され穿たれる『一つ穴』を誇ってらっしゃいました。『かっこいいとはこういうことさ』と言わんばかりの潔さです汗。ただし今回は、まだまだ自分のスタイルが確立できていない未熟者の私用ですので、穴はジャストワンの両脇に一つづつ計3つ空けていただきました汗。

 

 さらに『一つ』繋がりでもう一点、『Fugee』さんのベルトにはベルトループ(サル革と言うそうです)も一つしかありません。こちらについては藤井さんのアシスタントのKさんが、『ベルトがジャストサイズならサル革は二つも要らないでしょう。』と静かに力説していました汗。『Fugee』まさに恐るべし汗。因みにこのサル革、通常はベルト部分に簡便にボンドで固定するメーカーが殆どだそうですが、『Fugee』さんではサル革も糸留めされています。これも手縫いに拘るこちらならではのディティールです。

 

 さて、昨年鞄を購入したときは、その鞄は既に完成品でしたので良かったのですが、今回は自分で素材選びからしなければならず非常に悩みました。ベルトの形状は藤井さんにお任せで問題ないのですが、はてさて素材をどうしたものか・・・最初は無難にクロコダイルで、色は私が茶の靴を好んで履くことや時計の文字盤が黒ということもあり焦げ茶で行こうと考えていたのですが、耐久性に優れエイジングが最も楽しめるボックスカーフにしようか、オーダーならではの素材であり独自のエイジングをするというエレファント(ワインレッドのステッチが施されたサンプルの墨色のエレファントがまた実にカッコいい!)しようかと、悩み始めたらキリがなく頭を抱てしまいました。ですが、私がさんざん悩んでいる様を見て藤井さんが最後に控えめに『僕はクロコが一番綺麗だと思ったよ』と仰った言葉に背中を押される形で焦げ茶のクロコに決めました苦笑。

 

 裏打ちはボックスカーフの茶、尾錠は『Fugee』さんオリジナルのステンレススチール。ステッチの色はもちろん、かの名店のオリジナルシューズのステッチにしばしば見られる信濃屋流こだわりの白!これは最初から決めていました笑。

 

 また長々と書いてしまいましたが、最後に・・・藤井さんもKさんも時計に関しては全くの素人ですとご自身方が仰っていて、お二人が計測のとき私の時計をもの珍しそうに『うわ、重いなぁ!・・・』とか『あ!裏が透けてる!・・・』とか仰りながら(因みに私の時計は結構ポピュラーな方だと思います汗)覗き込んでいた姿が、不遜ですが、なんだかとても微笑ましく、と同時にそんなお二人が作り出した鞄やベルトが異彩を放つほどに美しく、生命を宿すがごとき温もりを感じさせ、私の心を捉えて離さない理由や、『モノづくり』の本質の一端が垣間見れたような光景でもありました。

 

 また一つ私のワードローブにパーマネントコレクションが加わりました笑。今回も無理をお願いして『Fugee』さんの店内での撮影です。藤井さん、Kさん、お仕事の邪魔ばかりして本当に申し訳ありませんでした。そして、ご協力有難うございました。年内にもう一度伺って経過報告をしたいと思います。
 
 FugeeさんのHPです→http://www.fugee.jp/
 

 

 

マティーニ

2009-11-03 19:12:57 | お気に入り


 昨日は日中銀座を散歩した後、夜から突然振り出した冷たい雨に誘われてか、急に一人飲みたくなり久しぶりに西麻布へ向かいました。

 西麻布は私が20代前半の頃、職場がこの街にあったのでたいへん思い出深い場所です。私が向かったのはオーナーバーテンダーのSさんがお一人で切り盛りされているカウンターだけの小さなBarで、私の唯一の行きつけのBarです。Sさんとはもうかれこれ20年近いお付き合いになります。

 Sさんと久闊を叙しつつ、このブログのために写真を一枚撮らせていただきました。携帯電話のカメラなので写りはイマイチですがマティーニです。マティーニは最近やっとその美味しさがわかるようになってきて、今では最もお気に入りのカクテルの一つですが、未だにオリーブは先に食べるべきか後に食べるべきか、はたまた中頃に食べるべきか、そして種はどこに置けばいいんだ!と一人悩んでいます汗(因みにこちらでは小皿を添えてくれますので安心です)。その後、ヨコハマ、それからハイネケンと赤ワインをいただきました。

 17年前にSさんとこの店と、最初に出会ったときの衝撃は今でもよく覚えています。その頃まだ社会に出たばかりの私は知人に連れられこの店に来たのですが、看板の無い店の扉を開けた先に待っていたのはまさに大人の世界でした。青い照明(私は色の中で青が一番好きです)に照らされ壁に並んだボトルやグラス、漆黒のカウンター、豊かに飾られた大きな活花・・・店の姿は今も当時と変わらず、ここだけ時間が止まっているかのように大人のための時間と空間を提供し続けています。Sさんは私とほぼ同世代なのですが、当時、若くして既にオーナーとしてカウンターに立つ姿は凛として、それもまた今でも全く変わりありません。

 そういえば、ボルサリーノの存在を最初に知ったのはこのお店でした。もうそれこそ20年近く前になるのでしょうが冬の時期だったでしょうか、仕立ての良さそうなコート(今思い出してみるとカシミアのチェスターだったでしょうか)に鍔つきのグレーの帽子を被り一人でふらりとやってこられた老紳士がいて、Sさんがさりげなく『素敵なお帽子ですね。ボルサリーノですか?』と訊ねていた光景が一幅の上等な絵画のように、当時まだまだ小僧だった私の目に焼きついて、以来ボルサリーノにはずっと一種憧れのようなものを抱いていました。

 邂逅以来そんな風に多くのことを学んだ場所ですが、その中で最も大切なことがSさんに教えてもらったことです。お店とお客さんの関係について話をしていたときだったと思うのですがSさんは私にこう言いました。『その人にとって最も大切な場所は、そのひとを知ってくれている人がいる場所』と。他愛の無い雑談の中の言葉だったのかもしれませんが、今でもこの言葉は私の大事な人生哲学であり続けています。マティーニ一杯で大袈裟かもしれませんが、そんなことを改めて思い出した夜でした照。もちろんこのお店を知っていることそのことが私の貴重な財産の一つであることは言うまでもありません笑。
 

 

 

 

白井流

2009-10-26 15:16:46 | お気に入り


 今月発売された『Men's Ex』特別編集『完全保存版・男の傑作品メンテナンス大全集』(世界文化社刊)に横浜・信濃屋の白井さんの記事が掲載されているという噂を聞き早速購入してみました。

 白井さんがご自身の靴や服、小物のお手入れについて語るという内容で、特に独自の靴磨きの業の件は必見ですが、まさに“白井流”のオンパレードで、服飾メンテナンスの特別編集完全保存版なのに『僕は不精ですから(笑)。』などと仰っていて思わず笑っちゃいました。色々な意味で大変愉快痛快!という記事でした笑。

 メンテナンスでお悩みの方は是非一度読んでみてください。ただ、ご自身を『無精者』と仰っている白井さんですが、たかだか私ごときが知る限りですけど、それはそのまま額面通りには受け取れないとも思います。

 『白井流』ダンディズムはまだまだ奥が深いと思います笑。





グレーヘリンボーン・ツイードのジャケット

2009-10-10 00:00:00 | お気に入り
 
 
 季節はめぐり天高く馬肥ゆる秋。先日の台風一過の突き抜けるような青空と驚くほど澄んだ空気が、私に何かの作用を起こしたようで、久しぶりの更新(因みに十月十日ぶり笑)・復活となりました。あまり気張り過ぎないように超マイペースでのんびり続けようかな、と思っています。気まぐれでごめんなさい汗。

 

 これからの季節の着こなしには外すことはできない紳士のマストアイテム、ツイード。その中でも最も定番のグレーヘリンボーンのジャケットです。

 ツイードのグレーヘリンボーンといえばアメリカ東海岸のイメージが頭の中を渦巻いてしまうのがなんちゃって紳士の人情というもの。妄想の中の私はすっかりマンハッタンの住人となり、秋のセントラルパークを落ち葉を踏みしめながら散歩しています。もちろんジャケットの襟を立てていることは言わずもがなです。
 
      

 ということで、そんな妄想を具現化すべく、素材は『や~っぱツイードといえばハリスでしょ!』ということで、英国ハリス協会認定のヘリンボーン・ツイードを使い、モデルは当然シングル前の3パッチ&フラップポケット、センターベント、使用頻度や生地の強度を考慮して背は片返しにし、あまり目立たないのですが敢えて7mm総ステッチを入れていただきカジュアルなムードを強調しました。定番直球東海岸ど真ん中!今回もお馴染みの銀座・天神山さん製です。

 コーディネートは、直球ならばオックスフォードのボタンダウンシャツに黒のウールニットタイ・・・と行く所でしょうが、今日は少し捻りを加えて、白地に淡いブルーのグラフチェック柄のボタンダウンに、暖かそうで柔らかな黄色のカシミア生地の小紋タイを合わせ、チーフは赤が鮮やかなタータンチェックを挿し、アクセントにサックスブルーのカシミアニットベストを加え、当然ボトムはやや濃い目のグレーフランネルのスラックスに、信濃屋白井さん流にタイの色と合わせて黄色のウールホーズを履き、焦げ茶のスエード・フルブローグで決まりでしょう笑! 今年の秋冬はこ~んな気分です!う~ん・・・まさに自己満足の世界!

  

 この度も天神山さんの暖かいご協力を頂いての撮影です。今日も準備万端整えてなんだかちょっと楽しそうにお付き合いくださったIさん笑。本当にありがとうございました。

 白洲次郎さんは「ツイードなんて、買って直ぐ着るものじゃないよ。3年くらい軒下に干したり雨ざらしにして、くたびれた頃着るんだよ」と、三宅一生さんにアドバイスされたらしいですが、野暮な上にせっかちな性分の私は、早速今年から(白洲さんごめんなさい)ガンガン着込んで体に馴染ませて、10年経って肘が抜けたらスエードのエルボーパッチを付けて更にまた10年、と着倒して所謂一つの『一生の友』にしようと思います。早くもっと寒くならないかな~

 
 天神山さんのHPです→http://www.tenjinyama.jp/

ポロコートとボルサリーノ

2008-12-31 23:59:59 | お気に入り
      

 いよいよ2008年も今日で最後。寒さもいよいよ厳しさを増し枯葉舞い落ちる季節になってきました。今期から新たに私のワードローブに加わった天神山製・ポロコートと、遂に手に入れたボルサリーノ社製ソフトハットです。ではまず薀蓄から少々・・・笑。

     

 元来はポロ競技の選手たちが試合の合間に羽織るために使われていたそうで、1890年頃に米国ブルックス・ブラザース社によってその名がつけられたと言われています。スポーツ観戦用のコートという出自のため、ドレス用のチェスターフィールドコートなどに比べるとややカジュアル寄りのコートということですが、襟はアルスターカラーと呼ばれる幅の広いダブルブレストの6ボタン、両脇に大型のパッチ&フラップポケット、背面は煽り止めのボタンが付いたインバーテッドプリーツにバックベルト、袖口のターンアップカフ、ウェストの絞りが心持ちルーズな緩やかなAラインなどが特徴の、ナイロン系の丈が短く細身で軽いコートが主流となっている昨今の巷ではやたら存在感十分な、100年以上の歴史があるトラディショナルコートです。
 
 天神山さんの最大の特徴の一つである大型のダブルブレストは迫力満点!上半身はジャケットと全く同じイタリアンクラシカル派のフラットテーラリング手法で仕立てられていて、肩からウェスト、お尻へと続く柔らかいラインと後姿の美しさは、自分がまるで古い映画の主人公になったような気分にさせてくれます笑。

      

 ポロコートといえば本来はキャメル(駱駝)ヘア素材で仕立てることが多いとのことですが、信濃屋ネームのセントアンドリュース製キャメルのポロコート(これまた凄い逸品です!)を所有されている天神山オーナーMさんのお話を伺ったところでは、キャメルヘアは冬場といえど都心ではかなり暖かく、重量も重たくて、意外と色の主張も強く、その上現在では希少な素材なため目玉が飛び出るほど高額なのでデイリーユースにはちょっと不向きで、Mさんも年に数回しか着用されない・・・とのこと。私も着させていただきましたが確かに滅茶苦茶重かったです汗(でも滅茶苦茶カッコよかったです笑)!

 因みに天神山オーナーのMさんは信濃屋さんの古くからの顧客のお一人でもあり、いつ伺ってもきちっとタイドアップされていて、その時々の季節の装いをご自分流に着こなし、それがまた実に様になっていて、これまでイタリアのテーラーメイド(アロイジオ、カンパーニア、リベラーノ&リベラーノ)の服を何着も作って試されていたり、ローマのラッタンジで靴を購入されていたりとこれまた大変な服飾経験があり、能やオペラの観劇や骨董の蒐集にも一家言お持ちで、その上大変なお料理好き!天神山さん主催のパーティーでは築地からご自身の目で選んだ魚介を使った前菜から始まり真鴨のステーキ(なんと丸々一羽から作っちゃいます!)、ローストビーフなどのメイン料理、果てはティラミス(これは私が今まで食べたどのティラミスよりも濃厚で美味しかったです)まで、たくさんの料理をすべてお一人で手作りされその腕前はプロ顔負け!という“良いもの”をこよなく愛す穏やかなスーパージェントルマンです。
 
 ということで、今回は天神山Iさんが昨年よりイチ押しされている『ポッサム(フクロキツネ)』を使った素材を選びました。ニュージーランドに生息するポッサムの毛は繊維内に空洞があり(中空糸)、軽くてしなやかで暖かく光沢もありオーバーコートにはうってつけの素材なのだそうですが、私はこの素材の優しげで暖かそうなアイボリーとベージュの中間の自然な色味と手触りの柔らかさにとても惹かれました。

   

 やはりこれから如月の季節が終わるまではこういうどっしりとした男らしいコートが着てみたいなぁ~と昨年より密かに憧れていて、今期満を持しての購入となりましたが、こういうクラシックなコートは信濃屋の白井さんのような貫禄十分の年配の方が着るとさまになるのでしょうが、若輩者の私が着るとお笑いコントのギャングのボス役みたいで些か照れがあり、まだまだ着こなすのに時間がかかりそうです汗。ただ、昨年ローデンコートを購入した際も同じようなことを考えたような気もしますし、何だかんだいっても私の体に馴染んでしまってローデンコートは今ではすっかり“マイマストアイテム”になってますので、ここはもう着ちゃったモン勝ちでいっちゃえ!と開き直っているところです笑。

 蛇足になりますが・・・先日、天神山さんに年内最後のご挨拶に伺った帰り際、天神山製カシミアジャケットに足元は信濃屋オリジナルのスウェードフルブローグ、このポロコートを羽織り、襟元に白井さんお薦めの真紅のカシミアマフラーを巻き、デンツのマスタード色のペッカリーの手袋を嵌めFugeeのスウェードの抱え鞄を手に持ち、最後に天神山オリジナルのガンクラブチェックツィードのハンチングを被った私の姿を見たIさんに『完璧なコーディネートだね笑』とお世辞、いえいえ笑、お褒めの言葉をいただいたことが私にとっては何よりも嬉しいことでした笑。

 

 そして、今年の4月から始めたこのブログ『ひと日記』最後のアップはこの“ボルサリーノ”で締め括りたいと思います笑!20代の頃からず~っとずっと憧れ続け遂に念願叶って私のお頭に戴くこととなった、純イタリー製信濃屋別注のファーフェルト・ソフトハットです。

 最近、目黒にある東京都庭園美術館の企画展『1930年代・東京 アールデコの館(朝香宮邸)が生まれた時代』で当時の銀座の写真などを観覧しました。写真の中の男性達は皆が例外なく重たい『外套』にソフトなどの『帽子』というスタイルで(これにはビックリ!)『モダーン』とうい言葉がもてはやされていた流行の最先端の街・銀座の冬を謳歌していたようですね。

 天神山Iさんもご自身のブログでボルサリーノについて紹介されていますが、戦前は横浜・信濃屋さんの冬の主力商品だったそうで、価格は給料1ヶ月分くらいだったとか!古くからのお客様は信濃屋さんのショーウィンドウに飾られたたくさんの帽子が夏物から冬物へ、またソフト帽からパナマ帽へと変るたびに季節の移ろいを感じられたそうです。今では被る人もめっきり少なくなってしまい些か被るのに勇気が要りますが、思い切って購入を決めたのは信濃屋・白井さんとのご縁が大きなきっかけだったことは間違いありません笑。『このきっかけを逃したら一生買わないかもしれないぞ!』との思いでした。



 ただ・・・よく男の装いはまず磨き込まれた靴から始まると言われています。でも私の場合は、このブログの第一回目にアップした機械式時計を購入したことから服飾への興味が始まりました。その後自分なりに研鑽を重ねましたが、天神山さんでローデンコートに出会ったことで我が盲を開かれ、信濃屋の白井さんやFugeeの藤井さんという存在を知ることで己の道を行く勇気を与えられたような気がします。メンズスタイルを完成させる最後のワンピース・・・このソフトハットを購入したのは、この一年間のそんな生涯忘れることができない様々な出会いへの感謝の気持ちを忘れないようにするためでもありました。

 現代はインターネットが発達し様々な情報や商品がクリック一つで簡単に手に入る世の中ですが、これは!という本物の品に自分の体と五感で直接触れ、長い間の経験を重ねて物を良く知った人から直接手渡されるという一期一会はなかなか得がたいことではないでしょうか。これからも“心に響く出会い”を大切に私も我が道を邁進していきたいと思います。

 2008年はこのブログのおかげで有意義に過ごすことができました。Web上の自分の日記を読むことは自分の素顔を客観的に見るようで、実に愉快な体験でした。ど~でもいいような身辺雑記にも拘わらず読んでいただいた方々には唯々感謝するばかりです。特に私の心を捉えた服飾とそれにまつわるエピソードが話題として多かったのですが、諸先輩方からいただいた珠玉の言葉の数々などはそのほんの一部を書いたに過ぎません。それらの言葉はずっと私の記憶の中で生き続けることでしょう。これからも自分のスタイルを完成させるためにゆっくりゆっくりと歩を進めて年齢を重ねていきたいと思います。このブログでお世話になった方々にはこの場を借りてお礼を申し上げたいと思います。本当にありがとうございました!!大晦日ということできりも良いので今日のアップを以って一先ず筆を置きたいと思います。特別な理由はありません・・・ただ~なんとなく~です笑。でも、その~なんとなく~が案外大切なのではないかな・・・と私は思います笑。

 では、皆さん良いお年を!! そして、Happy New Year!!