ひと日記

お気に入りのモノ・ヒト・コト・場所について超マイペースで綴ります。

FACON

2009-12-11 19:32:52 | 大人のカフェ巡り


 中目黒の『CAFE FACON(ファソン)』さんです。

 
 
 冒頭から少し話が逸れますが、私は飲食店の優劣を論じることは基本的にあまり好きではありません。また私は飲食店の方と必要以上に親しくなることも基本的にはあまり好みません。それから、飲食店内での写真撮影にも基本的に抵抗があります。

 つまり、この“大人のカフェ巡り”をアップすることは、実は私のそんな信条に自ら抗するというちょっとした冒険でもあるということを私自身の備忘録としておきます。

 

 私がファソンさんで最初に心魅かれた点はやはり珈琲の美味しさでした。ご主人はご自分の目で拘って選んだ最高の豆(この豆は“スペシャリティー・コーヒー”というカテゴリーの特別な豆だそうですが、素人の私の説明では心許ないので詳細はファソンさんのHPにお願いしたいと思います。)を、ご自身の手で店内焙煎し、挽きたての豆を五感を研ぎ澄ませて一杯ずつドリップ(ペーパー式とネル式いずれかを選べます)で丁寧に抽出しています。私の知る限りでは、そういう“至極真っ当なこと”をされているお店は極めて少数派だと思います。

 珈琲はオリジナルブレンドが2種類とドゥミタス、またストレートが何種類かあり、その時々で特別に仕入れた豆などもあるようです。私の好みは店名を冠した“ファソンブレンド”のネル式。飲みやすく後味すっきりとしたミディアムローストの珈琲で、はじめの薫りはやや控えめながら、一口含んだ瞬間に爽やかな酸味と共に複雑な印象の豆の旨みが口中にぱっと拡がって、鼻腔を貫けるフレーバーは芳醇この上ありません。

 ご主人は目に鮮やかな器も拘りつつコツコツと揃えているそうで、殊にリチャード・ジノリがお好きなのだとか。今日はどの器かな、と思いながら珈琲が点てられるのを待つのもまた一つの楽しみです。

 

 他にもカフェオレなどの類やジュース類も充実しています。食べ物も充実していて、私はこれまでチーズケーキとサンドイッチを頂きましたがどちらも大変美味しく、珈琲同様丁寧に作られている印象でした。また紅茶にも拘ってらっしゃるようですが、残念ながら私はまだ頂いていません。

 

 店内装飾で一際目を惹くのは壁に掛けられた大きな絵。伸びやかな筆致で暖色中心に描かれたその絵は、画家を志す若いお客様にファソンさんをイメージして描いてもらったそうです。

 都会のビルの3階にあるお店にも拘らず、ベランダに小さなテラス席が2つあるのも中々チャーミングです。気候の過ごしやすい頃は何とも心地好く、風情が感じられるのだとか。またその他の装飾、フロア中央にある曲線の壁で仕切られた半個室、BGM、スタッフの皆さんの接客姿勢などどれも借り物ではないユニークさが感じられます。お客さん目線の大小のアイディアに溢れ、雰囲気作りを大切にした店内はどこに座っても居心地良く、時間の流れがゆっくりと感じられ、お客さんは皆さん思い思いにリラックスして過ごされているように感じます。 



 さてさて、先日から“大人のカフェ巡り”と勇んで銘打ち今回が2店目ですが、早くもその存続が危ぶまれます。何故なら今後の更新の際、こちらのお店が間違いなく一つの“基準”になることが予想されるからです。それに最近はこちらに足繁く通っていて、いったい次の“カフェ巡り”は果たしていつになることやら・・・つまりそれ程、私にとってまことに素晴らしいお店ということになります。

 

 今回のアップですが、じつは大変時間が掛かりました。撮影をさせていただいたのは今日、たまたま他のお客さんがいない午前中の早い時間でした。午後には自宅に帰り、それからずっとPCの前に座っています。

 何故なら、これまで何度かこちらに伺い、最近はご主人とお話をする機会を得られるようになり、恐らくご主人は私とほぼ同世代(間違っていたらごめんなさい汗)ではないかなと思うのですが、その珈琲に対する見識の深さ、技術の確かさ、事業に対する情熱、将来への展望と志の高さ、自らのスタイルへの拘りに、未だ僅かばかりの邂逅にも拘らず、私は偏に感じ入ってしまい、またそれら全てがご主人が点てる珈琲の一滴一雫に凝縮されて味となっているのかしらと考えたり、翻って我とわが身を省みては筆が止まることが一度や二度ではなかったから、なのです。

 店名の“FACON”はフランス語で、“流儀”を意味する言葉だそうです。

 最後ですが、ファソンの皆さん、図々しいお願いにも快くお応えいただき恐縮しています。ありがとうございました。
 

鵜の木 福井珈琲

2009-11-20 17:12:22 | 大人のカフェ巡り


 前回のアップからこのブログのカテゴリーに新たに加えた『大人のカフェ巡り』。今回はその記念すべき第一回目ということで何処をご紹介しようか悩みましたが、“理想のカフェ”に欠かすことのできない条件の一つ目“家の近所にある”カフェということと、ネット上では恐らく私のこのアップがこちらのお店の誉ある初紹介(テレビ上ではかの名番組“ちい散歩”に抜かれていますが、私の知る限りでは)ではなかろうかという理由で、我が家の近所、東急多摩川線沿線の鵜の木にある『福井珈琲』さんのご紹介です。

 昔話からで恐縮ですが、私の珈琲原体験は“味”よりもまず“香り”からでした。私の父はたいそうな珈琲好きで、小さい頃は阿佐ヶ谷にあった父の従兄弟が経営していた『パンドラ』という喫茶店によく連れて行かれました。ただ私はまだ子供だったので珈琲よりはスパゲッティナポリタン(因みに子供の頃のオバマ大統領は鎌倉の大仏よりは抹茶アイスクリーム・・・この項には全く関係ありませんが汗)の方が好きでした。その後成人してからも特に珈琲好きになったという訳でもありませんでしたが、子供の頃その『パンドラ』で嗅いだサイフォン珈琲の香りは記憶の奥底に留まり、珈琲の香りはある種の郷愁を誘う私の好きな香りの一つです。

 『福井珈琲』さんに通うようになったのは“近所だったから”というスラムダンクの流川並みに単純な理由でしたが、その後も10年近く通い続けている理由はこちらの“ブルーマウンテンNO.1”の味に魅了されているからです。ご主人が特に拘って仕入れた特別なブルーマウンテンNO.1の豆は、これまたご主人拘りの、この高名な豆本来の味を最大限に引き出すための極々浅い煎り。その味は豆のほのかな甘みを充分に感じさせ、色は驚くほど薄く澄んでいて、初めていただいた時は“こりゃ紅茶かいな!”と思ったほど。“珈琲=苦い黒い”という珈琲ルンバ的先入観があった私にとってはまさに衝撃の出会いがこんなに近所にあったなんて~!という体験でした。特別な豆なのでお値段は少々お高いですが、その分ポットサービスでたっぷりの量が供されますのでゆっくり時間をかけて味わえますし、比べれば他店の名前だけ同じ銘柄の珈琲よりかなりリーズナブルな上、品質は全く似て非なるものです。

 という訳で、それ以来すっかり香りだけでなく珈琲の“旨さ”にも目覚めた私を魅了し続けている『福井珈琲』さんは、ご主人がリタイアされた後、ご夫婦で仲睦まじく営まれている6席程の小さな小さなお店で、メインターゲットであるご主人と同世代のご近所のお仲間が集って、寛ぎつつ世間話や昔話に花を咲かせている小さな町の大人の社交場です。


理想のカフェ

2009-11-16 17:28:05 | 大人のカフェ巡り
理想のカフェ・・・それは、

 
 家の近所にあります。

 毎朝お年寄りが犬の散歩帰りに立ち寄れるよう早くから営業しています。

 英字新聞も置いてあるのでオバマも安心。

 化粧室は広く清潔です。

 壁に大きな油彩の良い静物画が掛けてあります。

 おしぼりが出てきます。

 クロワッサンは美味しいです。

 いつも店の中から珈琲の馥郁とした香りが立ちこめています。

 街角にあるので通りを行く人を眺めていると退屈しません。

 珈琲は美味しいです。

 ランチセットはありません。

 お支払いは現金のみです。

 HPはありません。

 テーブルにはクロスが掛けられています。

 喫煙席は透明のアクリル板で囲われていません。

 季節の移ろいを感じ、天気の良い日は日がなそこで過ごせるテラス席もあります。

 時計はありません。

 テーブルには季節の花が一輪飾ってあります。

 ボウタイ姿のギャルソンがいます。

 座り心地の良い椅子です。

 店主は毎朝店先と両隣もまた同様に掃除します。

 美味しいボロネーゼが食べられます。

 美味しいハウスワインが飲めます。

 BGMは選曲が確かで音量は適量で会話の邪魔をしません。

 店主はユニフォームは言うに及ばず、店の行き返りの服装にもさりげなく気を使っています。

 店内、食器、グラスはいつもピカピカに磨きこまれています。

 メニューに驚くほど分厚いビーフステーキもあります。

 料理は美味しく寛いで食べられます。

 店の床木は“そこだけは”と店主が自分で張ったそうです。

 銘酒好きも仕事帰りに一杯ひっかけに立ち寄れるように木の磨きこまれたカウンターがありますが、残念ながらあまり遅くまでは営業していません。

 店の裏に小さな菜園があって、簡単な野菜やハーブの類は自家栽培しています。

 明るい日差しが差し込み水周りが整備された清潔で使い勝手の良い厨房では整理整頓された充分な調理器具と良いコックが働いています。

 内装や調度品は寂し過ぎず飾り過ぎず、ベーシックなフォルムの、作った職人の温もりも感じられ、何よりも働く人が長く愛着を持って使えるものが置いてあります。

 食材は店主が毎朝市場まで足を運び吟味しています。

 コートラックに帽子が掛けられます。

 ナイフ、フォークが苦手な方のためにはお箸(割り箸ではないもの)をお出しします。

 テレビは普段は蓋が閉じられた木の箱の中にあり、滅多なことではその蓋は開かない・・・何故置いてあるのかと店主に問うと“いつか日本がワールドカップの決勝を戦う姿を観るため”と笑います。

 其処ここにセピア色の思い出の写真が控えめに飾ってあります。

 あまり種類は多くないけれど甘くて素朴なお菓子があります。

 あまり種類は多くないけれど旬の食材を使った料理がその日のおすすめで黒板に書いてあります。

 お父さんもそのまたお父さんもその店でお母さんにプロポーズをしたんだよ、と親子3代続けて通う常連客もいます。

 そして店主は『ありがとうございます。それもこれも皆様のご贔屓で続けてこられたお陰様でございます。』と、控えめ(ちょっと古風に芝居掛かってはいるけど)に言うのです。


そんな店です。

 

 なんて、これはもちろんおとぎの国の話ですが照、このブログの“カテゴリー”に『大人のカフェ巡り』と題して新しい項目を加えました。もちろん超マイペースで更新していきたいと思います笑。