今日は前回の記述についての補足から。
●ウェスタンベルトの件にて・・・その素晴らしいハンドカービングはS女史という皮革製品全般の製作を生業とされていた方の手によるもの。私はその雄渾な手彫りの様からてっきり“男性”の職人さんを想像していたのですが、Sさんは『素晴らしいセンスと高い理解力、そして美しい容貌を兼ね備えた女性』(白井さん談)とのことでした。
以前、白井さんが『ダリオ・ザファーニ(伊・セントアンドリュースのオーナー)が好んで着ていたよ。』と仰っていたのが、今日白井さんがお召しのような“めくらグレンチェック”柄のスーツ。
セントアンドリュースはイタリアに在るメーカーながら古き良き英国へのオマージュを忍ばせた名を持つ小さな工場。白井さんの思い出の中では、オーナーのダリオ・ザファーニ氏(故人)の大変真面目で几帳面な性格を反映してか、いつ行っても作業場が整理整頓され隅々まで掃除が行き届き、トイレにも塵一つ落ちていないという素晴らしい環境で物作りをしていて、大変好感が持てたそうです。今日の着こなしはそんな“真面目な”ザファーニ氏のキャラクターと重なるようなイメージでしょうか。
和服の世界には“盲縞”という言葉があるそうですが、“めくらグレンチェック”は白井さんの造語。近づいて見てやっとそれと判るほどの細かいグレンチェック柄、という意味ですね。ブルーのウィンドウペインも入っていますがこちらも控えめ。また、シャツ、ネクタイ(写真では紫っぽく見えますが実際は“青”と表現した方が近い色でした)、ポケットカチーフなど色味はほぼブルー系で統一されています。
今日の着こなしの中で一箇所だけささやかながら異彩を放っていたのは、アンティークのカラーバー。着脱は所謂“安全ピン”と同じ構造ですが暦とした18金製。また、針先をシリンダーキャップで覆い隠せるという凝った作りになっていました。こういうアクセサリーの類は『そんなに数多く持って無くてもいいけど、とりあえず一揃え持っていたほうが何かの時に困らないのでは。』とのこと。
靴は今回で3回目、最多登場となったシルヴァーノ・ラッタンツィのスウェード一文字。最初に登場した際、白井さんは『何にでも合わせ易く履き心地がとても気に入っていて、新橋の大塚製靴でオールソールリペアしてもらったくらい。』と仰っていましたので、なるほど仰っていた通りということですね。
今日のステッキは今回が初登場ですが、お帰り間際で詳しくお話を伺えませんでした。次の機会を待ちたいと思います。
余談ですが、最近ビデオで観た『セント・オブ・ウーマン』という映画の中で主演のアル・パチーノが着ていたスーツと、このブログの第3回目で白井さんがお召しになっていた茶色のグレンチェックのスーツの印象が、私の中で何故かダブりました。アル・パチーノのスーツはシングルブレストのピークドラペルで色はセピアっぽかったのですが、映画の中では彼がその服を着てNY滞在を満喫する場面が多く描かれています。
白井さんは件の回で『大人の男はこういう服をこそ“遊び”で使いたいもの。』と仰っていましたが、アル・パチーノはまさにそのようにしていました。そして惚れ惚れするほどカッコ良かったのです。白井さん、アル・パチーノ・・・恐るべし(汗)。
今日の白井さんはこれまでで一二を争う“真面目”な印象(笑)の着こなしでしたが、スーツの着こなしにもこれだけの幅があるんだなぁ~と感じます。