ひと日記

お気に入りのモノ・ヒト・コト・場所について超マイペースで綴ります。

坂の上の雲

2009-11-27 09:43:39 | お気に入り


 最近のまめな更新に自分が一番驚いている今日この頃ですが、あまり疲れないように今日は手短に笑。

 今月29日から始まるNHKのスペシャルドラマ『坂の上の雲』。大河ドラマ『天地人』の終了時期を繰り上げてまでの放映というNHK開局以来の大変な力の入れように勝手に期待感で胸膨ませた私は、最近はドラマの原作となった“偉大なる”故司馬遼太郎先生の小説『坂の上の雲』をせっせと読んでいました。

 日清日露戦争が舞台のこの小説を読むのはこれが2度目。“偉大なる”司馬文学の大きな特徴である“まぁよくぞここまで調べ上げたもんだわいな!”と思わずにはいられない綿密な調査取材に基づいた詳細な内容と、“先生!見てきたんですかいな!”とこれまた思わずにはいられない、登場人物の息遣いまで感じられるような大胆なドラマ描写に、今回も圧倒されつつなんとか読破し、“ドラマ放映に間に合って良かった!”とほっと胸を撫で下ろしています汗。

 でも安心するのもつかの間。来年1月3日から始まるNHK大河ドラマも福山雅治さん主演で“偉大なる”故司馬遼太郎先生ゆかりの“坂本竜馬モノ”ということですので、これから年末まで苦読を積まざるを得ないようです。

“Kiwism”&冬の名脇役’09

2009-11-23 17:35:56 | お気に入り


 『僕はKIWIしか使わないよ。もう50年以上そうしている。』

 横浜信濃屋の白井さんが仰ったこのセリフに衝撃を受けてから早一年。先日アップした信濃屋オリジナルのUチップを“白井流靴磨き”(私は勝手に“Kiwism”と呼んでいます笑)でがっつり磨きました。ついでに冬の装いを彩る名脇役たちを今年も並べてみました。

     

 靴の雰囲気に合わせて紐の通し方はアンダーラップにしてみました。不思議なもので、自分の手で磨いてやっと正真正銘“自分の靴になった~!”という気分になります。存在感充分だったホワイトステッチに少し付着したKIWIの色が良い“つなぎ”になって全体的にこ馴れた感じになって落ち着きも出てきました。早速一日履いてみましたが、やはり履き心地は素晴らしく、何故か安心感さえ感じてしまいました笑。うっすらと履き皺も浮いていい感じです。ただ注意しないといけないのはつま先の減り。私はせっかちな性分で、ついつい前につんのめって早歩きをしてしまうのでソールのつま先の部分の減りが異様に早かったのですが、最近は努めて正しい姿勢でゆっくりと歩くように心掛けています。そのためには時間に余裕を持って行動することも大切ですね苦笑。

 

 履き込み口から覗いているのは冬には欠かせないウールホーズ。イタリーのソッツィ社製です。昨年信濃屋オリジナルの赤いカシミアマフラーに合わせて購入して以来、この靴下の履き心地と発色の良さに病みつきに。他でも扱っているお店はあることはありますが、私が知る限りでは、信濃屋さんが一番色のバリエーションが豊富に揃っていると思います。がばっと大人買いしたいところですが価格がクオリティに比例しているので、信濃屋さんに伺う度に各色一足づつ揃えるのが、“靴下は足元のタイ”が信条の私のささやかな贅沢です。

 因みに白井さんは年間を通して愛用しているそうで、“コットンのべたつく感じが嫌いだから夏もウール!”と仰っていました。『このソッツィの生地はあまり厚くないからあまり暑くないし、足はあまり暑いとかなんとか感じないでしょ。』とも笑。いつでもさらっとした肌触りなので『あるお客さんは水虫が治っちゃったんだって』と嬉しそうにお話していました笑。むむ~まさに万能靴下!

 

 こちらも信濃屋さんで購入したデンツのライニング無しのペッカリーグローブ。クラシックな釦一つ留めが気に入って購入しましたが有っても無くてもどちらでも良いかもしれません汗。ただ、恐らく信濃屋さんで別注したものだと思いますが、他店で扱っているモノよりも革が肉厚なようで、これは少しくたびれてきた時やポケットに入れた時の感じでわかります。質感もよりマットな感じですし、同じ焦げ茶でも色味がより渋いのが気に入っています。

 

 では、テンポ良くいきましょう!

 伊チェーザレ・ガッティ社製サックスのカシミアマフラー。銀座天神山さんでお取り扱いの品で、昨年Iさんに強く薦められたのですが、残念ながら買う時機を逸してしまっていたので、今年は一番に購入しました。暖色が多いマフラー類ですが、この色は挑戦してみる価値有りです。襟元に上品な華やかさが生まれて新鮮です。あと、フリンジも含めて180㎝程の長さがあって、コートの前を開けた時には結構迫力のあるアクセントになって楽しいです。

 

 天神山オリジナルのハンチング帽はクラシックな形が私のデカイ頭にぴったり合っていて大変お気に入りで、ハンドメイドの被り心地も柔らかくて良い気分です。モカブラウン色のヘリンボーン、カラフルなネップが入ったドネガルツィードは下のコーディネートを選ばない優れもので、冬の間は一番出番が多いかもしれません。

 昨冬から“照れていては帽子は一生被れない”という白井さんの言葉に励まされ被り続けた帽子は、冬の終わり頃には最早私の冬のコートスタイルに欠かせないアイテムになりましたが、実は帽子は被っている時よりもむしろ脱いだ時の方が難問が多いことに気づかされました。一番の悩みは脱いだ後の髪のセットの乱れ。昨年、この点について信濃屋店内のエレベーターの中で白井さんに伺うと、『こう~さっとね、さりげなく。』と上着の内ポケットから櫛を取り出し撫で付ける仕草を。それと『エレベーターで女性と同乗したらさっと脱ぐこと。』とも一言。帽子はマナーが大切との明快で鮮やかな解答にまさに“脱帽”でした笑。

 いつもお馴染みの美容師さんのW君が、先日このブログでアップした西麻布Sさんのバーがとても気になる!とのことだったので今度一緒に行く予定ですが、その時に髪形について相談してみようかなっと思っています笑。

 

 先週から出番がやってきたクラシックローデンコート。もちろん今年も大活躍させるつもりです!

 

 千鳥格子柄のフランネル調のパンツ。裾の折り返しは拘りの4.5cm!。私は年間を通じてジャケパンスタイルが圧倒的に多く、先日数えてみると手持ちのパンツのなかで一番多かった柄がこの千鳥格子。どうやら一番好きな柄と判明しました笑。こちらはトラッドの老舗ミツミネさんで購入したもの。

 冬の定番フランネルパンツはやはり、霜降りがあり打ち込みのしっかりとした厚手の、信濃屋さんで扱っているバルベラ製や抜群の履き心地と顧客の皆さんが絶賛する天神山製のものなどに強く憧れていますが、私は学生時代は体育会系で大腿部が発達しているせいかパンツの痛みがこれまた異様に早く、服の中では購入頻度が最も高いのが悩みの種で、ミツミネさんは我が家の最寄り駅に支店があることもあり、パンツは専らこちらかトラッドの本家ブルックスブラザースを贔屓にさせていただいています。ミツミネさんはトラッドの基本をきちっと抑えている老舗ですので、シーズン毎に豊富な種類の、プリーツがきっちり入ったクラシックで中庸な形のパンツを展開していて、作りの良さとコストパフォーマンスの高さには定評があります。今様のパツパツ細身美脚パンツとは無縁の私には大変有り難いお店です。

 

 一つ一つは流行とは無縁の“普通”の品ですが、どれも長く愛用できるクラシックなものばかりなので、こうやってシーズン初めに改めて眺めてみると思わず“今年も宜しく!”という気持ちになります笑。やはり“普通が一番!”ですね笑。

 自分のペースで、自分で足を運び、自分の目で選んだ品で、ワードローブを充実させていく喜びは大人の男の特権なんだなぁ~と、最近やっと解ってきたような気がします。遠回りでもバランス良く少しずつでも楽しみながら揃えていきたいと思います。


 
 

鵜の木 福井珈琲

2009-11-20 17:12:22 | 大人のカフェ巡り


 前回のアップからこのブログのカテゴリーに新たに加えた『大人のカフェ巡り』。今回はその記念すべき第一回目ということで何処をご紹介しようか悩みましたが、“理想のカフェ”に欠かすことのできない条件の一つ目“家の近所にある”カフェということと、ネット上では恐らく私のこのアップがこちらのお店の誉ある初紹介(テレビ上ではかの名番組“ちい散歩”に抜かれていますが、私の知る限りでは)ではなかろうかという理由で、我が家の近所、東急多摩川線沿線の鵜の木にある『福井珈琲』さんのご紹介です。

 昔話からで恐縮ですが、私の珈琲原体験は“味”よりもまず“香り”からでした。私の父はたいそうな珈琲好きで、小さい頃は阿佐ヶ谷にあった父の従兄弟が経営していた『パンドラ』という喫茶店によく連れて行かれました。ただ私はまだ子供だったので珈琲よりはスパゲッティナポリタン(因みに子供の頃のオバマ大統領は鎌倉の大仏よりは抹茶アイスクリーム・・・この項には全く関係ありませんが汗)の方が好きでした。その後成人してからも特に珈琲好きになったという訳でもありませんでしたが、子供の頃その『パンドラ』で嗅いだサイフォン珈琲の香りは記憶の奥底に留まり、珈琲の香りはある種の郷愁を誘う私の好きな香りの一つです。

 『福井珈琲』さんに通うようになったのは“近所だったから”というスラムダンクの流川並みに単純な理由でしたが、その後も10年近く通い続けている理由はこちらの“ブルーマウンテンNO.1”の味に魅了されているからです。ご主人が特に拘って仕入れた特別なブルーマウンテンNO.1の豆は、これまたご主人拘りの、この高名な豆本来の味を最大限に引き出すための極々浅い煎り。その味は豆のほのかな甘みを充分に感じさせ、色は驚くほど薄く澄んでいて、初めていただいた時は“こりゃ紅茶かいな!”と思ったほど。“珈琲=苦い黒い”という珈琲ルンバ的先入観があった私にとってはまさに衝撃の出会いがこんなに近所にあったなんて~!という体験でした。特別な豆なのでお値段は少々お高いですが、その分ポットサービスでたっぷりの量が供されますのでゆっくり時間をかけて味わえますし、比べれば他店の名前だけ同じ銘柄の珈琲よりかなりリーズナブルな上、品質は全く似て非なるものです。

 という訳で、それ以来すっかり香りだけでなく珈琲の“旨さ”にも目覚めた私を魅了し続けている『福井珈琲』さんは、ご主人がリタイアされた後、ご夫婦で仲睦まじく営まれている6席程の小さな小さなお店で、メインターゲットであるご主人と同世代のご近所のお仲間が集って、寛ぎつつ世間話や昔話に花を咲かせている小さな町の大人の社交場です。


信濃屋オリジナル・Uチップ“Douglas MacArthur”

2009-11-16 17:34:35 | お気に入り


 一昨日信濃屋さんから、注文していた今期の信濃屋オリジナルシューズが出来上がってきたとお電話があり、昨日久しぶりに横浜に行ってきました。

 

 モデル名は“Douglas MacArthur”ブラウンカーフでUチップのバルモラル。今期あがった4型の中で特に白井さんお薦めの型で、やはり白井さんご自身も購入されたとか。一昨日はお客様に臨時靴磨き教室を開きつつ早速この靴を例の業で磨いていたそうで、私も先ほどのお電話でお誘い頂いたのですが、残念ながら仕事がまだ終わっていなかったので止む無く断念涙。なんだかとっても良く光る革だそうで、磨き甲斐のある革だな~とご満悦だったそうです笑。因みに色味は赤みを抑えた渋い“スリークォーター茶”といったところです。

 

 よくエドワードグリーンのドーヴァーのような型を“Uチップ”と言う人がいますがあの型はUチップではありません。ドーヴァーのような型は正式には“オーバーレイプラグ”と言い、こちらが本当の“Uチップ”です!!(一度言ってみたかったこのセリフ笑)ミッドセンチュリーのアメリカ靴によく見られた型を復刻させた靴だそうです。



 正直に言うと、最初サンプルを見せて頂いた時は『白井さんイチ押し!』とお薦めいただきつつも、最近はラッタンジやスウェードのフルブローグなどの印象華やかな靴に目が慣れてきていたせいか、パーフォレーションが無く比較的ツルッとした表情に『なんか地味~汗』とあまり良い印象がなかったというのが本音でした。

  

 でも2度目に見た時、もう一度よく巨細に眺めてその考えが変りました。やはり最大のチャームポイントは、アッパーの各パーツ(これらそれぞれの名称は何というのかわかりませんが)をなんと大胆にも4重に施されたステッチが縁取りそれぞれが調和しつつ優美な曲線を描いているという大向こうを唸らせるデザイン。その後翻意して購入を決めたポイントがココでした!恐らくどこに行ってもおいそれと見られるモノではないのでは、と思われる希少性がありながらもオーソドックスな全体の印象は着こなしの幅が広そうなこともポイントでした。白井さんの哲学が反映された繊細且つ大胆にして普遍的でありながら特別な存在感を放つ靴ではないでしょうか(大袈裟ですが)。

 

 他にも、万能のラウンドトゥ、6穴鳩目、コバの張り出した無骨なダブルソール、360度のウェルトステッチの色は私が予ねて憧れていた初の“白”、と信濃屋流てんこ盛りな靴なんですが、白井さん・・・先の靴磨きのときにこのステッチを敢えて黒く塗っちゃったそうです汗。“直感!”・・・だそうです汗。

 さてさて、では私もKIWIでがっつり磨くかな笑。

 

 

 

理想のカフェ

2009-11-16 17:28:05 | 大人のカフェ巡り
理想のカフェ・・・それは、

 
 家の近所にあります。

 毎朝お年寄りが犬の散歩帰りに立ち寄れるよう早くから営業しています。

 英字新聞も置いてあるのでオバマも安心。

 化粧室は広く清潔です。

 壁に大きな油彩の良い静物画が掛けてあります。

 おしぼりが出てきます。

 クロワッサンは美味しいです。

 いつも店の中から珈琲の馥郁とした香りが立ちこめています。

 街角にあるので通りを行く人を眺めていると退屈しません。

 珈琲は美味しいです。

 ランチセットはありません。

 お支払いは現金のみです。

 HPはありません。

 テーブルにはクロスが掛けられています。

 喫煙席は透明のアクリル板で囲われていません。

 季節の移ろいを感じ、天気の良い日は日がなそこで過ごせるテラス席もあります。

 時計はありません。

 テーブルには季節の花が一輪飾ってあります。

 ボウタイ姿のギャルソンがいます。

 座り心地の良い椅子です。

 店主は毎朝店先と両隣もまた同様に掃除します。

 美味しいボロネーゼが食べられます。

 美味しいハウスワインが飲めます。

 BGMは選曲が確かで音量は適量で会話の邪魔をしません。

 店主はユニフォームは言うに及ばず、店の行き返りの服装にもさりげなく気を使っています。

 店内、食器、グラスはいつもピカピカに磨きこまれています。

 メニューに驚くほど分厚いビーフステーキもあります。

 料理は美味しく寛いで食べられます。

 店の床木は“そこだけは”と店主が自分で張ったそうです。

 銘酒好きも仕事帰りに一杯ひっかけに立ち寄れるように木の磨きこまれたカウンターがありますが、残念ながらあまり遅くまでは営業していません。

 店の裏に小さな菜園があって、簡単な野菜やハーブの類は自家栽培しています。

 明るい日差しが差し込み水周りが整備された清潔で使い勝手の良い厨房では整理整頓された充分な調理器具と良いコックが働いています。

 内装や調度品は寂し過ぎず飾り過ぎず、ベーシックなフォルムの、作った職人の温もりも感じられ、何よりも働く人が長く愛着を持って使えるものが置いてあります。

 食材は店主が毎朝市場まで足を運び吟味しています。

 コートラックに帽子が掛けられます。

 ナイフ、フォークが苦手な方のためにはお箸(割り箸ではないもの)をお出しします。

 テレビは普段は蓋が閉じられた木の箱の中にあり、滅多なことではその蓋は開かない・・・何故置いてあるのかと店主に問うと“いつか日本がワールドカップの決勝を戦う姿を観るため”と笑います。

 其処ここにセピア色の思い出の写真が控えめに飾ってあります。

 あまり種類は多くないけれど甘くて素朴なお菓子があります。

 あまり種類は多くないけれど旬の食材を使った料理がその日のおすすめで黒板に書いてあります。

 お父さんもそのまたお父さんもその店でお母さんにプロポーズをしたんだよ、と親子3代続けて通う常連客もいます。

 そして店主は『ありがとうございます。それもこれも皆様のご贔屓で続けてこられたお陰様でございます。』と、控えめ(ちょっと古風に芝居掛かってはいるけど)に言うのです。


そんな店です。

 

 なんて、これはもちろんおとぎの国の話ですが照、このブログの“カテゴリー”に『大人のカフェ巡り』と題して新しい項目を加えました。もちろん超マイペースで更新していきたいと思います笑。

シネスイッチ銀座

2009-11-13 17:37:13 | お気に入り


 雨上がりの冷たい空気に冬の匂いが感じられた昨日、私は愛用の信濃屋オリジナルのレインコートを羽織りイタリア・ガッティ社製のカシミアマフラーを首元に巻き、頭にハンチング、デンツのペッカリーを嵌め、先日天神山のIさんにそそのか・・・いえいえ笑、お薦めされて購入した紳士の必需品・ブリッグの黒傘を手にぶらりの完全防寒コート5点セットのスタイルで、仕事帰りに銀座のシネスイッチへ映画鑑賞に行ってきました。

 シネスイッチ銀座はわずか200席程度の劇場規模ながら、20年前『ニュー・シネマ・パラダイス』で40週連続上映、動員数約27万人、売上げ3億6900万円という驚くべき興行成績を収めたミニシアター界の雄ですが、私は今まで訪れたことが無く、長年の念願叶って初鑑賞となりました。



 特にお目当ての映画があったわけでは無かったのですが笑、今回私が観たのは『ココ・アヴァン・シャネル』。 詳細は敢えては語りますまい。他人の話で何がつまらないといえば昨日観たという夢の話とこちらがまだ観てない映画の話。ご興味お有りの方は是非。今月の26日まで上映予定だそうです笑。因みに、20世紀初頭の紳士の装いが次から次へと登場してくる本作品はクラシックな服飾好きの諸兄にも楽しめるたいへん素晴らしい映画でした。

 初シネスイッチ銀座・・・良かったですね~!私は仕事の都合で毎朝が早いので途中眠くなってきてしまい(映画がつまらなかったという意味ではありません汗)、後半は最後尾席のうしろに立ち、手すりに頬杖をついて鑑賞しましたが、人影まばらな夜のミニシアターではむしろその方がいい感じでした。当世流のシネコンとは一味違う、懐かしい感じがするクラシックな映画館でした。

 まだ私が社会人になって間もない頃、職場の大先輩にNさんという方がいて私はたいそう可愛がって頂きました。Nさんは美食と菊水の辛口が好きで一年中オーダーメイドの藍染の作務衣を愛用し、趣味のジャズプレイヤーを被写体にした白黒のフィルム写真は玄人はだしで、何より映画をこよなく愛する風流な趣味人でした。若い頃はバンカラで学ランに下駄履きで銀ブラを楽しんだとか笑。Nさんは映画は必ず銀座で観るといっていました。音が他とは違うんだとか・・・。

 当時の私には彼が話してくれた四方山のことなど半分も理解できてはいなかったと思うのですが、生涯独身だったNさんはいつもどこか寂しげな丸まった背中に何故か大人の色気を感じさせる人でした。

 映画を観た後、暖を取るために入った劇場の隣の2階にある『凛』というなかなかよい感じの喫茶店で暖かい珈琲をすすりながらそんなことを思い出した夜でもありました。

Fugeeの時計ベルト

2009-11-10 01:25:52 | お気に入り
  
 
 暦は立冬を過ぎましたが暖かい陽射しの続く今日この頃・・・渋谷のオーダー鞄のお店『Fugee』さんにお願いしていた腕時計のベルトを受け取りに行ってきました。『Fugee』さんは完全オーダーメイドの手縫い鞄の製作をメインとされていますが、革小物の類も充実しています。中でも今回私が心魅かれたのは腕時計のベルト。

 

 このブログに頻繁に登場していただいている信濃屋の白井さんを筆頭に信濃屋流スタイルの方々は決まって革ベルトの腕時計をシャツのカフの上から巻いていて(但しこのスタイルは信濃屋流だけに限らないようで、有名な方ではイタリアFIAT社オーナーの故ジャンニ・アニエリ氏や、名門テキスタイルメーカーCARLO BARBERAのオーナー、ルチアーノ・バルベラ氏などもこのスタイルですね!)、ステンレススチール製のスポーツウォッチを虎の子の一本としている私は、彼らのスタイルに以前から密かに憧れていました。

 

 ただ、ベルト一つで大袈裟なことですが、私には悩みが一つありました。それは私の時計はスポーツウォッチで、方々の嵌めている腕時計は皆ドレスウォッチという点。やはりカフの上から巻くのであれば薄く作られたドレスウォッチが品良く様になるのは必定、ということが一般的に言われています。かといって高価なドレスウォッチは高嶺の花、若僧の自分には今の時計がお似合いさ、と自嘲気味に半ば諦めていました。

 

 ですが最近、壮年の頃のジャンニ・アニエリ氏がステンレス製ベルトのスポーツウォッチをカフの上から巻いた姿が写っている一枚を偶然ネット上で発見し、『うわ!なんだアリなんじゃん!』と勇気づけられると同時に、氏の自身のスタイルへの拘りに一種の凄みも感じ、一般論や潜入観に囚われ小さな差異に思い煩い、愛着ある時計を軽んじていた我が不明を恥じました。

 

 そのようなあれやこれやの思案と、やはり秋冬の装いには温もりを感じさせる革のベルトを巻いてみたいという想いと、昨年から『Fugee』さんを知るに及び、そのモノ造りへの姿勢に感銘を受けていた私としては、是非この職人さんの作ったベルトを腕に巻いてみたい!、という気持ちが重なり今回作製をお願いした次第です。

 

 『Fugee』さんの革ベルトは職人の藤井さんが独自に研究し完成させた『設計図』に、計測した時計の各所の寸法、腕の太さ(下の写真の4枚目は藤井さんお手製の革の計測用腕模型です!)などの数値を入力し、その人の腕に時計が巻かれた時に最も美しく映えるベルトの形(長さ、幅、厚みと時計本体からベルト先端にかけてのテーパード具合など)を導き出してから作製するというシステムです。もちろん全て手縫いですから依頼主の意向も十分に反映してもらえますし、ステッチの色、革のバリエーションは豊富であることは言わずもがな。尾錠は自分の好きなものを持参することもできますし、『Fugee』さんオリジナルのもの(各種ゴールド、スターリングシルバー、ステンレススチール)も選べます。

   

 また藤井さんには『うちのオーダーならベルト穴一つがカッコいい』と奨められ、これには驚きました。ハンドメイドなんだから穴の数は自由に選べるのはある意味当たり前のことともいえますが、藤井さんはその時計が最も美しく見え尾錠が腕の内側の真ん中にぴたりと収まるように計算され穿たれる『一つ穴』を誇ってらっしゃいました。『かっこいいとはこういうことさ』と言わんばかりの潔さです汗。ただし今回は、まだまだ自分のスタイルが確立できていない未熟者の私用ですので、穴はジャストワンの両脇に一つづつ計3つ空けていただきました汗。

 

 さらに『一つ』繋がりでもう一点、『Fugee』さんのベルトにはベルトループ(サル革と言うそうです)も一つしかありません。こちらについては藤井さんのアシスタントのKさんが、『ベルトがジャストサイズならサル革は二つも要らないでしょう。』と静かに力説していました汗。『Fugee』まさに恐るべし汗。因みにこのサル革、通常はベルト部分に簡便にボンドで固定するメーカーが殆どだそうですが、『Fugee』さんではサル革も糸留めされています。これも手縫いに拘るこちらならではのディティールです。

 

 さて、昨年鞄を購入したときは、その鞄は既に完成品でしたので良かったのですが、今回は自分で素材選びからしなければならず非常に悩みました。ベルトの形状は藤井さんにお任せで問題ないのですが、はてさて素材をどうしたものか・・・最初は無難にクロコダイルで、色は私が茶の靴を好んで履くことや時計の文字盤が黒ということもあり焦げ茶で行こうと考えていたのですが、耐久性に優れエイジングが最も楽しめるボックスカーフにしようか、オーダーならではの素材であり独自のエイジングをするというエレファント(ワインレッドのステッチが施されたサンプルの墨色のエレファントがまた実にカッコいい!)しようかと、悩み始めたらキリがなく頭を抱てしまいました。ですが、私がさんざん悩んでいる様を見て藤井さんが最後に控えめに『僕はクロコが一番綺麗だと思ったよ』と仰った言葉に背中を押される形で焦げ茶のクロコに決めました苦笑。

 

 裏打ちはボックスカーフの茶、尾錠は『Fugee』さんオリジナルのステンレススチール。ステッチの色はもちろん、かの名店のオリジナルシューズのステッチにしばしば見られる信濃屋流こだわりの白!これは最初から決めていました笑。

 

 また長々と書いてしまいましたが、最後に・・・藤井さんもKさんも時計に関しては全くの素人ですとご自身方が仰っていて、お二人が計測のとき私の時計をもの珍しそうに『うわ、重いなぁ!・・・』とか『あ!裏が透けてる!・・・』とか仰りながら(因みに私の時計は結構ポピュラーな方だと思います汗)覗き込んでいた姿が、不遜ですが、なんだかとても微笑ましく、と同時にそんなお二人が作り出した鞄やベルトが異彩を放つほどに美しく、生命を宿すがごとき温もりを感じさせ、私の心を捉えて離さない理由や、『モノづくり』の本質の一端が垣間見れたような光景でもありました。

 

 また一つ私のワードローブにパーマネントコレクションが加わりました笑。今回も無理をお願いして『Fugee』さんの店内での撮影です。藤井さん、Kさん、お仕事の邪魔ばかりして本当に申し訳ありませんでした。そして、ご協力有難うございました。年内にもう一度伺って経過報告をしたいと思います。
 
 FugeeさんのHPです→http://www.fugee.jp/
 

 

 

夕暮れの河川敷

2009-11-06 17:47:49 | 散歩


 だいぶ秋も深まってきた今日この頃・・・散歩が楽しい季節になってまいりました。日中、シコシコと白井流靴磨きを終えた私は小春日和に誘われて愛機ペンタックスK10Dを片手に、磨き終えたばかりのお気に入りのラッタンジを両足に、近所の河原を散歩してきました。



 夕暮れの野球グラウンド・・・絵になります。

 そういえば、大リーグのヤンキースがワールドシリーズを制覇し、松井秀喜選手が栄えあるMVPを獲得しました。なんて素晴らしいことでしょう。恵まれた才能に比すとあまりにも逆境に満ちた選手生活、にも拘らず常に謙虚な人柄、怪我に苦しみながらも変らない野球に対する真摯な姿勢、常にチームの勝利を最優先に考えるプレースタイル・・・記録ではなく記憶でもなく“心”に残る選手です。



 おめでとう松井選手!


 


マティーニ

2009-11-03 19:12:57 | お気に入り


 昨日は日中銀座を散歩した後、夜から突然振り出した冷たい雨に誘われてか、急に一人飲みたくなり久しぶりに西麻布へ向かいました。

 西麻布は私が20代前半の頃、職場がこの街にあったのでたいへん思い出深い場所です。私が向かったのはオーナーバーテンダーのSさんがお一人で切り盛りされているカウンターだけの小さなBarで、私の唯一の行きつけのBarです。Sさんとはもうかれこれ20年近いお付き合いになります。

 Sさんと久闊を叙しつつ、このブログのために写真を一枚撮らせていただきました。携帯電話のカメラなので写りはイマイチですがマティーニです。マティーニは最近やっとその美味しさがわかるようになってきて、今では最もお気に入りのカクテルの一つですが、未だにオリーブは先に食べるべきか後に食べるべきか、はたまた中頃に食べるべきか、そして種はどこに置けばいいんだ!と一人悩んでいます汗(因みにこちらでは小皿を添えてくれますので安心です)。その後、ヨコハマ、それからハイネケンと赤ワインをいただきました。

 17年前にSさんとこの店と、最初に出会ったときの衝撃は今でもよく覚えています。その頃まだ社会に出たばかりの私は知人に連れられこの店に来たのですが、看板の無い店の扉を開けた先に待っていたのはまさに大人の世界でした。青い照明(私は色の中で青が一番好きです)に照らされ壁に並んだボトルやグラス、漆黒のカウンター、豊かに飾られた大きな活花・・・店の姿は今も当時と変わらず、ここだけ時間が止まっているかのように大人のための時間と空間を提供し続けています。Sさんは私とほぼ同世代なのですが、当時、若くして既にオーナーとしてカウンターに立つ姿は凛として、それもまた今でも全く変わりありません。

 そういえば、ボルサリーノの存在を最初に知ったのはこのお店でした。もうそれこそ20年近く前になるのでしょうが冬の時期だったでしょうか、仕立ての良さそうなコート(今思い出してみるとカシミアのチェスターだったでしょうか)に鍔つきのグレーの帽子を被り一人でふらりとやってこられた老紳士がいて、Sさんがさりげなく『素敵なお帽子ですね。ボルサリーノですか?』と訊ねていた光景が一幅の上等な絵画のように、当時まだまだ小僧だった私の目に焼きついて、以来ボルサリーノにはずっと一種憧れのようなものを抱いていました。

 邂逅以来そんな風に多くのことを学んだ場所ですが、その中で最も大切なことがSさんに教えてもらったことです。お店とお客さんの関係について話をしていたときだったと思うのですがSさんは私にこう言いました。『その人にとって最も大切な場所は、そのひとを知ってくれている人がいる場所』と。他愛の無い雑談の中の言葉だったのかもしれませんが、今でもこの言葉は私の大事な人生哲学であり続けています。マティーニ一杯で大袈裟かもしれませんが、そんなことを改めて思い出した夜でした照。もちろんこのお店を知っていることそのことが私の貴重な財産の一つであることは言うまでもありません笑。