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オンラインシンポジウム「コロナ禍で交通の安全が危ない!~ライドシェア・ギグエコノミーの問題」を開催した

2021-02-18 | 書記長社労士 ライドシェア断固阻止!

 2月16日、交通の安全と労働を考える市民会議―「ライドシェア」問題を考える― www.forumtsl.org は、「コロナ禍で交通の安全が危ない!~ライドシェア・ギグエコノミーの問題」をテーマに、初めてのオンライン集会を開催した。

 オープニングは少しもたついたが、予定通り17:30に開会、主催者として、代表世話人の宮里邦雄弁護士(日本労働弁護団元会長)がオープニングの挨拶をおこなった。

 最初のスピーカーは、「コロナ禍による公共交通への影響」について、戸崎肇桜美林大学航空マネジメント学群教授。
コロナ禍前の公共交通では、路線バスでは、地方は人口減少とマイカー社会の進展⇒公共交通に対する需要の減、都市部は運転者不足⇒収益が見込まれても運行便数の削減、貸切バスはインバウンド需要の急増⇒供給体制の逼迫化、コミュニティ・バスは運転者不足による事業継続性の困難化、という問題を抱えていた。
コミュニティの重要性と地方交通の限界性が課題となっていて、住民による自主的取り組み(顔の見える助け合い)、地方交通会議の機能性、交通行政の在り方(継続性、行政機関間の連携性)、首長の取り組み姿勢の重要性をいかに克服するかが課題であった。


 しかし、コロナ禍は、インバウンド需要の激減(2019年3188万人⇒2020年411万人)、外出自粛による移動需要の減少⇒特に夜間外出の制限は、タクシー、鉄道に大きな影響を与える、テレワークやオンライン会議など「働き方改革」の推進、「巣ごもり需要」⇒「ウーバーイーツ」などギグ・エコノミーの躍動、スマートシティ、MaaSなどの動き、GO TO キャンペーンの評価などの事態をもたらした。
そういった中で、「混乱の中で、拙速な対応がとられないように注視すること。」「今だからこそ、公共交通の存在意義について問い直し、その維持・向上のための体制を再構築すること。」「公共性、安全性」「他の政策目的との連動性」について取り組まなければならないと述べた。

 続いて、市民会議事務局で、日本労働弁護団常任幹事・本部事務局次長、ウーバーイーツユニオン法律顧問の川上資人弁護士が「『ライドシェア』の問題点について~コロナ禍のギグエコノミーから考える~」についてスピーチ。


 私たち市民会議は、2016年8月に発足以来、🔼のように運動を展開してきた。
私達は、世界で展開し、日本にも入ってこようとしているライドシェアは、①一般ドライバーが旅客運送をすることの安全上の問題、②「ライドシェア」企業(ウーバー、リフト等)が法律上の責任を一切負わないという問題、③ドライバーに労働法が適用されない(契約の一方的変更、解約が横行。労災不適用。労働組合の否定。)問題、④「ライドシェア」企業は、利用者、ドライバーの両者に対して一切責任を負わない問題、⑤法定の安全管理義務を履行するタクシー業者との不公正競争の問題、があるとして、交通の安全と労働を考える、「ライドシェア」問題を考えるために運動を展開してきた。
ライドシェアが世界中でもたらしてきた問題、具体的には、①対ドライバー⇛雇用責任の不在、②対利用者⇛運送責任の不在等、③度重なる違法行為、④公共交通の破壊、⑤交通渋滞による環境破壊、⑥必要性の欠如、⑦誰のため?、という問題点について指摘してきた。


 今、コロナ禍で明らかになったギグエコノミーの実態(ウーバーイーツ)は、①多数の配達員が配達市場に流入、②仕事量の減少と賃金の低下、③事故の増加(労災不適用、休業補償なし)、④被害者の放置、⑤プラットフォーム企業は労働者、利用者のどちらに対しても一切法的責任を負わない。
そして、このことで、ギグ・エコノミーがどのような結果をもたらすかが明らかになった。
ひとつは、労働組合の否定と賃金の低下。
「団体交渉は、先進国において、包括的成長をもたらす重要なツールである。アメリカにおいては、賃金格差を縮小させるのに重要な役割を果たしていた。」「労働者の賃金において、組合賃金プレミアム(union wage premium)は大きな割合を占める。特に低中所得者層にとってその割合が大きい。- “Report of the Commission on Inclusive Prosperity”, Center for American Progress, 2015年1月」「『シェアリングエコノミー』は、労働者を個人事業主とすることで、労働組合を排除する。」、ハーリー・シェイクン教授(カリフォルニア大学バークレー校)、「『シェアリングエコノミー』は、多くの場合、組合を回避するための経営者の戦略だ。ウーバーやリフトは労働者を個人事業主と位置付けることで組合の結成を回避している。」ということ。
そして、労働法、社会保険の不適用。
「『シェアリングエコノミー』の働き方は、リスクを企業から個人の肩の上に移すものだが、往々にして労働者はどのようなリスクを引き受けているのかを正しく理解していない。」(2015年1月26日ワシントンポスト)、社会保障費の増大
「社会保障のない『シェアリングエコノミー』で得る仕事が唯一の収入源の場合、労働者と国家が社会保障のコストを負担することになる。」(“Report of the Commission on Inclusive Prosperity”, Center for American Progress, 2015年1月)
だから、同じルールの下で、「不公正な競争⇛劣悪な労働条件⇛利用者の危険」ではなく、「公正な競争⇛健全な労働条件⇛利用者の安全」を求めていかなくてはならないと訴えた。

 最後に、浦田誠国際運輸労連(ITF)政策部長が「世界各国のギグエコノミー・ライドシェアの現状」について報告。
昨年1月、カリフォルニア州は配車サービスなどで単発的に働く、いわゆる「ギグワーカー」を請負業者ではなく従業員として扱うよう義務付ける新法「AB5(Assembly Bill 5)」を施行したが、11月3日行われた住民投票で、同州の運転手を社員とみなす取り組みから両社のビジネスモデルを守る措置が承認された。
カリフォルニア州の新しい労働法「AB5」はギグエコノミー企業の運転手に社員と同じ福利厚生を提供することを目指したものだが、こうした企業は自社の運転手をAB5の対象外にするためプロポジション22を立案し、これに関連して数億ドルを投じてキャンペーンを展開してきたが、ウーバーやリフトの主張が通ったという結果だ。

 一方で、ギグ労働者の労働者性をめぐる裁判では、フランスの2つの裁判、イタリア、スペインでは、最高裁で労働者性を認める判決が出、オーストラリア連邦裁では詳細は非公開だが和解、イギリス最高裁では、2月19日に判決が出る予定だが、これまでの下級審では原告が勝訴している。


 また、ノルウェー、オーストラリア、韓国、デンマーク、スウェーデンでは、ギグワーカーが加盟する労働組合との労働協約が締結された事例を紹介。
特に、ウーバーマン(ウーバーを、デンマークから完全撤退させる運動の起爆剤となった映像クリップ Uberman på plejehjem)を作ったデンマークの合同労連と商工会議所が締結し、ジャストイートが直ちに調印した中央労働協約の内容について詳細に報告した。



 今回のオンラインシンポは、全体では100名の参加で、国会議員も衆議院・参議院合わせて、27名が参加してくださった。
参加していただいた議員を代表して、道下大樹衆議院議員(北海道1区)、小沼巧参議院議員(茨城県)から、今回のシンポであぶりだされた政策課題について発言していただいた。
参加者からの質問を受けた後、最後に事務局の山口広弁護士(内閣府消費者委員会元委員)の閉会挨拶で、シンポジウムを終了した。

 シンポジウム終会後、デジタルデバイドの関係もあって、発信基地とした田町の交通会館(連合東京会議室)に集まったメンバーでの総括では、初めてのオンラインシンポジウムが、運営的にはぎくしゃくしながらも、多くの皆さんに、そして地域を越えて参加していただけたことに手応えを感じ、味を占め、オンラインならではの企画を議論。(各地方で開催する、海外から招聘する等に比較すると、いや、比較するまでもなく費用が掛からない、日本中、いや世界中の皆さんと共有出来る、などなど、たいへん企画側としては自由度が上がった!もっと工夫すれば時間的制約も超えられそうだ)
ということで、今のところざっくりながら、
■市民会議がこれまでにギグワークについて示した懸念が、コロナ禍の中でウーバーイーツなどで現実化していることをクローズアップしたイベント
■イギリスの元ウーバー運転手で労働者性を裁判で争っている原告を招いて、お話を聞くイベント
■地域の公共交通の現状と、その対策について考えるイベント
などがアイディアとして挙がったので、しっかりと練り込んでいきたい。

 反省点も大いにあった。
うちの組織からの参加者が少なかったことが痛恨、告知が弱かったことを反省しつつ、縦はもちろんのこと、横についても、次はもっと工夫をしたい。

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