今日は珍しく、治療に関する記事です。
どんな症例かと言うと右下の4番目の歯が根元むし歯で折れてしまったという状態です。
元々、この歯は入れ歯のバネ(クラスプ)が掛かっていた歯です。
90歳を超える患者さんで、ご家族が都合をつけて、その家族の送り迎えで通院しています。
頻回に通って頂くのも大変ですし、折れた患歯を保存治療をして型を取って被せるのも患者さん本人の体力的にも大変です。
また、根の保存をあきらめて抜歯するのも大変負担が掛かります。
今回は折れた根の断端を削って周囲歯肉と面一にして、そこへ義歯の歯を追加し、バネも追加する方法を選択しました。
入れ歯を入れた状態で局所トレーで型を取り、そこへ石膏を注ぎ硬化させた状態です。
石膏が流れすぎて義歯を取り巻いて硬化すると、義歯を石膏から撤去するのに手間がかかりますから、余計な石膏が着かないように注意しながら注ぎます。
石膏が硬化したので局所トレーを外した状態です。
ちなみに、元から付いていたバネは型を取る前にニッパーでカットしてあります。
クローズアップした写真です。
これが入れ歯のバネに用いるワイヤーです。
私は加工が比較的しやすい0.9ミリメートルの物を使っています。
ワイヤー屈曲用のプライヤーを使って歯の形に添うように曲げていきます。
ブライヤーの嘴は片方が径の異なる円筒形になってます。
ワイヤーの屈曲が終わったところです。
技工士さんが見たらダメだしされるかもしれませんが、なかなか難しいので私の力量だとこんな感じです。
一度、石膏模型に義歯を戻してワイヤーの脚部が干渉しないか、位置を確認しているところです。
人工歯(義歯用の出来合いの物が有ります)を選択します。
これの裏側というか底面を削って加工してワイヤーの脚部と干渉しないようにしていきます。
人工歯のたいたいの位置が決まりました。
ピンク色のワックスは、この後レジン(プラスチック)が流れ込んでは困るところを塞いでいます。
アンダーカット(凹部)にレジンが入って硬化してしまうと義歯が石膏模型から抜けなくなります。
これがレジンです。
モノマー(液)とポリマー(粉)を混ぜると重合して硬化します。
小筆に液を浸して、粉をその先に着けると緩い泥状になります。
それを筆で盛っていくのです。
レジンを筆盛りした状態です。
あとで研磨をしますので、完成よりも少しだけ大きくなるように盛ります。
レジンが硬化したら石膏模型から義歯を撤去します。
はみ出た部分(バリ)を技工用エンジン(リューター:回転切削具)で取り除き、凹凸を均します。
これは仕上げの研磨をしているところです。
バフ掛けですね。
バフ掛けが済んで、石膏模型に戻した状態です。
滑沢な面が得られています。
これで、義歯の増歯とクラスプの増設が出来ました。
石膏の硬化待ちもありますので、通常は午前中に預かって夕方お返しするぐらいの感じで修理します。
技工所に依頼する先生も多いですが、技工も嫌いではないので義歯修理は私自身がしています。
これで、型取りと装着の2回で当初の問題解決ができました。
(注意:あくまで広小路歯科の方法です。ケースにより難易度は様々です。また医院や技工所の都合で日数を要する場合もありますので、それぞれ主治医にご確認ください)