WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

ファンキーという感覚

2006年11月26日 | 今日の一枚(G-H)

●今日の一枚 90●

Blowin' The Blues Away    

Horece Silver

5550006_1  50年代ファンキージャズの推進者のひとりホレス・シルバーの『ブローイン・ザ・ブルース・アウェイ』。気持ちいい。かっこいい。音楽にただ酔いしれるのみである。

ファンキー・ジャズとは何だろう。例えば、ウィキペディアはこう説明する。

「ハードバップのうち、プルースのフィーリングを強調し、ファンクの要素が加わった形態。黒人的要素がより強く、ビー・バップやハード・バップに共通した要素である、コードを分解し、旋律を再構成する際に、ペンタトニック(五音階)や黒人音楽を意識したスケールを意図的に用いたものも多い」。

 よくわからない。当然だ。ファンキーとは概念ではなく、感覚だからだ。ファンキーという理論や概念が先にあって、それに基づいて音楽が成立しているのではなく、ある一群の音楽傾向をたまたまファンキーと呼んでいるに過ぎないからだ。無理に説明すれば、黒人的な、ゴスペル風味のあるブルース感覚溢れる音楽とでもなるのだろうが、結局聴いてみなければわからない。

 ところで、日本人はファンキーが好きなようだ。なぜだかわからないが、そこに加味されているブルースの感覚が日本人好みなのかもしれない。ずっと昔聴いたレコードだが、ベン・シドランに『ラヴァー・マン』というアルバムがあって、日本人ビジネスマンを皮肉った「ミツビシ・ボーイ」という曲が収録されているが、その中で「ブルースは好きですか」というセリフが日本語で登場する。「ブルースは好きですか」といってアメリカ人の気を引こうとするワンパターンな日本人を揶揄しているわけである。しかし、これは単に日本人ビジネスマンがアメリカ人に取り入ろうとする手段というだけでなく(それもあるだろうが)、実際ブルースの感覚が好きな人は多いのではないだろうか。ブルースを聴いていて演歌的な部分を感じることもよくあるが、私などもかつてギターでブルース曲をアドリブで弾いていると、あまりの気持ちよさに2,3時間があっという間に過ぎていることがよくあった。意外に、もともと労働歌であるブルースと日本のネイティブな音楽はつながりがあるのだろうか。

 世界の音楽を理論的に解析して、気持ちよさの構造を探ってみるのも面白いかもしれない。


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